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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:2008.6
  • 出版社: 早川書房
  • サイズ:20cm/270p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:978-4-15-208926-7

紙の本

ザ・ロード

著者 コーマック・マッカーシー (著),黒原 敏行 (訳)

父と子は「世界の終り」を旅する。人類最後の火をかかげ、絶望の道をひたすら南へ—。アメリカの巨匠が世界の最期を幻視する。ピュリッツァー賞に輝く全米ベストセラーの衝撃作。【「...

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ザ・ロード

税込 1,980 18pt

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商品説明

父と子は「世界の終り」を旅する。人類最後の火をかかげ、絶望の道をひたすら南へ—。アメリカの巨匠が世界の最期を幻視する。ピュリッツァー賞に輝く全米ベストセラーの衝撃作。【「BOOK」データベースの商品解説】

【ピュリッツァー賞(2007年度)】「友達はいた?」「ああ。いたよ」「たくさん?」「うん」「みんなのこと憶えてる?」 世界は本当に終わってしまったのか? 父と子は、荒れ果てた大陸を漂流する。人類最後の火をかかげ、絶望の道をひたすら南へ−。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介

コーマック・マッカーシー

略歴
〈コーマック・マッカーシー〉1933年生まれ。小説家。「すべての美しい馬」で全米図書賞、全米批評家協会賞受賞。「血と暴力の国」はアカデミー賞最優秀作品賞を受賞した映画「ノーカントリー」の原作として話題になる。

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著者/著名人のレビュー

1917年4月10日...

ジュンク堂

1917年4月10日、ピュリツァー賞創設。
正確には新聞記者ピュリッツァーがコロンビア大学に多額の寄付をした日です。
報道、文学、作曲に与えられる米国で最も権威ある賞で、本屋にとっても無縁
ではありません。今日の1冊は2007年のフィクション部門の受賞作。

終末を迎えた極限状況下の世界を旅する父と子を通して親子の絆を重く描き、
いつまでも心に残る1冊。年内の映画公開も控えています。

【折々のHON 2010年4月10日の1冊】

みんなのレビュー73件

みんなの評価4.1

評価内訳

紙の本

尋常でない緊迫ある運びに感動しながらも、近未来の書き方に強い反感も持ち、不思議で複雑な読書体験をさせられた。だが、マッカーシーの象徴的なアメリカの書き方には敬意を抱く。

2008/10/20 16:17

8人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る

『ザ・ロード』は恐ろしく神経を張り詰めさせられる小説だ。こと最後の数十ページの緊迫感はすごい。排気量の大きなエンジンを背中にしょわされ、否応なく走らされるような感じがあった。
 草木の緑や生き物が消滅した終末的状況のなか、シェルターに潜んで破滅の瞬間をしのいだとおぼしきごく僅かな人びとが、食べ物を渉猟している。なかには人倫にもとる行為に走る者もいる様子だ。
 空も大地も灰色。厚い雲に覆われた空は明るさを増しても青味を取り戻すことはなく、大地は焼灼され尽した後のようで、至るところ灰に覆われている。人体では耐えられない冷気がやがて大地を支配しようとしている。
 舞台となっているのは北米大陸だ。暖を求め、食べ物を求め、幼い男の子と父親が海岸を目指して歩いて行く。見つけた日用品や食べ物などを入れてガラガラと動かしているのはショッピングカートで、このカートが、文明が到達したところの暗示のようにも取れ、気になる。
 父がカートを押す図は、米国でも一部に人気があった「しとしとぴっちゃん」の『子連れ狼』に類似していると取れる旨、訳者あとがきにある。
 この父子がようやく手に入れる少量の食べ物で飢えをしのぎ、周辺からかき集めた木の枝で焚き火をして眠り、言葉少なに語り合い、ごくまれに人に出会っていく。何度も何度も、もう駄目だろう、そろそろ限界だろうという局面が訪れる。それでも歩いて行く――これは、そのように辛い旅の話だ。

