極楽鳥全種 世界でいちばん美しい鳥 （ＮＡＴＩＯＮＡＬ ＧＥＯＧＲＡＰＨＩＣ）

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＜願わくは比翼の鳥となり、楽園に微睡まん＞


年末にテレビで極楽鳥の番組（極楽鳥 魅惑のダンスを追え！（NHK・地球ドラマチック））を見て、釘付けになった。
極楽鳥（Paradise birds）。天国の鳥と言う名を持つ彼らは、パプアニューギニアの山岳地帯に住む、非常にカラフルな鳥である。色彩の美しさは言うまでもなく、長く伸びた尾羽、針金のような飾り、スカートのように広がる羽毛など、種それぞれに特徴的な美しい姿を持つ。さらに彼らが特異なのは、凝った求愛ダンスをすることである。
そう、美しいのはすべて雄。姿が美しいのも懸命なダンスをするのも、雌を獲得せんがためなのだ。
この極楽鳥に魅せられて、パプアニューギニアを幾度となく訪ね、撮影・研究に打ち込む研究者と写真家が番組の主役だった。
探してみたところ、その書籍版ともいえる本書に行き着いた。写真家、ティム・レイマン、研究者、エドウィン・スコールズによる渾身の1冊である。
美しい数々の写真に、詳しい解説。巻末には極楽鳥全種が図鑑形式でまとめられている。
極楽鳥の生態を知るにも、写真集として楽しむにも、優れた１冊と言える。

極楽鳥はこれまでに３９種が知られる。
その羽の美しさゆえに、現地住民にも西洋人にも多数の鳥が狩られたが、奥深い森に住むこと、また羽が美しくなる前に雄は性的に成熟していることなどが幸いし、絶滅にまでは到っていない。
極楽鳥の各種はそれぞれが比較的限局された地域に住む。
レイマンとスコールズはナショナルジオグラフィックなどから資金を得て、８年の歳月を掛け、１８回の現地調査を行い、５１箇所の調査地点で、全３９種の野生状態での撮影に成功した。
どの場所を観測場所に選ぶか、いかにして身を隠しながら観察し、決定的瞬間をカメラに収めるか、そうした裏話も紹介されており、野生動物研究手法がどのようなものか垣間見られる点も興味深い。

極楽鳥の求愛ダンス（ディスプレイ）を見たらおそらく、誰もがほほえまずにはいられないだろう。あまりに懸命で、同時にヒトの目からは意味不明でユーモラスであるからだ。だが彼らは至って真面目で、それぞれのダンスにはそれぞれの種にしか通じないものがあるようだ。
本書の調査では、求愛される側である雌の視点からの撮影も試みられている。
極楽鳥のある種は地上で求愛行動を行い、ある種は樹上で行う。いずれの場合も雌が見ている方から見なくては、本当の「文脈」はわからないことになる。
雄はときに、羽を広げ、体をふくらませ、「変形」する。
地上でディスプレイする極楽鳥の１種であるオナガカンザシフウチョウの場合、地上から見ると、この様がバレリーナが付けるチュチュを広げたようであるため、「バレリーナダンス」と呼ばれていた。だが、雌は実はこれを上の枝から見下ろしている。この視点から見てみると、全体としてきれいな卵形となり、黒い羽の中央に胸にある飾り羽が映える形に見えることがわかった。

鮮やかなその色彩は、羽自体の色素のみによるのではない。
光の干渉によって変化する構造色（ｃｆ：『光と色彩の科学』）を使���種もあり、こうした場合には、見る方向によって色が多様に変化する。一見、黒一色に見えるものが、ディスプレイの際には鮮やかな玉虫色を呈すこともある。
また、果実の色素を摂取し続けることで白い部分の羽の色を黄色に保っている種もある。黄色と黒のコントラストが美しいジュウニセンフウチョウの学名の後半「melanoleucus」はラテン語で「白黒」を意味する。当時、ヨーロッパでは死後の標本しか入手できなかったため、黄色い部分の色が抜けていたのである。
「美」を保つのも楽ではないのだ。

極楽鳥の雄は育児には参加しない。彼らの労力の大部分は、雌を獲得するため、容姿を飾ること、求愛ダンスを磨くことに注がれている。そしてなるべく多くの雌を得ようとする、一夫多妻が基本だ。
雌は１羽で巣作りをし、卵を1個産み、1年に１羽の雛を１羽で育てる。それだけに雌の目はシビアだ。父になる雄は非常に厳選される。
極楽鳥の雄がこれほどまでに美しくなったのは、雌による選択圧のためとも言える。

