紙の本
時が戻されていく流れの小説
2018/10/15 20:29
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:真太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
道子の死をはじめとする、残された者たちの過去が書かれていきます。人は生まれて死ぬまでに、どんな経験をしてどんな人と出会っていくのかで、人格形成されていくのかもしれません。とても染み入る話です。
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過去を振り返るのではなく、人生を遡って見るという物語はあまり読んだことがなかったので面白かった。女性として母として妻として娘として一つ一つに異なる「色」があり、混ざり合っていたものを一色ずつ抜いていくとこんな色があったんだなと発見するような思いで読んでいた。派手さはないけれど心にじわじわと染みてくるようなそんな物語だった。
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道子さんの人生を身近な人びとの視点で
時代を遡りながら辿る物語。
道子さんは特別によい妻でも母でもないんだけど、読むうちに、人を型作る過程が見えて、自分の生き方や周りからの印象なんかを考えた。
自分が思ってる私と、他人が思ってる私は違う。そんな当たり前のことを改めてそうだよね、と。
夫である和夫さんの作中の役割もよい。
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夫の和夫さんを残し先立った道子さんの人生。
亡くなって3年経ったところから遡って行く。
和夫さんの忘れられない妻であり、息子達には自分を信じ守ってくれた大切な母だった。
息子の嫁にとっては、敵対心を表す姑で、和夫さんの従兄弟にとっては、大切な人を奪った存在。
優しいおばあちゃまのイメージからのスタートが、立場の違う人から見たその時その時の道子さんは、一人の女性として、一人の女の子として息づいていた。
色々なことがあったからこそ、和夫さんと幸せな一生を閉じることが出来たのだろうと思わせる素敵なお話。
ただただいい話ではないところに、とても好感を持ちました。
…追記、フミちゃんの話のラスト、悟志がトコトコ歩いていたシーンには、涙が溢れました。
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初読み作家さん
なんだかとてもジーンときた。
ファミリーヒストリーを観ているよう。
ありきたりの人生なんて無く、1人の人生に関わる人はたくさんいて、当たり前だけど、亡くなった後も歴史が流れていく…そんなことをマジマジと感じるような一冊でした。
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初出 2016〜17年「小説すばる」の7話
好き嫌いがはっきりして自己主張が強い道子を、周りの人がどう見ていたかを繋いでいく釧路を舞台にした物語。
1話 道子の死後3年の夫がしのぶ「はちみつ」
2話 道子の葬儀で次男が思う「もち」
3話 長男が結婚するときに年上の嫁がみた「ははぎつね」
4話 長男が小学生の時に感じた「クリームシチュー」
5話 道子が実家に帰ってしまった時に、子供たちの面倒を見た夫の従兄弟フミが、夫の気配りの足りなさや姑の暴言をたしなめてた「なつのかげ」
6話 道子の結婚前夜の道子が父との関係をおもう「おきび」
7話 10歳の道子をおいて亡くなってゆく母が思う「まど」
フミちゃんの「なつのかげ」が切なくていい。
作者は女性講談師
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時が遡っていく。
道子さんがどんな人だったのか…
立ち位置で違うのかな?
静かで優しいお話でした。
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初読みの作家さん。
短編連作集だった。娘でもあり、母でもあり、これから姑になるであろう自分。いろんな立場で共感できた。オススメ。
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図書館で借りたもの。
平凡な女性、日吉道子の人生を「逆から」紡ぐ。死から時をさかのぼり、女であり、母であり、妻であり、娘であった道子の人生を、人生の共演者たちの視点から描かれる7編の連作短編集。
一人一人に物語があって、思っていることがあること。
当たり前のことなんだけど、気付かされるというか。。
ちょこちょこ泣いた。
初読みの作家さんだけど、読みやすかった。別の作品も読んでみたいな。
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妻であり母であり娘であった道子のその時々を逆に辿って,最後にぐるっと一巡りして幕を閉じる.夫だったり息子だったりして語り手は7人それぞれ変わりながら、道子との思い出の中で道子の人となりが浮かび上がってくる.母親が娘に願う幸せが本当にしみじみ心にしみる物語だった.
