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後書きで編者もいうように、息の長いロジックで説得にかかるというよりも、たくさんのアイデアがフラットに散りばめられている。
小さくて大きい政府。
地方自治体の自治と国家中央政府のトップダウンとのコンフリクトは一層深まる問題。財源の移譲も含めて、地方に決定点を与えたい。中央国家はプラットホームとして機能してくれればいいのだが。
グローバル志向のWeWork的なものが、地域ごとのコワーキングスペースの緩いネットワークにとって変わられる未来には関心ある。
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元WIRED日本語版編集長の若林さんによる行政にまつわる諸々の現在とこれから始まる変化への展望。書店では「行政」の棚に置かれていることが、違和感を放つほどロックなムック本です。論考は真正面を突いているのに、物理的なブックデザインや文体と内容が意表をついていて凄くいいです。
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人口減少によっていろいろなサービスが消えていくという話。コンビニも消えたり病院も遠くにしかなかったり。そう考えると、過疎化する地方から出て東京一極集中した方が良いみたいな流れになったりするんだろうか。
小さい政府と大きい政府という二つの視点は大事だなあと思った。テクノロジーによって小さくて大きい政府がつくれるのか、何かしらそこに自分も寄与していきたいなと思う。
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衝撃の良書。これまで感じてきた数々の点がつながる。
社会の価値が個別・多様化する一方、かけられるコストが縮小する。
最低限のコストで最大限のニーズに応えることのできる「小さくて大きい政府」をつくる。鍵となるのはデジタルテクノロジー、分散主義と循環経済。
「公共」がいったいどのように守られ、どのように管理・運営されていくことになるのか、「行政府」と「民間企業」「市民」の「公共」への関わり方がどのように変わっていくのか。
<マインドセット>
・「民間(小さい政府)」か「行政(大きい政府)」かではなく、「サービスの画一性」を問題にすべき。
・人口減少により既存サービスを引き続き提供するコストが上がる
cf. インフラによる国土強靭化は現実的には不可能
耐用年数を迎えた構造物を同一機能で更新すると仮定した場合、現在ある国土基盤ストックの維持管理・更新費は今後とも急増し、2030年頃には2010年頃に比べて約2倍になる。
維持管理を支える人材が高齢化、2050年には2010年頃に比べて半数に減少する。
・社会の動き方(アプリケーション)が変わっているのに、社会を形づくるシステム(O S)がそのままの状況。官僚機構は画一的なサービスをくまなく配給する上で機能したが、現在の社会のニーズに応えることは難しい。
cf. キャッシュレス化の本質:「現金を動かす前提でつくられていた社会」が変わること
→脱中心的なネットワーク化が必要?
<これからの時代の公共>
・供給側の論理から、当事者を中心に物事を考える=主語はオマエじゃない
○給食を通じてクラスのみんなが仲良くなる
×クラスのみんなが仲良くなる給食を提供する …提供することが目的化する
・よりきめ細やかなラストワンマイルは現場で行う
・共感とシェアのエコノミクス→スモールビジネスの展開
○ヒラリー・クリントンのスモールビジネス振興策
・開業資金の調達をしやすくするためにコミュニティバンクや信託組合などに働きかける
・起業する学生の学生ローンの返済延期や無利子化
・起業プロセスを簡略化するために地方政府に働きかける
・決済や納税手続きの簡略化、税優遇
・ヘルスケアや福利厚生をカバーする
・参入障壁を下げる
・大企業による搾取や不当な取引を規制する
・スモールビジネス起業家の支援(メンタリング・インキュベーション・トレーニング)
・スモールビジネスに対してオープンな行政府になる
○シビックエコノミー:8つの行動ガイド
1. 市民起業家を見つける
2. コンサルではなく参加―市民に共創を呼びかける
3. 共に出資・投資を担う―資金調達を多様化させる
4. すでにある資産を再活用する
5. 場所の体験―物理的・社会的な条件を設定する
6. ゴールを決めないアプローチ―自然発生を促す枠組み
7. ネットワークの力で変化を起こす―スケールさせる
8. 「変化」を指標化する
・地方行政のSNS活用の可能性
・複雑なネットワークの中に何かを投��込んでみる。そこで起こる動きを細かく検証する
・実験を重ねていった中で修正を加え、法的にも問題のない形にしていくプロセスが必要がだが、予算確保のためのエビデンス集めにも実験が必要
→行政府と近いながらも、それとは関係のないところで、「勝手にやっている」ような組織体が必要になってくる
cf. ロンドン市で公的な事業に対するクラウドファンディングを支援
・公と民を結びつけるための中立的なテーブルが必要
・「孤独」が今後の重要な社会課題となる
<行政の役割の変化>
・デジタルトランスフォーメーションのためのプラットフォーム(インフラ)を整備
=私道しかないインターネットの世界に公道をつくる
・通信インフラ:光ファイバー
・リアルとバーチャルをつなぐインフラ:生体認証ID、銀行口座、スマートフォン
・バーチャルなデジタルインフラ:決済・デジタル本人確認
・度量衡API
・データなどに関する規格やルール
・「配給」のための組織からの脱却
