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商品説明
2012年、ノーベル物理学賞につながるヒッグス粒子が発見された。標準理論の成り立ちを、数式を交えてわかりやすく解説し、標準理論が実験的に確かめられていった過程を眺め、ヒッグス粒子とその背後にある物理に迫る。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
小林 富雄
- 略歴
- 〈小林富雄〉1950年千葉県生まれ。東京大学大学院理学系研究科修了。同大学素粒子物理国際センター教授。理学博士。専門は高エネルギー素粒子物理。2013年度仁科記念賞受賞。
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紙の本
数式が出てくる踏み込んだヒッグス解説本
2014/02/01 22:46
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たきぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
自然界は、我々が日常体感している電磁力と重力、
それに原子の内部で作用している弱い力と強い力の、4つの力で成り立っているという。
本書の副題にある「究極の方程式」は、
電磁力と弱い力、強い力の3つを統一するもので、
こういう理論モデルは、標準模型とか標準理論とも呼ばれている。
本書では、究極の方程式を出発点にして、ヒッグス粒子の発見までを解説している。
この本の前半では、数式がバンバン出てきており、このあたりが、
他のヒッグス粒子(あるいは標準模型)の解説本と一線を画す点だろう。
正直なところ、万人に対して優しい本だとは言えない。
しかし、数式を使わない一般の解説本に対して、
もどかしさや物足りなさを感じている人は、一度手に取ってみればよい。
たとえば、「この方程式がどうやって力を統一するのか?」、
「ヒッグス機構をどうやって数式に取り込んでいるのか?」など、
そういう疑問を持った人に向いている。
数式を読み解くには、大学学部の物理と数学の知識があれば理解できる、
もしくは、おおまかな話の流れだけでも理解できる。
物理の知識としては、解析力学、電磁気学、量子力学、相対論あたりが分かると心強い。
しかし、未学の若い学生さん(たとえば高校生とか)であっても、
もし興味や疑問を抱いていたら、チャレンジしてみる価値があると思う。
本書の「究極の方程式」は、1つの式を4行にわたって書かれており、
かなり大雑把に要約すると、各行は以下のような役割を持っている。
まず1番めの行は電磁場についての式で、
これを解いてやると、マクスウェルの方程式が出てくる。
そして、光子が真空中を秒速30万キロで伝搬することが導き出される。
この行は、光子などのような力を媒介する素粒子を記述している。
2番めの行は、物質を構成する素粒子のことを記述している。
この行から、反物質の存在を予言したディラック方程式が導出されるし、
さらにアインシュタインで有名なE=mc2の式が出てくる。
そして1番めと2番めの行を合わせて考えることで、
素粒子間でどうやって力を及ぼすのかを知ることができる。
たとえば電磁力では、素粒子は光子をやりとりすることで力を及ぼしあう。
4番めの行は、ヒッグス場のポテンシャル形状を表す。
他のヒッグス粒子の解説本でよく出ていたメキシカンハット型、
あるいはワインボトル型のポテンシャルがこの式に相当しており、
ここから自発的対称性の破れによるヒッグス粒子の生成につながる。
最後に3番めの行は、素粒子とヒッグス粒子との結合を表していて、
この結合によって素粒子は質量を獲得するとしている。
以上より、物質を構成する素粒子の有様が明らかになった。
そして本書の後半では、「究極の方程式」から予言されたヒッグス粒子を、
巨大な粒子加速器を使って発見した経緯について書かれている。
最後に一言。
最近の自然科学系の解説本では、
数式を使うことを極力忌避する傾向が強いと思う。
そのような本は、文理問わず万人に情報発信するという意味では、
非常に意義の大きなものだと思う。
おかげで「ヒッグス粒子」という言葉がだいぶポピュラーになった。
しかし、もう少し先を知りたい人達にとっては、物足りない。
かと言って、いきなり専門書ではハードルが高すぎる。
本書のような解説本は、そのギャップを橋渡ししてくれる存在になり得るものであり、
このような少し踏み込んだ解説本は今後も増えてほしいと、私は思う。