紙の本
国家が繁栄するためには、包括的経済制度を支える包括的政治制度が必要
2017/04/29 10:28
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投稿者:コスモス - この投稿者のレビュー一覧を見る
国家が繁栄する(した)ことを説明するための理論として、
著者たちは地理説、文化説、そして無知説を否定し、「制度説」を支持しています。
国家が繁栄するためには、人々にインセンティブを与え、創造的破壊(経済的技術革新)を生み出す「包括的経済制度」が必要であることが示されています。そのような包括的な経済制度を支えるために、高度に集権化された政治機構である「包括的政治制度」が必要であることも示されています(これらのような経済制度や政治制度が成立するかどうかは、各国間の小さな相違に影響される)。
国家が繁栄するために必要な制度を述べ、それ以外の要因を否定しているので、人によっては「単純な制度決定論」に感じると思います(経済学者ジェフリー・サックスはそのように批判しています)。
また、繁栄していない国で、包括的な経済制度や政治制度が成立するために必要なことが示されていないことも残念に感じます。
(レビュー内容は下巻と同じ)
紙の本
国家とは合法的な暴力の独占
2022/09/04 17:53
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
現代の視点から見た各国の興亡の理由原因を探った大部の書物である。興亡の原因として「地理説」を唱えるジャレッド・ダイヤモンドの批判もありなかなか面白かった。過去の国家の興亡の原因としての地理説を現代に援用するということの無理は、当然みんなわかっていること思うが。
マルクスは下部構造つまり経済によって上部構造 政治体制が決まる と言っているが、この本の著者は逆に政治体制が経済発展を決める と言っている。現代における共産主義の失敗を見ると明らかな説に思えるが、マルクスが生きていた百数十年前は自明ではなかったのだな。
過去現在未来全てに通用する国家の本質とは「合法的な暴力の独占」という言葉に完全に納得してしまった。しかし本書の中で多用されている「包括的」という言葉には大変違和感を抱いた。「自由で平等な」とでもいう意味なのだろうか?
紙の本
すごくまっとうな作品。
2016/07/30 20:15
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投稿者:わびすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
びっくりするほどまっとうな話しかしていない。経済的に発展するためには政治的な健全性、とりわけ新規参入者に広い機会を与えることであるということ。…あたりまえですよね。世界史の教科書を読んでいるような気分になった。さすがに教科書よりは近年の国際情勢や、モデルとなる国家の近代史などが語られており参考になった面もある。あとは具体的な指針の提示があればよかったのだが、そこら辺はあいまいな感じでやっぱり教科書的でした。
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国家衰退を様々な尺度で読み解いた本。地理性・文化性あまり関係ないとのこと。理由は同じような環境下で繁栄・衰退した国がある。例えば、カンボジアに対してシンガポールなど
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原書名:WHY NATIONS FAIL
序文
第1章 こんなに近いのに、こんなに違う
第2章 役に立たない理論
第3章 繁栄と貧困の形成過程
第4章 小さな相違と決定的な岐路―歴史の重み
第5章 「私は未来を見た。うまくいっている未来を」―収奪的制度のもとでの成長
第6章 乖離
第7章 転換点
第8章 縄張りを守れ―発展の障壁
著者:ダロン・アシモグル(Acemoglu, Daron, 1967-、トルコ、経済学)、ジェイムズ・A・ロビンソン(Robinson, James A., 1960-、イギリス、経済学)
役者:鬼澤忍(1963-、翻訳家)
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「世界の不平等の原因はどこにあるか?」が本書のテーマ。地理的要因が大きいと考えてきたけど、著者らは政治経済の違いに着目し、これを歴史的に検証している。政治と経済の収奪的制度と包括的制度を区別し、包括的な政治・経済制度が国家の繁栄につながると主張する。この論が正しいのかは中国の今後が一つの試金石になるのかな。自由貿易を進めれば民主化が達成されるという近代化論は中国には当てはまらなそう。そこが他の独裁国(の独裁者)が中国に惹かれるところだろう。
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中央集権×成功報酬で経済は繁栄する。変化を恐れる創造的破壊は停滞を招く。民主的ならそれでいいわけでもない、ちょっとした差が大きな格差に。搾取も。下巻でタイトルをどう回収するか
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国家が衰退するのは、いわずもがな経済政策の失敗によるところ。ジンバブエやベネズエラはその典型。しかし経済政策の失敗の根本原因は結局政治。特権、汚職、独裁。何よりも歴史が証明している。
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明日、新しい時代である「令和」を迎えるにあたり、部屋の片隅に読みかけとして置かれていた本を一斉に整理することにしました。恐らく読み終えたら、面白いポイントが多く見つかると思いますが、現在読んでいる本も多くある中で、このような決断を致しました。
