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人権と国家 理念の力と国際政治の現実 (岩波新書 新赤版)
著者 筒井 清輝 (著)
【石橋湛山賞(第43回)】【サントリー学芸賞思想・歴史部門(第44回)】今や政府・企業・組織・個人のどのレベルでも求められる「人権力」とは。人権の普遍化の歩みをたどり、内...
人権と国家 理念の力と国際政治の現実 (岩波新書 新赤版)
人権と国家
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商品説明
【石橋湛山賞(第43回)】【サントリー学芸賞思想・歴史部門(第44回)】今や政府・企業・組織・個人のどのレベルでも求められる「人権力」とは。人権の普遍化の歩みをたどり、内政干渉を嫌う国家が自らの権力を縛る人権システムの発展を許した20世紀の国際政治の逆説を解説する。【「TRC MARC」の商品解説】
今や政府・企業・組織・個人のどのレベルでも必要とされるSDGsの要・普遍的人権の理念や制度の誕生と発展をたどり、内政干渉を嫌う国家が自らの権力を制約する人権システムの発展を許した国際政治のパラドックスを解く。冷戦体制崩壊後、今日までの国際人権の実効性を吟味し、日本の人権外交・教育の質を世界標準から問う。【商品解説】
今や政府・企業・組織・個人のどのレベルでも必要とされるSDGsの要・普遍的人権の画期的入門書。【本の内容】
目次
- はじめに
- 第1章 普遍的人権のルーツ(18世紀から20世紀半ばまで)――普遍性原理の発展史
- Q.人権理念や制度はいつ生まれたものなのか?
- 1 他者への共感と人権運動の広がり
- 2 二つの世界大戦と普遍的人権の理念
- 第2章 国家の計算違い(1940年代から1980年代まで)――内政干渉肯定の原理の確立
- Q.なぜ国家は自らの権力を制約する人権システムの発展を許したのか?
- 1 国際政治のパラドックス
著者紹介
筒井 清輝
- 略歴
- 〈筒井清輝〉1971年東京生まれ。スタンフォード大学Ph.D.取得(社会学)。同大学社会学部教授、同大アジア太平洋研究センタージャパンプログラム所長、東京財団政策研究所研究主幹などを務める。
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人権理念の現実
2023/01/30 15:23
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:見張りを見張るのが私の仕事 - この投稿者のレビュー一覧を見る
普遍的人権の観念の成立から国際政治の中でどのように人権システムが発達していったのかを説明している。
普遍的人権のルーツは他者への共感から始まっているという。奴隷貿易撤廃運動、女性の権利運動、遠く離れた異国の地の他者への苦しみへの共感が社会を動かす運動になっていった。労働運動はマルクス主義の文脈で語られることが多かったが、経済的に困窮する他者への苦しみの共感と言う点で通じるるものがあると言う。
世界人権宣言として人権の理念は一つの結果を結ぶのだが、では国際政治の中での取り組まれ方はどのようなものであったか。人権と一口に言ってもその意味する領域は多岐にわたる。結論から言えば各国は自国に都合のいい人権理念には賛同するものの都合の悪い部分は無視する態度を取った。アジア、アフリカ諸国は白人中心主義やヨーロッパ帝国主義への反発から、民族自決権や人種の平等については人権の名の下に支持したが、民主主義が未発達な中での独裁的な政治体制による人権侵害については内政干渉だとした。
冷戦期では米ソの対立においては互いに相手を人権の名の下に批判するという応酬が見られた。ソ連はアメリカの人種差別、経済格差を批判し、アメリカは市民権、政治権の抑圧を批判するといった構図である。人権は大国間政治の批判の道具として使われていたのだが、高次の理念としての人権は尊重すべきものとして扱われており、反って国際規範としての人権の地位は高まっていった。
国際人権の取り組みがどれほど人権侵害を防げたのかについて、天安門事件やコソボ紛争、ルワンダのジェノサイドなど、防げなかった部分もある一方で、東ティモール等の成功例も挙げられている。
人権実践も外からの押し付けでは成功しない例としてFGMが挙げられている。先進国の視点から後進国の風習を野蛮で遅れたものと一方的に見做す視点では現地の反発を招きうまくいいかないと言う。植民地時代のケニアではイギリス人がFGM撤廃運動を行ったが、遅れた現地人の野蛮な風習を上から矯正するという態度でのぞんだためにこれが現地人のナショナリズムに油を注いで独立運動につながったとされる。一方で中国の纏足撤廃運動では域共同体のリーダー自身が改革の必要性を痛感して多くの賛同者が得られた。地域住民の全体を味方につけるような根回しが必要で、人権実践は根気強くやっていく必要があるのだとうかがえる。
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国家による人権侵害に国際社会がどこまで人権を守れるか
2022/05/09 21:09
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雑多な本読み - この投稿者のレビュー一覧を見る
