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商品説明
【城山三郎賞(第1回)】戦後、半世紀にわたり死刑囚と向き合い、悟りを説いてきた、ある僧侶。死刑執行にも立ちあう過酷な任務に身を削りながら、誰にも語れなかった懊悩。人は人を救えるのか…。僧侶の遺した言葉を積み重ね、事実を浮き彫りにする。【「TRC MARC」の商品解説】
2009年『死刑の基準』で、第32回講談社ノンフィクション賞、2011年『裁かれた命』で、第10回新潮ドキュメント賞、2013年『永山則夫―封印された鑑定記録』で、第4回いける本大賞をそれぞれ受賞。人が人を裁く意味を問い続け、高い評価を得てきた著者が、新作では、ある一人のベテラン教誨師の人生を追った。
許されざる罪を犯し、間近に処刑される運命を背負った死刑囚と対話を重ね、最後は死刑執行の現場にも立ち会う、教誨師。過酷なその仕事を戦後半世紀にわたって続け、死刑制度が持つ矛盾を一身に背負いながら生き切った僧侶の懊悩とは。
一筋縄ではいかない死刑囚たちと本音でぶつかりあい、執行の寸前までその魂の救済に向かおうとする教誨師の姿――。執行の場面では「死刑とは何か」「人を裁くとは何か」「人は人を救えるか」について深く考えさせらる。力作ノンフィクション。【商品解説】
目次
- 序章 坂道
- 第一章 教誨師への道
- 第二章 ある日の教誨室
- 第三章 生と死の狭間
- 第四章 予兆
- 第五章 娑婆の縁つきて
- 第六章 倶会一処
- 終章 四九日の雪
著者紹介
堀川 惠子
- 略歴
- 〈堀川惠子〉1969年広島県生まれ。ジャーナリスト。ドキュメンタリーディレクター。「死刑の基準」で講談社ノンフィクション賞、「裁かれた命」で新潮ドキュメント賞、「永山則夫」でいける本大賞受賞。
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書店員レビュー
「死の現場」から逃げてはいけない
ジュンク堂書店三宮駅前店さん
戦後、半世紀にわたって死刑囚と向き合って教誨師を務めてきた
一人の浄土真宗の僧侶についてのノンフィクション。
死刑囚の心を開き、親鸞の「悪人正機」をもって
浄土への往生を説こうとするが、一筋縄ではいかない。
そして、やっと死刑囚が心を開きかけ、
光が見えてきた矢先に死刑執行という容赦ない現実が襲い掛かる。
自身が教誨を務めた死刑囚の死刑執行の現場
(つまり死刑囚が殺される現場)にも立ち合う。
普段語られることのない死の現場が、淡々と語られる。
声高に死刑について論じることもなく、犯罪について責め立てることもない。
ただ、教誨師の目から見える「死」をじっと見つめ、「救い」の難しさを浮き彫りにする。
「死刑」という言葉だけを取り出すと、
いとも簡単に論じることができてしまうけれど、
実際の「死の現場」は本当に限られた一部の人を除いて、
誰も見たことがない。
この捻り出すようにして出てきた告白をゆっくりと
自分の中で反芻しなければ、「死」を語ることはできないと思う。
「彼の告白をどう受け止め、どう生かすかは、
死刑執行の現場を見えない手で支えている私たちひとりひとりに
託されたものであり、それぞれが痛みを共有し、
思いを深めていくことだろうと考えています。」(あとがきより)
「死の現場」から目を背けて「死刑」を語ることはできない。
店長 藤井
教誨について語り尽くした
ジュンク堂書店池袋本店さん
教誨師とは、宗教者として死刑囚との面会が許された唯一の民間人である。拘置所内で死刑囚と対話を重ね、死刑執行の瞬間にも立ち会う。そんな過酷な職務を半世紀に渡って勤め上げるも、マスコミに対しては沈黙を貫いていた住職、渡邉普相が、自らの死後に公開という約束の下で、教誨について語り尽くした。
面接の内容を細かく記録し、密かに保存していた教誨日誌。そこに記された言葉によって、死刑囚ひとりひとりの物語が見えてくる。自分を捨てた母を怨んで殺した者、一合の酒を飲むため看守を殺して脱獄した者、加害者であるのにも関わらず、動機に固執するあまり、被害者意識を持っている彼らを、静かな心境に至らせ、ひいては心からの反省を生じさせるため、渡邉は根気強く説き続けた。
渡邉が老年になり、アルコール中毒という自らの疾病によって、心身が立ち行かなくなったとき、死刑囚とのくだけた会話によって救われる場面がある。死を突きつけられた人間に対して、悪人正機の教えを説いて「救い」を与えることは難しいが、このようにして心を通わせることはできる。それこそが教誨という仕事なのだ……と、もがき苦しんだ末の答えが語られるところが、本書の白眉のように思う。死刑存廃の議論の前にまず、こういった心の問題に目を向けるような、寛容な社会であってほしい。
(評者:ジュンク堂書店池袋本店 実用担当 土居)
紙の本
人間を考える
2018/05/11 11:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:怪人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
死刑囚の教誨師として活躍した浄土真宗僧侶、渡邉普相の物語である。本来、教誨師の職務上、守秘すべき死刑囚とのやりとり等に関して、自分の死後発表するという条件で、教誨師としての活動を振り返り、著者に語っている。公表するに当たって当然ながら著者によって種々配慮がなされており、発表する価値は高いと思う。
日常、市井の人間には知ることも経験することもできない、小説を越えるような世界の展開に驚くばかりだ。著者は死刑、死刑囚に関する著述が多く、造詣も深いので、挿入された関連事項の補足説明や論考はなるほどと納得させられる。死刑囚でなくとも、人間にはそれぞれにとってドラマチックな展開をもつ人生があるだろうし、多くの物語が生まれてきたのだろうと思う。著者は一握りかもしれない人々の人生の最期、戦争による死と法律による罪としての死という双方に向き合った人間として、僧侶の生涯を印象深く描いている。
死刑制度そのことを問うものでもなく、死刑執行現場の苦労、関係者の深い苦悶などを知り、人間の存在、人生の最期などについて考えさせられる内容である。
紙の本
多くの人に是非とも読んでいただきたい。
2015/08/28 09:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:奈良の大仏 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日々、途切れなく色々な凶悪事件が起こってマスコミで報道されるが、その裏側では、表にでることがなかった複雑な事情があり、それを丁寧に世に知らしめる内容だと思います。
完全な善人はほとんどおらず、また完全な悪人もおらず、その人の人生の何かのきっかけで悪くなってしまったのであり、また逆に、何かのきっかけで良くなることも有りうる。最終的には個人の選択にはなるが、周りの環境も影響も大きいので、そういう意識で社会や人を見ていくことも大切だと思われます。
紙の本
ホンモノ
2015/11/19 21:52
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:テラちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
教誨師というのは、すごい仕事だなというのが第一印象。本物の宗教家も凄いし、本物のノンフィクションライターも凄い。文学の中のこの分野、とかく話題性のあるもの、刺激的なものに飛びつきたがる傾向があるが、本作は死刑囚の最後と向き合う宗教家を真摯に捉えていて、だから、ホンモノの凄さを感じる。教誨師の誨が、戒でないことも理解できた。