紙の本
歴史とは人間の生き方
2018/05/18 13:08
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
待望の塩野七生さん最新作!これが「最後の歴史長編」とのこと。ペロポネソス戦争後のポリスの凋落からアレクサンダー大王の死までをみっちりこってり著している。夢見るように生き、燃え尽きるように死んだ若き天才、アレクサンダー大王。その生涯、ここに閉じる―。
紙の本
先駆者アレクサンドロス
2017/12/22 22:00
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぽんた - この投稿者のレビュー一覧を見る
世界史で言うとペロポネソス戦争後からアレクサンドロス大王がペルシャを征服して間もなく死んでしまい、後継者戦争が終わるまでの部分を書いてます。
アレクサンダー大王の帝国は一代で分裂したけど、東西の交易はその後も続きます。
ローマと同じように敗者の同化とか似た話も出てきます。
ローマ帝国と比べると短いけど、アレクサンドロス大王がカッコイイし、まさに短い人生を全力で駆け抜けたという表現がピッタリきます。
筆者の「なぜアレクサンドロスはこうも人々から愛され続けているのか」という問いに対する答えがこの本のような気がします。
リーダー論としても歴史の本としても面白いです。
筆者最後の歴史エッセイだそうです。間違いなく一読の価値ありです。
紙の本
これでおしまい
2019/12/30 17:20
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作者の真価は、二千数百年前のことであるにもかかわらず現在でもほとんどそのまま通用する人間社会の真理を描くところにあると思う。
32歳で病死してしまうアレクサンドロス大王が主人公では、作者は十二分にはその筆を振るえなかったような印象を抱いてしまった。
話の大半が軍事面に偏ってしまうのもやむを得ない。
私個人としては、軍人としての評価は一段階落ちてしまうとしても、同じ作者が描いたハンニバルの方がずっと魅力的な気がする。
紙の本
お疲れ様でした
2018/12/08 13:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
塩野先生最後の歴史エッセイ。今まで本当にお疲れ様でした。
今作はアレキサンダドロス大王の人生がメイン。
残酷な面もあるけれど敵の母后への態度など憎めないところがアレキサンドロスの魅力ですね。
力作ですがテーベの神聖隊の特色などをもう少し書いてもよかったのでは?
紙の本
最後の歴史長編
2018/09/17 15:50
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コーチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
『ギリシア人の物語』シリーズ最終巻、そして、本巻のあとがきによれば、どうやらこれが塩野七生の歴史長編ものの絶筆となるらしい。高齢もあるだろうが、むしろルネサンスまでのヨーロッパ史をほとんどくまなく網羅してきた彼女に、新たに開拓すべき分野はなくなった、やりつくしたというのが真相であろう。
そんな彼女が最後に描くことを選んだのは、アレクサンドロス大王。ギリシアを統一した父のフィリポス2世のあとを継ぎ、ペルシアを滅ぼし、ギリシアからインド北西部に至る大帝国を築いた古代最大の征服者である。彼を最高の武将たらしめているのは、その戦法のすさまじさであった。一言でいうとそれは、軍師自らが先頭になって敵陣に切り込むというたいへんリスクの多い攻撃法である。彼に従い敵陣に切り込むべき精鋭部隊が遅れをとり、彼自身の生命が危険にさらされたことも何度かあった。また戦略家というものは、普通だまし討ちをも平気でするものであるが、アレクサンドロスは違った。彼は常に正攻法で正々堂々と戦いつづけた。
