紙の本
チャグムとともに海を渡る
2008/07/18 15:15
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:菊理媛 - この投稿者のレビュー一覧を見る
シリーズを通してそうだったと記憶している(未確認ごめん!)のだが、この作品の「目次」の次のページに「地図」があり、次に「登場人物紹介」がある。こもまではファンタジーならママある構造かもしれないが、さらに次のページには「用語集」が載っている。
国が違えば言葉が違う。言葉が違えば当然独自の名詞があって然るべきという、この当たり前のことが、ちゃんと整えられているあたりが、このシリーズのリアリティを強力にバックアップしているように思う。「ヨゴ語」については、この物語の世界に慣れ親しんでいる読者ならば、すでに自分たちの世界でも使われている言葉を話すかのように、自然に読めてしまうかもしれない。しかしながら、「タルシュ語」は今回が初見である。であるにもかかわらず、私のファン心理の成せる業ならまことに恐縮ながら、「砂漠」や「山脈」に当てた言葉などは、いかにもそれらしく、なにか土台にしている原語があるのだろうかと思ってしまうほど「それらしい言葉」が当てられている。世界観として実にすばらしい。
しかしながら単語はともかく、話す国民が変わるたびに別の言葉で語られるわけにもいかないので、当然のことながら物語りは日本語でつづられる。それでも、その中でちゃんと「ヒョウゴが、クルーズの挨拶をヨゴ語になおすのを聞きながら、」というように、通訳が入っていることをさりげなく、話の筋にまったく邪魔にならない体を保ちながら、うまく言語の使い分けが表現されている。
話を目で追いながら、読者はストーリーとともに、その情景から異国情緒を味わえるような、実に巧みな文章で、あたかも外国を旅しているような感動をチャグムとともに体感しているようで楽しい。
また、人物描写についても、一人一人の人格が鮮明で、それぞれに魅力的だ。どうして一人の人間が、これほど多重の人格を操れるものかと不思議に思いながら読み進める。不都合なことや、痛い思いはなるべくしたくない私などは、こういう話は逆立ちしてもあみだせないなと、読みながらつくづく思った。
登場人物は、それぞれにとても個性的で各人に魅力があり、その描かれ方も鮮明でわかりやすい。たとえば、タルシュの第二王子(ラウル)の馬番の男など、この王子が馬から下りる場面で、まさにチラっとしか出ないのだが、その寸の間の行動や態度で、この男の置かれた状況、さらにいかに馬主であるラウルに恐怖を感じているかを表現することで、ラウル王子がいかに恐ろしい男かが読者に十分伝わってくる。しかしながら、ただ「恐ろしい」というだけでなく、この王子は(好き嫌いは別として)非情に優れた男である事も感じさせる描かれ方である。
今回、初登場のなかにも、今後のシリーズでも活躍するのだろうなと思わせる人物も何人か思い当たるが、そういう素人想定をはるかに超えて、このドラマは最終話に向かって漕ぎ出してゆく。
「がんばれ!」と、これ以上がんばれないほどがんばっていると思いながらも、声をかけたくなるような物語だ。
紙の本
チャグムの未来に幸あれ!
2019/02/07 14:55
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投稿者:ぱぴぷ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「チャグム、そんなこと言ってはいけないわ!」とか「そんなにパッと色んなことが理解できて、賢い子ね、チャグム。さすが皇太子ね。」などと思いながら読んでしまう。バルサの話だけでも十分面白いが、チャグム目線の旅人シリーズの存在で、この守り人シリーズがさらに厚みを増している。チャグムのこれからが気になり過ぎる!
紙の本
引き込まれました!