・直接支援するのではなく、何が必要な支援かを現場に聞きに行き、それを実現できるプラットフォームをつくる
・「共感」を軸として機能する
・最初のアクションとプログラムの設計は行政府がやるが、最後のラストワンマイルを市民、企業に協力してもらい現場にもっともに近いところできめ細かいサービスを実現する
・プログラムの最終ゴールやKPIを設定し、具体的なプログラムの内容は現場に任せる
・中央政府は地方行政のためのプラットフォームをつくっていく、地方行政府は市民により近いところでラストワンマイルのサービスを生み出すプラットフォームになっていく
・コネクティッド・カウンシルによる公共空間、設備、労働力をシェアできるネットワークをつくりあげる
・実現のための早急なバックエンドのデジタルテクノロジー導入による効率化・自動化
cf. イノベーションラボ「NESTA」のリサーチによる行政府が今すぐやるべきこと
・バックオフィスのデジタル化を2020年までに完遂する
・行政データのオープンスタンダードを策定する
・行政サービスに利用可能なデジタルプロダクトのマーケットを創出する
・地域内にデータアナリティクスを行うための組織を設置する
・デジタルサービスへの全市民のアクセシビリティを実現するために投資する
・データシェアやアルゴリズムを用いた意思決定の倫理ガイドラインを策定・公開する
○DECODE: Decentralized Citizens Owned Data Ecosystem「スマートシティを再考する」分散的なデータエコシステムのあり方を構想・研究する
<世界の事例>
インド:インディアスタック
・8桁の国民ID「Ada-haar(アーダール)」を13億人に振り終え、それぞれの番号と個人とを顔面、指紋、虹彩の3つの認証システムを用いて紐付け
・オープンAPIにより、会社や個人が「公的なデジタル実印=電子署名(e-sign)」をつくることができる
エストニア:
フィンランド:
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WIRED日本版の編集長を長く務めていた著者が、まさにWIRED風のノリで描き出すデジタルテクノロジーを用いた次世代ガバメントのそのあるべき姿、エストニア・インド・デンマークなどの先進的な取組などがまとめられた一冊。
”大きい政府”はコスト負担の重さや効率性の悪さが、一方で”小さい政府”は必ずしも民営化が適さない公的サービスがあるという事実において、一長一短ある。本書はその二項対立を止揚するために、「スケーラビリティ」という特徴を持つデジタルテクノロジーが欠かせないという観点から、デジタルテクノロジーの用い方、留意すべきポイント等が示される。
数年前にバズワード化していた”ガバメント2.0”が結局は局所的なオープンデータの取組にしかすぎず、大したインパクトも出せぬままに消えていこうとしている今、それでも抜本体にデジタルテクノロジーを導入して、最小限のコストで最大の行政サービスを提供することを目指しているインドのような取組から学ぶべき点は多い。
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これからの政府の在り方について、社会の情勢とテクノロジー進化を交えて概観するおもしろいムック本でした。
市民側のニーズの多様化、働き手(労働市場も公務員も)の減少と税収の減少、公共施設の管理更新負担の増大などの問題の数々は、相互に増幅する形で行政府に重くのしかかってきて、現行の官僚制や議会制では対処しきれないし、しようとしても努力ではどうにもならないので、時代に合わせた新しい行政の在り方(本書では「OS」とも表現されていました)にバージョンアップしなければいけない、ということが諸外国の事例も引き合いにしながら、仮想議論を通じて間接的に提言されています。
これはなにも行政に限った話ではないな、という内容も多く、民間部門においても大いに役立つ情報や示唆がありました。「次世代ガバメント」というテーマに、一体どれほどの人が関心を示すのだろうと思いながら手に取りましたが、内容は至極真っ当ですし、特定の思想に傾斜していないように感じました。というよりもむしろ、イデオロギーやらなんだだけを頼りに民意を反映するということになっているいまの行政や議会というものの在り方が、たくさんの小さなニーズを満足させなきゃいけない(ヒエラルキー型のサービスで得られるベネフィットが限定的になってしまった)現代では、ちょっともう限界なんじゃないか、という破壊的な内容になっています。限界がある、だから行政はインフラ(土木的なものではなく、ネットワークやプラットフォーム、法整備のこと)を整備することに特化して、その上を走る個別のサービスは民間に委ねるべきだ、という話です。
自動化によって人間が職を失う、というありがちな意見についての言及もあって、それが割と前向きに見えたのも救いだと思います。
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前作NEXT GENERATION BANKに続き、かなり面白い。日本の政治家、公務員全員に読ませたい一冊。
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ガバメントという響きから小難しい印象を持つが、軽快な文体と平易な解説でおどろくほどわかりやすく現在のガバメントが抱える課題と将来への提言が描かれている。
アジャイル、リーン、データドリブンのキーワードが明確に打ち出される回数こそ少ないが、根底にそのマインドが息づいている。
DXという概念はいまいちピンとこず、「もうDigital前提なんて当たり前でしょ?」と思っていたクチだが本ムックではあらためてその重要性、そして日本においてはまだまだであるという現在地を確認させてくれる。