アレクサンドロスは文武両道の将でもあった。マケドニアというギリシアでは田舎の国で生まれた彼は、父王フィリポスのように粗野で無教養な王となるのをきらった母后の方針で、アリストテレスを家庭教師につけるなど少年時代にギリシア人としての教養を徹底的に身につけさせられた。その結果彼は、文学を愛し学問に通じた主君となり、結果的にこのことは、支配地におけるヘレニズム文化浸透にも寄与したといえよう。
戦略家としてだけでなく、文化人、人間らしさやリーダーとしての器にも恵まれ、全兵士の愛と信頼を一身に集めていたアレクサンドロスは、『ローマ人の物語』のカエサルにも匹敵する偉大なキャラクターとして描かれている。軍師としての才能ではカエサルをも越えていると断言する塩野であるが、そのトーンはカエサルについて語るときほど熱狂的ではない。カエサルのためには『ローマ人の物語』の2巻を割いて記述した彼女が、アレクサンドロスについては、本巻の事実上半分(前半はテーベの台頭と没落、マケドニアのフィリポス王の台頭が描かれる)で済ませていることからも、このことはわかるだろう。
だがこれも、アレクサンドロスが新たに建国した帝国を経営する前に、32歳で病没し、結果的に征服者としての実績しか残せなかったためである。要するに、戦記以外に書くべきことはほとんどなかったのである。さらに言えば、アレクサンドロスの世界帝国の理念が十全なかたちで実現されるのは、彼の死後何百年も後のローマ、それもカエサルが青写真を示した帝国ローマにおいてであった。このようなことを考えるとき、人間的にはカエサルに劣らず偉大であったアレクサンドロスの物語が、カエサルほどには、質・量ともに大きく語られないのは当然だろう。
『ギリシア人の物語』全体を読み終え、塩野七生の歴史文学全体を振り返ってみて、燦然とした輝きを放っているのは、やはり『ローマ人の物語』である-これが率直な感想である。
紙の本
歴史エッセイの名、そのままに。
2018/08/23 11:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『ローマ人の物語』の一巻目で、成長期のローマを描きながら、凋落しつつあるアテネをはじめとしたギリシアのポリスの様子を紹介しつつ、「ソクラテスの弟子たちを書きたい誘惑にかられる」と綴られていた。この巻で、詳しくはないが、ある程度果たされたのかもしれない。
ソクラテスの罪は死刑に値したかどうかはともかく、弟子たちはプラトンでさえ師以上になれたのか疑問が湧く。
そしてアレクサンダー大王。かれが果たした役割とは?
投稿元:
レビューを見る
ギリシア人の物語の第III巻はペロポネソス戦役の後に続くギリシアの都市国家時代の終焉と,そのあとのアレクサンドロスの物語です。
ペロポネソス戦役の後のアテネ,スパルタ,テーベの凋落の話は,一度糸が切れてしまい坂を転げ落ちはじめた組織に対して,その転がりを止めて元通りに持ち上げることの難しさを感じました。自らの持てる資源をいかに上手く活用するか,そして活用できずに浪費することがどのような結果を招くのかを痛感する記述だったと思います。「そして誰もいなくなった」という一節が塩野さんらしいと思います。
その後に続くマケドニアのフィリッポスと息子のアレクサンドロスの物語は,タイトルの「新しき力」に相応しい内容だったと思います。
塩野さんが最後の対戦相手として,「若いアレクサンドロス」を選んだこともあってか,戦闘シーンの叙述やスピード感のある書き口は,ヘレニズム時代を創り出した若い「新しき力」に引っ張られたものだったのかもしれません。このギリシア人の物語のI巻からIII巻を通じて,やはり塩野さんは戦争の描写が上手だとも改めて思いました。
アレクサンドロスが駆け抜けることで,ギリシア人の時代が終わり,ヘレニズム時代に続いていくと言う描写が塩野さんの「歴史エッセイ」の最後になるのは残念で,まだまだ塩野さんの作品を読みたいと思います。ただ,個人的には,塩野さんのアレクサンドロスを読んでみたいと長年思っていたこともあり,彼の物語が塩野さんの最後の「歴史エッセイ」になるというのは,嬉しさも感じます。
次に塩野さんはどのような作品を執筆なさるのでしょうか。今から楽しみです。
