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- カテゴリ:一般
- 発行年月:1983.10
- 出版社: 早川書房
- レーベル: ハヤカワ・ミステリ文庫
- サイズ:16cm/491p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-15-074701-5
偽のデュー警部 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
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紙の本
ユーモアと意外性に富んだ第一級のエンターテイメント
2002/02/06 17:07
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろぐう - この投稿者のレビュー一覧を見る
時代設定は1920年代だが、単なるノスタルジーのためではなく、それがプロットの重要な仕掛けにもなっている。ストーリーはイギリスで実際に起きたクリッペン事件や、チャップリンなどの実在の人物を巧妙に配して、ユーモアとサスペンスたっぷりに語られる。
デュー警部はクリッペン事件を解決した実在の人物。船上で主人公が彼の名を騙ったところ、思わぬ殺人事件の捜査に駆り出されるのだが…。
偽のデュー警部が事件を解決(?)していく過程の筋の運びが、ユーモアと意外性に富んでいてすばらしい。しかも、最後にあっと驚くような仕掛けも用意されていて、本当の意味ではひとりも探偵が登場しないのに、優れた本格物を読んだような充足感をおぼえる。読後感もさわやかな逸品。
紙の本
実在の刑事と偽る男の犯罪捜査、しかも洋上
2002/03/01 02:51
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キイスミアキ - この投稿者のレビュー一覧を見る
恋をしたことがない、と認識している二十八歳の女性、アルマ・ウェブスターは夢見がちだった。恋愛小説のぺーバックに書かれた出来事を思い出しては、自分の姿とヒロインの姿を重ね合わせ、日々の中で無意識の内に出会いを求めている。
ある日、アルマは勤めている花屋の主人に紹介され、歯の治療にウォルター・バラノーフの医院に通いはじめる。そこで二人は運命的な出会いをというものを信じ、ウォルターの人生を狂わせようとしている彼の妻、リディアの殺害を計画する。
一九二〇年代の、英国から米国行きの豪華客船を舞台に、邪魔な女を殺害するために、偽名で乗り込んだ二人。女は殺される女になりすまし、男は思いつきで名警部の名を語ることにするのだが……。
やがて起こる、意外な殺人事件に、引退した元名警部として捜査に駆り出されたウォルターとアルマの運命は?
裏表紙には、この作品を評して《本格ミステリ黄金期の香り豊かな新趣向の傑作》というコピーが書かれている。古い黄金期のミステリー的であり、それでいて新しいというのは、矛盾しているようで矛盾していない。黄金期の傑作たちは、それぞれに新しく、いわばそれぞれが独立したオリジナル、現代ミステリの原形とも言えるからだ。
黄金時代を感じさせる要素としては、この作品が一九二一年を舞台としていることを挙げられるだろう。喜劇王チャップリンが英国に戻り、一時大戦の傷が癒えつつあり、豪華客船が英米間を往復している。
新しい趣向という点では、人物形成に多くのページを割いていることか。古典とされる本格ミステリにおいては、物語の最初期に不可解な謎が提示されることが多い。
セイヤーズの『誰の死体?』では、浴槽に誰なのかわからない死体が納まっている。また、ノックスの『陸橋殺人事件』では、自殺なのか他殺なのか事故死なのか、いかんとも判別しがたい死体が登場する。興味深い謎が持つ魅力と、名探偵ですらわからないという逆説的な説得力によって、ラストの驚くべき真相までの間、読者は造りのものの世界に入り浸ることになる。
だが、『偽のデュー警部』では、誰か偽警部となることは早々に明かさせるが、物語に参加する人物たちの紹介にページの半分近くを費やし、殺人が起こるのは半ばを過ぎた頃となる。主人公たちがこれからどうなるのか? ということに興味を引きつける手法だから、クライムノベル的ということか。
本格ミステリ的な展開となるのは、後半になってから船上で偽警部が登場した後のこと。ここまで、殺人事件を物語の後部に置いたことに、しっかりと理由があるところが作者一流の上手さ。
冒頭に多くのページを、登場人物たちの心理描写に割くことによって——特にアルマなどの思考は、彼女独特の論理によって行動が取り決められるため——物語が展開するうえでの重要な理由となっている。アルマの論理からは、ラヴゼイのユーモアセンスを感じさせられる。彼女の絡む、物語の結末も彼女らしいもので、妙に納得させられる。
探偵小説では、探偵や犯人が独特の論理を持ち、物語を展開させていくことがほとんどだが、この作品においては、ヒロイン? であるアルマの論理が背骨となっていることは興味深い。
本格ミステリが人物を描かないことを美徳としていることを、必ずしも悪習であるとは思わないが、徹底して人物を描写することで理由を造り出すことも、良質の本格ミステリを書き上げる上で、理由と成り得るという好例。
全編を通しての印象は、洒落ていて上手い。
紙の本
素直な気持ちで
2001/03/30 00:33
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:松内ききょう - この投稿者のレビュー一覧を見る
気持ちいい。この真っ向勝負。次から次へと意外な事実が出てくる小説というのはよくあるが、ともすればご都合主義っぽかったり、それは無理だ、というオチになりがちだ。これは違う。周到に張り巡らされた伏線は、「もうそれ以上いいよ」とこちらが謝りたくなるほどの正々堂々たる挑戦なのだ。これほど様々な趣向がこらされ、場面展開が豊富なのにもかかわらず、全然苦にならずに話に付いていけるという作者の技に感動。気持ちよく騙されたい。そして気持ちよく笑いたい。
紙の本
ちゃんと
2016/07/06 21:07
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:igashy - この投稿者のレビュー一覧を見る
手がかりと伏線が置かれていて、それが最後に回収されます。
主人公の関係する部分真相は途中で結構わかるんじゃないかな。
内容はユーモラス。しかし主人公、女性運が……
紙の本
盛り上がらずに肩すかし
2002/08/15 10:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ミオメロディ - この投稿者のレビュー一覧を見る
決して悪くない出来なのに、今ひとつ印象に残らない作品。ラヴゼイは時々そんな肩すかしをする(殿下ものシリーズとか)。凝った筋立てなのにそれをめいっぱい使わないで、何となく話がうねうねとすすんで、気がついたら、山場を過ぎていて、あれあれあれ、という感じ。それでも時代背景や豪華客船の様子がなかなかよく描かれていて、映画を観ているようなのは、さすがといえる。