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トマト・ゲーム
著者 皆川 博子
壁に向かってオートバイで全力疾走する度胸試しのレース、トマト・ゲーム。22年ぶりに再会した男女は若者を唆してゲームに駆り立て、残酷な賭けを始める。背後には封印された過去の...
トマト・ゲーム
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トマト・ゲーム (ハヤカワ文庫 JA)
商品説明
壁に向かってオートバイで全力疾走する度胸試しのレース、トマト・ゲーム。22年ぶりに再会した男女は若者を唆してゲームに駆り立て、残酷な賭けを始める。背後には封印された過去の悲劇が……第70回直木賞候補作の表題作をはじめ、少年院帰りの弟の部屋を盗聴したことが姉を驚愕の犯罪に巻き込む「獣舎のスキャット」等、ヒリヒリするような青春の愛と狂気が交錯する全8篇収録。恐怖と奇想に彩られた犯罪小説短篇集。収録作:トマト・ゲーム/アルカディアの夏/獣舎のスキャット/蜜の犬/アイデースの館/遠い炎/花冠と氷の剣/漕げよマイケル
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紙の本
トマト・ゲーム
2016/11/07 13:02
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:によ - この投稿者のレビュー一覧を見る
皆川さんの、1973~76年ごろの作品を収めた短篇集。
読みたくて読みたくて買って、でも、すぐに読むわけじゃなくて、積読というのとも違って、「私の準備が整うまで、待っていて欲しい。その背表紙を毎日眺めて、どっぷり浸かれるようになる日を待っていて欲しい」本の、待機場所というのがある。
そこで半年眠っていてもらった、「トマト・ゲーム」である。
半年間、何度も手に取り、表紙をうっとりと眺め、ブックカバーをかけようとして、「でも、まだだ…」と感じ、本棚に戻した。
やっと、皆川さんの世界にずぶりと沈みきる準備ができました。
『いつか華麗な狂気の世界を、文字の上にもあらわしたいと、一枚、二枚、と書きつづけています。』(p.431、受賞コメントより。皆川さんの言葉。)
不安と恐怖は、狂気と仲良しだ。
いつの時代も、きっとそれらは仲良しなんだろう。
全然違う時代の、全く知らない少年少女の、恐怖や不安や焦燥や憎悪を、しかし私は知っていると思った。
登場人物たちを、身近に感じてしまう。
その身近さに同族嫌悪を感じる、孤独さも。
心配ばかりが降り積もる、不安と恐怖とそれから憎悪に絡め取られたら、輪郭の曖昧な狂気の世界の靄が足元からたちこめる。
皆川さんがその怖ろしさを、『華麗に』描いてくれるから、孤独にならずにすむことができるのだと、感じた。
何の音楽もかけず、皆川さんの本とこんな時間を過ごせる。
今日は素敵な一日だった。
また「待機場所」に皆川さんの本を新しく追加しないといけない。