投稿元:
レビューを見る
なんとも不思議な手触りのお話が9編。どのお話も、どこへ連れて行かれるか全く予期出来ない。着地点が読めない中を引っ張りまわされる感じ。
理解の範疇を全く超えているが、妙な面白さがある。
生きてる人も、死んでる人も、ゾンビも、モノも、動物も、何もかもが並列で対等な状態。それが普通で、当たり前という世界。いろんなものの垣根が無い奇妙さを楽しむお話。
表題作の中に出てくるTVドラマ「図書館」は実際観てみたいなぁ、と思った。
そして、柴田先生の訳本にハズレはないなと改めて思った。
装画も良い。
投稿元:
レビューを見る
国がまるまる1つ入っているハンドバッグとか。
ゾンビがくるコンビニとか。
今回もいろいろぶっ飛んでいます。
荒唐無稽とも思える非現実が現実に放り込まれ、
物語は思いもよらない展開をみせ、
マジシャンが去るように、パッと終わってしまう。
置き去りにされた読者(私)は「たしかに在った(読んだ)よね?」
と胸に手をあて考えさせられる。
その胸に残っているのは、筋やキャラクターをも凌駕する
形のない「思い」・・・そんな小説群です。
奇妙。
すっごく奇妙。
ひとつひとつの言葉はむずかしくはないのに、
並んで文章になると、すごく奇妙な世界になる。
むずかしいんじゃなくて、奇妙すぎて想像力を試される。
ケリー・リンクの小説は理解でもなく共感でもなく、
己の想像力を駆使することでしか味わえない気がします。
だからかなあ。
途中で何度もこときれて眠くなります。ただ、やめられない。
起きたらすぐにつづきが読みたくなる。
わたしはいつも文庫本にカバーをかけるんだけど、
ケリー・リンクの本だけはなぜかかけないで読む。
なんだろう? 愛着? ヘンな執着心が出るのです。
この世界を味わうためなら、この体すべて投げ出します。みたいな。
愛着のわく小説を書くってなかなか出来ることじゃないと思う。
それだけでも、評価に値する作家さん。
投稿元:
レビューを見る
二篇目の『ザ・ホルトラク』と表題作の『マジック・フォー・ビギナーズ』が良かった。最高に静かな少女タリスの「あたし、喋らないの好き」という台詞が秀逸。
投稿元:
レビューを見る
コミックを仕分けをしていたら、混じり込んで来た本。
背表紙の紹介を読んで、面白そうだと思い購入。
スクラブルがどんな遊びかわからない。
手元にスマホがあって良かった。
投稿元:
レビューを見る
ローカス賞をはじめ、ヒューゴー賞、ネピュラ賞などを受賞した短編集です。
不条理でアヴァンギャルド、ナンセンスな上に破壊的、荒唐無稽で奇想天外、シュールでキッチュで自由奔放、偏執的かつ異常・・・・などなど、ひと言で述べるなら、実にヘンテコリンな小説でした。起承転結はあやふや。ストーリーもつかみどころがありません。まるで、取り留めのない他人の夢を覗き見ているような感じです。けれどなぜだか、読みはじめたら途中でやめられなくなります。非現実的でありながら妙にリアル。支離滅裂で脈絡のないお話しなのに、やりきれなさや不安感、切実ささえ伝わってくるのは、作家の技量がとんでもなく優れているからなのでしょうネ。
投稿元:
レビューを見る
柴田元幸による「訳者あとがき」より
『二十一世紀に入ってからのアメリカ文学は全般的に幻想的だったり荒唐無稽だったりする傾向が強いが、ケリー・リンクはそのなかで誰よりも予測しがたい変幻自在な書き手として、新しい流れの最良の部分を体現している。』
まさに、ジュディ・バドニッツやミランダ・ジュライのような「幻想的な」書き手。
幻想的、だがここでファンタジイという言葉を使うのはためらわれる。
ファンタジイという言葉の持つ響きほど教訓的でなく、子供向けでない。
亡き祖母の作り話、深夜のコンビニ、郊外の家、仲間と盛り上がるTV番組・・・こういった何でもない日常のなかに非日常が滑り込んでくる。
遠い異世界の話でもなければ、クローゼットの中や、本の中で起きている話でもない。
それは生々しい夢を見てしまった後の浮遊感に似ている。
頭はまだ夢の中で、しかしその手はしっかりとシーツを握っている。
恐怖、孤独、焦り…私たちが元来知っている感情を共有するための物語なのだ。
こう書いてしまうとどれだけおどろおどろしい内容かと思われてしまうかもしれないが、どんな悪夢も目が覚めてみるとどこか間抜けで可笑しいものだ。
クライマックスにかけての緊張感の高まりと、すべてが終わって劇場を出た後の「なーんだ!」というギャップがいいのだ。
それをお伽噺と呼ぶにはあまりに切実な「妖精のハンドバック」。
カナダとあの世との国境付近の奇妙なコンビニ「ザ・ホルトラク」。
何のメタファーか?などど陳腐な深読みはしないこと「大砲」。
幽霊なんて出てこないゆえにやっかいなスティーブン・キング「石の動物」。
末っ子が最も賢く、そして悲しいのは3匹のこぶた以来「猫の皮」。
温もりが恋しい「いくつかのゾンビ不測事態対応策」。
第三者の悩み「大いなる離婚」。
本家図書館戦争「マジック・フォー・ビギナーズ」。
この番号にかければ聞きたい話を聞かせてくれる、例えば終わりからはじまりに進む話。ただし終わりからはじまりに進むのはお話の中だけ「しばしの沈黙」。
全9編。
投稿元:
レビューを見る
これは…。なかなかほかに同種のものを思いつかない読書体験。どこに連れて行かれるのかわからない不安と、何が起こるのか知りたい好奇心を煽られてどうにも落ち着かない。小道具や固有名詞や舞台は日常にありがちなのに、そこで起こる出来事とその展開がぶっとんでる。
表題作、「ザ ホルトラク」「大いなる離婚」あたりが無難に好きです。「しばしの沈黙」も。「石の動物」「いくつかのゾンビ~」はちょいたいへんだった。ていうか、なんでゾンビなんですかね?最近多いよね、ゾンビ?ゾンビの文化史的位置づけがいまいちわからないままです。
投稿元:
レビューを見る
原書名:Magic for beginners. [etc.]
