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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2009.5
- 出版社: プロダクション・エイシア
- サイズ:13×19cm/127p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-903971-01-8
紙の本
フィンランド・森の精霊と旅をする
著者 リトヴァ・コヴァライネン (著),サンニ・セッポ (著),柴田 昌平 (訳),上山 美保子 (監修)
【もっとも美しい本賞】ふたりの女性写真家がフィンランド各地に残る古い木とその歴史を訪ねる。15年にわたる長い道行きをへて彼女たちがファインダーの向こうに捉えたものは…。木...
フィンランド・森の精霊と旅をする
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商品説明
【もっとも美しい本賞】ふたりの女性写真家がフィンランド各地に残る古い木とその歴史を訪ねる。15年にわたる長い道行きをへて彼女たちがファインダーの向こうに捉えたものは…。木々に刻まれた記憶を掘り起こすTREE PEOPLEの旅の記録。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
リトヴァ・コヴァライネン
- 略歴
- 〈リトヴァ・コヴァライネン〉ヘルシンキ美術デザイン大学修士課程修了。Tree Peopleプロジェクトを行う。
〈サンニ・セッポ〉ヘルシンキ美術デザイン大学修士課程修了。Tree Peopleプロジェクトを行う。
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紙の本
心をとらえて離さない写真がいくつも…
2009/07/05 09:20
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 なおこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
心をとらえて離さない写真がいくつもあった。
ふたりの女性写真家がフィンランド各地に残る古い木とその歴史を訪ね歩いて、まとめた一冊だ。
そう、この表紙からして、なんともいい。
熊と気持ち良さそうに抱き合っている白いドレスの女性。
これまで感覚的にはあまりぴんとこなかった、私の愛読書・川上弘美さんの『神様』の世界が繰り広げられている…そう気付いて、とても嬉しかった。
木と緑を愛するすべての人へと、冒頭に書いてある。フィンランドとは、こんなにも木と森にあふれたところだったのかと、しみじみ思った。そしてムーミンの生まれた国だものなぁと、大いに納得した。
なんとも心弾む写真は、マヤと呼ばれるフィンランドの子どもたちが作った樹上の隠れ家。この小屋でひと晩じゅう子どもたちだけで過ごすこともあるそうで、そんな子ども時代を送った人は幸せだなぁ~と。
次から次へと紹介される木の様子に圧倒される。
見事というほかない。
大きく枝を広げ、大地にどっしりと根付き、その傍らで人々が心から安心したようにくつろいでいるさま…。
木が語りかけているなと感じる。
人と木が共に生きているなと思う。
木のそばに椅子が置いてあった。
その椅子に座りたいなぁとつくづく思った。
この本はフィンランドで「もっとも美しい本」賞に輝いた本だそうで、NHKのスペシャル番組「世界里山気候・フィンランド・森・妖精との対話」が原点なんだそうだ。
面白いなと思ったのは、フィンランドには「すべての人の権利」という習慣があって、それは森を散歩したり、スキーをしたり、キノコやベリーなどを森の恵みを享受する権利は、土地所有者が誰であっても、すべての人に与えられる権利だというもの。まだ私が子どものころ、近所の田んぼに自由に出入りしてレンゲを摘んだり、おたまじゃくしを捕まえたり…そんな懐かしい出来事を思い出した。今だったら、これはどなた所有の田んぼなのかしら?という思いが先にたって、とてもそんなことできないよな~とも思いながら…。しかし、現在のフィンランドではその「すべての人の権利」を享受できる余地がだんだん少なくなってきているともあり、古きよき時代は共通なのかなぁ~とも。
「トゥリー・ピープル。木の民である私たちの根が、枯れることなく生きのびていってほしい。そうすれば、私たちには希望に満ちた未来が与えられることでしょう。森、丘、川は、たんなる森、丘、川という物質的存在を超えたものなのです。」あとがきの言葉がしみじみ心に残りました。
