電子書籍
少年の心の成長
2023/03/04 23:55
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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
物知りで絵が上手い不登校の兄を慕う小五の晶。「普通」とは何か、幼いながらも理解しようとする真っ直ぐな少年の視点で描かれた、秘めたバイタリティに心が和ぐ物語。
意図して作られた「普通」に沿って、無理して生きる事も「普通」なのか?人と同じ事に無意識に安心を覚える気持ちも、マジョリティを翳して正当化する事への不満も、状況次第でどちらにでも共感してしまうもどかしさが痛いくらい響き、とても良かった。
母親視点の二章も、共通して揺れる心情が繊細に描かれていた印象。子供側に立つと言い訳されているようにも思えたが、今の大人の私から見ると、どうにもならない事もあると声を掛けたくなった。
晶が兄や親友の言葉に救われたように、私の言葉も何か意味をもつ日がくるかもしれない、と少し身体が軽くなった気がした。タイトルにはそんな意味も込められていたのかな。
紙の本
本人の気持ち
2023/08/13 11:45
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投稿者:hid - この投稿者のレビュー一覧を見る
親は守ってあげられるけど、逆に、見守るしかできないかな。
最後は子供の気持ちしだい。
親にできるのはサポート。
難しいよね。
親ガチャなんて言葉もあるし。
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もどかしさと愛おしさを両手で掬い取った。
子どもを育てていると何度も経験するその感情。
我が子が「普通」という枠から外れるたびに、その枠へと押し込めようとする。みんなと同じことをみんなと同じにできること。それが当たり前と、それが子どもにとっても幸せなんだと思いながら。
5年生の晶が見ている世界は、大人には見えないものが見え大人が見ているものが見えない。知らないことが多すぎて感情に言葉がついていかない。
学校に行かずに家にいたり、突然勝手に身体が動いてしまう兄、達が物知りで絵がうまくてカッコいいんだということをうまく友だちに説明できないこと。母と父が何か自分に内緒にしていること。心と気持ちを持て余す晶の毎日をぎゅっと抱きしめたくなる。
そしてそんな晶や達や両親の感情の揺れを描く川上佐都の筆の細やかな豊かさよ。
心惹かれる場面をつなげてパノラマ撮影してみたい。
晶と達が明日笑顔で過ごせますように、と願いながらページを閉じた。
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Amazonの紹介より
小学生五年生の晶と高校生の達は、仲良しな兄弟。物知りで絵が上手く、面白いことを沢山教えてくれる達は、晶にとって誰よりも尊敬できる最高の兄ちゃんだ。でもそんな兄ちゃんは、他の人から見ると「普通じゃない」らしい。晶以外の人とのコミュニケーションが苦手で不登校だし、集中すると全力で走り出してしまう癖があるから。同級生や大家さんとの会話を通じて、初めて意識する世間に戸惑い葛藤する晶だが、兄と交わした言葉を胸に日々を懸命に生きていく。
第11回ポプラ社小説新人賞特別賞受賞作。
あらすじを読まずに読み始めたのですが、最初の2ページが印象的でした。主人公の人物像が浮かび上がるので、何か期待感が生まれました。
難しい言葉は使わず、「ぼく」という人物が誰なのか、ダイレクトに情報を提供するのではなく、周囲の情報からじわじわと形成されていくので、その言葉選びが面白かったです。
「学校」「算数」「半年後には6年生になる」など人物像が段々と具体化していく過程は、読者にとって、含みを持たせるような思考をさせてくれます。
こういった表現が、次々と登場するので、物語に伸び代ができて、柔らかい気持ちで読めました。
といっても、内容としては、悩ましい問題が描かれています。
生きていく上で、他人とどう接したら良いのか?
