紙の本
感染症が大きく歴史を動かした!カナダの歴史家マクニール氏の傑作です!
2020/07/17 10:17
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、カナダ出身の歴史家ウィリアム・ハーディー・マクニール氏の傑作です。同氏の研究テーマは「西洋の台頭」で、さまざまな旧世界の文明の互いの影響、とりわけ1500年代以降に西洋文明が他の文明にもたらした劇的な影響という観点から世界史を探索した人物です。 同書では、アステカ帝国を一夜にして消滅させた天然痘など、突発的な疫病の流行は歴史の流れを急変させ、文明の興亡に重大な影響を与えてきたと説きます。紀元前500年から紀元1200年まで人類の歴史を大きく動かした感染症の流行を詳細に見た同書は、従来の歴史家が顧みなかった流行病に焦点をあてて世界の歴史を描き出した名著です。同書は2巻構成になっており、第1巻目は、「第1章 狩猟者としての人類」、「第2章 歴史時代へ」、「第3章 ユーラシア大陸における疾病常生地としての各文明圏の間の交流」となっています。
紙の本
面白い!
2014/01/26 17:28
2人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひゅい - この投稿者のレビュー一覧を見る
前半の歴史以前の記述は、自分にとっては、読みにくかったが、後半から面白くなってきた。
投稿元:
レビューを見る
人類に寄生、感染発病する疾病、捕食者を地域と時系列で追った社会学的著書。現生人類の誕生前の樹上生活時から、世界各地に文明が栄える12世紀までを上巻で取り上げている。
著者は寄生を広義にとらえ、ライオン・オオカミなどによる捕食、ヒトによる寄生(略奪・支配)をマクロ寄生とし、微生物についてはミクロ寄生と定義した。さらに気候、統治、農耕による影響を加えて検討している。一例で言えば、ヒトの移動や都市の形成にともない新たな寄生を受けた当初は劇症を発するが、寄生主も生き延びるために変態し、慢性化をして定着していくといった具合である。
読者が印象的であったのは、戦争の必要性(人口、食糧)、風土的疾病による見えないバリア、宗教発祥の地域性など、単なる道徳やイデオロギーでは解し得ない生き物としてのヒトという観点だ。
投稿元:
レビューを見る
疫病と人間との関係、さらに疫病が歴史に及ぼした影響まで考察した好著。「マクロ寄生」と「ミクロ寄生」の概念は非常に面白い。
投稿元:
レビューを見る
ウイルスや細菌などによる疫病と人類は切っても切れない関係にありますが、その疫病の蔓延が歴史に及ぼした影響を、ときに少々強引とも思える論により展開されてゆきます。
それにしても内容は幅広く、人類の黎明期から現代、しかも全地球規模にわたって丹念に述べられています。日本もちょっぴり。
「ミクロ寄生」「マクロ寄生」といった独創的な捉え方も興味深いです。
投稿元:
レビューを見る
世界史の大家であるウィリアム・H・マクニール先生による、疾病が及ぼした影響から世界史を読み解こうとする野心作。大変ざっくりした展開で驚くが、古今東西の具体例がふんだんに盛り込まれているので、納得できる。
「マクロ寄生」と「ミクロ寄生」に挟まれる「宿主」。バランスをうまくとることで、この三者は存在し続けられる。この平衡状態の網目は、環境によって変化する。例えば、熱帯では密度が高いため、外来種や資源以上の生命を養うことができない。反対に、より寒冷乾燥な気候になればなるほど、密度が低いため、外来種が入る余地がうまれる。
宿主と寄生体の間には、緊張した関係がある。寄生体に対して免疫を持たない宿主は、寄生体から破滅的な攻撃を喰らうことになる。しかし、攻撃が激しすぎて宿主を完全に絶滅させてしまえば、寄生体の生存に関わる。何世代も(本書内では四~五世代とある)かけて、両者が和解しようとするプロセスをたどる。結果、宿主は免疫をもち、寄生体の暴力性はマイルドになる。
これらの仮説を駆使して、上巻では原始時代~モンゴル帝国勃興以前の世界史を読み解いている。
投稿元:
レビューを見る
読了したのはかなり前だが…
ワクワクしながら、「スゲー!スゲー!マジでー?!」と驚きながら、あれよあれよという間に読み終わってしまったことが印象的。
ザックリとしていながら、世界が網羅されているという、スリリングで素敵な歴史書です。
超オススメ!!
