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帯には『旧制中学。寄宿舎。美しい後輩との<少年愛>』とあり、巻末にエッセイを寄せている宇能鴻一郎さんもその面を強調していますが、その美しい後輩の清野が入信していた大本教の影が非常に濃く、単なる少年愛小説ではなく、当時の新興宗教に一家で没入している後輩との恋愛を振り返った作品であると感じました。大本教の教義を信じきっている清野はそれ故に純粋で無垢であり、それが川端の彼に対する欲望と幻想を呼び起こしているように読めます。川端の作り出した清野の虚像と、実際の清野の内面とのすれ違いの連続が物悲しいです。
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宇能鴻一郎氏があとがきで「川端の描く女には体臭がない」と書いていたが、確かにそういう感じで少年愛も描かれていた。
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日常の何気ない描写の美しさは星5つ、内容については私の理解力不足ゆえの星2つである。
川端康成といえばどちらかというと少女趣味のようなところがあると思っていたが、「寄宿舎」「少年愛」といううたい文句にまんまと釣られ購入(いわゆる腐女子根性である)。
初の文庫化ということで早速読んでみた。
本筋である清野少年とのあれこれよりも、当時の生活の描写、そして寄宿舎で起きたときの朝靄の描写などは本当に美しくそして気高いものであり、今のスマホパソコン世代、いや、4K、8K世代にはできない描写であると感じた。
ぎょっとするようなことも、さも平然であるかのようにさらりと書いてある。
それゆえの川端康成らしさを強く感じた作品でもあるけれど、良くも悪くも堂々巡りのような印象が否めずやや退屈はしてしまった。
あと、凡人の感想として「当時から新興宗教ってあったのね」みたいな発見もあった。
回想録というかエッセーというか、であるので、あわよくば長野まゆみあたりの想像をして購入すると期待外れになるのでご注意を。
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日本語が美しくてうっとりした。
下級生への一途な純愛かと思いきや、他の美少年(複数)に見惚れたり少女にも興味があったりと、川端先生は自分の欲望に素直すぎます。
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旧制中学の寄宿舎での美しい後輩・清野との淡い愛。彼との書簡、当時の日記、学校の綴方で書いた作文とを引用しながら、齢50歳の川端が追想する。川端が清野に特別な想いを寄せていたのは思春期特有の心理的な動きだと思うが、それとは別に肉親との縁が薄かった川端の人恋しさもあったと思う。思春期の肉体的な欲求と恋や愛への憧憬、苛む孤独が清野への愛着となって現れたのではないか。中学生当時、清野は川端の心の拠り所であり、青春の思い出の象徴でもあったろう。最後に会ってから30年経った今でも感謝を持ち続けていると川端は書いている。清野がいなければ川端はもっと違った人間になっていたかもしれない。
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川端康成没後50年ということで、新刊として刊行された「少年」
さてどんな小説だろうかと蓋を開いてみると、全く予想外であった。大衆小説を予想して読んでいたので、率直に、非常に読み進めにくかった。内容的には森鴎外の「ヰタ・セクスアリス」や三島由紀夫の「仮面の告白」と似ている(ただ後者は読みやすかった)。また話の構成の巧さで言えば、彼らにはちょいと劣るかな、、?
そこに書かれている内容は、青少年の頃の川端と後輩の清野の長きにわたる交流である。互いに寮生活の中で愛(この場合、友愛も恋愛も全て包括している)を育むも、川端の卒業によって徐々に疎遠になっていき、、、というような感じである。
ここで交わされる愛の行為は非常にプラトニックで、先に挙げた鴎外の作品に出てきた輩や三島の描く人物とは違い、暑苦しいものではなく、非常に静謐さに溢れていたように思える。けれど、在学時においては少なくとも燃えるような恋情を抱えていたのではと私は考えている。
いずれにせよなかなかに興味深い話であった。
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良いと思わない。私小説。いわば川端なりの仮面の告白であるが、整然としない。少年期を丁寧に書けるかは、ひとつ作家の重要な指標だが、これはどうなのか。原点を振り返るという意味で、トルストイや三島は確かに上手い。
肯定的に捉えるのであれば、「伊豆の踊子」の裏作品として読まれるべきである。また、川端康成研究上は不可欠ともいえる。
後書きはエッセーだが、川端康成の女性からは「匂い」がしないという。それは谷崎に比べればそうであろうが、「眠れる美女」などを読んだことがないのだろうか。
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旧制中学の寮で同室になった後輩の少年との思い出を、過去の日記や手紙から紐解いています。
思い出すままに並べたような、輪郭をもたない記憶。少年への印象も美化なのか理想なのか、願望か。まるで夢のようです。
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理解に苦しむ場面もあったが、新鮮な感じだった。空気感や感情を読み取りやすかった。少年がきれいだった。
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川端康成の作品を初めて読んだのでいまいち作者の人となりがわからないのだが、この本は自身の少年〜青年期を振り返ったものということで良いのだろうか。
自身の書いた手紙をみつけるがまま順に書き連ねていったという感じで、時系列がばらばらで把握しにくいのだが、文章自体は読みやすかった。
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BL作品にはあまり興味がないんだけど
BLじゃない作品に
BL的要素を感じる人の気持ちは
わからんでもない
美しさを求めてんのかな?とオモウ
話題になってるようだったので
気になって買ってみた
少年少女の頃って
実際はすごく匂いがあるし
己の幼少期は泥んこだったし
家畜の糞尿もすぐそばだったし
汚れ放題だったのに
なぜ回想すると
美しく変換されるのか
ハナタレも汗臭さもどこいったん…
ということが
誰にでもおこると信じているので
川端康成にもあったはず!
