紙の本
歴史小説と言ってもいい
2020/02/15 00:23
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:肋骨痛男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
存命の人間は名前がぼかされていますが、カルテル関係の登場人物はモデルとなる人物がいます。この3部作の中で起きた事件などもだいたいはモデルとなった事件がありますね。日本に暮らしている限りどこまでも対岸の火事なので皮膚感覚として麻薬戦争を捉えることはできませんが、本作を読むと現在進行形で続いている地獄の様な暴力の連鎖に圧倒されます。
投稿元:
レビューを見る
己の読書史を塗り替えられた「犬の力」「ザ・カルテル」メキシコ麻薬戦争の金字塔三部作、その最終章。
まさか、ここであの人物が再登場かよ!(そして退場かよ!!)的な怒涛の展開もありつつの、これ以上無い復讐の連鎖が織り成す怒りと不穏な空気も健在。
ロス・ロホスという名が示す通り、メインの世代は息子たちに移るものの、ケラーを含め前世代もしくは前々世代からのレジェンドたちもバッキバキ。
ドナルド(ファッキン)トランプも、現実世界よろしくのクソツイート馬鹿野郎として出演。娘婿のジャレッド・クシュナーも疑惑のマネロン野郎として出演。てか、これどのくらいリアルなものとして見れるんだろうか。この作品がきっかけで失脚してくれんか、おい。
ただ、やはり前作から自己更新を果たしているのが、上巻ラストで描かれるグアテマラの少年の決死行。やっぱ、心臓を強く持たないと、読み切れんぞこれは、、と決意を新たにしてさて下巻。
投稿元:
レビューを見る
小説に圧倒されるというのはどういうことを言うのだろう。かつてドストエフスキーやトルストイの大長編作品群にぼくは確実に圧倒された。加賀乙彦の『宣告』に圧倒された。五味川純平の『戦争と人間』全9巻に圧倒された。船戸与一の『猛き箱舟』に、高村薫の『マークスの山』に、ジェイムズ・エルロイのLA三部作『ブラックダリア』『LAコンフィデンシャル』『ホワイトジャズ』に圧倒された。劇画でいえば白戸三平の『カムイ伝』に圧倒された。手塚治虫の『火の鳥』に圧倒された。そういう圧倒的なパワーに打ち倒されるような感覚を失って久しい。敢えて言えばアンデシュ・ルースルンドの『熊と踊れ』二部作がその類いだったろうか。
読者を圧倒する小説とは、壮大なスケール感を持つ骨太な物語でなければならない。阿修羅の如き悪と、神のごとき善とを内包する人間たちの運命のぶつかり合う軋みが聴こえるようなドラマでなければならない。壮大な構想で読者を牽引してくれる力がなければならない。それらすべての困難な条件をクリアして余りある作品が、ウィンズロウのライフワークと言ってもよい巨作が、実は本シリーズであり、完結作である本書だ。
シリーズ第一作『犬の力』が<このミス一位>、第二作『ザ・カルテル』が<このミス二位>(ちなみにこの年は『熊と踊れ』が一位だった)、そして第三作であり完結編である本書がこの夏登場となった。圧倒と言うしかない分厚さと重さと物語性を引っ提げて。世の読書子が心の底から待ち望んでいたような小説として。
メキシコ麻薬戦争をめぐる現代史を学ぶ機会はなかなかないだろう。このシリーズがなければ闇に葬られてたかもしれない暗黒の現実。コロンビア産の麻薬がメキシコを経由してアメリカ国境を渡るという単純な構図を見ると、生産利益、運搬利益、販売利益を目的とする反社会的な受益団体の存在が見えてくるはず。メキシコは運搬と販売を司る仲介利益に群がる組織間の戦場と化してしまう。一般人やジャーナリストの犠牲者を多く出した40年という長い暗黒史にメスを入れたのが、実はこのシリーズなのである。
