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商品説明
人びとの「生活の立場」に立つ柳田民俗学。現代にも有効な思想として生かすため、環境論、近代化論などの視点から、その固有の方法論を明らかにする。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
鳥越 皓之
- 略歴
- 〈鳥越皓之〉1944年生まれ。東京教育大学大学院文学研究科修了。現在、筑波大学社会科学系教授。著書に「環境社会学の理論と実践」「環境社会学」など。
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紙の本
柳田民俗学のメタ理論を探る
2002/05/13 22:15
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投稿者:挾本佳代 - この投稿者のレビュー一覧を見る
いま、「共同体」という概念を検討し直している。経済学領域には、マルクス経済学をはじめとして、多くの共同体論がある。もちろん社会学領域にもある。その黎明期にまで遡れば、先人たちが共同体に関して多くの知識を蓄積していることがわかる。しかし、今日ところどころで語られる「共同体」観は、先人たちが蓄積してきたものとは異質のものである。インターネット網を縦横無尽に張りめぐらせれば、ある地方都市の中に新たな共同体ができあがるのか。同じくインターネットと医療現場や福祉現場を直結させれば、老後に快適な新たな共同体が作られるのか——。「共同体」の再検討には、こういう問題も含まれてくる。
日本の共同体研究として、絶対に欠かすことができないのが、柳田国男の民俗学である。共同体の中に生きる人間を記述する際、なぜ柳田は、庶民という言葉を用いないで「常民」を用いたのか。同じく共同体研究において注目すべき農村研究に、有賀喜左衛門の一連の著作があるが、その有賀と柳田の研究観点はどこが違うのか。こうしたこちらの疑問に本書は答えてくれている。
本書の一番の特徴は、著者が現在大きな関心をもっている「環境論」の観点から、柳田民俗学を分析していることである。最近のいわゆる環境ブームに乗じた、上っ面だけの環境論に辟易していた私としては、著者が柳田に依拠しながら、現在非常に難しい環境状態におかれている私たちが摂取するべき観点を柳田に探っているのは、とても興味深かった。
ただ一点だけ、私としては「自然を二つに分けられる」とする著者の主張は全面的に肯定しがたいところがある。それは、柳田国男が民俗学として追求し記述してきた人間と共同体のありかたにおいて、自然は二つに分かれるのであろうか、ということである。分ける必要を、たとえば「美しき村」や「雪国の春」で描かれた共同体の一員である人間は感じていたのであろうか。著者は人間が自然をどのように捉えていたのかという問題を柳田民俗学から追求し、いわゆる自然界と(自然界に影響される人間)「小なる自然」を峻別して、大なる自然の運行を小なる自然である人間が受けながら生を営んでいると考察している。この柳田の自然観については、あとはもう一度柳田の声にじっくり耳を澄ませなければならないだろう。 (bk1ブックナビゲーター:挾本佳代/法政大学兼任講師 2002.05.14)