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- カテゴリ:一般
- 発売日:2009/01/23
- 出版社: 彩流社
- サイズ:20cm/334p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-7791-1409-0
- 国内送料無料
紙の本
アフター・レイン
著者 ウィリアム・トレヴァー (著),安藤 啓子 (訳),神谷 明美 (訳),佐治 小枝子 (訳),鈴木 邦子 (訳)
アイルランドが生んだ現代最高の短編作家、珠玉の12編。行間ににじむ余韻で登場人物の意識の動きを描き切る—トレヴァー独特の心理描写が冴える。【「BOOK」データベースの商品...
アフター・レイン
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商品説明
アイルランドが生んだ現代最高の短編作家、珠玉の12編。行間ににじむ余韻で登場人物の意識の動きを描き切る—トレヴァー独特の心理描写が冴える。【「BOOK」データベースの商品解説】
アイルランドが生んだ短編作家、ウィリアム・トレヴァーの円熟期の作品全12編を収録。多弁を避け、行間ににじませる余韻によって、余すところなく登場人物の意識の動きを描くトレヴァー独特の心理描写の世界。【「TRC MARC」の商品解説】
アイルランドが生んだ現代最高の短編作家と評価される
トレヴァー円熟期の作品。
多弁を避け、行間ににじませる余韻によって
余すところなく登場人物の意識の動きを描き切る
作者独特の心理描写の手法で紡ぎだされた珠玉の12編。【商品解説】
目次
- アフター・レイン
- ●収録作品
- ピアノ調律師の妻たち…鈴木 邦子 訳
- ある友情…………………佐治 小枝子 訳
- ティモシーの誕生日……神谷 明美 訳
- 子供の遊び………………鈴木 邦子 訳
- 小遣い稼ぎ………………神谷 明美 訳
- アフターレイン…………神谷 明美 訳
- 未亡人姉妹………………鈴木 邦子 訳
- ギルバートの母…………安藤 啓子 訳
収録作品一覧
ピアノ調律師の妻たち | 鈴木邦子 訳 | 5−25 |
---|---|---|
ある友情 | 佐治小枝子 訳 | 27−54 |
ティモシーの誕生日 | 神谷明美 訳 | 55−79 |
著者紹介
ウィリアム・トレヴァー
- 略歴
- 〈ウィリアム・トレヴァー〉1928年アイルランド生まれ。トリニティー・カレッジ史学部卒業。教師・彫刻家・コピーライター等を経て文筆に専念。英国の名誉大英勲章CBE、KBEの叙勲を受ける。
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紙の本
隙を突かれたようにして、誰かに自分の愚かさや寂しさを指摘され、そのあまりの的確さにいたたまれない思いをすることがある。そういう的確な指摘をするように小説を書く、トレヴァーの残酷さが体の傷にしみて仕方ない。
2009/03/26 13:13
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ウィリアム・トレヴァーの短篇集を読んだのはこれで3冊めであるから、もしかすると、その3冊分の重みがいよいよのしかかってきたということなのかもしれない。
「残酷だ」と、「どれもこれも残酷な話だなあ」と、前2冊の『聖者の贈り物』『密会』で少しずつ強まってきた印象が、ひとしお身にしみた。切り傷に何度も何度も水がしみて仕方ないような、心の痛みよりもむしろ体の痛みとして体験したような、そういう感じが読後すいぶん経たのに残っている。これはいったいどういうわけなのだろうか。
作家が好んでいるのかどうなのかは分からないが、彼は「孤独な人」と「愚かな人」をよく書く(書くのに都合が良いから、繰り返し書くのだろうか)。登場人物の視点で書いていたはずなのに、それがいつのまにか作家自身の視点に転移してしまうような書き方をする。それなのに、その作家の視点からは価値判断がされたり感情が表現されたりしない。「くだらないことをしたものだ」「つまらない人間だ」「気の毒なことよ」「同情してやまない」などとは決して漏らさないのである。
「孤独な人や愚かな人を冷静に描写している」という言い方も当たってはいない気がしている。ただ単に描写しているのではなく、たとえて言うとこういう感じだろうか。
人は自分の愚かさや寂しさを薄々感じながら、それに薄眼をつぶって生活している。そして、他者の愚かさや寂しさなどを上から目線で見て、一抹の安心感を感じる。ストレスがたまっていたり、勢いづいていたりすると、意地悪な気持ちがぐうっと盛り上がってきて、目線だけでなく、相手を積極的に叩こうとする。だがあるとき、隙を突かれたようにして、誰かに自分の愚かさや寂しさを指摘され、そのあまりの的確さにいたたまれない思いをする。こういう的確な指摘をするのが、トレヴァーという作家の姿勢ではないかと考えられる。