「カート」と南への道行――私にはまずこの2つが、象徴的な表現で読者を誘い込むマッカーシーが仕掛けたものなのだろうと取れた。
「カート」はもともと「荷馬車」を指す語だ。それはアメリカという国の幕開けをどうしても連想させる。家族が荷馬車に最低限の日用品を積んで西へ西へと進んでいった開拓時代を……。
 人びとは荷馬車の荷を下ろして眠るための小屋を建て、荒れた土地にくわを入れ、自分たちの土地での定住を試みた。時に原住民の反発を買いながら、荒くれ者の襲撃を受けながら……。そういう人びとが次から次へと旅をして、さらに西へと移動していったフロンティア、つまり開拓前線はやがて消滅した。海に到達したからだ。
『ザ・ロード』を読んでいると、移民たちがそのようにして東海岸から西海岸へと広げていったじゅうたんが、今度は北から南へと巻き取られてアメリカがしまわれていくのかというイメージが広がる。
 マッカーシーという人がアメリカをどう書こうとしてきたのかを考えるとき、これはそう無益な解釈でもなかろう。作品世界を一貫する確かなものの実在が、このような象徴性で感じられるからだ。

 ただ、「アメリカをどう書くか」で近未来が選ばれるとき、「これはすばらしい作品、すごい傑作」と手放しで賛美できない要素もあった。
 終末的状況は、読み手がいかようにも取れるように明確には説明されていない。だから、核戦争があったのか、環境破壊がし尽くされたあとなのか、巨大な隕石が衝突したのか、あるいは核とは別のレーザービームのような武器で北米だけパズルのピースのように抜き出されて焼かれてしまったのか、どう考えようと勝手だ。勝手なのだが、いずれの原因であっても「このように穏やかに哲学的問答ができる状態が終末?」と突っ込みを入れたくなる。
 少なくとも核兵器は現実世界において、これまで2回も使われている。北米のかなりの部分を壊滅する規模のものが使われた設定ならば、シェルターを出たあとに人びとはとてもこう何年も生き残っていけないだろう。環境破壊が行き着いて空と大地がこうなるとしたならば、人が歩いて旅をしていくほど体力を維持できる空気は残っちゃいないよと言いたくもなる。
 SFジャンルではなし、その点、設定条件に対して矛盾なきよう整合性を持たせる必要はなかろう。文学的テーマが全うされるために状況が下位に置かれているということなのかもしれないが、感情として「むっ」とわき上がるものがあった。
 地獄絵図を生々しく描くべきだとは言わないが、これはやはり終末「的」状況を設定したものであり、その意味ではファンタジックな条件に依存して、それを借りて「父から子へ」伝わるものやアメリカへの気持ちなどを書いている小説なのである。地獄のような場所で生きざるを得なかった人、生きている人を思えばリアリティに乏しい。
 今、「父から子へ」伝わるものと書いたが、あるいは、「父性にアメリカは救えないか」というテーゼにも取れる。途中、神の化身を彷彿とさせる老いた男性も出てくるので、キリスト教的な香りもある。そう考えると余計、何かを描き切るために道具立てとされてしまう終末や破滅の設定が何やら情けなく思えてきてしまう。

「むっ」とわき上がった感情の正体を見定めようと、ようやくこうして分析できるようになった。しかし、読んでいる最中は、激しい緊迫感に襲われながらも、むっという感情も動いていたので、「感動しながら気分が害される」という、複雑で心かき乱される経験をした。不思議な読書体験だった。
 そしてこの本では、いま一つ不思議な感覚を持たせられた。
 原文を生かした訳ということで、読点がほとんどない。また、話し言葉がかぎカッコに収められていないため、地の文との区別がつきにくくなっている。したがって、どれが描写で、どこからが話し言葉なのかを読み分けていくのに時間がかかる。この読み解きもあり、内容や字面は読みやすいものであっても、とても読み飛ばしては読めない文章、じっくり対峙させられる文章になっている。
 かみしめるように読んでいくと、終りに向かっていく世界そのものと話をする父子が、表記の表現通り、渾然一体となっていってしまう。小説というもののほとんどすべてが人間を描くものであろうが、そしてこの小説でも人間が描かれているには違いないのだが、いつしか父と子が終末の光景のなかに同化していってしまう。端的に言ってしまえば、自然と人間が共生する東洋的自然観の表れということになる。
 このような人と周囲を区別しない書き方が気になって、その意図を確かめたくて『血と暴力の国』を読んでみたが、そこでもやはり、人間を特別な存在として崇めるわけでも揶揄するわけでもなく、つかみどころのない全体の一部として捉えているかのような書き方が印象的であった。

