紙の本
こわい実話
2021/07/19 21:30
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
本当にこんなことが事実としてあったのかと驚いてしまう、20歳そこそこの起業家エリザベスは「血液1滴で、すべての病気がわかる」という革新的な技術で有力なベンチャー企業の創業者として頭角を現し「スティーヴ・ジョブズの再来(実際に彼女は彼を意識して夏でも黒のタートルネックを着ていたという)」とまで言われた、でもその事業そのもののほとんどがはったりだった。スタンフォード大学の花形教授、チャニング・ロバートソン、ラリー・エリソンなどのベンチャー業界の重鎮、元国務長官のジョージ・シュルツ、ジェームズ・マティス、ヘンリー・キッシンジャーといった大物の軍人、政治家(みんな白人の老人)がそろって彼女に騙されていた、何も知らない人たちはこんな面子が後ろ盾なのだからと信頼する。いくつになっても権力者は若い美人に弱いのか
投稿元:
レビューを見る
この事件に非常に興味があって出版されるなり入手して読んだ。いっときかなり騒がれた医療系スタートアップの破綻にまつわる物語。幼い頃から起業し金持ちになる、という目標を持った女性がスタンフォードに進学し学問よりも起業を、ということで予定していた学費を注ぎ込み大学を中退して医療系スタートアップを創業する。母親が極度の注射恐怖症で自身も苦手意識を持っていたので指先を突いて採取した数滴の血液からあらゆる病気を分析する機器を開発する、という目的を掲げたこの企業は瞬く間に全米の注目を集め、ヘンリー・キッシンジャーやジョージ・シュルツといった大物政治家を取締役に迎え、多額の資金を集める。しかし実際には機器が開発できず、一方でいくつかの提携を結んで成長プランを公表してしまったことからあたかも画期的な機械が開発できているかのように装いだして…という話。数年前にはスティーブ・ジョブスの再来と称えられたこの創業者のことはかってWiredで賞賛されている記事を読み感心していたのだが試しにWikipediaで検索したらアメリカの著名な詐欺師、と出てきてその転落ぶりに改めて驚かされた。元々は本気で画期的な機器を開発しようと思っていたのだろうが持て囃されるうちに開発の実情を明かすことが出来なくなり…社内で疑問を口にした者を即座に解雇したり、守秘義務を盾に退社後も圧力をかけたり、社内でも情報の分断を図ったり、専門知識を持たない自分の恋人を関係を隠して経営陣に加え専制的な社内統治をさせたり、という行為に走った挙句に全てを暴かれるという最悪の結末に至る経緯が多くの証言を元に生々しく描かれている。ジョブスの真似をして一年中タートルネックを着るために社内の温度を18度に設定していたそうでその伝説的なリーダーシップを猿真似したのだろうが、医療系というところが致命的だったのでは、という気もした。とにかく面白い作品。おすすめです。
投稿元:
レビューを見る
2018年、会社を退職する際の有給休暇消化として友人のいるサンフランシスコへ遊びに行った。そのとき友人とLAにも足を延ばして観光を中心に楽しんだ。ある夜、食事を終えてからバーに入ったところ隣にいた女性が1人で黙々と本を読んでいて、バーで本を読むなんて珍しいなと思ってタイトルをメモした。それがこの1冊。ついに翻訳されたとその友人から聞いて読んでみたら信じられないくらいオモシロかった。シリコンバレーでユニコーン企業として莫大な資金を調達したヘルス系のテクノロジーが実は全部嘘だったという衝撃の実話。それをまるで小説のようなタッチでスリリングに書いてくれているので単純な事実、ニュースよりも何倍もオモシロい。ウォール・ストリート・ジャーナルで勤務していた筆者の筆力が存分に発揮されている。また相当綿密な取材に基づいており、確認した重要な事実についてはほとんど脚注がついていて付け入る隙を与えない著者の気概を感じる。
主人公はセラノスという血液検査のテック企業を立ち上げたエリザベスという女性。この会社の売りは血液検査を静脈注射ではなく指に針を指して極少量の血液で可能としたこと。これにより血液検査のハードルが下がりさまざまな疾病を早期発見できるようになったり身体への負担も減らすことができる。志や良しだし実現すれば素晴らしい世界になるのは間違いない。生化学の分野でこれだけの技術進歩を進めるのは並大抵のことではなく中々うまくいかない。しかし彼女は類稀なるカリスマ性と詭弁で群雄割拠のシリコンバレーをサバイブしてアメリカ有数の投資家/VCから資金調達を達成し続ける。この過程がスリリング!セラノスのテクノロジーの実情が明らかになり、すべてがご破産になるかもしれない瞬間が何度も訪れるものの、その度に情報開示を極端に制限することで、むしろ勢いが増していく過程は想像以上だった。シリコンバレーといえばテクノロジーのメッカであり厳格な査定のもとで投資しているのだろうと思っていったけど、投資家はなんとなくのムードで投資していることが衝撃。さらにリテイル系の会社は競合に出し抜かれないために盲目的に進めていたことにも驚いた。