麻薬捜査官のアート・ケラー、麻薬王アダン・バレーラ。二人の対立構図を描いた大河小説とも言える前二作を受けて、本書では第二世代の組織による新たな暗闘が幕を開ける。『ザ・カルテル』ではメキシコ麻薬戦争で実際に犠牲者となったジャーナリストに作品は捧げられていたが、本書では麻薬カルテルによって葬られたバス一台分の無辜の学生たちの実名が挙げられ、作品は彼らに捧げられている。
例えば2014年のケラーの嘆き。「メキシコではバスに乗った四十九人の学生が亡くなった。アメリカでは二万八千六百人がクスリで亡くなった。誰ひとり復活しない。おれにはやるべき仕事がやれていない」
「二〇〇〇年から二〇〇六年までは、とオブライエンはケラーに説明する。ヘロインの過剰摂取による死亡者数は横ばいで、一年に約二千人だった。二〇〇七年から二〇一〇年までは、約三千人に増加した。それから急激に増え始め、二〇十一年には四千人、二〇一二年には六千人、二〇一三年には八千人になった。」
��二〇〇四年から現在までに、イラクとアフガニスタンで失ったわが国の兵士の総数は七千二百二十二人だ」
「同じ期間に、十万人以上のメキシコ人が麻薬戦争で殺され、二万二千人が行方不明になっています。ちなみにこれはひかえめな数字です」
この数字の規模でシリーズは進んできたのだ。そしてケラーが取り組んできた長い麻薬との闘いの人生でもある。本書はその総括ともなる大作で、何と上下巻併せて千五百ページを軽く超える重量級のクライム小説である。凄い厚みと重みだが、それを読ませてしまう推進力こそが、ドン・ウィンズロウという作家の持ち味である。
それぞれの章に登場する複数主人公が良い。潜入捜査官として苦闘するボビー・シレロ。ビリー・ザ・キッドの異名を持つ殺し屋ショーン・カラン。グアテマラからアメリカへの国境越えを図る少年ニコと少女フロルの運命。そしてメキシコのファミリーたちのそれぞれの狂気の個性。またも犠牲になるジャーナリストの悲惨。前作までの覇者と死者とその子供たち。刑期を終えて再登場する古き麻薬王たち。
何よりも時代は変わり、ドナルド・トランプを思わせる新手の大統領がアメリカと現代とを掻き回す。麻薬戦争はメキシコからアメリカに移る。さらに過激に残酷になり地下に潜ってゆく薬物戦争に対峙するケラーの運命。
多くの人間の運命を乗せた重機関車のように物語は疾走する。ケラーのラストの法廷での証言が彼の辿った四十年を振り返る。まさに現代の『戦争と平和』と言える本シリーズ。できれば一作目『犬の力』から辿って頂きたい。そして本作の持つ圧倒的な力に、是非とも魂まで揺さぶられて頂きたい。
投稿元:
レビューを見る
読ませるなぁ〜、ウィンズロウ。集中して読み進めないと誰が誰だか状態になってしまう(笑。「犬の力」のアノ二人も登場とは!新しいニコの物語も気になる下巻へGo!
投稿元:
レビューを見る
「犬の力」「カルテル」に続く3作目。最近は後から追加されて全3部作、という作品が多い・・・
主人公ケラーが主人公なのは同じだが、前2作目とは趣が違う。今まではバレーラという強大な敵がいたわけだが、今回はバレーラ亡き後の跡目争いと乱立した組織同士の闘い、そしてDEAとの戦いとまさに三つ巴、四つ巴の闘いとなっていて、登場人物が今までにも増して多い。
それぞれの視点で描かれるので話の展開も目まぐるしいため、今一つ感情移入しにくい。
果たして後半、このドラッグウォーズはどんな展開に、そしてどんな決着を迎えるのか?
