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明日をどこまで計算できるか?
原題は「APOLLON'S ARROW」
技術が進歩した今,人間に可能な予測能力はどの程度であろうか?
本書では,
・天気
・経済
・遺伝子ー病気
の3つの分野に対して考察を加えている.このテーマに対して過去・現在の予測能力を総括し,未来はどうあるべきかorどうなっていると思われるか.
を説明している.
序論ではギリシャ,ローマの神話などから引用し,預言者(信託者?)が予測を担っており,科学による予測はほとんど皆無であったという論調からスタートする.この部分がやや冗長・・・
話は変わって,天気予測(とくに気候予測)の話題になるとカオスの話が顔を出す.
この本もカオスという性質によりモデルの初期値の鋭敏性が結果に重大な影響を与えるので妥当な結果が得られない.これは計算の限界ではなく,気候そのものの限界である・・・・というありきたりな論調か.
と思って本書を読むと,どうやらカオスによる誤差とモデルに由来する誤差の方が大きいかもしれないという論調であることに気づかされる.
この主張は新鮮に感じられた.カオスとくにLorentzアトラクターや力学系を学ぶと,カオスが表れる微分方程式では初期値のわずかな違いが結果に大きく影響することを数式を用いて計算することができ,気候もその一種であると教えられることが多い.
そのため,気候予測も原理的に不可能だと思い込んでいた.
しかし,筆者は簡単な議論と詳細な研究結果からモデルによる誤差の方が支配的である可能性が高いことを示唆している.
ということは,モデルをより詳細に作成することで100年後の気候変動も予測できるかもしれない...という簡単なものではない.
実際の気候モデルにおける数理モデルは複数のパラメータを調節して現在に適合させているらしい
ちなみに,
江守 正多,「地球温暖化の予測は「正しい」か?」,化学同人
の本では気候モデルの信頼度や不確実性について議論されており,その中で筆者は,任意パラメータはそれほど多くないということを言及しており,本書で筆者がモデル化が困難であると言っている「雲」の生成,拡散の挙動も現在では,ある程度モデル化できているらしいので,公平性を保ちたいなら,こちらの本も一読されたい.
閑話休題
結局筆者は,予測とは現状を把握したり,未来のシナリオを予測したり,政策の意思決定,市民の啓蒙という観点では有益な道具となる(p.333).
というよくわからない主張となっている.
それどころか,予測可能でないことは,生命の深遠なる性質である(p.359)とも述べている.
決定論者の夢を砕くような刺激的な主張であるが,根拠が明確でないように思う.
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2010.02.21 日本経済新聞で紹介されました。
2010.03.21 朝日新聞で紹介されました。
なんとなく手に取りたくなるようなジャケット・・・
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「予測する科学」として天候、経済、医療を取り上げている。これらのトピックは人間の生活に大いに関係があり、「最悪の事態」に陥れば生命をも危険にさらされるという共通点がある。
「最悪の事態」を回避できればいいと思う反面、何もかもがわかる未来というのも味気ない気がする。
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読んでいて、小さい頃から断片的に持っていた科学の知識がひとつにつながった気がする。「予測する科学」として、天気、病気、経済の一見して関連なさそうな、けれど実は「予測する科学」としてとらえると、密接に関連した事象について、幅広く論じている。
また、普通にテレビや雑誌から得た環境や経済に対する情報が、いかに実体(実際に研究している人たちの最新の認識)とかけ離れているかが分かった。単純に聞いたことだけを信じず、自らも少し行動しなければ、本当の情報は得られないのかなと感じた。(そしてこの本の内容もどこまでそのまま受け取ればよいか、考える必要は、あると思う)
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まぁ結局は、未来を予測することは想像以上にかなり難しい。
まずは「そう簡単に予測なんてできるもんじゃないんだ」ということを、認識することだ。
仕事の場でも、「これをやったらどうなりますか?」とか、
「こうすることで、こうなります!」的なことはよくあるだろうけど、
本当のところを言うと、「やってみなければ分かりません」というのが、
ほとんどの場合、最も正しい答えだろう。
みんな計画や予測を求めすぎるという気はする。
計画性も大切だが、生きていく上では起こった状況にその場で適切に対応できる「臨機応変性」「柔軟性」のほうが重要なスキルではないかと思う。
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まだ途中だけど読みきれないような気もしてるので
レビュー書いてみたりします。モデルエラーの本です。
科学において計算式で事象をモデル化することで、
天気予報やらクローン技術等が発展している今日この頃ですが、
そうしたモデル化には限界があり、モデルを完璧視してはいけない。
という感じの本なのかな。
文系、地理専攻だったので科学には疎いのですが、
この本に記載されているプラトンやソクラテスから始まり、
ガリレイ、ニュートン、アインシュタインにいたるまで、
科学の歴史を追っていくにつれて、
科学は純粋に好奇心や発見によるものというより、
根っこは神の存在を証明するためだったのだと知りました。
(最近は科学が神を殺したなんてよく言いますが)
神は完璧な世界を作っており、だからこそ天体の動きは
完璧な円運動によって成立していると証明しようとして、
