紙の本
おぞましいの一言
2019/05/19 08:26
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のりちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
いかに人物に魅力があろうとも、松崎のような人間を永年に亘ってトップに据えて来たJR東日本の労使には呆れるばかりである。自浄作用というものは働かなかったのか。
本書は、その意味でJR東日本の実態を完全に明らかにした価値ある作品である。しかし、その中身に私は怒りと震えを抑えられなかった。
紙の本
JR各社の今後は
2019/10/31 11:20
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:G.F - この投稿者のレビュー一覧を見る
同じ作者の国鉄分割、民営化の真実と合わせて読んだが、JR各社の今後の進む方向がどうなるのか、過去の歴史をどのように総括して会社を発展させるのかが大変興味深くなった。
紙の本
おもしろい
2019/05/20 11:49
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
労働運動、労働組合の裏面が描かれていて、おもしろく読めました。ただ、松崎明の評価は、もう少し時間がかかるのでは。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぽぽ - この投稿者のレビュー一覧を見る
組合の人たちの戦いが壮絶で、現代ではあまり見ることがなくなった、戦いだなと感じます。ある意味命がけの戦いです。
投稿元:
レビューを見る
「マングローブ」も衝撃的な内容だったけど、この本もすごい。毎日のように乗ってた鉄道がこんな内情だったなんて怖い。。
投稿元:
レビューを見る
【”妖怪”と呼ばれた男・松崎明の”呪縛”からJR東日本が「完全に解放される日」は、”日本の失われた二十年”どころか平成まるまる三十年間をかけて、ようやく近づいてきたということなのだろう】(文中より引用)
旧国鉄において「鬼の動労」と恐れられた労働組合を率い、民営化後もその絶対的な影響力を保持し続けた松崎明。その半生を丹念に記しながら、JRに彼が深く遺した影響について考察した作品です。著者は、日本経済新聞社で社会部長などを歴任した牧久。
読んだ前と後とで同じ事象に対する見方が変わる一冊というのがたまにあるのですが、本作がまさにそれ。長年に渡って地道に、そして真摯に取材活動を続けてきたからこそ著すことのできる作品だと感じました。硬派なテーマですが、読めば多くの方が素晴らしい読書体験を積むことができる名著かと。
今年のトップ10に入ってきそう☆5つ
投稿元:
レビューを見る
「昭和解体」よりも先に「暴君」読了。昭和から平成までの労働組合運動の大クロニクル、いや全共闘以降の新左翼や中曽根民活による産業変革をも読み解ける一大絵巻物です。ただその表装を剥がした裏地の物語ですが。まるで「スターウォーズ」や「仁義なき戦い」のような興奮によって一気に最後まで。本書の主人公である「暴君」松崎明はダースベイダーや山守組長に負けじとも衰えないダークヒーローか?ただこのストーリーは決してファンタジーではなく令和になった今も続いているリアルストーリー。面白がって読んでいくと最後にヒヤリとした感覚に出会います。このJR裏面史を駆動するのは「革マル」VS「中核」の暴力かも。その陰惨さが、本書独自の禍々しさをもたらしています。「D型もD民動へ涸谷に」主人公、最期の句で表される「動労型労働運動」、つまり「統一と団結の否定」であり、「積極攻撃型組織防衛論」がたどり着いた社会は個人の自己責任に重きが置かれコミュニティはデジタルに移り変わった21世紀の今、でした。だからアンチヒーローの叙事詩としてより、昭和の社会と組織と個人の挽歌としての哀しさの方が読後感としては大きいかも。
投稿元:
レビューを見る
【255冊目】JR東日本の労働組合であるJR東労組、そしてJR各社にまたがる労働組合であるJR総連の専制君主として君臨した松崎明氏の評伝。筆者は日経新聞社会部長まで務めた方。
国鉄からJRへの民営化。そのときに労働者側の反発を最小限に抑え、JRへのスムーズな移行の助けとなったのは、「コペルニクス的転回」を見せて民営化への協力を表明した松崎氏の存在だった。しかし、松崎氏は革マル派の副議長であり、敵の懐に飛び込んで内部から食い破るやり方は、革マルの手法そのものだったと言ってよい。そして、松崎氏は、労組を私物化して私腹を肥やし、JR東日本に労使共同宣言をさせて経営にまで容喙し、敵とみなした人物には革マルの秘密部隊を動員して攻撃していく、という話。