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平成26年から遡ること60年余りの昭和28年まで。
道子さんの人生。
その時々で主人公だった道子さんが書かれています。
病床の母を訪ねていた子供のころから連れ合いを残して亡くなった後まで。
人それぞれ、いつの時代でも本人が主人公。生きていく長い歴史。
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たしか新聞の書評で気になって図書館で予約して借りた本。昨年10月に予約して7か月たってやっと手元に届いた。
とても優しい気持ちになれる本だと感じた。道子という一人の女性を、夫から、息子から、息子の嫁から、若いころの自分から、母からそれぞれ描き出すことで、初めはぼんやりとしていた印象が徐々に肉付けされていく。良い面も悪い面もすべてひっくるめて一人の人間なんだなあと感じるし、同じ人を見ていても息子と息子の嫁とでは感じることがこんなにちがうんだなあとか、私は姑にこんな態度をとられたらきっと結婚しないなあとか、自分にも寄り添わせて想像を膨らませることができた。話の舞台が北海道なので、気候の表現や地名がなつかしく感じられ、故郷や家族を思い起こしながら温かい気持ちになることができた。読後感の良い作品だった。
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北海道に嫁ぎ暮らす母、道子の生涯を死後から逆に辿っていくお話。
道子の死後から5年ほど経ったお話から始まり、道子のお葬式→長男の婚約顔合わせ時→兄弟の学校でのトラブル→まだ子ども達が小さいときの嫁姑トラブル→嫁入り前日→10才のときに病床の母と過ごしたひととき、と話は遡っていく。その都度、妻に先立たれた夫や、顔合わせに来て緊張している息子の婚約者、まだ中学生の息子など話し手が変わるのが興味深い。
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一人の女性・道子の人生を逆から辿る連作短編集。
道子の死後から始まって、道子の葬儀、息子の結婚、息子の学生時代、息子の幼い頃、道子の結婚直前、道子の幼い頃、と道子の足跡を辿っていくととても感慨深い。
妻・母・姑・嫁・娘。同じ一人の女性なのに関わる人の視点により様々な顔が現れる。こんなにも印象が変わるものなのか。だとすると私の印象も相手によっては異なるということか。そう考えるとまた面白い。
特に道子の夫の視点。
道子の死後(亡くなってから3年半後)と息子が幼い頃(結婚して7年後)の道子への視点の変化に驚いた。
死後の方が良い印象になるなんて…皮肉なものね。
本編とは逆の順番から読み直すと、また違った印象を持ちそう。
ラストの道子の実母の想いにしんみり。
「みっちゃんはだいじょうぶ。どんなにたくさん山があっても、どんなに高い山でも、きっと乗り越えて生きていける」
実母の予言通り、道子は沢山の高い山をなんとか乗り越えた。そして実母の最後の願い通り、道子はあの世で無事実母の元に辿り着けただろうか、と余韻を残しつつ頁を閉じた。
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「はちみつ 平成26年」「もち 平成23年」「ははぎつね 平成8年」
「クリームシチュー 昭和61年」「なつのかげ 昭和49年」
「おきび 昭和42年」「まど 昭和28年」
北海道に住む主人公「道子」の生涯を逆から順に辿った7話収録の連作短編集
読んでいる間、幾度も涙が溢れた。
「道子」亡き後の、夫の生活から物語はスタートします。
その後、まるで走馬灯で現れたドラマを見ているかのごとく、道子の人生が家族の目線で温かく穏やかな筆致で描かれていきます。
生まれ方、死に方、自分の意志では思う様に出来ない1度の人生を考え、どんな人にもそれぞれのドラマがあり、誰一人として同じじゃなく、かけがえのない大切な時間なのだと深く感じた。
家族、そして自分に関わった大事な人達を想い、何度も涙しながら読んだ作品
大切な人達を決して忘れない。