接することの難しさ、相手からどう見られているのか。
人との接し方や見方など広い視野で考え、色々な人や考えがあることを自覚しないといけないなと思いました。
学校というと、どうしても「良い」生徒として過ごさないといけない印象です。
普通とは違ったり、変な行動をすると、どうしても「違う」生徒として見られてしまい、しまいにはイジメや無視といった展開に発展してしまいます。
自分としては、良い人だと思っても、他にとっては変な人に見られてしまうかもしれません。
そうした心理描写を小学校での会話を通じて、表現されています。大人とは違い、勢いのまま会話のバトルが繰り広げられていて、「リアル」がありました。
全2章で構成されていて、第1章では小学5年生の晶視点、第2章では晶の母親、朝子視点です。
第1章の詳細を第2章が補う形になっており、第1章でモヤモヤだった問いが、第2章で解決されるようになっています。
直接情報を読者に伝えるのではなく、様々なキーワードを提供し、そこから〇〇なのでは⁉︎といった含みをもたせるやり方になっています。
全部読んだとしても、全部がスッキリとした余韻があるわけではなく、若干モヤモヤ感がありました。
でも、キツキツに情報を詰め込むのではなく、ある程度の情報だけを提供することで、様々な解釈が生まれ、それで良いんだと思ってもいいかなと思いました。
辛い状況でも、前向きに進もうとする気持ちに自分も前向きに頑張ろうと思いました。
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小学生のまっすぐさが愛おしい。
周りからどう見えても、
やっぱり自分の兄ちゃんが好きだよね。
でも、時々もやもやして、
そんな自分に戸惑って。
そうやっていろいろ知って大きくなるんだな。
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物知りで絵の上手な兄の達を尊敬する弟の晶。
でも達は学校に行ってないから同級生にコミュ障で普通じゃないと言われ…。
普通ってなんだろうと考える。普通の基準は誰しも自分の中にあるけどその基準を押し付けてしまうということを私もやってしまっていないだろうか。達の「自分が簡単にできることを、人もできると思っちゃいけない」という言葉にハッとした。
普通じゃなくても凄いと兄を慕う晶の優しい気持ちをずっと持っていてほしい。
読んでゴッホ兄弟のことを思い出した。
晶の純粋さ、兄弟の絆、親からの愛が優しい。
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本屋さんで平積みになっていて、ふと、気になって手に取ったのがきっかけで読みました。読み心地が柔らかくて滑らかでよかったです。小学生の晶と達のぎこちないながらも優しい会話や、言葉のないやりとりがふたりの間に含まれていて、ふたりだけの信頼関係が築かれているのだな、と感じさせられました。
また、川上先生のの文章の特徴なのか、いい意味で平凡的な日常の描写や、あるある!という共感を思い起こさせるセンス(例:にんじんのお菓子)が感じられ、文章力の高さがよく感じられました。
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お兄ちゃんのお父さんも、弟のお父さんも良い人ですね。
兄弟の仲も良さそうだし
お母さんだけは、なんか異質な気がするけど、気のせいかな
まあ、普通を求めてもダメだし、そもそも普通って何?って言われたら答えられないし
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正直な感想としては、星かなり4寄り。
穏やかで、優しい文章ですらすらと読めます
いろんな本で、普通ってなんだろうっていうテーマが書かれていますが、この本は穏やかな口調で普通ってなんだろうっていうことを疑問としています
大多数がそう思うのなら、それが普通
確かにそう思いがちだし、そうなることが多いこの世の中だけど
その人にとっての普通は大多数に決められるものじゃない
誰かを傷つけるようなことが普通だったら困るけどそうではないんだったら
この人にとって、これが普通のことなんだと受け入れられるような人になれたらいいなとも思います
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いわゆる発達障害になるのかな。
達は絵がとても上手い。でもコミュ障なところがある。
弟の晶はお兄ちゃんが大好き。でも、学校に行っていないことが不満。
頭が良くてよく気のつく男の子。
ちょっと消化不良。この家族はそれぞれどうなるのか?
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「人と違うこと」って特別なことなのだろうか。
そうではないはず…ということを小学5年の晶から教えられたような気がする。
小学5年の晶には、高校生の兄・達がいる。
兄はとても絵が上手くて物知りで最高なのに学校には行っていない。
普通ではないと思われていて、コミュニケーションが苦手。
だけどとても兄が好きであることが、バイト先を心配して事前に確認しに行ったり、ということでもわかる。
そして、ずっと一緒に居たいという思いも伝わってくる。
第2章は、母からの目線で描かれている。
親であるが故にわかってあげたい気持ちと上手くいかない葛藤がよくわかる。
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読み始めは、抽象的な作品でわかりにくいのかな?
とかいじめなどが絡む少し気が重くなるような予感がして、何となくスローペースで読み進めていました。
でも、いつの間にかすっかり入り込んでいたようで、中盤あたりでは主人公の兄弟のやりとりに涙していました。わかりやすいハッピーエンドではありませんが、ずっと誰かの愛が溢れていて温かく、希望が湧いてくるとても素敵な作品だと思います。
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第1章は小学生五年生の晶(あき)の視点から綴られる。
大好きな兄・達(とおる)は大学生。
でも、学校は休んでいる。
なにか理由があるらしい。
晶の視点からは詳しいことは書かれていない。
達は衝動的に、必要以上に動く。
それは「普通」ではないという。
学校へ行けないのはそれが理由だろうか。
第2章は母・朝子の視点で描かれる。
息子たちを思う親心が痛いほど伝わってくる。
なぜ、達は不登校になったのか。
ルールに縛られているのは大人達も同じ。
コミュニケーションをうまく取れないひとを
晶の同級生は「かわいそう」と言う。
私自身はどうだろう。
知らず知らずの間に誰かを傷付けてはいないだろうか。
優しい物語の中にいくつものメッセージが散りばめられていた。
川上佐都さんの次回作が待ち遠しい。
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異父兄弟である小学生の晶と高校生の達。
ちょっと変わっているけど、絵が上手くて優しいお兄ちゃんと思っていたのに、他人の目が入ったときに急に「変」で困ったお兄ちゃんに見えてしまう。
こういうことってよくあるよなと思った。
コミュ障や動き回ることなどが原因で不登校となってしまうのだけど、その後に元夫のいる秋田に達と母で引っ越してしまう。
この辺りから、話がわかったようなわからないような感じになってきた。
ちょっと尻すぼみな印象。
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絵を描く才能に恵まれた青年と多感で素直な小学生の弟。いかにも常識的で神経質な母親と事なかれ主義の温厚だけど影が薄い父親。
素直な弟目線の話がいきいきとしていてよかった。