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明治のこの時代、多くの著名な作家が輩出した。正直夏目漱石の作品はあmり好きではないというか読んで面白いと感じたことがない。ただ、この時代に生まれ、多くの作家との交流があったという背景を読むのはいかがなものかと興味をもったので読んでみた。
物語としては普通に一人の人間の生涯を淡々と描いたもので盛り上がりなどがないから面白いとはいえないが、正岡子規とこれだけの交流があったのかぁといったことがこの本で初めて分かり、夏目漱石がなぜ俳句を詠んだのかとかを知る事が出来た。また柿食えば~の歌を詠んだ正岡子規のその時の心情もこの物語で描かれてちょっとへぇって感心した。そういったこの時代の作家の下積みの過程を読むという意味では非常に貴重な資料ともいうべき物語であり、ほんとに言ったかどうか、猫に名前などないという件もちょっと面白かった。
さて、後半の下巻はどうだろう?
ちなみに、後年に登場した宮沢賢治の物語「銀河鉄道の父」の方が物語としては面白かったなぁ。
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夏目漱石の生い立ちから交遊関係、国民作家としての地位を築くまでの過程を小説として描いた作品。日経新聞に連載され好評だった。
この上巻では、幼少期から東京大学時代、正岡子規ら学友との出会いと交流、松山、熊本での教師生活、妻・鏡子との新婚生活に至るまでを生き生きと描いている。
タイトルは、学生時代に異例の飛び級で頭角を現しながら、漢詩や寄席など心のおもむくままにミチクサをする漱石を象徴している。
漱石(本名・金之助)は、内藤新宿の名主の家に生まれながら親が年取ってからの「恥かきっ子」だったため、生まれてすぐ里子に出される
子どもの頃から頭脳優秀で兄・大助の助言もあり、実父・直克は金之助に期待を抱くようになる。だが、幼い頃から里子に出された金之助には実父としての情愛が伝わらず、直克が死んだ時も平然としていた。この点に関し、漱石に不憫さを感じた。だが、本書でしみじみとしたのは、その点とカリエスを患う正岡子規の無念さへの同情だけ。後は登場人物の豪放さ、ユーモラスな会話の印象が強く、終始明るさが漂う作品だ。
漱石と子規がお互いに好きな女性への思いを打ち明ける際、それぞれの意外な純朴さがにじみ出て、彼らも普通の人間としての一面も持っているなとほのぼのとした親近感を覚えた。
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ナポレオン皇帝から話しが始まり、渋沢栄一がパリの万国博覧会会場を歩いていた時代に
夏目漱石は生まれたんだ。
駕籠やから人力車に、江戸が無くなって行く
戸惑いと明治のエネルギーの渦巻く時代を生きたんだ。
生まれや育ちは苦労もあったけど、学びたい心と明晰な頭脳、助言をしてくれる兄や友に恵まれて金之助は育ったんだ。
正岡子規の恋心を金之助が、見破ったシーンが好き、陶淵明の漢詩の知識。
真っ直ぐな王道ではない、あっちこっちの道草につまずいたり、迷ったり、それが後の漱石の作品に続くんだなぁ~と思いました。
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ミチクサ先生の生き方、物事の捉え方は尊敬できます。特に生徒や子ども達への接し方は微笑ましく、それでいて頑固さもあって、一本スジの通った潔さがあります。
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1867年、パリで5回目の万国博覧会が開催された年に生まれた、夏目金之助こと、夏目漱石。
その年はまた、大政奉還の年であり、まさに明治と共に成長した漱石先生であった。
父51歳、母42歳の恥かきっ子。
もうさほど子供なんかいらないと思ったのか、いったんは養子に出されてしまった。
漱石は、肉親の愛を享受することなく育ったようだ。
ただ、実の長兄・大助だけが、漱石に勉学を奨め、教え、将来を案じてくれた。
一方、同じ年に生まれたのは、正岡子規。
生い立ちのせいか、ちょっと暗い漱石に比べ、子規は陽気で人気者だった。
二人は同じく帝国大学の予備門で出会い、無二の親友となる。
漱石の家は、維新前は町名主だった。
一方、子規は松山藩の士族の家柄。
町人と、武家。
明治以前に出会っていたら、二人は親友になることができただろうか?
