投稿元:
レビューを見る
平和主義という概念がいかなる意味内実をもち、異なる立場と比較した場合、平和主義理論がいかなる思考を提供してくれるかを平明に解説している。国際関係論における、国際関係はいかにあるべきか、という問題に対する様々なアプローチを現実主義や人道介入主義として取り上げているが、国際関係論を専門的に学んだ人にとってはなかなか納得しがたい議論も含まれているように思われる。それでもやはり、平和をめぐる政治学的言説を出来る限り網羅しようとしていて、平和論への導入として非常に優れた新書であると思う。
投稿元:
レビューを見る
さまざまな平和主義、そして非平和主義を「否定」するのではなく、批判的な論証を通してそれらとの「対話」を試みる。
投稿元:
レビューを見る
政治哲学の見地から見た平和主義の解説。
手法としてはまず平和主義にどのような分類があるか整理したうえで、様々な非平和主義の主張と「対話」するスタイルを取っている。
その結果として
(1)戦争と平和に関する主義・立場について政治哲学的見地から広く理解できる。
(2)非平和主義の主張を紹介し、相対化することで、平和主義の立場をより浮き彫りにすることに成功している。
(3)平和主義の立場に立ちながらも非平和主義の主張を頭ごなしに却下しておらず、読者に考える余地を提供している。
何せ歴史的に議論の積み重ねが非常に多い分野であるから、本書一冊で網羅することは当然かなわないことだが、この分野について今まで全く触れたことのない私にとっては、深さ・広さともに程よい本だった。
あくまで哲学書なので、論理に論理を重ねて推し進める論調であるため、通勤電車の中でとぎれとぎれに読むと時々ついていけなくなることもあったが、概ね平易に解説されている良書。
投稿元:
レビューを見る
平和主義とは何かを考えるにあたり、はじめに重要なことは戦争よりも平和を愛好することをもって、平和主義の定義であるとするわけにはいかない。
戦後日本の平和主義は世界をリードする崇高な試みだった。
戦争には機会費用も含めた相応のコストが必ず生じる。もんだしあh戦争とその準備によって代わりに実施できなくなる政策と比較して、戦争がいつどのような場合に、そのコストにペイするのか、という点。
現実主義は国際関係論において、質量ともに他を圧倒する、疑いなく支配的な学説。
国際関係の最大の構造的特性はそれが中央政府の存在しない無政府状態(アナーキー)であるという点。より上位の権威が存在しない点で、国際政治の構造は経済市場の構造に似ている。
あるべき世界を語る平和主義者と異なり、現実主義者は現実の世界と向き合っている。
投稿元:
レビューを見る
どんな立場に立っても、つい熱くなりがちな平和論を、徹底的に思考する一冊。平和について考えたいなあとりあえず最初はこれかなあ、で手に取ってOKです。
投稿元:
レビューを見る
松元雅和『平和主義とは何か 政治哲学で考える戦争と平和』中公新書、読了。誰しも平和を希求するが、それは「空理空論」とレアリストは退ける。果たしてそうなのか? 本書は、実のところ幅広い概念である「平和」についての考え方を類型化したうえで、自称レアリストの難癖に答えていく一冊。
副題は「政治哲学で考える戦争と平和」。しかし本書の射程は政治哲学に留まらない。志向・思考領域として哲学原論から戦争と平和について考察する。教科書的新書だから当然、素描になる。しかし方法論的「済ませ」に終わらせない点が特色。
投稿元:
レビューを見る
トルストイの『戦争と平和』を読んでいる最中に目に入ったので、手に取る。
とても現実的な視線で書かれた「平和主義」の入門書だと思う。平和主義のパターンを類型化した上で、対象的な立場や、批判的な立場からの反論も検証していく。
タイトルに「政治哲学」とあるように、検証の仕方は論理に論理を重ねていく思考実験的で、私などそれに慣れない人間には読んでいるとちょっと頭が疲れてくるかもしれないが、豊富な引用や例があり文章はわかりやすい。
ただ絶対的に平和を唱えるのではなく、それぞれの利点や主張をバランスよく取り入れ、時は現実を考慮し妥協もしながら、著者はなぜ「それでも」平和主義が現在においても魅力的な主張であるかを説いていく。
本書を読んでもっとも思ったのは、やはり現代社会において平和主義を選ぶのは、相当の覚悟がいるだろうなぁ、ということだった。
非暴力を(強弱・範囲の差はあれど)主義として貫くことは、やはり、並大抵の覚悟でできることではない。
しかし、それでもこの平和主義の考え方は、多くの人が潜在的に望んでいることなのだろうと思う。
本書を読んで、私の中で平和主義そのものに対する何か胡散臭いイメージが、だいぶん払拭された気がする。