投稿元:
レビューを見る
パズルの最後のピースがはまった。
著者が「歴史エッセイ」と呼ぶ、地中海世界を舞台とした長編作品群。本書の巻末に全作品の一覧が掲載されているが、そのカバーする範囲は実に2500年におよぶ。本書によって、その最後の空白が埋まったのだ。
本書が「最後のピース」であるのは、単に空白を埋めたことだけが理由ではない。ギリシアからローマへ、『ギリシア人の物語』から『ローマ人の物語』へとつながる作品となっているのだ。
二つの時代の橋渡し役を演じたのは、フィリッポス二世とその息子・アレクサンドロスの二人のマケドニア王である。特に後者は、政略・戦略・戦術のあらゆる面で、のちのローマを予感させる要素に事欠かない。
例えば、騎兵の活用。兵站の重視。小隊によって組織された軍隊。征服地の支配層の温存。拠点となる都市の建設。そしてなんといっても、「敗者同化とそれによる民族融和」をめざしたこと。
ただ、めざすものは同じでも、やり方には大きな違いがあった。民族融和のためにアレクサンドロスが採った策は、一万組の男女の合同結婚式という奇想天外なもの。一方ローマのほうは、属州の軍団兵と現地の女の結婚を奨励するという、堅実だが持続的な方法を選んだ。アレクサンドロスの帝国が一代で終わったのに対し、ローマが長期にわたる繁栄を維持したのは、このあたりにも理由がありそうだ。
だが、芸術家にも、強烈な個性ゆえに一代限りの「作風」で終わる人もいれば、次代へ継承されていくような「様式」を新たに打ち建てる人もいるが、その優劣は一概には論ずることができない。アレクサンドロスは前者のタイプなのだろうが、だからこその破天荒な愉しさがある。
歴史上の人物とは結局のところ、歴史という大きなパズルの一片にすぎないようにも見える。だが顔を近づけてよくよく見れば、それほど簡単には割り切れない複雑な魅力を持っていることがわかる。アレクサンドロスは特にそうだが、塩野七生が描いたのは皆、そうした男たちであった。
投稿元:
レビューを見る
ギリシャが没落し、隣国のマケドニアが勃興する。
アレクサンドロスの父フィリップスから受け継いだ兵力とアレクサンドロスの戦略が全てペルシャに対して全て当てはまり果てはインドまで版図を広げて、結局ペルシャで病死する。ほんの30代でここまで広げれたのは本人の才覚と、一緒に育った悪友達。ただ アレクサンドロスの後継者は抜き出たものがおらず、数十年かけて仲間内での内乱で、プトレマイオスとセレウコスの二人に収斂して、次のローマ人の世界に引き継がれる。ローマ人ものがりにまたくるっと一廻りして戻ってきた感じ。
投稿元:
レビューを見る
ギリシア人の物語もついに完結。対象範囲はテーベの時代からアレクサンドロス大王が死ぬまで。ディアドコイ戦争にも触れてはいるけど、内輪もめは気が滅入るだけ、ということでオマケみたいな程度。
アレクサンドロスというとやはりその自ら突っ込む戦術や、無謀とも言える冒険的な要素が挙げられることが多い。本作ではその辺に加えて、兵站についても触れられているのが塩野さんらしい。アレクサンドロスのキャラ敵に兵站を気にしていないイメージを持っていたが、そんなことは無かった。やはり戦争に勝ち続ける将はちゃんとしているのだ。
今回の範囲は『ヒストリエ』の時代ともろかぶりである。この本では総括の代わりにアレクサンドロスの年表を載せいてるのだが、それを見て笑ってしまった。『ヒストリエ』の最新巻はまだ3行目までしか進んでいない。そしてエウメネスが真に活躍するのはアレクサンドロスが死んだ後なのだ。
投稿元:
レビューを見る
古代ギリシアを描く歴史エッセイの最終巻。
アレクサンドロスの父、アレクサンドロスときて混乱のうちに終焉しました。
著者がアレクサンドロスが書きたかったためにこの物語を執筆したことが犇々と伝わってきました。
特にアレクサンドロス後がとってつけたような端折った終わり方だったのが驚きでした。
さらに、歴史エッセイはこれで終了するという宣言も驚きでした。
これまでの感謝も込めて満点評価です。
投稿元:
レビューを見る
ギリシアは迷走の時期に入る。
