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商品説明
【小説現代長編新人賞(第12回)】噺家・桂文枝からお笑いの世界へ誘われた新撰組隊士・濱田精次郎。寄席はいろんな人間が出入りする情報の宝庫。何かが転がっているかも…。精次郎が迷い始めたところへ、長州藩士とつながりがありそうな芸妓が現れ…。【「TRC MARC」の商品解説】
新撰組の新参隊士・濱田精次郎が旧知の噺家・桂文枝と再会し、寄席の舞台に立つよう勧められる。最初は固辞した精次郎だったが、寄席という場所にはいろんな情報が入り乱れていると聞かされ、手柄を立てるきっかけになるかもしれないと迷い始める。そうしたある日、一人の芸人が寄席を笑いの渦に巻き込んでいるのを目のあたりにして衝撃を受けてしまう。それは長州藩士とつながりのありそうな元芸妓の松茂登だった……。
慶応三年、京四条の河原町――鴨川の河原には葭簀張りの見世物小屋が建ち、川沿いには劇場の幟がはためている。その光景はつい最近新選組に入隊したばかりの濱田精次郎の目には嘘くさく映っていた。サムライたちが夜ごと血で血を洗っている激動の時代にしてはあまりにも平和に見えるからだ。その矛盾する様相に複雑な感慨を抱きながら大橋の欄干にもたれかかっていた精次郎へ声をかけてきた者があった。見ると、彼がかつて大坂船場の賭場で用心棒をしていた頃知り合った藤兵衛である。桂文枝という噺家であるこの男は、博打好きが高じて借金を抱えたあげく噺のネタを質草に取られ、その結果高座に上がれなくなり京へと流れてきたのだという。そのいきさつもさることながら人の気をそらさない話術によって、精次郎はいまだ手柄を立てられずにいる屈託をつい明かしてしまう。気の良い文枝はすぐさま協力を申し出るのだったが、その内容は驚くべきものだった。文枝は精次郎へ四条河原亭の舞台に立ち「新撰組小噺」をやるように進言したのである。そんなふざけた真似がサムライである精次郎にできるはずのものではない。しかし、寄席という場所はいろんな人間が出入りする、情報の宝庫だというのである。そこに身を置くことで長州や薩摩に関する有益な情報を掴める可能性があるのだとも。そして精次郎と文枝の前に長州藩士とつながりがありそうな絶世の美女・松茂登が現れる……。【商品解説】
目次
- 一 新参隊士 播磨精次郎
- 二 六番隊組頭 井上源三郎
- 三 播磨大神楽 染之助・染太郎
- 四 三本木芸妓 松茂登
- 五 二番隊組頭 永倉新八
- 六 浪人 濱田精次郎
- 七 長州藩士 伊藤俊輔
- 八 醒ヶ井団子屋おがわ 亭主・なつ
- 九 新撰組副長 土方歳三
- 十 桂ダウンタウン 松茂登・濱田
著者紹介
吉森 大祐
- 略歴
- 〈吉森大祐〉1968年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。大学在学中より小説を書き始める。電機メーカーに入社後も執筆を続け、「幕末ダウンタウン」で小説現代長編新人賞を受賞。
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