紙の本
昭和と平成が重なるとき
2015/12/28 03:21
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は短編小説「お助け」が江戸川乱歩に認められて小説家になった。そんな昭和を代表する推理作家への敬愛が、表題作や「科学探偵帆村」に感じられた。著者が偏愛する女優高清子が実在の人物と重なり合う最後の1話は感動的だ。
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筒井節健在。もうそれだけで嬉しい。しかもオマージュあり、スラップスティックあり、心にしみるドラマあり、更に珠玉のエッセイまで・・・。満足です。
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短篇集。62年余りの昭和と云う時代への追慕と回顧に満ちた作品が多い。「役割演技」は日本の話になっているが、某国の首都生活者を思わせる。
どの作品もとにかく面白い。
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【奇想と企みにみちた、巨匠待望の最新短篇集】迷宮殺人と謎の小人、人工臓器を備えた科学探偵、窃盗団に身をやつした貴公子……江戸川乱歩や海野十三にオマージュを捧げる短篇集。
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筒井康隆の短編集。
改めてこうみると、昭和って雑多な時代だったなぁと振り返る。
そして、筒井康孝ってやっぱり奇才なんだろうなぁと思う。
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「繁栄の昭和」本格と思いきやメタ小説。雰囲気がよい。手馴れた印象。「大盗庶幾」遠藤平吉!!「科学探偵帆村」再読。郵性省!「リア王」悪乗りのパターン、笑える。「一族散らし語り」広大で不思議な構造の旧家と一族の腐敗、最後はきれい。「役割演技」某国がモチーフ?「メタノワール」現実と虚構の混沌を映画を題材に。「つばくろ会からまいりました」現代の御伽噺。「横領」表題に関するサスペンスドラマを見た後、夢で見そう。「コント二題」あはは。「高清子とその時代」作者の偏愛がよく伝わる。作者の老成を感じる諸作。往時とは少し印象が異なるが悪くない。
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著者は肉体的な衰えと共に昔のようなドタバタは書けなくなったと何かに書いていたが、ここでは軽やかな疾走感が甦った感じです。昭和の時代の躍動的な肉体が脳内で復活したのでしょうか、とても楽しめました。さすがにエノケンは私の知っている昭和から更に遠い昔でよく分かりませんでしたが。。。
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さすが筒井康隆、と思いながら味わうように読んだ。てろんとした長めの小説に慣れている身には、仕掛けの施された短編はきりりと引き締まった酸味を感じた。若い作家ならばレモンのような刺すような爽やかな酸味なのかもしれないが、熟練の手にかかった作品は熟成されたまろやかさのある酸味なのだ。
つくづく短編は下手には書けないなぁと思う。
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昭和の面影を集めた短編集。特に良かったのは名門男爵家に育った美少年が、家の没落後にサーカス団を率いて盗賊になる話。うかつにも最終ページになるまで怪人二十面相を思い浮かべなかった。もじゃもじゃ頭の探偵が出てきたところで明智小五郎その人だと気付くべきだった・・・
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2011年から13年の短編集。
「繁栄の昭和」
「大盗庶幾」
「科学探偵帆村」
「リア王」
「一族散らし語り」
「役割演技」
「メタノワール」
「つばくろ会からまいりました」
「横領」
「コント二題」
「高清子とその時代」
の11編収録。
メタ小説を中心にSFあり、オマージュあり、パロディありのてんこ盛りでした。
それぞれ、それなりに面白いのですが、心身ともに浸りきる前に次の作品を読んでしまうので、充足感というか恍惚感というか、そんなところまでいかない不満足感が残ってしまいました。
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筒井康隆さんのいろんな顔を見られる短編集。笑えるものから怖いもの、泣けるものまでいろんな作品で楽しませてくれる。個人的に好きなのは『役割演技』と『つばくろ会からまいりました』だ。怖いのと泣ける作品である。どちらもラストシーンのインパクトが大きいと思う。
以下、個別作品の感想。
◎繁栄の昭和
時間が止まったタイムパラドックスもの? 繰り返される文章が読者を過去へ過去へと誘う。
◎大盗庶幾
どのような結末になるのだろうかと思ったが、自分の想像の斜め上を行った。ラブロマンスになるのかと思いきや探偵小説だった。
◎科学探偵帆村
とんでもない結末。面白いけど。でもこの少年(青年?)は幸せなのだろうか。
◎リア王
ストレートな題名だけに、どのように捻るのか期待して読んだ。まあリア王をよくここまで幸せな物語にしたものだと。登場人物全員が幸福になっているではないか。また、JASRACに対してチクリと刺しているのも面白い。
◎一族散らし語り
少し怖いお話。でも近い未来のことを語っているだけかもしれない。
◎役割演技
こちらはもっと現実味があるお話。超格差社会が到来すればたちまち現実となるだろう。淡々としたストーリーだが、余計に恐怖を感じる。
◎メタノワール
いきなり実在の人物(深田恭子とか船越英一郎)が登場して面食らった。メタフィクションだからなのだが、登場人物の顔を完全にイメージできる分、舞台(映画の撮影現場)での騒動を面白おかしく楽しめた。
◎つばくろ会からまいりました
これは美しい愛の物語だ。話の展開的に、どこで笑えるのだろうと期待しながら読み進めていたが、笑う話ではなかった。こういうふいうちをするから筒井康隆は面白い。