初めは詭弁でギリギリ嘘じゃないラインを守りながら会社の価値を高めていったものの、限界を迎えてある臨界点を超えた瞬間に躊躇なく嘘をつき始める。そこからは何でもありになった結果、さらに勢いが高まり共和党、民主党問わず政治家や軍人まで巻きこみ、さらにその様子を見て「大丈夫だ」と安心して皆がわんさか投資する。これだけ膨れ上がった企業を相手に1人のジャーナリストが戦う。この様子を描いた後半が本作の最大の読みどころ。前半は三人称視点で話が進むのだけど、著者が問題に関わり始めたところから一人称になって事態が一気に加速する。ここを読んでいるあいだはアドレナリンが出まくってページをめくる手が止まらなかった。法律規制と企業のあり方という話は今の自分の仕事に直結していて、コンプライアンスと企業利益のバランスを考えるのは難しいなと感じた。ジャケットがとても残念だけど、ヒリヒリする系のノンフィクション好きの人にはおすすめ。
投稿元:
レビューを見る
「指先からとる1滴の血液で、あらゆる病気を調べることができる」革新的な血液検査の技術を発明したとして、『第二のスティーブ・ジョブス』ともてはやされたエリザベス・ホームズ。だが、そのベンチャー企業「セラノス」の中身は、医学生なら誰でもわかるくらい、いい加減なねつ造だらけ。にもかかわらず、多くの投資家がだまされ、巨額の資金を集めていく。
投稿元:
レビューを見る
いやあ、面白かった。事実は小説より奇なりとはよく言ったものですね。はっきり言って私も好きでよく読むエンタメ作家の池井戸潤氏の小説よりも数段面白いです。ドキュメンタリーでエピソードてんこ盛りなのでストーリー性は小説のようにないのですが一つ一つがものすごすぎてストーリーが無くても面白い。これでは小説は勝てませんよ。
多分この本は楠木氏の「逆タイムマシン」でシリコンバレー礼賛のところで紹介されていたと想う。例によって図書館で予約していて漸く配架されました。内容は、2000年代前半に彗星のごとく現れた19歳の起業家、エリザベスホームズの医療機器ベンチャーが政治家、学者、軍人、ベンチャーキャピタリストの錚錚たる面子をだまくらかして一躍時の人になり、女性版スティーブジョブズのようにモテはやされた実話です。騙された中にはあのトランプの側近にして最後は仲違いした軍人、狂犬マティス将軍も居ました。この本は、エリザベスとその恋人サニーが会社の黎明期から絶頂に至る過程や、その絶頂期に筆者の記事によりどん底に転落するところを余すところなく記述しており、これでもかというほどのエピソードがてんこもりです。
そしてその後このエリザベスホームズは詐欺で訴えられるのですがそれでもホテル王の御曹司と結婚し、今年の裁判が彼女の妊娠で延期になるというその後日談もなかなかどうしてどうして。。。続編も出るのか?と相変わらず話題を提供し続けているようです。
お奨めします。ぜひ読んでみてください。
投稿元:
レビューを見る
邦訳が出るのをずっと待っていたノンフィクションである。
セラノスの件はWiredの記事で読んだのが最初だったと思うが、まあよくこれで皆を騙せたな、というのが率直な感想だし、読了した後も基本的にその感想は変わらない。最初からずっと疑っている人間はいた。それを外に対しては大胆なはったりで、内に対しては恐怖政治で抑え込んできたのがセラノスであり、エリザベス・ホームズであるという印象である。そして用心棒のサニー・バルワニ。
思えば大学を中退したひとりの若者が、単純に「思いつき」をシリコンバレーという特殊な俎上で全力で増幅してしまい、後に引けなくなった、というそれだけの話ではある。しかしそれは技術とは、CSRとは、コンプライアンスとは…と様々に考えさせる要素を持っている。
革新的なアイデアを持つスタートアップが、それを現実化できず終わっていくのは正直よくある展開なのだと思う(アカデミックな研究もそうだが、消えゆくアイデアは目立たないだけだ)。
しかしエリザベス・ホームズはただの「アイデア」を、実証もしないまま外に喧伝し続けて後に引けなくなってしまった。恐らく本人は「騙している」という意思はないのだろう。ずっと話していると、真実に思えてくるのだろう。そして「できる」と思っていたかったのだろう。
そしてそのエリザベスにくっついて睨みをきかせる(というか恫喝する)サニー・バルワニの存在、極端な秘密主義、辞めた社員に対する執拗な攻撃。企業として絶対やってはいけないこと、をセラノスはいちいち示してくれる。新入社員とかに読ませるコンプライアンスの反面教師的資料として良いかもしれない。
スティーブ・ジョブズを崇拝し常に黒のタートルネックを着ていたエリザベス・ホームズ。しかし、セラノスはヘルスケア事業であるという根幹への意識、アイデアの向こうに人間がいて、検査というのはその人間の人生を左右するという、医療に関わるものなら当然の意識というものが見えない。ジョブズとエリザベス・ホームズが扱うものはやはり異なるのだ。彼女には「アイデアを実現し先駆者として名を馳せること」が何より重要だったのではないだろうか。
しかしアメリカの訴訟社会は恐ろしいなと感じた。とことん過ぎる。会社の不正を告発しようとすると逆に訴えられるリスクがあるという…。デイヴィット・ボイーズの手腕は恐ろしく感じてしまう。そこまでやるのか?!