妖精のハンドバッグ
ザ・ホルトラク
大砲
石の動物
猫の皮
いくつかのゾンビ不測事態対応策
大いなる離婚
マジック・フォー・ビギナーズ
しばしの沈黙
著者:ケリー・リンク(Link, Kelly, 1969-、アメリカ・フロリダ州マイアミ、小説家)
訳者:柴田元幸(1954-、大田区、アメリカ文学)
解説:山崎まどか(1970-、東京都、コラムニスト)
投稿元:
レビューを見る
非日常、不条理の世界だ。巧妙だと思う。ケレン味もなく、こういったことをやってのけるのは。
エイミーベンダーや円城塔の作品からは、ケリーリンクのにおいがする。
投稿元:
レビューを見る
プロムのドレス、妖精めいた嘘つきな美しい祖母、ハンドバッグ、ゾンビ、ペンキ、マウンテンデュー、コンビニ、パジャマ、謎のドラマ…アメリカらしいまるでおもちゃ箱の中身のような雰囲気で、ごちゃっとしていてポップに話がすすむ。しかし、ずーっと不穏な気配が流れている。痛みや悲しみだろうか。図書館、本を読む、お話をする、ペンキを塗る、絵を描く、電話をする…痛みや悲しみを昇華させようともがいてもがいて混乱している主人公たち。やがて、おもちゃ箱から飛び出したとても切実な何かが胸を打った。「妖精のハンドバッグ」「マジック・フォー・ビギナーズ」「しばしの沈黙」が好き。
投稿元:
レビューを見る
リアリズムな雰囲気から迷いこむ摩訶不思議ワールド。
ゾンビが歩いてたり、
何かに憑かれたり、
死んだ人と結婚できたり…
はてさてなんでしょう。
投稿元:
レビューを見る
ジャンル的にはファンタジーなのかな。とにかく摩訶不思議な短篇集。ひとつの国をかばんに詰めちゃったり、死者と結婚できて子供まで持てたり、電話ボックスを相続したらその電話ボックスからドラマの登場人物が電話で助けを求めてきたり。おかしな設定がさらっと始まって、呆気にとられてるうちにオチらしいオチもなく終わる。でもそれが嫌じゃない。
ホラーじみてるのもあれば青春の匂いのするものもあっていろいろ楽しめました。お気に入りは「大砲」と表題作です。
投稿元:
レビューを見る
本屋で衝動買い.
ファンタジー,というと日本語ではメルヘンな響きがあるが,そうじゃない本来のファンタジーなんだろうな.ストーリーはあるような無いような,不条理な短編が9編.結末がスッキリするのがお好みの人にはお勧めしない.個人的には表題作の「マジック・フォー・ビギナーズ」が少年少女の心理が細やかに書かれていて,じゃあどんな筋なんだと言われると困るのだけど,好きだ.長靴を履いた猫を52度ぐらい捻った感じの「猫の皮」もいい.
投稿元:
レビューを見る
これも感想を書くのが難しい作品。
面白いんですよ。もうひたすらに。
でも、何が面白いのかを書けないんですよ。ああもどかしい。
シュール、と言ってしまうと、その言葉の軽さにいやいやいやいや、と言いたくなる。
けど、シュールなんだよなあ。他に言いようがない。
シュールなファンタジィ。ああ、なんという言葉の軽さ。
そんな軽さ、本作には無いのに。
でも、他になんと表現すれば良いのか分からない。もどかしい。
ファンタジィ、という言葉ですらも軽い。
でも、間違いなく「ファンタジィ」だと思う。
投稿元:
レビューを見る
ファンタジーがあまり好きじゃない理由がわかった。
当たりがあまりに少ないからだ。
なぜ当たりが少ないかというと、ファンタジーは想像力が他より圧倒的に必要で、
人間の想像力には限界があって、好みがあって、だからなかなかこれというものがない。
本作はすばらしいよ!
理屈ぬき。
才能&Happy
妖精のハンドバッグ The Faery Handbag "バルデツィヴルレキスタン"
ザ・ホルトラク The Hortlak
大砲 The Canon
石の動物 Stone Animals
猫の皮 Catskin
いくつかのゾンビ不測事態対応策 Some Zombie Contingency Plans
大いなる離婚 The Great Divorce
マジック・フォー・ビギナーズ Magic for Beginners
しばしの沈黙 Lull