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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2009.12
- 出版社: 現代企画室
- サイズ:20cm/216p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-7738-0910-7
紙の本
崩壊
著者 オラシオ・カステジャーノス・モヤ (著),寺尾 隆吉 (訳)
軍事政権、ゲリラ、クーデター、内戦、隣国同士のサッカー戦争—人びとを翻弄する中米現代史を背景に、架空の名門一族が繰り広げる愛憎のドラマの行方は?もっとも注目を浴びるエル・...
崩壊
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商品説明
軍事政権、ゲリラ、クーデター、内戦、隣国同士のサッカー戦争—人びとを翻弄する中米現代史を背景に、架空の名門一族が繰り広げる愛憎のドラマの行方は?もっとも注目を浴びるエル・サルバドル人作家の作品を初紹介。【「BOOK」データベースの商品解説】
軍事政権、ゲリラ、クーデター、内戦、隣国同士のサッカー戦争…。人びとを翻弄する中央アメリカ現代史を背景に、架空の名門一族が繰り広げる愛憎のドラマを描く。注目のエル・サルバドル人作家による作品。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
他者を理解することのむずかしさを史実を背景に描いた中米小説
2010/04/06 07:02
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
ホンジュラスの与党要人を家長とするミラ・ブロサ家。一人娘テティはエルサルバドル人のクレメンテと式を挙げて隣国サンサルバドルへ越していこうとしている。父エラスモはこの結婚に理解を示すものの、なにかにつけ激昂しやすい母レナは娘と年の離れた“共産主義者”との結婚を許すことが出来ない…。
物語は、娘の1963年の結婚をセリフ中心で戯曲風に描いた第1部、父娘の往復書簡によって1969年のサッカー戦争と1972年のアル中更生会クーデターを記した第2部、そして1990年代初頭をミラ・ブロサ家最後の使用人マテオの回想で綴る第3部で構成しています。
3部で構成立てられた物語が描くのは人と人との理解のむずかしさ。母娘の積年の確執はもちろんのこと、エルサルバドルとホンジュラスの国家間の争い、さらにはエルサルバドルの内戦と、少しずつ位相をたがえながら埋めがたく深い溝が描出されていくのです。
最も興味深く読んだのは第2部。リシャルト・カプシチンスキのルポ『サッカー戦争』(中央公論社)が記録した世界が、フィクションとはいえ、民衆史の視点から大変な緊迫感をもって描かれるのです。死と背中合わせの暮し、戦争の理不尽さ、兄弟国ともいうべき隣国同士の無理解。政治家や官僚、メディアと群衆が作り上げた息詰まる閉塞の事態に、妻であり母であるテティは打開の手立てを見いだせず、翻弄されるばかり。犠牲を強いられる市民の姿に、重いため息がもれます。
私が3度訪れるほど思い入れの強いホンジュラスをその隣国との痛ましい歴史と共に描いた小説が、こうして絶妙の日本語訳で読める時が来るとは思いもよりませんでした。
*流麗な日本語翻訳にひとつだけケチをつけると、「パナム七四七便」(107頁)は「パンナム七四七便」とすべきでした。今は存在しない米国の航空会社パンアメリカン航空(PANAM)は日本では「パンナム」の通称で知られていました。