そして、圧巻は最後の読書案内! 平和主義を考えたい、勉強したいという人だけでなく、少しでもこれらのことに関わることを学びたい、という人にとって、素晴らしい導きとなるであろうリストだ。
そういう方面を勉強する学生が本書に出会ったらと思うと、その学生が羨ましい限りだ。
投稿元:
レビューを見る
2014.3.27
民主的平和主義が結論
難しいが、集中して一気に読めば理解できる。書き方に一貫性がある。
問題提起→平和主義と非平和主義よ立場を提示→結論→具体例→相手の立場に土俵を移し検討→具体例→再度結論。
使う場は、対話式の授業での題材。
ただ、いきなり使うのは難しい。本全体をもっと読み込まないといけない。
こんな風に論説すれば通じやすいと、わかる良い文章。
投稿元:
レビューを見る
憲法改正問題がクローズアップされている中、長年の矛盾とされてきた、憲法9条と平和主義の問題。特に「平和のために戦うべきである」という問題をどのように考えるかによって、軍事力との関わり方・立ち位置が定まってくる。本書ではただ「平和主義」の字面だけで片付けることをせず、敢えて「平和主義」の内実を政治哲学的視点で分析し、よく言われる、ただ単なる「平和か武装か」の二元論にすぐに陥ることなく、「平和主義」のバリエーションを細かく且つクリアに提示する。その中で著者が「目指すべき平和主義」も提示されてはいるが、それは「平和主義」をめぐる議論のたたき台として留めておくこともできよう。考えるべきなのは、むしろ「平和主義」の内実をどのように考え、具体的な手立てとして想定するかであり、その考えた理念の下で限りある現実の選択肢の中で最善の行動を尽くすかである。
投稿元:
レビューを見る
本書は平和主義と非平和主義の主張を順に取り上げ、吟味していき、最終的に何故平和主義がいいのか、という構成。平和主義と聞くと戦争絶対反対という考え方だけだと思っていたが、平和主義と一言に言っても多様であり、世の中にはこんな考えの人もいるんだなと素直にそう思った。自分の考え方はどうなのか自問自答する必要がありそうだ。やはり、相手を頭ごなしに拒絶するのはよくない。
投稿元:
レビューを見る
あらゆる場面で、それぞれの立場により許容される暴力の介入、というのはまさに本書でも紹介されているM.サンデルの話…つまり正義を巡る問題であって、そう考えると一応戦後はある程度平和主義の傾向を前提としながら国際関係が変化していったのかもしれません。しかし、終盤でも懸念されているように明らかに好戦的な傾向というのが今もまさに生まれつつあり、これが民主主義の果てなのかどうかはさておき、あとはこの議論はその中身が重要であって、落とし所、帰結は難しいというのも大事な見識と思います。
投稿元:
レビューを見る
平和主義・・・
暴力ではなく非暴力によって問題解決をはかろうとする姿勢のこと・・・
暴力に対して暴力で応答しない・・・
他国から侵略を受けても武力に武力で応戦しない!あくまでも外交努力や非軍事的措置で解決するんだ!
うむ・・・
これに対して・・・
他国から攻め込まれたらどうするんだ!?
応戦しないんか!?好き勝手されても何もしないで降参するんか?!攻め込まれたらやり返すだろ!
と平和主義をお花畑ヤロー扱いして批判する人々・・・
暴力に対して暴力で問題解決することを辞さない、こういう考えの人々を非平和主義というんだそうな・・・
本書では、正戦論、現実主義、人道介入主義が対象とされている・・・
うむ・・・
で、非平和主義者から平和主義者に対する究極の質問があります・・・
平和平和言うのは良いけど、愛する人が襲われたらどうするの?
何もしないの?放っておける?助けないの?戦うでしょ?ホレホレ?
やっぱり戦うんじゃん?何が非暴力だよー。
というよくある批判のヤツね・・・
著者はそれについてこう答える・・・
平和主義にはいろんなタイプがある・・・
強度(無条件なのか条件付なのか)や範囲(私的や公的にどうか)といった面から平和主義は細分化されるが、大きく分けると・・・
どんな場合でも、断じて非暴力を貫く絶対平和主義と・・・
場合によっては・・・と例外は認める平和優先主義に分かれる・・・
そのように平和主義といったっていろいろあるんだから平和主義の人はそんな質問で悩むことないよ、としている・・・
うーむ・・・
読んでると何だか歯切れが悪いように感じます・・・
ちゃんと答えになっているか微妙なような・・・
そもそも、平和優先主義って何?
それって、前述のような非平和主義と何が違うの?
戦争やりたがっているような極一部のクレイジーなヤバい人以外・・・
つまりほとんどの人は平和優先主義じゃないの?