実はそれが楕円であることを証明してしまうプラトン。。。はぁ。
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天候、経済、DNA。研究が進んだにも関わらず、これらの未来を予測できないのはなぜか。ギリシャ以来の予測の歴史に関する総論的な部分は面白かったが後半の各論はちょっと迂遠。科学は世界が単純な方程式で表されるべきという信念のもと、発展してきており、天体の運行の予測があまりにうまくできすぎたため、よくできたモデルと正しいパラメータがあれば、システムの将来的なふるまいも予測できるはずだと思いがち。しかし、モデルを複雑にすればするほどパラメータの誤差は大きくなるし複雑性も増す。一見、客観的に見える科学も、過去のデータにモデルを当てはめようとする上で、どこの誤差に重きを置くかという主観の上になりたっており、著者はこれを客観性の仮面をかぶった主観とよび、現在の系を理解することはできても予測はできないという。生物学に対しては、そもそも行動が予測されやすい生命は死に絶えてしまうので、予測しようという行為自体が無意味だという。これはその通りだと思う。予測可能というのは自由意志の否定という決定論的、機械論的な世界観に傾かざるをえないのかも。。。全体に、再帰的な系に関する予測は難しい、という論調ではあるが、外部からのランダムな圧力の影響なども大きい。翻訳はちょっと問題で、文もこなれてない上、「生命ゲーム」とか「創作的会計手法」といった造語も多く、読むのに難渋する。■カオスとは予測誤差の原因が我々の無知にあるのではない、という言い訳を与えてくれる■生命とは、予測不可能な未来に対応する唯一の道は予想外の自分をつくりだせるようになることがと気づいた、ひとつの物質プロセスなのである(アントワーヌ・ダンシャン)
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未来を予測することは、太古からのテーマでした。天文学の発達が未来の天文現象の予測を可能にしたことから、気象・医療・経済などの分野においても、現象のモデル化を行うことにより、将来予測が可能と考えられるようになった。しかしながら、現実にはあまりにも不確定な要素が多く、予測に使うモデルを重視するために、補足説明(つまりモデルは正しいが、異常値の発生が予測を誤らせる)が多くなり、かえってモデルの信頼性を失ってしまうことが多い。結局、様々な計算によっても、未来を予測するのは不可能ではないかというのが筆者の結論です。
面白いタイトルに惹かれて読んでみましたが、以外と記述(翻訳)内容が難しくて、理解できない部分があった。未来を予測できるかというテーマですが、予測の難しさよりこの本の記述を理解するほうが難しいかも。
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明日を知りたい、という気持は、気象予測や、占星術や宇宙の成り立ちに向かう。宇宙の先は、過去であると同時に未来であるから。その感覚が詩的であり、それでいて科学的な語り。
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モデルによる予測の試みを、ギリシャ哲学の時代からカオスまで概観し、モデル誤差の観点から批判したもの。第一部の「過去」における哲学から科学へと連続した部分のまとめは読みやすく、高校生から大学1年生あたりの人とって有益だと思う。第二部の「現在」に関しては、初学者には分かりづらいところがあるように思う。それぞれの分野の概説書(新書レベルでよいと思う)を読んでから、第二部に取りかかるとその批判が持つインパクトを理解しやすい。第三部に関しては、著者の持つ暗黙の態度みたいなものが見え隠れするけれど、それはそれでおもしろい。
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5章まで読書。返却期限が来たので返却。未来を予測するために計算するという一見単純な論理の裏には、科学思想の大きな流れがあることが分かる。ギリシアの哲学者たち、ニュートン、ケプラーなどの古典力学の世界や天気、遺伝子、経済など、昨今の私たちを取り巻く予測の世界とその限界を平易に書いている。面白い。
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予測可能でないことは、生命の深淵なる性質だ。行動があまりに読まれやすい生き物は死に絶える。生体と同じように、経済も予測不能になるように進化するわけである。
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読まなくても良かった。何も言っていない。
そう感じた。ぐっと来るものは、無かった。フォーミー。
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タイトル詐欺でもないのだが、(原題も含め)ネイト・シルバーの書くような内容を予想していたので肩透かし
科学で予想できる範囲は各分野でどれくらいか、まずは古代ギリシャからニュートンなどを経由し発展してきた科学を、現代の天気、経済などに応用する
ところが作者さんは数学者らしいのだが、天気や経済などについて一般向けの通説レベル以上の知見は持ち合わせていなくて(付け焼刃でやっつけられても困るが)、あとはカオス理論!ランダムウォーク!で、結局わかりませんと同じ、なんと本書のシメはガイア理論を持ち出して終わってしまう
これでは予測でなくて作者の予想なんじゃないの、とガックリきたが、作者の意に反して、1980年ごろまでの科学の進歩のざっくりした見取り図としての利用という意味では、ためになる読者さんもいらっしゃるのでは
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科学の進歩はどれほど未来を予測できるようになったのか?専門的な内容が多く読むのが大変だったが、非常に興味深く読み応えのある内容でした。