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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2010.9
- 出版社: 平凡社
- サイズ:20cm/311p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-582-83479-6
紙の本
幕末明治傑物伝
著者 紀田 順一郎 (著)
ローマ字を創始したヘボン、郵便事業を興した前島密、碧眼の噺家・快楽亭ブラック…。発想と実行力が人生も世の中も変えた開化期、自己を恃み乾坤一擲を賭した21人を紹介。『ベスト...
幕末明治傑物伝
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商品説明
ローマ字を創始したヘボン、郵便事業を興した前島密、碧眼の噺家・快楽亭ブラック…。発想と実行力が人生も世の中も変えた開化期、自己を恃み乾坤一擲を賭した21人を紹介。『ベストパートナー』連載を改稿して単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
紀田 順一郎
- 略歴
- 〈紀田順一郎〉1935年横浜生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。文学、近現代の社会風俗等を幅広く論じるほか、推理小説も手がける。「幻想と怪奇の時代」で日本推理作家協会賞を受賞。
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紙の本
変革の時代の指針になる先人たち。
2010/09/10 09:13
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:浦辺 登 - この投稿者のレビュー一覧を見る
横浜といえば今も昔も変わらぬ港町だが、政治の中枢に近い開港場としてその繁栄ぶりは目を見張るものがある。本書は、その港町横浜の勃興期に活躍した西洋人を含む総勢18人の物語である。
まず、目次に記載された人物の名前を追いかけるが、ローマ字を創始したJ・C・ヘボン、中川嘉兵衛と続き、その人物像を知りたかった高島嘉右衛門、岸田吟香、田中平八の名前を見つけて嬉しくなった。特に田中平八などは「天下の糸平」と自称する割には知名度が低く、つまみ食い状態で他の資料から追いかけていた人物だけに巻末の参考文献とともにありがたかった。いまやインターネットによって簡単に情報を引き出すことはできるが、ピンポイントでの情報は得られても多面的な情報である背景については得られないので、尚更だった。一読後、ここに登場する傑物たちが多くの人々とからみあって実業の世界で成功したと分かるが、その人間関係を上手に読み説きができることに著者の知識の幅が窺える。
田中平八について続けると、東京墨田区の木母寺に顕彰碑が建立され、その写真も収められている。ここは能や歌舞伎の「隅田川」の舞台として知られた寺だが、伊藤博文が揮毫したという顕彰碑は田中平八を彷彿とさせるほど巨大である。この寺を訪ねたとき、碑の裏側に渋沢栄一、福地源一郎、高島嘉右衛門、横浜富貴楼など賛同者の名前が刻みこんであるのを目にした。港町横浜を舞台に政財界を巻き込んでの一攫千金を夢見る田中平八が、新しい何かを求めて機敏に活動したことを示している。
今、日常生活の中で当たり前のように接している石鹸、新聞、パン、食肉など、この横浜の起業家たちの熱意の結果と知るが、豪快な人が多い半面、社会事業に対してもカネを惜しまない姿に感心してしまう。あの世にカネは持っていけない、名前を残そうと考えたのかどうかは知らないが、高島嘉右衛門の「高島」という名前は横浜の地名や駅名に残っている。さほど、この実業家は横浜に貢献したということになる。
100年に一度の大不況などと言われる昨今だが、幕末から明治、価値の全てが真っ逆さまになった時代は大不況どころの話ではない。危機ともいえる大転換を機会に捉え、人々が活躍した息吹がこの一冊からは伝わってくる。迷路に迷い込んだ今、どこに何をどのように求めるのかと考えあぐねた時、これら先人の行動と姿は指針になると考える。
通常、著者「あとがき」に編集者に対する謝辞があることは珍しくはない。しかしながら、装幀を担当された毛利一枝さんにまで及ぶ言葉を見た時、著者は登場する18人に対しても細やかな気配りをしながら書かれたのだなと理解した。
巻末に人名録が付記されていたら、事物、人物としての資料にも利用できたのではないだろうか。