紙の本
現代消費社会へのアンチテーゼ
2020/11/24 17:39
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投稿者:dsukesan - この投稿者のレビュー一覧を見る
下巻に入り、更にテンポアップ。面白さにグイグイのめり込む。吉里吉里国の独立の戦略である、医療立国、金の隠し場所に迫る。
相変わらずの言葉遊びと、荒唐無稽のストーリーだが、段々と中毒になってきた様に面白いと感じる。
そして、一気に物語はラストのクライマックスへ。
ラストで、この物語を紡いできた記録者がキリキリ善兵衛であり、百姓どもに朝が訪れることを待ち望んでいたことが明らかにされ、この物語が、百姓の解放を通底とした独立物語であるというテーマが浮き上がってくる。
ここで言う百姓が朝を迎えるというテーマは、現代消費社会、国際分業といったシステムから降りて、自給自足をしながら文化を守り医療を享受し独立して生きていくという、自然資本によって生きるローカリズム宣言や、半農半X、ダウンシフターズの生き方に通じるものだと気がつかされる。バブル期前の昭和56年時点で、2020年現在、走りとして動きはじめた自然資本、ローカリズム宣言、ダウンシフターズといった運動の主題を、吉里吉里国独立物語として描き出した作者の力量に唖然とする。そして、ラストまで、そうした消費社会システムからの解放、自然資本に則った定常社会の実現を目指すという主題を感じさせずにエログロナンセンスの装いで娯楽小説として描き出したことも驚愕。
喜劇として描かれてきたこの物語が、吉里吉里国独立の失敗、自然資本に基づく定常社会の確立という挑戦の失敗、すなわち、百姓が朝を迎えられなかったという悲劇に終わったことを、とても残念に思う。
喜劇が、悲劇やシリアスを描き出したというところで、岡本喜八の喜劇を見たような満足感を味わえた。
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下巻。
吉里吉里国の真の目的と、あっさりとした崩壊の様子が描かれている。
また、全編にわたって繰り広げられるコミカルタッチの文章がとてもよかった。
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上巻に引き続き、相変わらずのねちっこい文章です
嫌悪ばかりが湧いてくるのに、不思議と読み進めてしまうのはやはり魅力があるからなのでしょうか
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79/100 No.62「長門有希の100冊」
文庫本3冊で1500ページオーバー、読破するのに正味6日間かかった。
読み終えた感想は、突飛なお話と予想外の展開で面白いとは思うが、
如何せんお話が長すぎる、筒井ならばこれ30ページの短編だよなー
たしかに医療他、専門知識をちりばめて為になったが、そのせいかあまりストレートに笑えない。
1500ページ中、一番印象に残ったくだりは主役の小説家 古橋の生い立ちの部分。
素直に笑えた。
他はいきそうでいけない、全ての枝葉が中途半端で物切れの感じがする。
コレを読むなら筒井の短編の方が楽しめるだろー
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・12/2 本当に久し振りだ.最近なかなかペースが進まない.もう後半に差し掛かってる.そろそろ話しがまとまってくる頃だとは思うけど.相変わらず脱線してるけど、結末が知りたくなってきた.あせってるな.なんたってこの小説読み始めてから1ヶ月が経とうとしてるもんな.1ヶ月3冊では、かなりのペースダウンだ.
・12/5 読了.ふー.やっと読み終えたって感じだ.結末は覚えてなかったが、思ったよりあっけなかった.もうちょっと期待してたのにな.
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えっ!?
農業の次は医療批判ときて、そうかー……こういうオチか、と驚いた。
これだけ長いのに、無駄って感じるところが少ないというか、ある意味すべてです! 作者が書きたくて書いたんです! 楽しいんです!というオーラが3巻中消えないのが凄い。
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大作。面白い。
但し正直下巻についてはあれ?と思うことも多かった。種明かしが次々されていく。それは痛快なのだけれど、古橋という主人公に筋を集めようとして、ご都合主義にもとれた。
尻切れとんぼ、な。
それにしたって、この上中下巻の魅力は否定しようがないけれど。
私としては前大統領たるカツぞー小笠原にもう一席ぶつ活躍をしてほしかった。
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面白い、の一言。
あまり小説らしくないといえばそうだけど、紙面を利用した空間表現の独特さや詩の多用、そして鋭い社会批判など舞台的なエッセンスが随所にちりばめられていて、そこが素敵。それゆえ、その主張には全面的に同感できるのでした。戦争の必要がない平和な国を実現し、かつ他国から認められること、それは自らの国を立派な国にせしめること。いつの時代だって、これが理想でしょう。そう自信を持って言い切りたいものです。
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十数年ぶりの再読完了。吉里吉里国独立の理由の1つに日本の農業政策批判があるのですが、その議論は現在のTPPを巡る議論と同じことを言っており、作者の先見の明には恐れ入りました。あと「~してけろ」っていう東北弁も「あまちゃん」を思い出し、妙に2013年とシンクロしてます
全編通して繰り広げられる過剰なドタバタも井上ひさしらしくて好きなのですが、古橋の脳をベルゴ・セブンティーンの体に移植して別人となってしまう展開は、さすがにやりすぎだろうと。独立計画が失敗に帰する原因となる「秘密」もそれほどのものか?と疑問。
なんだかラストが締まらなかったのが残念ですが、ルビという日本語独特の表現技法を極限化した文体芸と鋭い社会批評は大いに堪能しました。
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読み終わりました。救いのない形にしないと終われないのかもしれません。「地域」自治、食料、医療、平和、国際関係、ほんとうに詰めていくと傷があるのかもしれませんが、思想(理想)は、そうあってよいのではないか。考えさせられる本でした。井上ひさしさんの、虐げられる人たちへの優しい視点も感じさせます。それにしても、古橋・・・。
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夏休みにどうしても読みたくなって、再読。学生以来。
途中やや間延びしたものの、日本の抱える農業問題や医療問題など、問題提起は多岐にわたるし、適度にエッチ(エロい、ではなくエッチ)だし、何より面白く読める。
映画化して欲しくない作品の一つ。
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何十年も前に今、問題になっていることが書かれていたのは素直に驚いたけれど、終わり方が煮え切らなかった
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上中下と読み進めていくうちに、さえなすぎるおっさん主人公・古橋と吉里吉里国の未来を本気で応援してしまっていたので、ラストが残念すぎた。記録係(わたし)の独白?種明かし?で終わらせる構成はかっこいいんだけど、この時代のラストとしてはちょっと残念な。それと、まだ映画化されてないから、園子温が映画化すればいいと思ったんだけれども。『地獄でなぜ悪い』思い出したんですよね、ラストの印象として。
それにしても、読者の時間と作中時間を一致させた実験小説的な手法だったとしても、やっぱちょっと長過ぎるよと、ため息ひとつ。達成感というよりも「やれやれ」といった感。このタイミングじゃないと一生読めなかったと思うので、無事読み終われて安心してます。
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古橋先生…
面白いキャラです。
設定から面白かったです。
馬鹿馬鹿しい感じで終始ニヤついて読んでいました。
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上巻までは良かったけども、残念ながら中弛みしてそのまま失速…あっけなくおしまい。という印象が残った。
無駄な下ネタが多すぎて、本筋が盛り上がらない作品でした。
吉里吉里国の独立というストーリーの中で、日本社会のおかしなところを批判的に述べていくところは、確かにそうだなと共感するところもあった。そういうところは学びになったかな?