この混乱期に現れた、たった一人の英雄の名前は今でも歴史に燦然と輝く。
アレキサンダー大王、歴史上たった一人「大王」の称号をつくマケドニア王の三十二年間の生涯を描く。
ペルシアからの軍勢を退けた後、ギリシアでは都市国家アテネ、スパルタ、テーベと覇権国家が目まぐるしく変わる。
凋落と没落を繰り返し、ギリシア全体の力が低迷する。
そこに現れたのは、ギリシア北部オリンポス山の北のマケドニア王国だった。
ギリシアでは都市国家ともみなされなかった田舎では、マケドニア王フィリッポス二世が新しい戦術を編み出しギリシア北部に攻め入っていた。
重装歩兵「ファランクス」は、二つの長槍を一本にして通常の二倍の長さの槍を持つハリネズミの陣形で敵を攻める。
フィリッポス二世は息子にはレオニダスによるスパルタ教育と、アリストテレスによる哲学を叩き込んでいた。
息子の初陣は、当時覇権国家のテーベ、それとアテネに続くほかのポリス連合との戦いとなるカイロネアの会戦だった。
息子は待機するよう言明されていたが、一瞬の隙をついて騎馬隊を突撃させ、隙をつかれたテーベ軍は総崩れとなる。
当時18才、フィリッポス二世の息子こそアレクサンドロス。
その三年後に渡って小アジアでのグラニコスの会戦を皮切りに、イッソス、ガウガメラの会戦を経てアケメネス朝ペルシアを滅ぼし、ヒダスペスの会戦でインドまでを攻め込む。
この間、たったの10年。
アレクサンドロスが駆け抜けた激動の十年は歴史に刻まれ、今でも大王の名が燦然と光り輝く。
速攻に次ぐ速攻。自らが先頭を走り敵に猛進していく。その兜にたなびく純白の羽飾り。
男も惚れる、連戦連勝負け知らずの最強の王のが華々しくも、その裏で悩み苦しんだ人間臭さが短い生涯という運命と相まって深く印象に残る。
人間、人生に一度は負けられない大事業を成し遂げてみたいものだ。
投稿元:
レビューを見る
500ページ近い大著ですが読みやすいです。僕はいつも就寝前の時間をこの本にあてていました。著者の作品の多くは国家のあり方、そしてリーダーのあり方を述べています。今回のギリシア人シリーズもそうでした。どうしても現代に生きる私たちは、民主的なことイコール善という考えをもってしまいがちですが、必ずしもそうではないことを塩野さんの著作全般から学ばせてもらいました。今回の主人公アレクサンダー大王も独裁者といえばそのとおりで、ある事件の際には、哲学者たちから大きな批判を受けたそうです。しかし、彼らの言論の自由は、独裁者であるアレクサンダーが亡くなった後に失われたというところなどは思わず「うーん」と考えずにはいられませんでした。歴史長編はこれで最後ということで本当にお疲れ様でした。僕は、ローマ人の物語があと2巻残っているのと中世を書いたものの多くが未読なので、もう少し塩野ワールドを楽しめそうです。
投稿元:
レビューを見る
面白い!
結構厚い本でしたが一気に読み終わりました。紀元前の古代世界にこんなダイナミックな歴史があったとは!
小生はコミック「ヒストリエ」も愛読していますが、その登場人物のキャラが本書を読書中に行間から頭に浮かんで実に楽しかった。
しかしアレクサンドロスは凄い。イランにしろアフガニスタンにしろ現代でも難治の国である。これらの広大な大地を制覇するとは。
現代のリアル世界にこの様な英雄がいれば、中東問題も一気に解決するのにと思わず夢を見てしまった。
本書は楽しみながら歴史を学ぶことができる本であると思う。塩バアには「これで最後」などと言わずまだまだ著作を続けて欲しいものである。
2018年1月9日 読了。
投稿元:
レビューを見る
塩野節の集大成。カエサルが大好きなのは明白だが、アレキサンダーは2番めに好きなのだろう。いつもと同じく歴史書ではなく、彼女の主観に基づいた歴史小説だが、アレキサンダーが主役かつ、最新刊の本書は特に色濃い。だが、ファンならそれも含めて楽しめる。おまけのあとがきで、珍しくファンへの感謝も綴られている。私は最近は図書館ですませているが、それでも文庫100冊近く買っているので、ちょっと嬉しい。とはいえ、塩野ファンでなくても歴史好きなら間違いなく面白い。イタリア版司馬遼太郎、だと思ってる。