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商品説明
1930年代半ば、京都で刊行された反ファシズム文化運動の記念碑的な出版物、『土曜日』。その編集・発行名義人であった斎藤雷太郎への聞き書きを通して、『土曜日』とその時代を描き出す。『京都新聞』掲載等を単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
日本が戦争へと突き進もうとする1930年代半ば、京都で『土曜日』という週刊新聞が刊行された。1年4カ月という短い刊行期間にもかかわらず、『土曜日』は民衆への志向を持ち、人間への信頼を語りつづけた新聞として、戦後、研究者らから「日本における反ファシズム文化運動の記念碑的な出版物」と賞賛された。
その編集・発行名義人である斎藤雷太郎は、小学校を4年で中退し、職人をへて映画界へ転出したものの、役者としては無名の大部屋俳優で終わった人物である。そんな彼がなぜあの「暗い時代」に身の危険を冒してまで自ら新聞を発行しようとしたのか。知識人が書く新聞ではなく「読者の書く新聞」を目指したのはなぜか。
最後まで「貧乏人に対する裏切りができなかった」斎藤雷太郎という人物への聞き書きを通して、『土曜日』とその時代を描き出す京都新聞長期連載の書籍化。
連載終了当時、複数の出版社から書籍化の話が提案されたというが、この時点では中村は出版に同意しなかった。それからも機会あるごとに書籍化がすすられたが、話は進まないまま30年余りの歳月が流れ、そしてようやく出版化に向けての話し合いが始まった矢先の2019年1月、中村は病によってこの世を去った。今回の書籍化に力を尽くしたのは、近現代史研究者の井上史、『古都の占領』などの著作で知られる西川祐子、そして中村の後輩である元京都新聞記者の永澄憲史である。それぞれ中村と親交があり、本書刊行のためにチームを組んだ。
斎藤雷太郎が映画界に入るきっかけともなる関東大震災が起こった1923年から、『土曜日』が公権力により廃刊を余儀なくされる1937年前後までの日本社会を熟視すると、市民に不自由を強い、戦争につながっていく出来事に嫌でも目が留まる。そして私たちは、2011年3月の東日本大震災以来、あの時代と相似形のような時代の流れが日本で続いていることに気づく。
斎藤の次のような言葉を私たちは重く受け止めなければならない時代にいるのではないだろうか。
「権力に対する憎しみ、ですねえ。この気持ちは今でも同じですよ。力をもったものの偽善性。人間がどこまで悪くなるかという一つの見本ですよ、権力をもったものが腐敗する過程は……」
「自分でいうのもおかしいけど、私は事業をやれる人間だと思っているのですよ。新聞をやっていたら、おそらくやれた。でも、総会屋のような人間になっていたかも知れない。映画にいたときでも、もう少し要領よく監督につけ入って、月給の十円や二十円あげることはできたと思うが、見栄でそれはできなかった。それが人間の誇りというものではないかな、それをやらなかったということは。私の人生をふりかえって結局、貧乏人に対する裏切りができなかった、ということだと思う」【商品解説】
目次
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- “反新聞記者”中村勝──序にかえて 永澄憲史
- 第1章 週刊新聞が京に
- 1 反ファシズム運動の記念碑 週刊新聞が京に/2 わが〝出世〟のあと/3 ウデに自信あった……/4 阪妻プロから松竹へ/5 トーキーの幕あけ/6 ズボラ組の有力者/7 昼食は京大の食堂/8 撮影所に自炊の煙/9 先生、アップを頂戴/10 フィルム工場の職工/11 ズボラ組の大見栄/12 一緒にはい上がる/13 モデルは『セルパン』/14 府庁新聞係のおどし/15 力づけてくれた人/16 夢見る思いの第一号/17 伊丹万作らも寄稿/18 お古の写真凸版使う/19 「有保証」新聞へ突進/20 ついに道が開けた/21 「善意の人々」の存在/22 休刊も赤字もなく/23 志育てた少年時代
- 第2章 職人から役者へ
- 24 読者の書く新聞/25 庶民の発想から/26 転々の少年時代/27 初めて見た映画/28 十三歳で奉公に/29 丁稚をやめ職人に/30 転機のきっかけに/31 すでに月給70円も/32 明治座で芝居見物/33 花井お梅事件の事/34 満20歳の記念写真/35 通行人役で舞台へ/36 開ける未来信じて/37 伊井一座で働く/38 決断直後に大震災/39 伊井一座を離れて
著者紹介
中村 勝
- 略歴
- 〈中村勝〉1940〜2019年。山口県生まれ。同志社大学経済学部卒業。京都新聞編集委員。著書に「京都みちくさの景色」「ほんやら洞と歩く京都いきあたりばったり」など。
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