2016/09/30 12:08
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投稿者:eri - この投稿者のレビュー一覧を見る
本当に、みずみずしい物語だと思います。読み直していると、当時は圧倒されたのか、読み飛ばしたのか、気が付かなかった所にも目に留まります。ジンの『子どもの夢だ…』という思いにもはっとさせられました。
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食事のシーンのおいしそうな表現とか、海の表現など想像するだけでワクワクできる。
いよいよ後編に入ってきて、チャグムが、新ヨゴ皇国の皇太子としての自分と、自由になりたい自分とのあいだで揺れ動きつつ成長していく姿を、素直に描いていて面白かった。
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宮廷の混乱に乗じて,攻めてくるタルシュ軍――たぶん,サンガルとタルシュがともに攻めよせてくるだろう。その危機の中でチャグムは弟を即位させてラドウ大将をなだめ,摂政となって,ラウル王子との交渉をはじめる……。
その段階で降伏すれば,それ以上,国を戦火で苦しめることはない。
(あとは,枝国となって,ロタやカンバルを攻める手先となるのだ。けっきょく,民は隣国を攻める長い戦にかりだされる。ロタやカンバルが降伏して,枝国になったあとも,ヨゴ人は憎まれ続けるだろう。)
青い空に,ゆっくりと雲が動いていく。
チャグムは,まぶしそうに目を細めて,天を見つめた。
(そんな未来……けっして,民にあたえぬ。)
壁の上の地図を指さして,あれはおれの獲物だと言いはなったラウル王子の顔を思い出すたびに,胸の底から,煮えたぎるような怒りがわきあがってくる。
北の国々は,地図の上の空白などではない。多くの人々が,それぞれの思いを胸にいだいて,いまも生きているところだ。それらを――そのすべてを,獲物扱いされてたまるものか。
(ラウル王子,わたしはけっして,あなたに屈しないぞ。)
(本文p.344-345)
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実は守人シリーズより旅人シリーズが好きです。
いや、どっちもとっても面白いけれど。
チャグムの可愛らしさに枕をバンバンたたき
成長したチャグムのかっこよさに
「おまっ・・・!ばか!」とまた枕をバンバンはたきました。
惜しむらくは妹の存在である。
ぜひシスコンチャグムを。
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旅人シリーズの2作目。
聡明がゆえに疎まれ、皇太子という立場から逃げることも許されず、国同士の争いの渦に巻き込まれていくチャグム。まさに少年から青年への挟間、変化の時にある姿も描かれています。話の内容も、一冊読み切り色が強い前作とは違い、次の守り人シリーズ本編に大きく繋がっていてドキドキします。
続巻への期待が否応無く高まるラストです。
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このシリーズ読んでると、あらためて生きるってすごいなって思う。
草に違った効能があること、海には潮の流れがあること。
草の実や魚をとって、それを食べて生きているということ。
笑うこと、泣くこと。なんかもうすべて。
チャグムー……
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守人シリーズは全部好きなのだけど・・・
〈蒼路の旅人〉は守り人シリーズの中で一番好きな物語。
チャグムが成長してゆく物語に感動します!
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購入から時間も空いてしまい、実は天と地の守り人1巻が出ていますw
まだ文庫では発売しておりませんが。
さてさて、旅人シリーズということで、主人公はチャグムです。
バルサメインの守り人と違い、皇太子ということもあり、政治向きな話も出てきますね。ずいぶんとチャグム成長しております。
作中の中でも、流石に渦中に放り込まれただけあり成長を見せておりますね。シュガの教育もあるものですが。
すでにハードカバーでは完結しているのでご存知かと思われますが、今回の巻は守り人シリーズとしてもかなり終盤になります。
今までは、舞台や登場人物たちの繋がりはあるものの、独立したひとつの物語としても成立しておりましたが、こちらの話は、天と地の守り人に続く物語となっております。
国を守るために、チャグムが一人旅立つところで終わりを迎えているために、この話を読んだだけでは、え、どうなるの?
となってしまいます。
まぁ、天と地の守り人も3部構成なんですが…。
今までは国同士の戦争というものは無かったのですが、ずいぶんときな臭い展開になっております。
まぁ、新ヨゴなんてぶっちゃけ国力たいしてなさそうですけどね。いざ戦争になれば落とすのは容易いでしょうよ。そうした事実に直面したチャグムが、どう国を守るのか。そうした葛藤が描かれています。
終始、チャグムは悩んでおりますね。
アニメで大人気らしいジンも活躍しておりますw
ジン頑張れw
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守り人シリーズ第7弾!
旅人なのでチャグムが主役(バルサ一味は出演なし)ですが・・・
本当チャグムは若干15歳の少年なのに、考え方は大人顔負けです
こうゆう帝(総理)がいればもっと日本もよくなるのではないだろうか?
自分のことは後回しで民のことを思ってくれているのが本当に伝わってくる。
そしてよいよクライマックスに突入!!天と地の守り人三部作にうつります。
国を想い民を想ったチャグムは行方不明となる。さてよいよバルサ一味の登場だ~~~!!