余談で突然ヘビーメタルが出てくるあたりを含め、実にロックなガバメント論だ。
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次世代行政府の役割は、おそらく次の三つに集約されるのではないかと思います。まず、「社会インフラの提供」。そして、「サービスの提供」。最後に「コミュニティの再構築」があるのだろうと思います。
(引用)次世代ガバメント 小さくて大きい政府のつくり方、責任編集:若林恵、発行:株式会社黒鳥社、発売:日本経済新聞出版社、2019年、146
いま、私たちがよく耳にする言葉は、「大きい政府」を目指すべきか、それとも「小さな政府」を目指すべきか。「大きい政府」を目指せば万人のニーズに応えられるものの財源不足に陥る。一方、「小さな政府」を目指せば不平等が発生する。
この本は、今後の「公共」を支えていくため、デジタルテクノロジーという視点を取り入れ、議論している。なぜ、デジタルテクノロジーが必要なのか。それは、私達の身近に、当たり前のように存在している行政府は、生産人口の減少によって財源不足が進み、行政府職員が今までどおりの仕事をこなすだけでは、多様化する市民ニーズに応えられなくなるからだ。そのため、行政府は、積極的にデジタルテクノロジーを取り入れることで、仕事の効率化を図り、市民ニーズを汲み取り、市民らとコミュニケーションを図って信頼関係を構築することで、職員しかできない本来の仕事をしなければならないと感じた。
本書では、豊富なバックデータに基づき、これからの行政府のあり方を模索している。その中で、デンマークデザインセンターCEOのクリスチャン・ベイソン氏の指摘が鋭い。ベイソン氏は、「これからの行政府は、市民の一人ひとりの人生や社会がどう変わったのかを指標としてサービスが評価されなくてはならない」と指摘する。
今後より一層、行政府では、予算の使われ方、つまり費用対効果が問われる。事業予算で、どのように市民の人生までを変えていくのか。また、実際に、その事業評価はどうであったのか。さらに、老朽化する多くのインフラ整備は、どのようにプライオリティをつけていくのかなど。
行政府は、既に事務事業評価制度を取り入れてはいるが、その評価制度の指標を組み替えるなどして、より市民や社会によい効果をもたらしたかを的確に評価し、予算に対する説明責任を果たさなければならないと感じた。
かのピーター・ドラッカーも、公的機関が成果を上げるための規律として、「自らの事業を定義する」、「活動の優先順位をつける」、「成果の尺度を明らかにする」などをあげている。それに加え、本書では、デジタル公共財の整備や、そこに住む人達や同じ目的を持った人たちの「共感」をベースにしたコミュニティの必要性を説く。先日、私も会津若松市のスマートシティに関する本を読んだが、本書の中でも、そのスマートシティの必要性を認めつつ、課題も提起しているところが興味深い。
先進国の中で、特に少子高齢化の進展が顕著な我が国においては、行政府に残された時間が少ないのかもしれない。本書を読んで、厳しい環境の中、さらにグローバルに、そして多様化する市民ニーズに応えるべく、これからの行政府は、長期的な視野をもって、「ガバナンス・イノベーション」をおこしていかないと強く感じた。
そのために、私は、まず、2050年時点における行政府のあるべき姿をイメージするところから始めてみようと思う。
本書は、地方公共団体職員を始め、新たな「公共」を支える全ての人(社会の構成員)におすすめしたい。
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## メモ
AI/テクノロジー時代において、何十年も前のシステムのままの行政府が成り立つわけが当然ない。給食配膳的な全国民への公平で凡庸な社会保障や福祉はインクルージョンというにはあまりに大味。多様化の時代において何にどうお金を使うかを産官学協働による推進が必要で、その一歩目がエストニアやインドがすでに実現している個人IDを元にしたデジタルインフラだ。
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インフラをできるだけ国有化し、国の経済と国民を丸っと面倒を見る、いわゆる大きな政府。しかし、公共サービスを増やせば増やすほど人員もコストも大きくなり、逆にサービスの質は低下していった。効率も悪くなり、国民からは無駄なところに税金が使われていると不満も出てくる。組織が大きくなると目が届かない所も出てきて腐敗も起きる。その中で出てきたのが規制緩和や民営化によって小さな政府を作り、公的なサービスを市場に委ねる考え方で、価格と質の競争によってより低価格で高品質なサービスが提供されるというもの。しかし、ビジネスにならない不採算サービスは提供されなくなり、元々は公的なインフラだったものが消滅してしまうということも起きてしまう。
国民のニーズが多様化し、自治体職員の数も減らされている中、考えるべきなのはコストのかからない小さな政府でありながら大きな成果をテクノロジーを通じて達成する次世代政府なのである...という話を、事例や識者の言葉を使いながら解説している。
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大きな政府小さな政府の次に来る政府の提言.デンマークやインドなどの例など詳しく述べて,わかりやすく説明しようとする意図はよくわかったが,やたらとカタカナ文字が多く日本語にしてほしかった.将来はこのようなデジタル化データ化になるとしてもまだ管理される恐れがぬぐいきれない.
