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紙の本
検証迷走する英語入試 スピーキング導入と民間委託 (岩波ブックレット)
著者 南風原朝和 (編)
2020年度実施の大学入試共通テストから導入される民間スピーキングテスト。拙速・強引な政策決定のプロセス、成績評価のあり方、高校教育や入試全体に及ぼす影響など、その危険性...
検証迷走する英語入試 スピーキング導入と民間委託 (岩波ブックレット)
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商品説明
2020年度実施の大学入試共通テストから導入される民間スピーキングテスト。拙速・強引な政策決定のプロセス、成績評価のあり方、高校教育や入試全体に及ぼす影響など、その危険性を多角的に検証する。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
英語入試改革の現状と共通テストのゆくえ | 南風原朝和 著 | 5−25 |
---|---|---|
高校から見た英語入試改革の問題点 | 宮本久也 著 | 26−40 |
民間試験の何が問題なのか | 羽藤由美 著 | 41−68 |
著者紹介
南風原朝和
- 略歴
- 〈南風原朝和〉1953年生まれ。東京大学高大接続研究開発センター長、大学院教育学研究科教授。日本テスト学会副理事長。専門は心理統計学、テスト理論。著書に「心理統計学の基礎」など。
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紙の本
土壇場で延期が決まった民間試験導入、本当の問題は何なのかを専門家が解説
2019/11/19 02:54
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投稿者:あられ - この投稿者のレビュー一覧を見る
2019年11月1日に導入延期が発表された、大学入試の英語民間試験。2020年度(21年春の入学者の受ける試験)からの実施を当面(4年間)延期するという判断を決定的にしたのは、直接的には「格差」を正当化する文部科学大臣の発言(失言)でしたが、実はこの民間試験導入という「改革」には、ずっと以前から、英語・英語教育の専門家の多くが異を唱えていました。本書は民間試験導入の何がどう問題なのかを、5人の専門家が、それぞれの持ち場から解説した小論集です。
端的にまとめれば、導入されることになっていた試験は学科試験としてどうなのか、また大学入学試験としてどうなのかといったことが、丁寧に検討された一冊です。結論としては、平易な言葉でいえば「新制度はとても使えるような代物ではない」ということになるかと思います。
「日本人は英語をしゃべれるようになる必要があるので、この入試改革はよいことだ」と信じている人々の間でときどき見られる誤解ですが、この「改革」に反対している人々は、「4技能」に反対しているわけではありません(例えば「英語はしゃべれなくても問題ない」と考えている人はいません)。そうではなく、「4技能の能力を測定する」と標榜しているはずの試験が、到底そんなことはできないような代物であることを指摘しているのです。自動運転車だといって市場に投入されたものが、自動運転どころかまっすぐな道路をまっすぐに進むこともろくにできないようなものだったら、誰でも批判するでしょう。英語入試で起きているのは、そういうことなのです。「自動運転なんて危険だ」ということではありません。
11月1日に延期決定となったあと、週刊文春、週刊新潮、アエラと雑誌媒体で次々と新聞報道以上に中身の濃い報道がなされましたが、現在、それらを読んでからこのブックレットを読み返すと、点と点が結ばれるようです。
編者の南風原朝和さんは文科省の会議に専門家として参加して見てきたこの数年の紆余曲折(突然英語試験の取り扱いが一変するなどしてきたこと)を解説し、続く第2章で都立高校の校長である宮本久也さんが今の高校ではどういうふうに英語を教えているかという点から今回の「改革」の問題点を指摘しています(「改革」推進論者の多くが、20年も30年も前の学校英語をイメージして「だからダメなんだ」と言っていることと照らし合わせて読むべきでしょう)。
第3章は京都工芸繊維大学教授で英語試験の開発などをしてこられた羽藤由美さんが、対象も目的も異なるいくつもの民間試験にひとつの基準を当てはめることの無理さかげんを丁寧に解説し、第4章では東京大学大学院教授で英文学者の阿部公彦さんが英語が「しゃべれる」ということが過大評価されていることの問題点を、平易でわかりやすい言葉で論じています。最後の第5章では東北大名誉教授の荒井克弘さんが専門家として長年関わってきた文科省の「高大接続」について、具体例を多く盛り込んで説明しています。
この本を通じて、問題は1人の大臣の失言ではないということがよくわかります。このまま「延期」ではなく「中止」という結論に至ってもらいたいと、心から思います。「変えるべきことを変えないのは、テストを受ける側の利益に反する」(羽藤さん、本書54ページ)のです。