これほどまでの不正(というか詐欺)が表面化しなかったのも怖い。セラノスは最初から最後まで常にエリザベス・ホームズのものだったのだ。彼女の所有物であり全てが彼女のコントロール下。とにかくコンプライアンスの重要性を認識させられる。
投稿元:
レビューを見る
良質な調査報道とその意義を裏側まで見せてくれる良書でした。
小さな針で指先から採取した血を基に、あらゆる病気が瞬時に分かると謳う技術を全米展開しようとしたシリコンバレーのスタートアップ が実は嘘で塗り固められていた、という事件を暴く一部始終です。
従業員たちは脅されて口をつぐみ、著者にも全米随一という弁護士事務所の圧力がかかります。それでも、人々の安全が危機にさらされると危惧した関係者たちの証言を丁寧に積み上げて裏を取り、不正を暴いていく著者の手腕は見事です。小説のようなハラハラ感もあります。
全貌を知ってしまえば、なぜ単純な、あまりにも単純な不正に多くの投資家、科学者、経営者たちが気づかなかったのか、不思議な事件です。
しかし、徹底した秘密主義や崇高(に思える)な信念、近年見られるテクノロジーの万能感などが真実を見事に隠します。CEOのエリザベスホームズが若く魅力的な女性であったことも、少なからず影響していたと思われます。
他にも同じような不正が埋もれているのではないか?と心配になります。日本にもこうしたジャーナリズムが生まれて欲しい
投稿元:
レビューを見る
原書で途中まで読んだが挫折した本。翻訳が出たので、読み直してみた。翻訳で読んでも、前半部分は多数の当事者の名前が出てきて、誰のことか前を読み直して探してしまう。これを原書でやったら、いい加減嫌になるので、途中放棄は当然かもしれない。名門スタンフォードとはいえ、大学中退の二十代のうら若き女性に、大物政治家・軍人、それに投資家といった社会経験豊かな人々がころっと騙されて大損しただけでなく、医療という大事なところで社会に大迷惑をかけた顛末話なのだが、保守派を代表するWSJだけに、オバマやヒラリー・クリントンが関わっていたこともあったのかなと、余計なことも考えてしまう。
投稿元:
レビューを見る
暴力団でもマフィアでもここまではやらないんじゃないか、、、っていうくらいスゴイです。ニワカには信じられない。
投稿元:
レビューを見る
指先から採った、たった1滴の血液であらゆる検査ができる。この夢のような装置を投資家に売り込み6億ドル以上の資金を集めたが、そんなものは存在しなかったという嘘のような本当の話。取締役には元国務長官や元国防長官など錚々たるメンバーが並ぶ。なぜ誰も実態に気付かなかったのか。
ウォール・ストリート・ジャーナルの元記者が3年半の歳月をかけた力作で読み応えがあった。
投稿元:
レビューを見る
面白い。
企業の不正を暴く話はいくつも読んできたが、共通するのは歪んだ上昇志向と、反対意見を排除する仕組みや社風。
セラノスもその例に漏れないが、特に後者がえげつなく、反対意見を持つものは次々解雇し、離職後も告発を徹底阻止する。
それでも悪事は露見しWSJによってスクープされた。その後の弁護士事務所と組んだ悪あがきは韓国ドラマを見るような展開。
投稿元:
レビューを見る
レビューはブログにて
https://ameblo.jp/w92-3/entry-12685505609.html
投稿元:
レビューを見る
面白い。これが調査報道。日本にはなかなか見られないレベル。
正直エンロンと比べるのは過大評価しすぎな気がする。
手法はインチキ稚拙でなぜバレなかったのか不思議な位。
評価と信頼の鍵がエリザベスの自信たっぷりな振る舞いと魅力だけだった
今資金が流れ込んでいるスタートアップの中にもこういうのがあるんだろうなと思う
投稿元:
レビューを見る
非常に面白い。引き込まれてあっという間に読み終えました。
現在裁判中らしいが、当人たちの本音を聞いてみたい。本当に詐欺とは思っていなかったのか?実現可能な技術と思っていたのか?
投稿元:
レビューを見る
面白くて一気読みしてしまった。年取ったらノンフィクションが面白く感じるようになったのはなんでなんだろう?