「共生」するものは「共死」してしまうのであろう。しかし、蘇られるものであるならば、それもまた一緒なのだ。
 ひどい状況のなかで、いたいけな男の子が何回もむごい目に遭う内容は辛いものだった。最後もまた痛ましいものだ。この文明は確かに、終末に向かって進んでいるような気がする。私たちは、失ってしまえば二度と復元できないものをみすみす失いながら、歴史のコマを進めているかのようだ。
 だが、マッカーシーはすべてを「無」に帰すことはしていない。「原初」のとき、人類はいかなる安全にも、いかなる安心にも支えられてはいなかった。あるいは、そのことをほのめかしたのか、結びの段落はさまざまな解釈を誘う書き方をしている。今ならば、まだ私たちが触れ合える美しいものを、そこに書き残しながら……。

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紙の本

世界はまだ終わらない。

2008/07/25 22:54

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:求羅 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 灼熱の地を舞台にした『スコルタの太陽』と本作を平行して読んでいたので、酷暑と厳寒の責め苦を交互に味わったような気分である。
 『ザ・ロード』は、いわゆる終末モノで、舞台は世界破滅後のアメリカ。
 太陽はぶ厚い雲に覆われて始終空は薄暗く、地上には灰が積もっている。ほとんどの動植物は死に絶え、生き残った人々はわずかな食料を巡って争う。略奪・強姦・殺人がはびこり、飢えをしのぐために人間を食べる者まで現れる始末。
 そんな殺伐とした世界の中、父と幼い息子が暖かい南を目指して旅を続けている。ショッピングカートに荷物を積み、道々で食料と物資を探しながら。

 本書は、一組の親子が歩き続ける様子をひたすら追った作品である。
 旅路で襲われたり、飢餓の恐怖に苛まれたりするスリリングさはあるものの、物語は不気味なぐらい静かで穏やかだ。すでに泣き叫ぶ段階は通り過ぎたのかもしれない。生と死の境界線のあたりを彷徨いながら旅する二人の姿は、ひっそりとしたものながら鬼気迫る存在感で迫ってくる。
 ぽつりぽつりと呟くように交わされる会話が、印象的。かぎかっこのない会話文は、父と子の置かれた厳しい状況、孤独な世界を物語っているのか。文明を廃し、原始に戻ったこの世界は、神話の色合いを帯びているようにも感じられる。

 たいていの場合、私たちが「世界」と言うとき、それは地球全体を指している。しかし、男にとっての世界は我が子ただ一人であり、少年にとっての世界もまた、父親しか存在しないのだ。そのことが、たまらなく悲しい。
 他の生存者に対して非情に振る舞う父親とは反対に、助けを差し伸べるようとする少年。世界の崩壊後に生を享けた少年が、無垢で純真というのは皮肉なものである。それとも、作者が託した希望なのだろうか。絶望と狂気に満ちた世界で、少年の汚れのない優しさは人間らしさとは何なのか、考えさせてくれる。

 人は一人では生きられない、とよく言われる。
 多くの人に支えられていることはもちろん、「誰かのために生きる」という思い自体も生きる支えになっているのではないだろうか。少年の父親がそうであるように。
 少年を待ち受けている未来は、けっして明るいものではない。いずれ食料も底をつくだろうし、南に理想郷が広がっているとも思えない。けれど、ラストにはなんともいえぬ感動が押し寄せてくるのである。作者が描いてみせたのは、人間の醜さではなく、愛する者を守ろうとする強い心なのだと、信じたい。
 本書は言葉少ないシンプルな物語だけに、さまざまに深読みできるおもしろさがある。ピュリッツァー賞受賞も納得の佳作である。

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紙の本

ワンアイデア、っていや、それまで。状況もほとんど不明のまま、ただひたすら歩く。でも、確実に文学してる。こういうのばかり読まされたら怒りますけど、これ一作だけなら、いいかな