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次世代ガバメント
読書会の課題図書。うっかり電子版を買うところだったが、紙を買って良かった。紙の匂いと変わった編集で、読書体験を刺激してくれる書籍だった。大きさといい、色使いといい、こういう本は買ったことがない。
さて、重要な中身に関して。政府のあり方と民間との関係を、DXを用いて見直すための実例と考察が豊富に盛り込まれている。多様性と人口減少の中、これまで通りの「配給」に近い機会的なサービス提供方法/内容では、政府は立ち行かない。ならばいっそ、政府と民間の境界線を曖昧にしながら、互いの強みを出し合えばよいのではいう考えには、非常に合点がいく。政府がプラットフォームとなり、必要なリソースは用意しつつ運営は民間に任せるなど、取り組み方のリエンジニアリングが必要と説く。ただ本書の残念なところは、抽象論が強いこと。海外の事例はたくさん載せているのだから、「具体的に日本はこうすれば良くなる!」という提言があってもいい。そうすれば議論がし易い本になると思う。
そういえば偶然にも今日本はコロナで揺れている。政府の役割が改めて問われているが、この本で前提に置かれているような多様なニーズを国民から突きつけられているわけでもないのに、この動きの鈍さはなんなのか。ニーズは1つ、休業補償と現金給付だ。明確なニーズにも応えられない政府に存在価値があるのか。。奇しくもそんな絶望感を覚えさせられた。
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ほとんどが仮想雑談 ソーシャルコメンタリーとしてのNGGマニュアルというChapterなんだけれどもコラムがたくさんあって非常に読みづらい。全然きりがいいとこに入ってないから本当に読んでてストレスがたまる。
行政について総論的に考えたこともなかったので書いてあることは面白いことが多いのは間違いないんですが、なんでこんな本(台割)にしてしまったのかもったいなくてしょうがない。
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次世代の行政とはどうあるべきか、について、
デジタル化やデザイン思考、そして過去からの行政発展の経緯を踏まえ、いろいろな視点から述べている。
テックに寄り過ぎず、「行政学」の古い敷居も出て、
ちょうどよいバランスの視点で、
今後へ向けた展望が書かれている。
○NPMからNG(ネットワークガバナンス)へ
市場という視点を盛り込んだNPMから、横のつながりが重要となるNGへ。
○行政の10のサボタージュ
1.知識の欠如
2.無関心
3.実行力(の欠如)
4.自動化による権限のシフト(への抵抗)
5.新規プレイヤーの参入(への抵抗)
6.調整(をせずに上下関係や縄張りを重視)
7.プライバシーとセキュリティ(の失敗を過度に恐れる)
8.戦略よりも戦術(を優先)
9.変化への恐れ
10.否定的結合
これらのサボりが、テクノロジーによる発展を妨げている。確かに。
→であれば、この逆をすればよいのだ。
○これからの公務員
テクノロジーの導入で浮いた時間を、地域に入り込んで
課題を探しに行くために使う。
市民の生活の中で何が起きていて何が課題になっているか、
そのインサイトを取り出していくことが重要。
確かに、定型的な事務をすることが自分たちの仕事、と
決め込んで日々ロボットとして過ごしている行政職員が多い。
彼ら・彼女らは、まさにロボットに置換され、職を
失うだろう。