素晴らしい奇跡を感じる。
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夏目漱石に興味を持って少しずつ資料を読み漁っていた中、書店の店頭で平積みになっているこの本を見つけて驚いた。文豪ネタ以外の新刊をほとんど見かけなかったので、小説というのは新鮮だった。
読み始めてみたら意外な始まり方でまた驚いたけれど、もう本当に見事というしかない。点々と聞き齧っていたエピソードが、作家によって鮮やかに紡ぎ上げられ、物語として動き出す極上の体験に魅了された。
上巻は特にノボさんが魅力的で、金之助を食ってしまう勢いだけれど、それも作家の愛情だろう。あの場面やこの場面をこんな風に書いてくれるなんて、「ありがとうございます!」と繰り返し拝みたくなってしまった。最高です。
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夏目漱石の話~牛込の名主の恥掻きっ子は養子に出され,変わってるけど賢いと思われていた。養父が元旗本の未亡人に手を出して養母と牛込で暫く暮らし,やがて小学校に上がっても神童ぶりを発揮。色々な学校を転校して,一高に進めたのは長兄のお陰だったが,その長兄が死に,次兄も死に,夏目家へ戻されても違和感が付き纏う。一高で米山と知り合い,さらに正岡と知り合い,二人の影響で英文学へ進んだ後は,松山・熊本で教えることになる。熊本では妻を迎えたが,大親友の正岡子規はカリエスを患って余命幾ばくもない~伊集院静って,こういう本を書く人なんですね,初めてです
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「ノボさん」同様、漱石好きなら知ってるあれこれエピソードを読みやすく品の良い小説に仕立てた小説。
あまり期待せずに手にしたものの、標題紙の装画からもう最高でした…ありがとうございます。このツーショットを見たかったんですw
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長兄の大助が何かと弟の(夏目金之助)めんどうをみてくれたり、英語を勧めて勉強をみてくれたりと、落語に連れていってくれたりとか、父親との関係は薄かったけど、この兄の影響はのちの夏目漱石にとって大きかったのではと思う。
でも、あっけなく肺炎で亡くなってしまったのは残念。
あと、帝国大時代の朋友、米山保三郎、漱石を英文学へと導き小説家の足がかりにもなった人なのに、この天才も29歳という若さで病死してしまうのよね。
この時代ほんとに人は病気であっけなく死んでしまう。
死はとても身近にあったんだろうな。
それにしても、正岡子規との友情が胸にしみる。
彼も漱石を畏友と崇め、ほんとに心底好いていたよう。
お互いがお互いを親友と認めていたんだね。
漱石にとって米山保三郎、正岡子規、寺田寅彦(松山時代の教え子)の出逢いは大きかったんだろう。
あと小説を書くことを勧めてくれた高浜虚子。
それと以外だったのは悪妻と言われていた鏡子夫人、
お嬢様でおおらかで美人で、めっちゃ魅力的に描かれている。
下巻ではリュウマチだと思っていた正岡子規がカリエスで命を落としてしまうんだろうか。
ぞな、もしの食欲旺盛な子規、この人物がすごく好きなので、辛い下巻になりそう。
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夏目漱石の一生を描いた物語です。
上巻は、漱石の英語教師時代までが描かれていました。
正岡子規のほか、早逝したもう一人の秀才・米山保三郎や寺田寅彦との交流がとても清々しく、青春小説として楽しめました。
初恋のくだりなんて特にかわいくて。
ただ、先を知っているだけに下巻は辛くなりそうです。
また、漱石の兄の存在がこんなに大きなものだとは知りませんでした。彼がいなかったら漱石の人生はまた違ったものになっていたのではないでしょうか。感動しました。偉大なお兄様でした。
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夏目漱石、正岡子規など歴史上の人物の人柄、家族などが浮かび上がるかのように伝わってくる。天才と言われるような人たちは、類は友を呼ぶのか、才気あふれる人と自然に出会っているのだなぁと驚く。
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明治は江戸の地続き。人が死ぬのが見えた時代。すでに昭和から見た江戸よりも明治は遠い。坊ちゃんの時代をちょっと思った。
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オーディブル6作目は伊集院先生。そしてこれは期待どおり。牛込の名主のもとに生まれるも、恥かきっ子、塩原家に里子にやられる金之助。そして、父は江戸っ子気質か素っ気なく描かれるも母や長兄が注いでくれた愛情。
妻の実家近くなので、町名からどの辺りか想像つくけど、今とは全く景色の異なる江戸からの転換期の東京。各地の秀才が集まる帝大での畏友ノボさんとの出会い。牧歌的にも映るけど、新橋で嗅ぐ潮の香りなど、新しい街「東京」の生まれていく様も描かれ、この時代の躍動感がうまく描写された素敵な1冊でした!明治の文豪の本が読みたくなったな。
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■ Before(本の選定理由)
筆者のエッセイや小説は10ばかり読んできたけれど、どこか鼻持ちならない・頑固な印象。そんな筆者が、ずっと描きたかったテーマを上下巻の大作として発表したらしい。さて、どんな内容だろう。
■ 気づき
夏目漱石の一代記。母親が40を超えての出産だった恥かきっ子が友人の支えもあり松山→熊本に英語教師として赴任するまでの物語。なんとチャーミングな人だろう。「小さい想いなら母のため、大きい想いなら国家のため」と正岡子規が一高中退を望むのを説き伏せたり、熱い友情に触れられたことが一番嬉しい。
■ Todo
下巻に続く。
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面白かった!さすが、読みやすいです。装丁を見る通り、夏目漱石先生のバイオ。漱石本はほんとうにたくさんありますが、とても優しい(物語のトーンが優しい)。この時代の有名人がたくさん登場してくることもあり、テレビとか映画のドラマになりそうな、スペクタキュラー。上巻が終わった時点では、漱石、子規、米山保三郎を中心とした、高校生のアオハルだねぇ、ってドラマです。大学時代の話とかがさくっと流されているのが、ちょっと寂しいが。フォーカスされているのが、友達付き合いだとか、漱石の主たる部分ではなく、”道草”の部分なので、気楽に漱石を身近に感じられるような描き方なのではと思う。下巻が未読なので、下巻の後、どう感じるかはわからんが。
個人的には、漱石をやってたので書簡などを含め、論文や研究者の出版物も既読済みで、で、おもしろいと思うんですが、これはきっと、漱石本は一冊も読んだことがない人でも、きっと面白い!と感じられると思います。そして、ミチクサ先生を読んでから、坊ちゃんとか草枕とか読んでも、ああ、これかぁ!って、ハマってくれると思います。