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「旅人」ということで、守り人シリーズの外伝(シリーズ通しでは7冊目)。
チャグムが頑張ってます!
今後の展開に目が離せません。
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ああ面白かった。こんなに本に没頭したのは久しぶりです!
この本を手に入れた当初は、国の行く末が中心の話であることと、バルサが出てこないことが理由で三分の一ほど読んだ所で放置していました。
ところがもう一度最初から読み返してみたら、もう止まりません。一晩で読破しました。
今回のお話は国と国との駆け引きという重厚で複雑な物語なので、守人シリーズのような幻想的で不思議な世界観は、あまり前面へ出ていません。
しかし、だからこそ、このシリーズの綿密に組まれた勢力図や国の特色などの設定が、蒼路の旅人で十分力を発揮していると思います。
しかも、相変わらず丁寧で優しさを感じる文章で心地よいです。もちろん食べ物もおいしそう!
チャグムは大人になった私が過去に捨ててきたいろんな物を持ったまま、大人になろうとしています。捨てた物から目を背けた私には、大いに怒り、悩むチャグムがまぶしく映り、時には心をえぐられる気分になります…。
帝に疎まれ命を狙われようとも、それでも父を死なせたくないと願うチャグムは、本当は父の愛を欲しているのでしょうか。心優しき皇太子に、ツアラ・カシーナの加護がありますように。
あー、完結してから読んで良かった!続きが気になる!
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チャグムは新ヨゴ皇国の皇太子という立場にありながら、父に疎まれ、宮廷では孤立しがち。
頼りのシュガは星読み博士で教育係ですが、国のために働くには、チャグムだけに荷担するようなそぶりを見せるわけにはいかなくなっていきます。
南方の大国・タルシュ帝国の脅威が迫り、サンガル王国から救援の依頼が。
罠と知りつつも、かって訪問した縁もあって、救援に行きたいと望んだチャグム。
捕虜になり、タルシュ帝国の圧倒的な力を見せつけられます。
チャグムを護送するタルシュの密偵・ヒュウゴはタルシュに征服されて衰退したヨゴ皇国の出身。チャグムには見所があると感じるヒュウゴ。
舟の上で、次第に心通わせる二人ですが…
バルサに鍛えられてきびきびと働くことが出来て、ぞうきんを絞るのが上手だったりするチャグム。
生き抜く道はあるのか?
絶望的な状況の中でも、まわりの人を惹きつける素直な若さが光ります。
背はだいぶ伸びてきたけどまだほっそりした体格という。清新な10代の少年が成長していく様子が、いきいきとみずみずしく描かれています。
ええ?という所で終わりますが…
さあ、次はバルサも出てくるのかな…?!
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ホントにまぁ、このシリーズの著者、上橋さんとは何とすごい人なんでしょうか!! シリーズが進むにつれ小さな国の大きな世界(サグ & ナユグ)の物語から大きな世界の膨大な世界の物語にどんどん広げていくその手腕にまずは脱帽です。 これまでの作品はシリーズもの・・・・と言いつつも一話完結型の物語でしたが、今作は完結しきらずに To be continued..... という雰囲気たっぷりで著者は筆を置いています。 次への期待感を煽るだけ煽ってここで筆を置き、これに続く「天と地の守り人」が3巻編成。 そりゃあ、これだけ世界を広げちゃったら1冊ですべてをまとめることは不可能でしょう(笑)。
バルサが主人公の「守り人シリーズ」の外伝扱いで、チャグムが主人公の「旅人シリーズ」が描かれているわけですが、「精霊の守り人」ではひたすら守られるだけだったチャグムが着実に成長し、「旅人シリーズ」ではバルサ・タンダ・トロガイからのある種の「親離れ」をし、「守られるだけではない男」に変貌しようとしています。 まして今号では「皇太子という立場」からさえも逃れられるなら逃れたいと考えていたチャグムが「皇国を担う者」という自覚に否応なく目覚めさせられ行動を起こすのです。 父・帝との確執、超大国・タルシュ帝国の野望とこの賢いながらも清廉さを保ち続けている優しい青年がどんな活躍をしてくれるのか楽しみであるのと同時に、彼の置かれた過酷な環境にエールを送る気持ちよりも「もういい加減幸せになって欲しい・・・・」と思ってしまうのは女子供の感傷でしょうか?
(全文はブログにて)