紙の本
カタツムリから見る進化
2022/12/28 11:59
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投稿者:レムロム - この投稿者のレビュー一覧を見る
カタツムリは進化の研究に適した生物である。本書はそんなカタツムリ研究の第一人者が書いた、進化論の歩みを見つめる本と言えよう。
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歌の話が少ないのが残念。
2017/08/14 11:12
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投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
カタツムリの研究を通して進化の研究の足取りをたどる。
ダーウィンの進化論のころからカタツムリを研究していた人の話から、日本のカタツムリ研究まで。歴史をたどる話は、しばしば登場人物の紹介のようになる。本書も少しそんなところがあるので、歴史や人名が苦手な方には少し読みづらいところかと思う。読み物としては「退職教官の最終講義」のような雰囲気で、さらりと読むには面白くないが、少しでも興味があってじっくり読めばヒントや含蓄がある。
カタツムリの殻のように、進化論も螺旋を描いてきたと著者は言うのだが、思想一般、人間の思考一般にも言えることかもしれない。螺旋のように思える事柄は沢山ある。単純に人間が「螺旋」にひきつけられる理由がどこかにありそうだ。
タイトルはハワイの民間伝承からきているらしい。実際にはどんなものが「カタツムリの歌」として受け取られたのか。タイトルからひきつけられたので進化論よりもそちらの方が知りたかったという読後感である。
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カタツムリと侮るべからず。
2020/09/01 15:36
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投稿者:ら君 - この投稿者のレビュー一覧を見る
カタツムリの進化に限っても、話題が尽きない。そして、進化論や環境保全、はたまた研究者どうしの論争と、さまざまな切り口から読み進めていけた。
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出版社の紹介ページ:
http://iwnm.jp/029662
森山和道さんの書評(日経サイエンス 2017年9月号)
塚谷裕一さんの書評(読売新聞2017.8.6)
http://www.yomiuri.co.jp/life/book/review/20170807-OYT8T50064.html
海部宣男さんの書評(毎日新聞2017.8.6)
https://mainichi.jp/articles/20170806/ddm/015/070/005000c
佐倉統さんの書評(朝日新聞2017.8.27)
http://www.asahi.com/articles/DA3S13104597.html
鎌田浩毅さんの書評(プレジデント 2017年9月4日号)
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ここで明らかになった多様性の本質は、正解が一つではないということだ。重力の問題を解決するためにカタツムリがとった戦略は、平たくなること。塔のようになること。どちらも正解だ。問題が捕食者への対抗であってもこれは同じ。殻を持つという制約のもとで、捕食者の出現は、それを解決するための複数の正解、すなわち複数の防御戦略を導く。戦略の多様性と形の多様性が生まれるのである。(p.151)
カタツムリは遠い昔、生物が多様化のゲームを開始してまもない時期に、海に住んでいた祖先が得た性質に、ずっと生き方を縛られてきた。ナメクジのように殻ごと制約を脱ぎ捨てた者を除けば、カタツムリの生き方は殻を背負うことに制約される。ところがその制約ゆえに、環境への適応や捕食者との戦いの中で、多彩な殻の使い方、形、そして生き方の戦略が生み出される。制約ゆえにトレードオフが現れ、それが偶然を介して創造と多様性を産む。(p.159)
サイエンスの生態系で行なわれている営みの一つは、真実を知ること、理解することを賭けた戦いである。偶然と必然がせめぎ合い、役立つものとすぐに役立たぬものが密接に関わり合い、その中でさまざまな仮説が生まれ、世代を超えて受け継がれ、拘束され、融和し、データに照らしてテストされ、淘汰されてきた。もしその営みの歴史に気づかぬ誰かが、誰かの役に立つものだけに肩入れすることがあれば、サイエンスにもその外側の世界にも、厄災が訪れるだろう。(p.198)
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題名に惹かれて読み始めたが,副題にあるように進化と歴史の物語そのもの.カタツムリ研究に絞られてはいるが,全ての生き物に当てはまる命題.ダーウィンに始まり,宣教師ギュリックの気の遠くなるようなカタツムリ研究から綿々と続く進化の謎に迫る攻防.いろいろな学説,繰り返される理論,難しくはあるが,興味深いものだった.