正戦論者であれ、現実主義者であれ、人道介入主義者であれ、全速力で暴力(武力)だけによる解決に走らないよね?
外交努力もするし、非軍事的措置もするし・・・
しないの?するよね?してるよね?
場合によっては暴力による解決も辞さないってだけで・・・
場合によっては暴力による解決も辞さないってことは平和優先主義と非平和主義ってほとんど同じですよね?
絶対平和主義の方と戦争やりたがるクレイジーなヤバい人以外は、それぞれ【場合によっては】の条件が違うだけでみんな平和優先主義じゃないですかね?
読んでいて、著者は無理に分けようとしてる感じがしてならない・・・
あ、いや、逆にだからこそ感情論に陥らず、みんなでもっと議論をしようよってことなのかな?
うーむ・・・
上の点については疑問があるものの、その他は結構良くてですね・・・
自分がどの主義、観点に拠ってものを考えるのか?の良いパンフレットになっております・・・
平和主義の論拠として、義務論『ダメなものはダ��』と帰結主義『結果的に損ならダメ』の考え方・・・
正戦論の考え方と正戦論者に対してのツッコミ・・・
・双方ともに正義を振りかざすのに、自衛/侵略を正しく判別できるのか?
現実主義の考え方と現実主義者へのツッコミ・・・
・定番の安全保障のジレンマ
逆に現実主義から平和主義へのツッコミ・・・
・ヒトラー止められなかったじゃん
人道介入主義の考え方と人道介入主義者へのツッコミ・・・
・現行の国際法に照らして、違法とは言わないけど、結構超法規的な措置だよね?
・そうは言っても結局暴力は暴力を生むよね?
・そもそも紛争当事者に武器を持たせないようにするべきじゃない?まずは武器売りつけないでよ?
といった内容になっておりまして、現代の国際関係に関する政治哲学の概要をザッと確認できるという点で良書だと思います・・・
平和主義者と非平和主義者って、お互いにあーだこーだ言い合うんですよね・・・
結構な溝がある・・・
その溝が埋まらない・・・
そこで著者・・・
「重要な点は、平和主義者と非平和主義者が、単なる好き嫌いの次元を超えて、その理由を相互に説明できる議論の土俵を共有することである。」
健全で妥当な議論によってその溝を埋めるための一助に、という一冊でもある・・・
オススメです・・・
投稿元:
レビューを見る
現在の国際情勢と平和主義(及び非平和主義)に関する現状を詳述し、民主的に非暴力か暴力かを選択する情報を提供したいという筆者の姿勢には完全に賛同するし、その意図はよく伝わってくる。
が、たぶん筆者が考えている以上に、この内容は難しい。参政権は18歳に引き下げられたが、これを読める高3生はほとんどいないだろうし、当然大学生にとっても状況はそう大きく変わらない。
本書の目的への共感と、丁寧な仕事への感服が大きいだけに、もっと優しい言葉で、もっと万人に向けたものを、と望まずにはいられない。
投稿元:
レビューを見る
安倍晋三が言う「積極的平和主義」の概念がよく分からない。
これまで「積極的平和主義」と言うのは戦争や紛争がなく、
貧困や差別が存在しない社会を作ることだと思っていたのだ
けれどね。
どうも安倍晋三が口にする「積極的平和主義」は私が思っていた
概念と相当のかい離があるらしい。てか、よく分からないんだな。
安倍の言う「積極的平和主義」が。
教えて~。エライ人。
という訳で、「積極的平和主義」は脇に置いておいて「平和主義」
について考えてみた。
本書では平和主義を「絶対平和主義」と「平和優先主義」に2分類
している。これは非暴力の平和主義と条件付き平和主義ってこと
でいいのかな。
戦争や紛争がないに越したことはない。ただ、人類の歴史は
戦争の歴史でもあるんだよね。常々、思っているんだが戦争に
良いも悪いもない。それは、国が人を殺すことだから。
改憲が叫ばれるようになって久しい。日本国憲法は「平和憲法」
とも言われて来た。それを変えようとしている。否、変えたいと
強く願っている人たちがいる。
平和であっちゃいけないんだろうかと思う時がある。「平和ボケ」
と言われようと、平和であることは重要なことなんじゃないかな。
例えば日本がどこかの戦争や紛争に参加したとしよう。私自身が
そこで戦う訳じゃないんだが、そこで失われる命に無関心では
いられないと思うんだよね。
日本では武器輸出三原則が見直された。海外に供与される日本の
武器が誰かを殺傷する。考えただけで嫌だわ。
投稿元:
レビューを見る
「愛する人が襲われても無抵抗で良いのか?」という命題に対して,古今東西の各種考え方を提示.すこし読みづらいが考え方の整理にはなる.最終的な結論は自ら出すしかない.