久しぶりに読み応えのある作品に出会えた感じ。他のことを差し置いて読みたくなるような作品は久しぶり。
まず、戦後の新左翼・極左の動きを勉強できたこと。革マル派とか中核派とか、聞いたことはあったけどきちんと整理したものは読んだことがなかった。この整理学は本書では傍論に過ぎないけど、だからこそ概要を大まかにつかむにはぴったりだった。
次に労働運動や労組というものの一端が垣間見えたこと。JRは極端な例かもしれないけれど、専従(会社には所属していないが、その会社の労組には籍があること)など色々な現象を学べた。その中で、JRが2000年代のある時期まで「労使共同宣言」の下、経営側が一方的に経営判断を下すことはできず、必ず労組側にお伺いを立てるというやり方で経営がされてきたことも知った。筆者はこれを、経営責任が問われることのない労組が経営に容喙できる体制はおかしいと非難している。
3つ目に、権力というとき、ついつい官に宿る「公権力」をイメージしがちだけど、企業や私人が持つ「私権力」もあるということを想像しないといけないという教訓。JR東労組は、ネットではなく紙面が言論に強い影響を持っていた90年代に、JR東労組を批判する記事を載せた記事をキオスクで販売しないという言論弾圧事件を起こしている。その他、組合員のための福祉厚生事業を行う団体を幹部が私物化したり、労組に批判的な組合員をリンチしたりと、「私権力」を使って人権を蹂躙する場合もあったとのこと。
本来は産業革命によって強くなりすぎた資本家の搾取から労働者を守るために観念されたはずの労働組合が、逆に搾取側に回る現象。こうしたこと、すなわち本来弱者や人権を守るために誕生したものが、逆に他者を搾取し攻撃する側に回るということには注意しないといけないと思う。おそらく、社会の至る場面で起こっているだろうことが想像されるから。だからこうやって現代史を読んで、教科書の知識をアップデートしないといけないし、「本来は良いはずのもの」を疑う力を身に着けないといけないと思う。
最後に1点。JR北海道では、着任間もない社長が自殺している。遺書には労組との関係に悩んでいたことを匂わせる記載もあったという。そして、闇は続く……という感じ。(2019.8.21.読了後しばらくしてから記載。)
投稿元:
レビューを見る
長らく日経新聞において、国鉄及びJRを担当する社会部記者として前作「昭和解体ー国鉄分割・民営化30年目の真実」で国鉄民営化の歴史をまとめあげた著者が次に選んだ対象は、JR東日本の労働組合を長年実行支配し、かつ自らも核マル派のイデオローグであった松崎明である。
本書は、平成最大のタブーとも呼べるJR東日本と核マル派の悪しき蜜月を首謀した松崎明という人間にスポットを当て、どのようにその支配が完成し、ついには破綻に至ったのかが丹念に描かれる。
松崎明の死により労組の力が弱体化し、ついには3.5万人の組合員脱退によりJR東日本は核マル派の呪縛から逃れられるわけだが、一方ではJR東日本はまだその影響下にあるとされる。こうした事実が本書によって明らかにされ、JR北海道という会社が、真っ当な経営に戻ることを切に願う。
投稿元:
レビューを見る
国鉄からJRへの分割民営化をものともせず、昭和から平成にかけてJR東日本の労働組合と会社を牛耳った暴君の一代記。JRの労組の一部を極左・革マルが支配していた、あるいはしているとは寡聞にして知らなかった。近年社長経験者が立て続けに自死したJR北海道の様々な問題もどうも関係しているようだ。イデオロギーとは関係なく、どんな組織でも権力を持ちすぎると時間とともに腐敗するということか。権力を持ったら自戒して短期間で引くべきなんだろうけど、権力の魔力はそうさせないんだろう。
投稿元:
レビューを見る
2019年12月4日図書館から借り出し。冒頭100頁ほどで、かなり事実を誇張・歪曲した悪意に満ちた本とわかる。自民党御用新聞の日経の人間が書いたものとわかり納得。
これを真に受ける人がいるのかな?いたら怖い。
一応最後まで読み終えたが、事実(ファクト)と妄想(ファンタジー)とが入り混じった奇妙な本であることは間違いない。引用等も出典を明らかにしない、しかも「要約」とか「概略」がやたら多くて原文ではないから、信用度が著しく低い。ノンフィクションとしての生命線を維持できていないところを、小学館の編集者は何故手を入れなかったのだろう。
いずれにせよ、この本の政治的立場は明確で、組合運動や旧民主党(現立憲民主党)攻撃、自民党礼賛であることは第9章以降で鮮明になっている。当初の「やはり御用新聞日経」という直観は大当たりだった。笑いながら読むには最適かな。図書館の本に、所々鉛筆で揶揄する書き込みがあったが、書いた人の気持ちはわかるものの、その都度消しゴムで消しておいた。的を射ているので、これも笑えた。