投稿元:
レビューを見る
世界中で長く読み続けられている中公文庫の「世界史」を書き上げたマクニールが、『疫病』という観点から歴史を紐解いた本。
最近文庫化して中公文庫「世界史」の隣においてある「銃・病原菌・鉄」と似たテーマであり、病気というものが如何に人類に影響を与えてきたのかがよく分かる。
人類を最も多く殺したのは事故でも戦争でもなく「病気」であり、これが常に戦争の結果や文明の運命を大きく左右してきた。
スティルバーグ監督の映画「宇宙戦争」の最後に、酸素が原因で侵略者達が滅亡するシーンがあったと思うが、人類は他の地域から侵略を受ける度に、お互いの病原菌を運んで大打撃を受けてきたのである。免疫力というものが古来の戦争には非常に大きな勝因であるらしい。
よくも悪くも人口を抑えてきた疫病だが、最近はかなりの種類を滅してきたかのように思える。しかし、アフリカ大陸を考えてみるといい。未だに野生の動物が数多く暮らす彼の大陸は、動物が駆逐されない範囲で生態ピラミッドが成立していることを表す。つまり疫病が人口増加の制約として機能しているということだ。
人口が多くなるほど、新たな疫病が広がる確率が高くなる。少し前に起こった鳥インフルエンザもその一つだ。人類の未来を考える上で、唯一の天敵を学ぶことの有意をこの本は教えてくれる。
投稿元:
レビューを見る
疫病の発生過程の説明にまず驚かされた。初期の人間は、生態系の中に組み込まれており、自然な疫病による人口統制がなされていた。しかし、狩猟や農耕を始めることによって生態系を壊し、ミクロな病原菌の生態系をも壊すことによって細菌の繁殖力を増強することによって都市病等の病気にかかるようになっていった。このように自業自得的な過程があったということに非常に驚いた。
そして、このように周期的に訪れる疫病からの死の恐怖が、キリスト教を発展させていった。というのが面白かった。キリスト教では死は幸福であり、ほかの宗教では不幸であるというはっきりとした違いを再確認させられた。
また、このような疫病が数々の戦争の原因となったり、勝敗を決する要因となったりしていることに驚かされた。さらに、戦争の原因となっているにもかかわらず、その戦争の衛生部隊によって衛生観念が広まっていったという逆説的なことにも驚かされた。
最後に筆者が述べていた、「過去に何があったかだけでなく、未来には何があるのかを考えようとするときには常に、感染症の果たす役割を無視することは決してできない。創意と知識と組織がいかに進歩しようとも、規制する形の生物の侵入に対して人類がきわめて脆弱な存在であるという事実は覆い隠せるものではない。人類の出現以前から存在した感染症は人類と同じだけ生き続けるに違いない。」という文章は、この先も真実であり続けるだろうと思った。技術が発展するにつれて菌の繁殖力が強まっているという背景にはこのようなものがあるのだろうと考えさせられ、技術の発展も一概に良いことといえないのではないかと思った。
投稿元:
レビューを見る
疫病が世界史に与えた影響について壮大なスケールで書かれていて、世界史の見方としておもしろい。本当かどうかわからないあやしい説明も含めて楽しめた。
18世紀以降を描いた6章は具体的で、瘴気説・細菌説の論争や、軍事医学の進歩や、ハンブルク市・アルトナ市の上水道の例など、科学で感染症を克服していくさまがよくわかった。著者は病原菌と人類の戦いはずっと続くとしているが、科学という武器を手に入れたらやはり人類の勝ちになるのではないか。
投稿元:
レビューを見る
歴史を理解する上で、気候変動と人口動態は考慮しなきゃならんと思っていたが、そこに疫病も追加せねば。。。
疫病は身体的にだけでなく、精神的にも人、社会を打ちのめす。(だから、南米の古代帝国はスペイン人に屈した)
日本では、人口が十分になり、疫病が風土病として固定されるまでは、社会に免疫がつかず、1世代ごとに疫病が流行した(平安頃)が、これを乗り越えると、人口が倍増した(平安末期~鎌倉)
投稿元:
レビューを見る
ときどき日本語が変なんだけど、そこは仕方ない。
歴史を学んでいると、よほどでないと病気の話ってでてこなくて、この本を読んで震えた。
地政学を読んだ時、自然の境界を越えたとき、国は滅亡するってあったんだけど…これ、病気もあるんだろうなぁ。
投稿元:
レビューを見る
経済雑誌のおすすめ。
決して難解な文章ではない。
ただ、あまりに膨大な情報量、
反語表現の多さ、
時空を超えた例示にキャパオーバーになってしまう。
自分がどこにいるのか、いつの何の話を読んでいるかを
見失いがち、とでも言うか。
そしてついつい、本筋を離れて、枝葉末節の話を拾ってしまう。
英国海軍が壊血病に効果のないライムジュースを飲んでいて、ライミィと呼ばれてたとか、
農業が始まってからよりも、狩猟時代の人類の方が、
健康的で余暇があったとか。
(下巻に続く)
投稿元:
レビューを見る
(途中 2014年11月6日)
疑問1「中南米大陸特有の病原菌がピサロやコルテス等ヨーロッパ人に感染しなかったのか」→病原菌の数や歴史の長さ、多様性が違う?
疑問2「なぜアメリカ大陸の熱帯地方はアフリカと違い、人類の居住を妨げる程ではなかったのか」
2019/5/27
#感染症は食物連鎖に組み込まれた一部であり、バランサー
#技術の発展がバランスを一時的に破壊したが、近年感染症の逆襲が始まった
#感染症の根絶は難しいし、被害をコントロールするのも難しい。被害を最小限に抑えるには過大なコストが必要。
#感染症と宿主は持ちつ持たれつで、絶滅させると感染症側も絶滅してしまう可能性がある。だがそれを考えてやるのではなく、失敗を繰り返しトライエラーで結果的にバランス状態となる。
投稿元:
レビューを見る
異文化の邂逅は病原菌の交換でもある。人々が新しい病を克服するまでの抵抗がそのまま中世の停滞だとする。図版を使った解説本があればもっとすんなり頭に入るのだが。