◎横領
普通の短編小説のよう。題名を最後に再確認して初めてクスリと笑った。お金の話かと思いきや、そっちだったのね。
◎コント二題
なんだこれ。あまり笑えない。自分の好みではない。
◎附・高清子とその時代
よくここまで一人の女性(女優)の熱烈なファンになれるものだと感心した。ところどころ奥様とののろけ話も入ってくるのは、むしろ照れ隠しなのではなかろうかと勘ぐってしまう。筒井康隆さんの熱意も伝わってくる。読み終わったあとに高清子さんをネットで検索してみた。確かに美しい女性の画像がヒットした。私としてはそれくらいの感想なんだけどね。この作品を読んだからといって昔の映画を探して見ることはしないだろうし。
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久々に筒井康隆の棚を見たら、読んでない本が2冊も。その内の1冊。10編の短編とエノケン一座の女優についての紹介分というかエッセイというかが1編。8年ぶりの短編集だって。こないだテレビで見かけたし、こうやってまだ小説を書いてくれているのが嬉しい。筒井康隆らしい話。ここで終わり?ってのも多い。そう思うと筒井康隆も意外と純文学なんだよな。大盗庶幾、役割演技、つばくろ会からまいりました、が特に好き。
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平成もすでに四半世紀を過ぎて昭和は確かにノスタルジーの中に存在するだけになったのかも知れないなどと思わせるタイトルは『繁栄の昭和』。筒井康隆の『壊れかた指南』以来8年ぶりの短編集である。8年ぶりとはいえ各短編の発表は2011年秋から2013年秋とまとまっているので『繁栄の昭和』というタイトルを意識した連作かと思うがそうであるようなないような。
冒頭の短編は表題作「繁栄の昭和」で「もしやこれは繁栄していた昭和の一時期をいつまでも保ち続けようとする、何らかの意志のしわざではないだろうか」と「私」が独りごちるような小説であり江戸川乱歩へのオマージュでもある。思えば筒井康隆は江戸川乱歩に評価されて作家活動に入ったのだ。
しかして昭和の繁栄とはいつのことか。大正デモクラシーに続く時代か第二次世界大戦前の明暗あい乱れる時代か。あるいは戦後の復興はたまた高度成長期か。
乱歩讃はもう1編「大盗庶幾」。難しい言葉だが「庶幾」は「こいねがうこと」「極めて似ていること」。幼少期に江戸川乱歩を乱読した者にとっては楽しい作品であった。かたや「科学探偵帆村」は海野十三讃。評者は十三はほとんど読んだことがないのだがそもそも帆村荘六を主人公とするSFミステリは相当に無茶苦茶な謎を解くものらしく本作もそういう話である。
あとは人情話的なものあり「繁栄の平成」を偽装するディストピア小説ありと必ずしも一定の傾向の作品をまとめたわけではない。ところが表紙の女性は高清子という女優さん。本書の最後には「附・高清子とその時代」というエッセイが付いている。高清子とはエノケンの映画などに出ていた人で有名な人ではなく情報も少ないのを作者が入れ込んで調べ上げたものである。彼女の登場する映画の内容を延々と紹介していたりするのだがそこからある時代の雰囲気が立ち上ってきて「もしやこれは繁栄していた昭和の一時期をいつまでも保ち続けようとする、何らかの意志のしわざではないだろうか」。
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“現代じゃもう、小さな世界ですよ―”
屋敷に影のような人間たちがうごめき、女装した美少年が魔都・東京をさまよい、リア王役者は「君の瞳に恋してる」を歌い踊る。80歳を過ぎてもなお衰えることを知らない巨匠、筒井康隆。実に8年ぶりとなる本領発揮の最新短篇集。
・繁栄の昭和
一つのビルに集約されている法律事務所、探偵社、芸能事務所。ある日その建物の入り口で殺人事件が。正統派推理探偵もの―と思わせて読み進めるうち文章に現れていく違和感。どこへ向かうか予想できない新種の実験的小説。
・一族散らし語り
山奥の屋敷に住まうとある家族。怪談めいたこぼれ話が続き、突如ナンセンスな終結へと向かっていく。まるで童謡のような得も言われぬ残酷さとイノセンスが感じられるお話。“ふだんはお下げの細い髪、下駄の鼻緒に血が滲む“。
・役割演技
一族~とは正反対に、成長した人間社会の恐怖を仄めかした作品。置かれた現状が当然という、無感情な会話文が余計に怖さをそそる。将来的に現実になりそうな雰囲気も兼ね備えた近未来SF。
その他「科学探偵帆村」「つばくろ会からまいりました」など多種多様な11編。実在の人物へのオマージュだったり本人が主役になったりと、やりたい放題のように見えて実は練りに練られた味のある作品ばかり。『創作の極意と掟』の実践編とも言うべき、企みに満ちた本好きのための本。
そんなお話。
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久々の筒井康隆。失礼ながら老境に入られて、ますます自由闊達、意気軒昂、伸びやかに筆を走らせた快作。
熱中したのは高校生の頃だからもう40年近くになるか。熱中というより、熱狂したという方が正確か。ついでに言えば、当時、星新一、小松左京、御三家をほんとに読み倒した。この間実家に帰ったとき、小松左京の作品が文庫本でこれでもかというほどあるのに、我ながら驚いたくらいだ。話が脇道に逸れすぎた。
筒井康隆は「最後の伝令」辺りから、より実験的な小説傾向が進んで、ついに読まなくなった。以降の作品はたまに手に取ることはあっても完読はしていない。本書はひさしぶりに何気なく手にとって、一応最後まで読み通すことが出来た。最後の一編は小説作品と呼べるかどうかと思うが。
「科学探偵帆村」、「リア王」、の二編は往年の作品を思わせるスラップスティック。にやりとさせられる。全体的に、やはり既存の小説という枠やルールを逸脱し、それを楽しんでいるかのような作品ばかりだ。「役割演技」はその最たるもの。半分呆れながらも、いかにも筒井康隆らしさにこれもクスリとさせられて読み終えた。
作者の余裕が感じられ、オールドファンには満足感たっぷりの一冊。