投稿元:
レビューを見る
松崎明は、勝てない敵に対して、その内部に侵入し、活動家を洗脳して味方とし、敵の内部から破壊する手法を採る。
投稿元:
レビューを見る
「いいぞ!」
「団結用意!」
「ナンセンス!」
今では思い出したように、同僚とふざけあって使うこれらの言葉も、かつて存在した労働組合の用語である。
本書とほぼ同時に発売された西岡研介「トラジャ」に続いて読み終えた。
今でこそ、労働組合なんてものもあったよね、と笑って言えるけど、昔は組合のことなんて喋れる雰囲気の会社ではなかった。
2018年初の三万五千人の大量脱退(俺もその一人だけど)でようやく、この労働組合に関する話がタブーではなくなり、相次いで出版されるようになったんだろう。
先に読んだ「トラジャ」では、前半をJR東労組と革マルの関係について、後半では未だに労使関係が続くJR北海道とJR貨物の現状について書かれている。
本書「暴君」では、全学連まで時代を遡り、革マル派の成り立ちから、松崎明の生涯を追っている。
両書を読み終えて、ようやくあの組織の息苦しさ、横柄さが理解できてきた。
「統一と団結の否定」「積極攻撃型組織防衛論」を軸に、変革か打倒かの二択を迫る。
そこに組織の本質があった。
今では労働組合に属していない宙ぶらりんの状態が続く。
賃上げは政府が企業に対して指導しているし、ブラック企業はSNSで晒されるこの世の中。
労働組合不要論が起きている。
翻って、ギグワーカーによる新たに労働組合を組織する動きもある。
昭和型の労働組合から、新時代の労働組合へ。
労働組合に対する、新たな定義が必要なのではとも思う。
投稿元:
レビューを見る
国鉄、そしてJRの労働組合の指導者であり、革マル派の中心人物である松崎明。本書はその人物伝であったが、民営化後のJRの実像というところに興味が向く。国鉄分割民営化はかなりの荒療治。当然、大きな副作用が出るはず。そう思っていたが、実際にそれが何なのか長らく知ることはなかった。「国鉄の現況は態度の悪い国労であり、その組合員さえ切ってしまえば、真面目な職員だけになる。民営化後は競争原理も働きすべてがうまくいく」そんなイメージ世間に抱かせ、分割民営化を成功と思わせる演出。もちろん実態はそんな単純ではない。そこに当局側、経営側に弱みができる。
それをうまく利用したのが松崎であり、結果的に革マル派という前時代的な思想も延命させてしまう。国鉄分割民営化ははっきり失敗だとわかる。ただ、ではどうすればよかったのかという答えは謎である。
投稿元:
レビューを見る
東日本旅客鉄道株式会社。
日本国有鉄道から分割民営化され、会社名の通り東日本一帯を管轄する巨大企業だ。
子会社は70社あり、事業の中身は多岐に渡る。
これだけの大きな会社なので、当然従業員も多くなる。
しかし組合は一枚岩ではなく、いくつも分裂して増えていった。
その組合を仕切っていたのが、本書で書かれた松崎明氏である。
若い世代にはピンとこないだろう。
そもそも、ストライキ、だの革マル派・中核派、セクト・アジトなどと言う言葉からしてもはや歴史教科書の「現代史」に出てきた単語だけれども、ほんの30年前まではリアルな言葉として、企業や上層部には響いていた。
しかし数年前にJR東日本の最大労組から一斉に3万人以上もの組合員が抜けた。
理由は様々だが、組合が言うように、「脱退工作」が行われただけでは人は動かないだろう。
新たな労組が生まれたし、これまでの労組も残っているが、多くの元組合員たちは戻っていない。
なぜだろう?
労組そのものは悪ではない。使用者に対抗する正当な手段であり、それによって守られるべき労働者がいるのも理解しているつもりだ。
だが、入らなければ昇進に響き、政治運動が行われ、使用目的が不明瞭な高い組合費を収めなければならず、レクへの参加が必須の労組が果たして現代に賛同を得られるか?無理だろう。
本書で描かれた松崎氏によって確かにできたばかりの企業が安定した面もあるだろうし、会社もそれを利用していたのだろう。
けれども、彼のやり方は、正しくなかった。
力をちらつかせ、意に沿わなければ潰すやり方は正しくない。
そして、力で支配する相手を利用した会社も、やはり正しくはなかった。
私は暴力と恐怖で支配するやり方は間違っていると思う。
それは誰に対しても同じだ。
単純に会社が、労組が良い悪いではなく、どんな場合であっても、恐怖で人を支配する事はあってはならない。
JR東日本が、これからも継続していくためにも、より多様性と柔軟性を大切にする企業であってほしいと思う。