2009/03/05 20:40

5人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

『ザ・ロード』、タイトルだけ見ればS・キングの新作?なんて思っちゃいます。しかも、クサナギシンペイの装画がいいです。抒情的ではありますが、スタイルはまさに現代美術。舞い散る雪と夜道が、それこそ象徴的に描かれているのですが、見ていて飽きることがありません。そして、そのことが小説の内容にも言えます。ちなみに装幀は坂川栄治+田中久子(坂川事務所)です。

さすがの早川書房もこの本の内容紹介には手を焼いたのでしょう。いつもであればビッシリと主人公の名前から時代、場所、事件があればそのあらましを書いているはずなのに、この本のカバー折り返しの言葉は

友達はいた?
ああ。いたよ。
たくさん?
うん。
みんなのこと憶えてる?
ああ。憶えてる。
その人たちどうなったの?
死んでしまった。
みんな?
そう。みんな。
もう会えなくて寂しい?
うん。寂しい。
ぼくたちどこへ行くの?
南だ。

世界は本当に終わってしまったのか?
荒れ果てた大陸を漂流する
父と子の旅路を独自の筆致で描く
巨匠渾身の長篇。
ピュリッツァー賞受賞作。

だけです。前半の独白のような会話は本文の54頁に出ているものを引いてきたようですが、実物の最後の一行「わかった。」だけが省略されています。意味があるんでしょうか、編集者なり装幀家に質してみたいものです。全体構成は本文と巻末に訳者あとがき、がつくシンプルな構成となっています。

ピュリッツァー賞受賞作とあるので、ノンフィクションか純文学、と思いましたが、内容的にはSFです。いや、冒険小説といっても構いません。サヴァイヴァル・ストーリーと言ったほうが分かりやすい。ただし、主人公たちが置かれた状況は、最初から最後まで曖昧なままです。でも、それなりに緊張感をもったままハラハラドキドキで一気に読んでしまいます。

黒原敏行の解説には、コーマックのことやこの小説に関しての情報が過不足なく書かれています。その良いところは、解説を読んだ人間に本文を、彼の書いた全作品を読んでみたい気にさせることです。そして小説の中身もそれに応えるように、解説から読んでも少しも興が殺がれることはありません。

それにしてもシンプルなお話です。登場人物は10人近くいますが、誰一人として名前が出てくることはありません。主人公にしても彼と少年、或は二人として語られ、時に会話の中でパパ、お前、と呼ばれるだけです。なぜ彼らが南に向かうのか、という説明もありません。読者は最後まで五里霧中の状況に置かれたようなものですが、それでも何かが薄っすらと見えてくる。そこがいい。

出版社のHPには

ピュリッツァー賞受賞! 『すべての美しい馬』『血と暴力の国』著者の最高傑作。

空には暗雲がたれこめ気温は下がり続ける。目前には、廃墟と降り積もる灰に覆われた世界が……。父と子はならず者から逃れ、必死に南への道をたどる。世界は本当に終わってしまったのか? 荒れ果てた大陸を漂流する父子の旅路を独自の筆致で描く巨匠渾身の長篇。