客観的に分析しているだけではずるいのかもしれない。そういう自分はどうなのかを述べて私の立場を表明しておくことにするならば、私は自分の愚かさや寂しさを自覚しながらも、それらを肯定的に捉える者である。愚かさや間抜けさはかわいらしさにもつながるであろうと解釈して自分をかばい、寂しさや孤独は感性を育むものであるから、それを存分に享受すべきと考える。そういうことに自覚的であるので、人が肯定的に受け止めていない他者の愚かさや寂しさに敏感である気がしている。日常空間でそれをああだ、こうだと言えば角が立つし、意地悪な性格を助長してしまうので、意地悪さを去勢するために本を読むのである。
つまり、トレヴァーに同質なものを感じながら、彼が作者という立場で書いたものを、読者という立場で読んでいるのである。
この短篇集では、「家族」という小さな輪の中に表出した「残酷」がほとんどを占めていた。
「ピアノ調律師の妻たち」は、目の不自由な調律師を助け、彼の仕事のスケジュール管理や送迎をしながら、目に入る様々なものについて表現力豊かに説明していた最初の妻の働きが無に帰していく話。妻が彼に「見えるようにしてあげていたもの」を、後添えがことごとく否定していくような真似をする。
「ティモシーの誕生日」は、つましい老夫婦が長年待ち続けている、1年に一度の楽しみがふいになる話。夫婦は、自分の誕生日にだけ帰省する一人息子のために掃除をし、買い物に出かけ、料理を用意して待ちかねているが、そこに「今年は帰れない」というメッセージを持って男性がやって来る。身代りにもてなされる彼の気まずさが描かれる。
表題作「アフター・レイン」は、恋を失ったばかりで30代に突入した女性の休暇の話。彼女は、子どものころから知っているイタリアのホテルで長い休暇を持て余しながら、なぜ破局が訪れたのかを内省する。
「未亡人姉妹」は、結婚生活がうまく行かなかったまま一足先に夫を見送った姉が、最愛の夫を亡くしたばかりの妹の家で一緒に暮らすようになる話。住宅リフォームの二重請求詐欺に遭いそうになっている妹が、亡き夫の名誉のため凛とした決断をするのを見て、姉は同じ未亡人であるのに、大きな差を感じる。
「馬鈴薯仲買人」は身ごもった娘の不義を世間から隠し通すために、ある男性に父親役を務めてくれるよう契約を結ぶ、娘の母とその兄の話。子が小さい間は良かったが、子の成長ぶりを見て、不義の相手を愛していた娘は、本当の父親が誰なのか、真実を打ち明けようとする。
戦争や災害など、大きな不幸に見舞われてしまった人は別にして、ありふれた人生を生きる人には、それぞれ「いい時代」と「辛い時代」がある。その「辛い時代」にあるとき、人の愚かさはさらされ、孤独に対する姿勢が試されるのであろう。そう思えば、体の傷にしみてくるようなトレヴァー作品の残酷さは、雨をやり過ごすためのレインコートのフードのように感じられる。雨に叩かれる自分を感じさせられながらも、濡れることからはかろうじて守ってくれる。
充実した短篇集であったが、蛇足を付け加えると、脱字がいくつか見受けられる校正の不十分さがやや残念であった。
紙の本
アイルランドが生んだ現在最高の短編作家だそうで、、。
2011/02/03 01:27
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
かっちょいい装丁で四六版のハードカヴァー、
本屋で見つけたときから、読みたいなぁ、、でも、この作家、誰?とずっと思ってて、
調べてみたら、ウィリアム・トレヴァーって新潮クレストで「密会」書いた人じゃないですか!?。
「密会」なら、読んでないけど、知っているよ、、と(新潮クレスト好き)
いうことで、読んでみました。
帯とか、宣伝文句によると、アイルランドが生んだ、現代最高の短編作家だそうで、
その短編集です。日本オリジナル編集とかではないみたい。
作風としては、リアリズム、写実主義。無駄なものを殺ぎ落として、ざくざく書いていくタイプ。
しかし、小説内の登場人物は偉く作りこまれ、リアルで、
心情はあまり書いていないのに、その人物の想いは、読者に伝わる感じ。
完璧にシンクロしてわかったわけでは、ないけど、
(もう一つポイントがよく判らない短編もあるにはあった)
この作家が上手いのは、わかります。
一番、驚くのは、人間が抱える、微妙な気持ちってあるでしょ、
複雑な状況と過去からの積み重ねで感じる、それこそ、一言で、嬉しい、とか、怒ったとか、で
表現できないような、複雑に入り混じった"心情"、それをものの見事に小説という
ある意味状況を描き綴っていく散文で描いていることです。
逆に言うと、この複雑に入り混じった心情は、小説でしか、表現しきれないんじゃないか、、と。
「子供の遊び」みたいな、テクにたよったわりと軽めの作品もあるんですが、
概して、味わい深い作品が多いです。