回想してるから
こんなに匂いがなく感じるんだと
信じている!!!!
清野の手紙がちょっと切ない
書いた清野の気持ちを考えると
ギューッとなるけど
おっさんになった川端が
回想終わって燃やす気持ちもわかる
その過去と現在の温度差が
おもしろかったかなぁ
いやでも盛り上がらない回想録だし
そうでもないか?
星は2つほど低くないけど
3つも多いかな?の3つ
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50歳時点の著者が17歳前後の同性愛的体験などを振り返るという体の小説。
当時の日記や手紙の引用が多く、小説というより随筆っぽかったが、こういう「生」感のある構成は嫌いではない。同性愛描写よりむしろ某新興宗教に関する内容が興味深かった
。正直、主題とされている同性愛経験の内容には物足りなさがあった。日記の引用が主とはいえ本当の心のうちはあまり明かされていないように感じたし、本書の描写だけだと愛というより単に弄んでいるだけのようにも思えた。
流石ノーベル文学賞受賞者だけあって、端正な文章で眼福になった。
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2022年、川端康成没後50年で新潮文庫の新装版(巻末解説やエッセイは新規)が続いている。
で本書、200ページに満たないうっすい本の、ざっくり5分の4が本文。
5分の1は、全集の解題を文庫に合わせた形で転載、年譜、そして宇能鴻一郎が谷崎潤一郎や三島由紀夫を並べて漠然と書いただけのエッセイ、という、志はやや低い文庫本。
とはいえ川端が50歳になんなんとする全集刊行時にまとめた思春期追悼が、文庫としてまとまったのは意義深いことだと思う。
先日読んだ高原英理・編「川端康成異相短篇集」の異形さに惹かれた。
しっかり再読したりまとめたりしたいと思ううち、積読にしていた(これもまた高原英理・編「少年愛文学選」で抄を読んだことのある)「少年」の全容を知りたくて読んだが、……こちらもまたなかなか。
よくもまあ書けたなと思うが、そもそも、よくもまあ大学に提出できたな、とさらに。
しかし読み終わるころには、全部ひっくるめて味わえるようになってきた。
第一に清野萌え突き抜け度合いパない。
・「お前の指を、手を、腕を、胸を、頬を、瞼を、舌を、歯を、脚を愛着した」
・「リリシャシャ、リリシャシャ」(勘違いしてはいけないのは、大本教に清野父が帰依したのは、後のこと)
・「こないに握ってても、目が覚めたら離れてしもてまんな」
・「私のヘングインになってくれ」「なってあげまっせ」
・「私はもっともっと愛に燃えた少年達とルウムをつくりたい」etc,etc……。
そして川端の、人交わりから弾かれた自意識……人に頼って生きてきたという意識……どちらも存在して初めて「魔的」が生まれたのだな、と感慨深い。
美しいものを愛玩したいというサイコすれすれな人物だとは思っていたが、フィギュアではない愛くるしさのような肉から立ち上る精神の美性にも恋着するのだな。
また作中、宮本ー清野(川端ー小笠原)がふたりだけいるのではなく、50を迎えた川端が、後に破れた婚約者や、踊り子や、といった人生における重要人物を込みで当時を振り返ってみたら、彼が初恋の相手だったと思われてくる……という経緯。
屈折した思い、折れ曲がった感情が、記述そのものから立ち上がってくるように思う。
てなことを書いてみたが、読後に発見した以下の2サイトほど「楽しんでいる」読者はなかなかいまい。
・川端康成と「少年」、清野少年の虚像と川端の実像について
https://kakuyomu.jp/works/1177354054890741013
・川端康成関連インデックス うみなりブログ。
https://naruminarum.hatenablog.com/entry/2029/01/01/131100
特に後者、本文よりも熱中して読んだ。
仕事中にこっそり読んでいたが、ふふふ……という笑い声を抑えられる困ったくらい。
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想像していたものと違い、手紙を多く載せて過去を思い返している話。昔とはいえ、こんなに個人の手紙を載せてよかったんですかね…。
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1972年川端康成亡くなって50年となり、全巻35巻の第10巻のなかで全集のみでしか読めなかった部分を文庫化した作品。
その全集は川端康成50歳を記念して刊行されたもの。その編纂にあたり、本人も自身の全作品を振り返っている。その時に、幼少期からの作文や学生時代の日記を取り上げながら、50歳の気持ちを書き加えていくといったいった形式。
出版社はこの文庫の発表にあたり、「川端のBL」と扇状的すぎるかなあと思う。確かに寮生活での日記が主で、その中でも清野少年に対する恋慕的行為表現は多い。他にも美しい少年を見かけるとそちらも気にしてしまう。と、多少そういう傾向ではありますが。
日記書簡からの回想なので、小説でもエッセイでもないかなあ。やや欲求不満読書。
川端作品を数冊しか読んでないので、深読み的な面白さは難しいかな。書簡の希少性や「伊豆の踊り子」秘話、学生時代の文章など川端文学の起源でしょうか。