星一つとしているのは、私が読了できなかったという目印であり、内容とは関係ないことをお断りしておきます。令和のどこかで再会できることを祈念しつつ、この本を登録させていただきます。
平成31年4月30日(平成大晦日)作成
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アリゾナ州ノガレスとソノラ州ノガレス、北朝鮮と韓国を比較することから始め、国家の衰退が政治的制度と経済的制度の相互作用によるものだということを見ていく。
例えば、ジャレド・ダイヤモンドのような地理説は現代世界の不平等を説明するのに敷衍できないし、マックス・ウェーバーに端を発するプロテスタントの倫理が近代的工業社会の隆盛を促す重要な役割を演じているとした文化説も、結局は制度による帰結が文化や心性となるあたり等、他の説との考え方の違いなどを見ていくのも勉強になる。
また、より良い経済政策を知らなかったという無知説について、この間違いを犯す理由は、無知によるものではなく、貧困を生み出す選択をしている、つまり故意であるという話も面白い。
繁栄を達成するためには、いくつかの基本的な政治問題を解決する必要があり、それは安全な私有財産、公平な法体系、公共サービスの提供(物品を運ぶための道路と輸送ネットワーク)、契約と取引の自由等といったものになるが、マックス・ウェーバーが示した国家の本質「合法的な暴力の独占」に対して、包括的な経済制度を取れるか収奪的な経済制度となるか、その違いが決定的な差となる。
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豊かな国と貧しい国を分けたものは何か。
簡潔な要旨と、歴史上の事例を元に二人の政治経済学者が、この問いに挑みます。
上巻で挙げられる事例は、古代帝国から中世ヨーロッパ、産業革命のイギリスなど多種多様で、歴史的な事にも結構ページが割かれているのですが、要旨自体は一貫して書かれているので、内容は理解しやすい。
著者が挙げる問いに対する回答は、まとめるととても簡単です。開かれた政治と経済、そして民主主義が豊かな国に必要とのこと。
誰にでもチャンスがあるからこそ、新たな発想が商品やサービスとして、社会に提供され、経済をより豊かにする可能性が高まる。
逆に独裁的な国家や政治、社会主義的な国家・経済だとそれが生まれず、経済が停滞するとします。それはなぜか。
社会主義ならば資産が持てず、階級も変わらない。そのためそういう状況では人は、新たな発想を生み、社会を変える可能性を感じられなくなる。
また新たなイノベーションは時に、既存の権力を揺さぶります。現代でもAIが既存の仕事を奪う、という議論が度々出てくるけれど、そのように新たな発想や発明は、現代の状況を一変させかねない。権力者側にとってそれはとても都合が悪いことです。
新たなイノベーションによる社会不安が、国家を揺るがすかもしれない。産業構造を塗りかえるかもしれない。それにより、今まで権力を持っていた人や、資産を持っていた人が敗北者になるかもしれない。
そして権力者が取る手段は、新たなイノベーションの芽を摘むこと。それが独裁であったり、政治や経済の硬直的な制度へとつながります。
だからこそ、開かれた政治、個人を代弁する選挙が必要だと著者はしています。
名誉革命により、国王の権利を制限し議会が生まれたイギリス。後にイギリスで産業革命が起こるわけですが、権力者の権利を制限し、庶民が活躍できるよう議会が制度を整えていったから、ということになるわけです。
こうやって読んでいると現代日本にもつながりそうな話。コロナ禍で日本のデジタル化に関する遅れが一気に露わになりましたが、それも硬直した制度や考え方が足を引っ張ったからのように思います。
そして、この考え方は国や政治という大きな枠組みだけでなく、会社などの組織、そして個人にも繋がるような気がします。
新しいものを恐れ、古いやり方に固執した先に待つものは何か。ますます不透明になっていく世界において、この本の考え方は、色々なところで応用が効くもののように感じます。
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様々な国の歴史を通して国家はなぜ発展し繁栄するのか、もしくは衰退するのかの原因を歴史を通して克明に詳細に考察し描いている。いろいろな書籍の中で国の経済が発展する理由と政治との関連性などが詳細に克明に描かれていてなかなか面白い本です。
どのような組織体系、国の成り立ちや在り方が繁栄へと導かれていくのか大変勉強になり事業経営者など組織のリーダーにとっては現実の複雑な社会の中で応用できるものと思う。
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Why Nations Fail: The Origins of Power, Prosperity, and Poverty
https://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/112578.html
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感想
世界史学習者が一度は抱く疑問。なぜ隆盛を極めた国が現在発展途上国として認識されているのか。発展の速度と大きさの間に逆相関があるのだろう。
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集団や組織が繁栄していく法則は、制度にある。
それは本書が示している包括的制度である。
包括的制度とは、中央集権的でありながらあらゆる連合によって政治が保たれているものである。包括的制度の逆にあたる、収奪的制度は、一党独裁である。また政治は1つの手段によって組織されている。
それにより1部のエリートは利益を得るようになっている。こう考えると、今なぜ日本が不況に陥っているかがよくわかる。政治はほぼ一党独占状態にあり、税金によって国民から利益を巻き上げる仕組みになっている。日本が不況から出るためには、包括的制度に移行しなければない。