紙の本
「向こう側の世界」とつながる扉
2009/05/16 00:26
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:wildcat - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、NHKスペシャル「世界里山紀行・フィンランド・森・妖精との対話」の原点となり、
フィンランドで「もっとも美しい本」賞に輝いた「Puiden kansa(Tree People)」の日本語版で、
番組の制作を手がけたプロダクション・エイシアが発行している。
プロダクション・エイシアは、ドキュメンタリーや映画を制作する
プロダクション会社で、出版ははじめて。
訳者・柴田昌平氏は、ドキュメンタリー映像作家である。
とにかく映像の原点となったこの本を日本に紹介したいという気持ちであふれている。
本の公共的価値には自信があるからと図書館に目を向けていることが、
原点を図書館学にもつ者としてうれしい。
本書は、次のような構成になっている。
1 神話の森へ
2 森の精霊
3 木と人はつながっている
4 カルシッコ
5 熊と、森の王
あとがきにかえて フィンランドの森と人の歴史
フィンランドの木と森を訪ねるための地図
章題を見て、どんな写真があるか、
どんなことが表現されているすっきりわかった、
というよりも不思議感が増したのではないかと思う。
ここでは、なんだろう!?・・・という言葉は、
あえて説明せず、本編にお任せすることにして、
以下、私の思うところを綴っていきたいと思う。
表紙には、純白の衣装を着た女性と彼女を抱く熊。
彼女の指には結婚指輪。
熊の首から上はよく見えない。
フィンランドの神話では、熊は森の支配者であり、「森」そのもので。
祖先は熊と少女の恋愛によって生まれたと伝えられているのだとか。
人は森に抱かれていて、森の方がはるかに深く大きな存在であることを
表紙の写真は伝えてくれているように感じた。
印象に残ったのは、聖なる森「ヒーシ(hiisi)」のこと。
ヒーシは、神聖な木立で、この森では1本の枝を切ることも、
ひと粒もベリーの実を摘むことすらも許されなかったのだという。
小さな岩山、山の頂は絶壁、近くには湖や池があり、
小川も流れているような場所。
成功や幸せ、健やかであることへ導いてくれる祖先がいる
「向こう側の世界」と私たちとをつなぐ扉だったのだと。
森の精霊はどこから来たの?
どこから?
そんなことを尋ねるとは
おまえはなんておろかなんだろう
森には森の精霊 水には水の精霊
家には家の精霊がいるんだよ
この精神は、八百万の神様がいる日本に近いところがある。
一神教のキリスト教と相容れなかったのもわかる。
でも、そのキリスト教でも、フィンランドの人と森との関係を
完全に断ち切ることはできなかったのだ。
フィンランド語の「森」を表す言葉
「メッサ(metsa(aはウムラウトつき))」は、
「境界」を表すのだそうだ。
メッサは、「すべての方角に限りなく広がっている奇妙な領域で、
人間の意志には従わない、自身の方と力をそなえて」いて、
「人がその境界を渡るときには、森の精霊たちの名を唱え、
数々の儀式をおこなって」いた。
人の力が及ばなかったメッサは、地上であって、
地上ではなかったのかもしれない。
全部わかり支配できるとは思わないで、
どこかに力の及ばない場所があると思い続けていた方が、
人は謙虚でいられ、
自分のできるだけをやったらあとは執着せずに手放せる。
そのようにしなやかに、楽に生きられるのではないか。
人は、ある選ばれた木と、特別な関係を持ち、
木に起こったことは、木と結ばれた人にも起こるという捉え方も興味深い。
すべての家の庭にあったという守護の木。
ひとつひとつが人と同じように違う顔をしている。
一族の木の下に集う家族達。
木も家族だったのだろう。
木の下に静かに置かれている椅子。
そこに座って考えをめぐらすのが家族の日常なのだろうか。
写真の中なのに「私の木」があるような気がした。
「ヒッカ・キンヌネンさんと庭の木(トウヒ)」と書いてあるその写真。
その木の下で何かを書いているくつろいだようすの彼女。
木の顔がなんともいえない。
そして、この詩。
あなたの腕の中に
あなたの抱擁の中に
あなたの深遠な部分に
あなたの膝の間に
あなたの心の中に
腕の中に、抱擁の中に、膝の間に入ってしまうような大きさなのに、
一番深いところに棲みついちゃうんだ。
きっとこれは、そういう本。