ロシアがウクライナに侵略を行い、戦闘員間の戦いだけで終わらず、市民が次々と巻き込まれている。戦争は最大の人権侵害であるという言葉を現実に示している。この人権侵害に対し、国際連合や国際社会が無力と感じた人も多いであろう。
しかし、国際連合や国際社会は、人権侵害すべてに対して無力であると決めつけるのも早計であろう。
本書は、この問いに答えてくれるし、理論的にも現実面でも多くの示唆を与えてくれる。
もちろん、人権侵害は国家だけでなく、企業を始めとする組織体や個人でも発生しているが、大規模で、かつ犯罪に問われにくい人権侵害は国家が引き起こした事例は多い。
本書の構成をみると、
第1章 普遍的人権のルーツ を探る。過去、人権という概念が乏しい時代があり、第一次世界大戦、第二次世界大戦を経て、人権理念や制度が明確になってきたことを示す。このあたりは、多くの人が感じていることだろう。特に第二次世界大戦でで、反ファシズムで連合国軍が結束し、多くの人の支持を得て、枢軸国が敗北していく。それだけでなく、世界中の植民地では、権利意識に目覚め、独立していく国家が増える。まさに人権の世紀が始まったといえる。
第2章 国家の計算違い で、第二次大戦後の国家が構想していたことと違う事態が発生する。偶然ではなく、必然として。国家は他国や国際社会からの人権侵害という批判に対し、内政不干渉と反発し、受け付けようとしなかったが、この理屈が通用しない時代を生み出しつつある。欧米の考え方の押し付けという反発がありながらも、内政干渉を肯定する原理が確立してきた。
第3章 国際人権の実効性 という人権を擁護すべきという理念と現実のギャップがある。ウクライナ侵略で人権を守れていない現実があるが、これまでの歴史を見ると国際連合や国際社会が動くことで、人権擁護が進んだ例も多い。現実にできたことや出来ていないことが明らかにされる。当然、現在の課題も明らかにされる。
第4章 国際人権と日本の歩み で、日本は人権に鈍感な社会と言われるが、ご指摘通りという面と日本国内での先進的な取り組みを紹介し、内政や外交での人権力アップを呼びかける。
社会が経済的に低迷し、ポピュリズムが抬頭、国際的、国内的に逆風が吹いる時代があっても、歴史的な流れを筆者は読み込んでいる。
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人権につき 覚悟できるが 日本について 甘すぎる
2023/03/23 21:43
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:清高 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1.内容
現在において、国家において人権に問題があれば、国連人権理事会や人権条約を根拠とした機関による勧告がなされ、法的拘束力はないとされるものの一定程度の影響を与えている(筒井の言葉によれば「内政干渉を認める」(はしがき3ページ))。いかにしてこのようになったかを、人権思想から説明した本である。どこの国も自国が批判されることは嫌なので、冷戦期において東西陣営がお互いに人権状況を批判するということをし、その結果国際人権状況が高まるという「パラドックス」が起こる一方、いわゆる先進国の押し付けであるとして、いわゆる発展途上国が人権について反発するという状況も起きているし、いわゆる先進国におけるバックラッシュも起こっている。このような状況でも、国際人権は漸進的に発展しておくと筒井は総括する。
2.評価
(1)まず、本書は全ての人に必読と思われるので、5点を基準とする。自国のみならず、他国の人権状況に関心を持つことが大事であることを、数ページ読んだだけで筆者が体感できたからである。本書読後は、他国の人権状況に無関心ということは許されない(もちろん自国もだが)。
(2)しかし、以下2点を批判することによって1点減らし4点とする。
ア. 俗にいう「民主主義」や「リベラル」と「権威主義」に分けているが、筆者が、例えば「コトバンク」で調べた限りではよく分からなかった。
イ. こちらの方が肝心だが、日本について甘すぎる。第4章において筒井は日本を概ね肯定的に評価するが、例えば、筆者が関心を持っている慰安婦問題についていえば、日本が国際人権を尊重しない状態なので(2016年の女性差別撤廃員会の見解に従った形跡はない(だから日本の報道では韓国が約束を守らないとされている)。藤田早苗『武器としての国際人権(略)』p.243)。それのみならず、日本が国際人権に関して不誠実なことが、藤田の本にいくつか書かれている。藤田の本レベルのことを筒井が調べていない、または、知見を得ていないとすれば問題である。
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外集団に対する共感
2023/02/07 16:11
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:とめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
人権の普遍性原理の発展と内政干渉肯定原理の展開の歴史を、空虚な約束のパラドックス、違法だが正義の介入、安保理常任理事国の拒否権などの現状を踏まえ、哲学的・倫理学的議論が展開されている。