出来れば,系統樹やマイマイの写真も添付して欲しかった.
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https://mainichi.jp/articles/20170806/ddm/015/070/005000c
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生き物は本当に美しいと思う。単純であればある程美しいと思う。全てに意味があって、無駄がなく、残酷で。恋矢の話は印象に残った。
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これは熱い!進化論の最前線の議論で、カタツムリ類がここまで大きな役割を果たしていたとは!これまでに無い視点で進化論の歴史を語るこの本は、知的興奮に満ちている。生物系に詳しくないので分化のレベルの議論が途中でややこしくなってしまったが、再読したい
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「歌うカタツムリ」という題名なので、カタツムリの本と思いきや、カタツムリはたくさん出てきますが、主題は進化論の話しですね。そしてこの本、何と言ってもとても面白い。まるで小説のような感じです。
本の帯で「歴史とカタツムリはよく似ている」とありますが、正にその通りです。進化論はあっち行ったりこっち行ったり、くるくる回って、どこへ行くんだろう?でも最後は絡み合って1つのところへ到達するのかもしれませんね。
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進化を決定づけるのは環境への適応なのか、運や偶然に類するものなのか。新たな発見があるたびに揺れ動いてきた、その研究史はカタツムリのような螺旋を描く。
カタツムリ(マイマイ)の研究がその焦点になってきたという、その歴史を概観する一冊。
「歌うカタツムリ」はかつてハワイにいたと伝えられる。そのハワイのカタツムリ研究が歴史の始まりだった。しかし、ハワイでも、ミクロネシアでも、小笠原でも、研究の対象になったカタツムリは外来種によって絶滅状態に追いやられたという話がエンディングに控えている。
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ちっぽけなカタツムリの殻の色や形にも人間の解けない謎がある。それを探求する人間たちとハワイや日本、カリブ海、ヨーロッパ、いろいろな場所でさざめくカタツムリたちの進化の歌声が作り出す、カタツムリの殻のような理論の進歩。その歌声がかんたんに消えてしまうものであることも一つのテーマであろう。
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☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB23794458
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著者は速水格のお弟子さん。カタツムリはあくまで手段と言ってるけど、やっぱりこれはカタツムリの本だよなあ。でも進化研究の題材にカタツムリがよく使われていることはわかった。グールドもだよ!
それにしても1人で何十年もコツコツと何万匹ものマイマイを採取分類するヒト達。その執念ってか情熱ってスゴい。まあ、絶滅した種もあるってことだけど、それって採取し過ぎで…ってことはないよね?まさかね。
あと、右巻きの貝と左巻きの貝はうまく交尾できないとか、右巻きの貝しかうまく食べられないヘビがいたりとかで、意外に巻きの向きが重要なのには感動した。
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生物学の本格的な啓蒙書を読み解くには、専門用語や立論手法に関する独特の難しさがある。本書も例外ではない。まぁ生物学に限った話ではないのだが。
さて、本書は、ダーウィンに代表される適応説と、ギュリックに代表される非適応説が対立しながら発展していく、弁証法的な生物進化論の歴史が綴られる。
7章 貝と麻雀での、古生物学者の速見格の弟子たちのカタツムリの生態の解き明かしがおもしろい。進化の過程が体感できる。
最後には、役に立つことの単面性とも言うべきカタストロフィが静かに伝えられる。
この本を読むと、同じ千葉さんが文を起こされた絵本『カタツムリ小笠原へ』の学術的な意識の高さと子供たちに伝えたいメッセージが明確に分かった。
※26ページに及ぶ参考文献が岩波書店のWEBにある
https://www.iwanami.co.jp/files/hensyu/science/029662-references_1810.pdf