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- カテゴリ:小学生
- 発行年月:2009.10
- 出版社: あすなろ書房
- サイズ:21×22cm/30p
- 利用対象:小学生
- ISBN:978-4-7515-2529-6
紙の本
宇宙船プロキシマ号の伝説
宇宙船の中で生まれ、宇宙空間以外の風景をまだ目にしたことのない少年イカルス。目的地である恒星プロキシマには、知的生物の存在が確認されているが、地球から40兆キロメートルも...
宇宙船プロキシマ号の伝説
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商品説明
宇宙船の中で生まれ、宇宙空間以外の風景をまだ目にしたことのない少年イカルス。目的地である恒星プロキシマには、知的生物の存在が確認されているが、地球から40兆キロメートルもの距離があるため、イカルス自身がプロキシマの地を踏むことはない。しかし、イカルスの前に突然ブラックホールが出現して…。【「BOOK」データベースの商品解説】
地球から遠く離れた恒星で発見された知的生物と出会うため、何世代もかけて旅する宇宙船プロキシマ号。その中で生まれたイカルスは、自分の代でその地を踏むことはないはずだったが、突然ブラックホールが出現して…。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ブライアン・グリーン
- 略歴
- 〈ブライアン・グリーン〉ニューヨーク生まれ。オクスフォード大学で博士号取得。コロンビア大学物理学部教授。著書に「エレガントな宇宙」「宇宙を織りなすもの」がある。
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紙の本
超弦理論の第一人者ブライアン・グリーン博士の作になる、ちょっとトンデモ気味、『幼年期の終わり』調の少年SF文芸に、NASAとハッブル宇宙望遠鏡提供の写真で構成したスケールの大きな絵本。
2009/12/27 21:29
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る
『エレガントな宇宙』がベストセラーとなり、一般にも広く名が知られた超弦理論の権威ブライアン・グリーン博士の手がけた絵本です。本には関係ないですが、博士は、『ワープする宇宙』のみならずワープする美貌でも大いに有名になったリサ・ランドール博士とニューヨークの理数系名門高校で同級生だったということ。まだ40代の若き宇宙論の専門家たちが、これから一体どういう理論でどういう宇宙の謎を解明していくのかが非常に興味深いところです。
特にグリーン博士の方は、難しい理論を一般にも分かるように伝えていくのに熱心だということで期待の存在です。
本書もやはりその一環のようで、形は絵本の体裁にはなっていますが、現在までに分かっている「ブラックホール」の研究内容に基づく、少年SF文芸のような童話が書かれ、そこにNASAやハッブル宇宙望遠鏡によって提供された写真が添えられています。
写真の方は、何となく遠回しに物語の雰囲気を伝えているような……という印象なので、文章と絵の融合としての絵本の完成度で言えばいまひとつ感は否めません。しかし、文章と絵を分けて評価していくと、その価値は低いものではないので、「宇宙」「地球外生物」「恒星」「重力」などといった言葉の概念が何となく分かる小学生ぐらいの子どもから幅広い年代の人が、「ブラックホールがどういう特徴を持つものか知りたい」「宇宙の美しい写真を眺めたい」という興味で楽しめるかと思います。
ただ、ちょっと見方を変えると童話の内容に問題がなくはないので、読むにはそれなりの注意も必要なのではないでしょうか。ワープする知性が求められているのかもしれないとも取れます。
イカルス少年は、宇宙船プロキシマ号の中で誕生し、その中で死んでいくことを定められた少年です。やはり飛行には「イカルス」なのですね。
太陽に一番近い恒星プロキシマからの電波信号を解明したところ、そこには知的生物が存在していることが裏付けられました。人類は地球から40兆キロメートル離れているその星まで、探検隊を出すことになったのです。ところが、あまりに遠い距離なので、一代の人間たちだけでは、恒星プロキシマにはたどり着けません。
イカルスの曾祖父に当たる人物が隊長を引き受け、自分の子孫をその探検に捧げる決意をしたのです。5代目になったとき、探検隊は宇宙船の外に降り立つことができる予定です。
14歳になったイカルスは、もう100年飛び続けている宇宙船に乗っている自分のそのような運命について、つい先ごろ理解できるようになったばかりです。学校の勉強にすぐれた彼は、パイロットとしての操縦にも秀でていますが、宇宙船内部の世界しか知らない自分の生活に釈然としない感情を持っています。それもあって、地図にないブラックホールに宇宙船が近づいたときに、無謀な冒険を思い立ちます。
自分の設計した小型機でブラックホールに近づいてみたいと考え、計算を繰り返した結果、「行ける」と自分で判断し、船長の許可なく宇宙船の外に飛び出します。そして制止を聞かず、無線も切ってブラックホールに近づいていくのです。強い重力が時間も引っ張って伸ばしてしまうという、ブラックホールに向かって……。
SF作品を読んだ数は少ないのですが、ディストピアがよく舞台にされるSF小説の中にあって、ブラックホールについて説明をしたいがためとはいえ、設定がかなりのものだという印象です。理論物理学的には妥当であっても、人権団体の類いが火を噴き出しそうなディストピアの設定になっています。あるいは、この無茶苦茶な設定の何がどうおかしいのかを社会学的見地から考えるような機会を作ると、教育現場での活用も広がりがあるかと思います。
わが家でも、中学生男子を中心に、「結婚相手はどうなるのか。人工受精か、恋愛の権利はないのか」「どれだけ大きい超高速宇宙船なのか。学校はあるようだが、水や空気の供給はどうなっているのか、畑があるのか。殺菌しながら家畜も飼っているのか」などとトンデモ議論を楽しみました。40兆キロメートル離れた恒星の旅がどれほど無茶なことなのか、とてつもないことを知るには、良い設定なのかもしれません。
さらに、題名から、この冒険が「伝説」として語り伝えられている遥かな未来があるということが推察できますが、物語は、クラーク『幼年期の終わり』を思わせる壮大なスケールにさらに広がります。オーヴァーロードたちのような存在がいて、物語の終わりでは、彼らの超高度な文明から、古生物を眺めるような感覚でわが人類を眺める視座が待っています。結末と同じ見開きに、ブラックホールのミニ解説もついています。
つづいて各見開きに広がる宇宙の写真についてです。印刷物なので、原版からかなり色は落ちているかとは思うのですが、それにしても信じがたい色やきらめきの美しいショットばかりです。写真の説明は、巻末にごく短く添えられています。
巨大なブラックホールが存在すると考えられているNGC1672棒渦巻銀河や、太陽の500倍も大きいブラックホールがあると考えられているM82銀河、太陽の10億倍の質量のブラックホールがあると言われているソンブレロ銀河、宇宙の竜巻のようなもの、太陽の50万倍以上の明るさを持つ恒星など。きめが細かく、不思議な色の階調が再現されている写真で、眺めていると吸い込まれてしまいそうです。
繰り返しになりますが、ブラックホールの理解を深めるため、宇宙の美しい写真を眺めるために良い絵本、また宇宙の壮大さに思いをはせるために良い絵本かと思います。