投稿元:
レビューを見る
多数の登場人物があり、それぞれの立場での視点で各種シーンが次々と描かれるので、シーンの切替わりが早く、最初は取っつき難い印象です。
ですが、物語が進むにつれ、画が返れている内容は、徐々に重みを増やしていき、読み手のこちらは話に引き込まれていきます。
某第45代アメリカ合衆国大統領みたいな登場人物がいるような気がしますが、たぶん、気のせいだと思います。
下巻で、どの様に話が進むのか期待です。たぶん、ハッピーエンディングじゃないんだろうなと思いながら。
投稿元:
レビューを見る
買ってある。読まなきゃ。
2023.02.23.『ザカルテル』をずいぶん前に読んだ。面白かったので、即、本作を購入しておいた。
本棚から出して読み始めたが心が踊らない。あらすじを改めて読むと、麻薬組織の抗争がテーマだったことを思い出す。なんか気が重い。思い切って売ってしまおう。買った本はなるべく早く読まなきゃこちら側の心境の変化でこの様になってしまうことが多い。気をつけようっと。
投稿元:
レビューを見る
シリーズ3作目。読み応えがあり前作より読みやすく感じるが面白さは相変わらず。
カランが出てきたあたりで三部作を最初からまた読み返したくなった。
上巻最後に出てきたニコが今後どう関わっていくのか気になる。
投稿元:
レビューを見る
面白い。最後の一章は本当に身につまされた。この闘いに終わりがあるのだろうか。
ハーパーコリンズさん出来れば3巻にして紙質を少し良くして欲しかった。
投稿元:
レビューを見る
ドラマのグッドファイトなどで見られたような現トランプ政権へ直接的な中傷が多く時事的な政治色の強さが合わなかった。トランプ政権が終わった後だと楽しめたかもしれない。
投稿元:
レビューを見る
登場人物もエピソードも多く、分厚い2冊で最初は怯んだが、意外と読みやすくあっという間に読了。3部作の完結編らしいが、ここから読んでも十分ついていけた。ノンフィクションかと思わせるほど、トランプをはじめ現実からモチーフを拾っていて、様々な登場人物がリアル。何人ものキャラクターの内面の厚みのある描写とテンポよいストーリー展開で飽きさせない。
投稿元:
レビューを見る
とうとう読了。三部作、大河小説。アートケラー気高い男、アダンバレーラ、寡黙な麻薬王。
ドンウィンズロウの筆致力。圧倒的な悪の現場のリアリティ。ラテン系美女たち。
投稿元:
レビューを見る
2021年3月25日読了。
上巻だけで765ページ、古い表現だが「超弩級」の長編。
本作だけではなく、「犬の力」「ザ・カルテル」も上下巻で長編だったが、最終章となる本作はさらに長い。
が、長さを感じさせない。
前作の最後にメキシコの麻薬王アダン・バレーラが死に、メキシコのシナロアカルテルは混迷の要素を含む。
DEA捜査官、アート・ケラーはなんとDEA長官に就任し、今までの方針を変更する。
時代は2014年から始まり、2016年の大統領選挙を視野に入れたストーリーが展開される。
メキシコカルテルの跡目争い、ニューヨークを舞台にした新たなアート・ケラーの作戦などあっという間に読み切ってしまう。(少し大げさですが)
投稿元:
レビューを見る
やっと上巻を読破。次の下巻は文庫本なのに800ページ以上。このシリーズを最初から読んでいるがとにかく登場するメキシカンの名前が覚えられない。しかも3シリーズ上下巻ずつでどんどん登場人物が累積される。しかもあだ名も出てくるしなぜかファーストネーム、ファミリーネーム入り乱れ。でもなぜかこのメキシコ麻薬戦争に引き付けられる。
投稿元:
レビューを見る
前作で、悪の化身を倒した。しかし地獄は地獄のままで、いや悪化していく。
実際のメキシコで発生した醜悪な事件が取り入れられており、人間の恐ろしさ、おぞましさが、これでもかと描かれている。
1作めの「犬の力」で唯一の希望の光だった、あの二人が登場する。