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商品説明
日本の美術教育にとって石膏像とは何だったのか。19世紀末から20世紀末までの間に、日本の西洋画教育で石膏像が果たしてきた役割を、教材としての石膏像と、制度としての石膏デッサンの両側面から論じる。〔初版:三重大学出版会 2016年刊〕【「TRC MARC」の商品解説】
美大受験生たちの血と汗と涙の結晶
「石膏デッサン」とは、何だったのか?
石膏像を巡る苦闘の歴史がわかる、石膏デッサン研究の決定版!!
美大受験をする者なら誰もが経験する石膏デッサン。とりわけ美術予備校において、その描画メソッドは時代とともに進化を遂げており、短期間の集中的な修練で見違えるほどの優れたデッサンを生み出すことができるようになっている。しかし、いざ美術大学に入ってみると石膏デッサンは不当な扱いとされているのも実情である。教授によっては、「石膏デッサンの技術は、創作活動には有害だ」とすら指導する。美大受験に必須であった「石膏デッサン」は、大学では一転不要なものとされ、学生はその狭間で立場を問われる。
はたして、石膏デッサンは必要なのか? こうした議論は、教育者側からも作家側からも続いてきたが、いまだにその決着を見ない。「石膏デッサンは、制作における基礎体力をつける筋トレである」とか「ものを見る力をつけるにはこれほどいい教材はない」という肯定派がいる一方で、「石膏デッサンは、アカデミズムの悪しき因習で、自由で創造的な創作活動を阻害するものだ」「技術はもはやアートには必要ない」という否定派の意見も根強い。
本書の目的は、こうした膠着状態にある石膏デッサンへの言説を、その受容からいま一度振り返ることで、有効な議論へと発展させ、より構築的な美術教育史の理解を進めることである。前半の1章から3章で石膏像について論じ、後半の4章から6章で石膏デッサン教育について論じるという構成をとっている。そのなかで、これまで正体が不明とされてきた石膏像のオリジナル彫刻、日本における石膏像収集の歴史、近代と現代での石膏デッサンの違い、日本で石膏デッサン教育が普及した経緯、などの様々な事象を明らかにする。
これらの議論を通じて、石膏像の100年を、絶えざる価値観と制度の変転の中で繰り返し新しい定義を与えられてきた流動的な歴史として再定義し、日本における西洋文化の受容が、単に「進んだ」西洋の価値観を日本に不完全に移植したものでなく、その曲がりくねった歴史で構築された、対話的で越境的な石膏デッサン言説の生成過程であることを示していく。
不毛な「石膏デッサン是非論」の先にある新たなアートの創造のためにも、これまであまり日の当たらなかった「石膏像と石膏デッサン」について深く掘り下げることで、近代の美術教育が遺してくれた蓄積を反芻する試みである。教育者はもちろんのこと、美大受験を控えた受験生、さらには日々制作と向き合うアーティストに読んでもらいたい。
※本書は、2016年に三重大学出版から刊行された「石膏デッサンの100年」の改訂版である。初版300部という刷部数ということもあり数ヶ月で完売となったが、その後再販の予定もなかった。しかし、同書を届けるべき人がまだ世に多くいることを考え、アートダイバーにて改訂版を制作し、引き続き販売を続けることとした。改訂版の販売を快諾してくれた三重大学出版にこの場を借りてお礼を申し上げる。【商品解説】
目次
- 序
- 問題の所在
- 西洋画教育の中の石膏像
- これまでの研究
- 本書の射程
- 1章 パジャント胸像とは何者なのか
- 2体のベレニケ胸像
- 「バシャント」から「パジャント」へ
- 2章 美の規範としての石膏像
- 古代美の規範としての石膏像
著者紹介
荒木 慎也
- 略歴
- Shinya Araki
1977年名古屋生まれ。東京藝術大学美術学部芸術学科卒業。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。2013年に博士(学術)。東京大学教養学部国際ジャーナリズム寄付講座特任助教を経て、現在は成城大学、多摩美術大学、武蔵大学非常勤講師。専門は近現代美術史、美術教育学。
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紙の本
日本の美術教育を考える上での必読
2020/08/17 10:46
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひな - この投稿者のレビュー一覧を見る
色々刺激を受けるいい本でした。アートって何?美大って何?ということを考える上で、こういう制度論的トピックは不可欠だなあ、と改めて考えさせられました。実証研究に基づいて書かれた価値ある本だと思いました。