こうした極端な求愛行動を可能にしたのは、豊かな森である。周囲に餌となる果実が豊富にあるため、求餌に割かれる時間はさほど要しない。であればこそ、雄は求愛行動を研ぎ澄ませる時間を持ち、雌は１羽で子育てすることができるというわけだ。

多種多様な彼らを守り育んできた深い森、険しい山岳地も、徐々に開発の波に揉まれようとしている。
彼らの懸命なダンスが途絶えることのないように、環境保全と開発のよきバランスが取られることを祈りたい。


＊『ホッキョクグマ』も極端な性的二型を取りますが、そういう種ってもしかして、一夫多妻の傾向があるのかな・・・？　そして同時に「イクメン度」が落ちる傾向がある、みたいな。印象だけですけれども。

＊形態が非常に特殊化されているというところでは『ツノゼミ』を思い出します。彼らは雌の歓心を得るためにそうなったわけではなさそうですが。

＊極楽鳥の尾羽を大事に集めて、雌に捧げる「あずまや」をきれいに飾るニワシドリというのもいるそうでして。キミ、それはどこか間違ってないか！？と思うのですが。
や、生きものって、おもしろいですねぇ・・・。

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いろいろやりすぎちゃって、若干取り返しのつかない感じになっている人が時々いるが、その鳥版。

交差点の信号機みたいなアカミノフウチョウとか、尾っぽが長すぎて飛ぶときどうすんだよ、という感じのオジロオナガフウチョウとか、それどう見ても邪魔だよね、というフキナガシフウチョウを見ていると、美しいというより可笑しい。空飛ぶマンガみたいなヒヨクドリとか、変形するカタカケフウチョウに至っては冗談としか思えない。ぼくは彼らを狙うカメラマンになるのは無理だ。笑い転げて木から落ちる。
しかしこれも進化の結果。クジャクの羽を眺めたダーウィンがぼやいたように、大自然のふところはこっち方向にもはるかに広い。なんとも楽しく、いとおしい。

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観応えあったあ～読み応えあったあ～
面白かったあ～
極楽鳥が住む、地上の楽園が永遠に残りますように(祈)

現在確認されている39種の極楽鳥すべての写真集、野外調査に基づいた科学的な解説書、探検の記録
西洋人で初めて実際に極楽鳥を目にした伝説的な博物学者あフルレッド・ラッセル・ウォレスの話しも交え、極楽鳥の生息域である特異な環境のニューギニア島の成立ち
6種の極楽鳥
(アカミノフウチョウ：頭頂部に剥き出しの青い地肌、ワイヤーのような尾羽
シロハタフウチョウ：肩から生えた長い「旗」のような飾り羽
ベニカザリフウチョウ)
がニューギニア島以外の島にのみ生息し、独自の進化を遂げている。ニューギニア島が地球上でもまれなほど複雑な地質学のホットスポットであるため
熱帯雨林調査地での生活の仕方
樹冠からの撮影の仕方(木登り、足場)
ニューギニアの環境保全について
極楽鳥の雄の型破りな行動(求愛ディスプレイ)や外見の多様性は、雌に選ばれるため!!
雄の若鳥のディスプレイ練習
人類と飾り羽

巻末に図鑑(QRコードの記載があるものは映像がみれる)

●お気に入り●
91p 1800年代のウォレス著『マレー諸島』にある、ベニフウチョウの挿絵と2004年11月24日に50m上の樹冠で撮影されたベニフウチョウの写真
時を超えたベニフウチョウの絵と写真に感動した!!
126～127p 雌の視点(舞台上の小枝)からみる、カンザシフウチョウのディスプレイ「バレリーナダンス」
154p コウロコフウチョウの嘴の中の黄色の鮮やかさ!! 翼の形
156～157p フキナガシフウチョウ
166～167p ジュウニセンフウチョウの「ワイヤー」は脇腹にある黄色の羽の軸が長く伸びたもの
(映像)
https://www.youtube.com/channel/UCZXZQxS3d6NpR-eH_gdDwYA
Birds-of-Paradise
フキナガシフウチョウ
ワキジロカンザシフウチョウ
126～127p 雌の視点 オナガカンザシフウチョウ
タンビカンザシフウチョウ
ジュウニセンフウチョウ
シロハタフウチョウ
カタカケフウチョウ(サイケ調の笑顔マーク)
コウロコフウチョウ
オオウロコフウチョウ 動いている時の音がいい!!(笑)
チャイロカマハシフウチョウ 機関銃のような大きな鳴き声で、第二次世界大戦中の日本軍が敵軍の待ち伏せと勘違いすることがあったらしい
アオフウチョウ 目の上下の白色が特徴的で一番気になるやつ