とあります。とりあえず読んでください、としかいえない本ですが、注意が一つ。エンタメ気分で読んではダメです、はい。

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紙の本

いまここにある危機

2008/09/30 11:39

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:わたなべ - この投稿者のレビュー一覧を見る

アメリカの現代作家コーマック・マッカーシーの現在のところの最新作で、2006年に発表された作品。長篇と紹介されているが、スタイル的には中篇と言ったほうがいいだろうシンプルな構成になっている。物語は大きな破局(その詳細は明らかにされない)の後、灰色の雪が降る廃墟となった世界を人肉食や性的陵辱に怯え戦いながら冬の到来を避けて南へと向う父と子の旅を描いたもので、体裁は近未来SFといってもいいかもしれないが、読んでいるとこれはいま現在の状況を、文明の虚飾をはぎ取って描いてみせた「リアル」な作品だとしか思えない。実際、飢えと理不尽というのも愚かな暴力が全世界に満ち満ちているのをメディアを通して誰もが目撃しないではいられないわけだし、いまはたまたま地理的/政治的に非合理な暴力から遠ざけられ屋根があり食物があり寒さと飢えを凌げてはいるものの、いつ状況が激変して家族とともにそういった裸の世界に放り出されるか知れない世界に私たちは生きていて、私と私が愛するものを包むこの家が、壁が、この父子がその下で身を震わせている防水シートとどう違うというのだろうか。読みながらこの著者のこれまでの小説の展開を思うといつ決定的な破滅が訪れるかわからないので胸を締めつけられるような苦しさで読んだ。最近老猫を失い、子猫を飼いはじめたことも手伝って、愛するものがいつどうなるかわからないという展開は辛過ぎる。まあ、そういった読み手の多分に個人的な事情はさておき、小説の主題はいつものマッカーシーとほぼ同じであり、理不尽に失われてしまうものは、いったい何のために世界に存在したと言えるのか、という問い、神を第一原因とする決定論的で無限な世界のなかで、きわめて限定された人間の意志や記憶や自由には、いったい何の意味があるのか、という問いである。この作品ではそれが、失われた世界に対する記憶を、どうやってその後の世界に生きる者に伝えるのか、伝えることができるのか、といったふうに変奏され、ランダムに蘇る記憶の無時間的な現れが、世界の幻想性をいや増しに増す、という構成をとる。しかも父親が愛してやまない子は、つねに不可解なまでに彼に逆らい、まったく彼には想像も及ばないような世界の理解を示しているようなのだ。マッカーシーの、ほとんどマッチョなナルシシズムと踵を接しているようなすれ違い続ける関係性を、神秘主義に昇華してある種の連続性を発現させるラストは、国境三部作とほぼ同じ終り方で(地図のイメージ)、それまでのピンと張りつめた展開の緊張がふっと緩んで(まあ正直寓話的なご都合主義ではある展開なのだ)やっぱり感動しつつも、物語と構成のシンプルさに少し引いてそのいかにもアメリカ(ピューリタン)的な思想性について考えさせられるものがあった。派手な宣伝や評判とは対照的に、静かで内省的な佳作。

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紙の本

ピュリッツァー賞受賞の全米ベストセラー小説とはいえ、日本人には少し遠い話だと思う

2009/07/20 07:04

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る


 近未来のアメリカ。父と幼い息子は南へと徒歩で向かっていた。周囲の建物は激しい熱でやわらかくなった後でまた固まり、歪んだ姿で立ち残っている。動物の姿はもはやなく、灰が積もった街々で缶詰の食料を探しながら、父子は道を歩き続ける。

 しかとは書かれていないものの、おそらく核爆弾によって崩壊したのであろうアメリカ大陸を南下する二人を、淡々と描写し続ける小説です。現代版「渚にて」ともいえるこの物語の中には、人類に対する希望はありませんが、それでも父親の息子への深い愛情と、息子を通して未来に託す思いが描かれていて、最後に胸が詰まる思いがしました。

 とはいうものの、そのエンディングへとたどり着くまでの読書の道のりは、私にとって決して平たんではありませんでした。
 ひとつには訳文に不思議なある特徴があるためです。
 この訳者は、読点を打たないのです。読点とは「、」のことであり、大辞泉の定義を引けば「文の意味の切れ目を示したり、文を読みやすくしたりするために、文中に施す記号」のこと。ですから読点が必要な場所で打たれないと、文の意味の切れ目が示されず、文が読みにくくなります。
 コーマック・マッカーシーの英語原文が必要なコンマを省いていて、それを日本語文でも忠実に踏襲しようとしたのかと思って原文にあたってみましたが、どうもそういうことではないようです。

 もうひとつ読書の道のりを険しく感じさせたのは、なぜ物語の中の世界が引き起こされたのかについての説明がないことです。それはおそらく核戦争的なものによるのだろうと想像させる描写はあるのですが、それならばいっそう、広島・長崎の被爆体験を持つ日本人にとってこのマッカーシーの描写は、やはり生ぬるいと言わざるをえません。核戦争後数年もたった時期に徒歩で南下する父子という設定には無理があり、どうしてもアメリカ人の無邪気さを感じないではいられませんでした。

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2008/07/13 15:14

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