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商品説明
無職の青年は、どうやって大衆の指導者に上りつめたのか。なぜ政治的に未知数の人間が強大な権力を手にし、とてつもない破壊を引き起こしたのか。ヒトラーの生涯を、徹底した自己演出と巧みな政治スタイルに着目して描き出す。【「TRC MARC」の商品解説】
入試に失敗し職にも就かず鬱々と暮らしていた一人の名もない青年は、またたく間に大衆の指導者に上りつめ、第一次大戦で疲弊していた人びとの熱狂を呼ぶ。なぜ政治的に未知数の人間がこれほど強大な権力を手にし、とてつもない破壊を引き起こしたのか。本書はその生涯を、徹底した自己演出と、部下を巧みに競わせる政治スタイルに着目して描き出す。最新の研究成果を反映した伝記の決定版。【商品解説】
目次
- 日本の読者へ
- 第一章 序論
- 第二章 無名の男 1889-1919
- 第三章 煽動家 1920-1923
- 第四章 「指導者」の捏造 1924-1929
- 第五章 権力要求と権力闘争 1929-1933
- 第六章 国民の「総統」 1933-1939
- 第七章 最高司令官とナチスの犯罪
- 第八章 ヒトラーは終わらない
著者紹介
ハンス=ウルリヒ・ターマー
- 略歴
- 〈ハンス=ウルリヒ・ターマー〉ローテンブルク・アン・デア・フルダ生まれ。フリードリヒ=アレクサンダー大学歴史研究所で大学教員資格を取得。ヴェストファーレン歴史委員会の正会員。
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紙の本
現時点での、ひとつのヒトラー伝記の方向性
2023/06/29 20:54
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る
社会的にも政治的にも無名の男が、30年間社会の底辺で暮らし、学歴も職歴もなく、政治的キャリアの経験もなく、あっという間に独裁者に昇りつめることができたのは何故なのか、そして政治家としてごく短期間に大衆運動を動員し、世界史的に見て重要な政治的決定を下し、かつてない規模の殺戮を犯すことができる無制限な権力をどうやって手に入れられたのか、同時代から現在に至るまでヒトラーの伝記はこの「ヒトラーの謎」は解明しようとしてきた。
ヒトラー伝記史を俯瞰すると、同時代には、ヒトラーは「無節操な日和見主義者」で、「ニヒリズム」「剥き出しの権力意志」に突き動かされた「狂気」の現象とされた。しかしその背後には、19世紀から脈々と流れる政治思想に根差した世界観、すなわち人種的反ユダヤ主義と生存圏の獲得があった。この権力と破壊への意志が特定の政治的・社会的条件の下で発現したという、個人的な気質の精神分析的な伝記である。
1970年代ヨアヒム・フェストは、ヒトラーの政治と権力への途を、彼の個人的な経歴のみで説明するのではなく、当時の政治・社会状況との相互作用として説明し新たな方向性を与えた。続くカーシヨーは、1998年その画期的な伝記(邦訳2016年白水社)で、ヒトラーを可能にした社会的条件と力に注目して、ヒトラーの意図とその政治的・社会的期待の相互作用を強調し、それらが一体となってナチの政治を説明できると考えた。これが戦後のヒトラー伝記の一つの到達点となる。
現在の研究では、ヒトラーは独自に目標に向かって行動する人間であることが強く認識され、その個人的な政治スタイル、政治戦略や意思決定が重視され、ヒトラーの役割は、行動を決定する「強い独裁者」のイメージとされる。これらの成果を踏まえて、著者は「危機的な社会状況」・「特異な政治的能力」・「個人の行動の相互作用」でヒトラーの権力を説明していく。
芸術家ヒトラーは、政治権力を可視化し、それを演出する必要性を自覚していた。「演出」は彼の権力に不可欠な構成要素となり、政治的な意思決定過程と権力は「演出」で美化されていた。この演出という「特異な政治的能力」を駆使して、政治的意思決定プロセスにどのように影響を及ぼしたか、を検証する。第二章ではウィーン時代、また軍隊時代のヒトラーの思考、また、行動を詳しく検証し、この時から「演出」していたことを示す。第三章から第五章までは、政治戦略として自らの政治的演出力と当時の政治・社会のカオス状況との相互作用で大衆を動員し、救済者である「指導者」像を演出・形成していくプロセス。そして自らを断固とした単独で決定する芯のある政治家として見せる演出によって「総統」の意思決定を行うことになる。そこでは「漁夫の利」、ナチス権力機構の特徴である、下部指導者や同盟者が競合して権力を主張・要求する混沌状況で、「個人の行動の相互作用」で互いに牽制させてバランスを取りつつ、最後は自ら「決断」するスタイルをとる。この演出が常にヒトラーの独裁者としての唯一無比の権力を際立たせ、「総統神話」となり、国民に「民族共同体」との一体性を促進し、破滅へと進んでいくのである。
演出と政治的意思決定プロセスの二つの視点を軸にしたヒトラーの伝記の中で、意思決定プロセスには、もう一つ「一か八か」の決断があるという。これがミュンヘン会談のように成功した場合には「総統神話」となるが、失敗例を二つ挙げている。一つはカップ一揆、もう一つが独ソ戦。後知恵ではあるが、これが究極的には破滅となるところが、ヒトラー自身が劇的な生涯の演出を意識していたかのようである。
紙の本
ヒトラーの演出性がよく分かる
2023/06/04 14:19
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヒトラーの施策の演出性とナチスの権力機構の特徴、この二点について著者はすこぶるわかりやすく我々に説明を施してくれている、いつの時代も私達はポピュリズムを操る政治家には弱いようだ