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千早さんの感覚好きです。確かに胸はざわつくんだけど、決して不快なざわざわではなく、こういう感覚わたしもある、という落ち着かなさ。見せつけられてはっとします。
4人の同級生のお話もさわついたけれど、「幸福な離婚」と「描かれた若さ」がとても好きでした。
「幸福な離婚」、終わりが見えている、というのはこんなにも優しい気持ちになれるのか、と思いました。全てを許せる…ずっとこんな状態を保てていたら離婚なんて事にはならなかっただろうけど、別れを選ばなければこの日々も送れなかった。難しい。
「描かれた若さ」は男性の感想がとても気になりました。わたしは、よくぞ言ってくれた!とエアー膝バンバンだったけれど、このお話は男性がざわざわするのかな。。
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【話題にしづらいけど興味のあること】容姿や年齢、結婚、セックス、お金とプライド…本音の見えづらい関心事を正しい姿という共通のモチーフで鮮やかに切り取る短編集。
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大好きな千早茜さんの短編集。
短編集ではあるけれども、最初の「温室の友情」を大きな中心に少しずつ他の話も繋がっている。
女性ならではの『正しさ』の感じ方の違いが、さまざまな形で語られていたという印象。
静かに物語は進んでいくんだけども、水面下でどろっとしたものや、ヒヤリとしたもの、ピンと張り詰めているものがある感じ。
女性ってでもそういうものだよね、と頷きながら読んだ。
全くの余談だけど、
『桃のプライド』を読んで思い出したのが
ほかの小説になってしまうけど、加藤千恵さんの『その桃は、桃の味しかしない』。
あんなにも桃を食べる様を瑞々しく、そして艶のある描写ができるってすごいなぁと感動した。
今回の『桃のプライド』でも桃を食べる描写は好きだけど、あれ以上のものはまだ見つけられないんだよなぁ…。
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世の中的に正しい塊の中にいるのは、
安心かもしれない。
けど、苦しいかもしれない。
自分の正しいに胸を張って、
穏やかに暮らしたい。
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友情、愛情、変化、セックス、不貞、年齢。
正しいということそれは間違っていないということ。
本当の正しいことってなんなんだろうね。
温室の友情
中学で出会って社会人になった今でも続いている友情。嘘みたいな女の友情、空っぽな世界。でもそれはたしかな友情。ある時親友が不倫していることを知る。彼女を止めるためにわたしは彼女になりすまして彼の家族に不倫のことを告げに行く。
きっとこんな友情関係は存在するんだろうなって思った。誰かのためにすることが本当は正しいとは限らない。それは支配に近いのかもしれないね。理解なのか支配なのか、友情なのか執着なのか、紙一重。されど大きく意味は違うね。
海辺の先生
出戻りで田舎に私を連れて帰った母。
母はスナックを経営する。狭い町。田舎の世界。
お客さんであった先生と出会い私は勉強をする。
そこで私はこの町から出て行きたいともがく。
決められるのが嫌だったら
自分で決めないと何も変わらないですよ
偽物のセックス
ただセックスがしたいだけと正しい環境で行われるセックスの違い。間違ったセックスはもう2度としないって思わされた。正しくないセックスをして得る快楽は背徳感なのかもしれないけれどいつか必ず後悔をする。
わたし、確かにセックスは好きよ。それは認めるわ。あなたも好きでしょう?
でもね、わたし、正しくないセックスには興味がないの。
幸福な離婚
結婚しているのに別の男に抱かれた。それも何度も。バレた時に彼は言った。「他の男に抱かれた女を、おれは一生抱かなきゃいけないのか!」
別に処女説とか童貞説とかじゃないんだろう。
誰かのものである以上はその間は他の人とセックスしたりしてはいけない。それは正しいことではない。
罰せられるとか何かが起きるわけではない。バレた時何かが起こるかもしれないただそれだけのこと。でもそれはやっぱり誠実ではないし安い。愛情でもないセックスってなんなんだろうね。安っぽいね。
「ねえ、好きな人と毎日会えるって本当は幸せなことだよね。それだけでいいって思う瞬間があったから、一緒に住みはじめるのになぁ」
桃のプライド
温室の友情で一番美人だっだ環の話。彼女は芸能人であったが歳とともに売れなくなっていた。
大した才能でなくとも何か表現できる人が羨ましくなった。持っていると思っていたものが劣化していくよりはずっといい。
誰もあたしなんて見ていないと思っていたのに。でもね、がんばっているよ。これでも、あたしなりにがんばってきた。誰かの特別になるために。
描かれた若さ
若い婚約者にお願いされた肖像画を描いてもらってきてほしいという願い。画家はいるというがそこにいるのは複数人の女子高生だった。彼女たちはおじさんだと俺を嘲笑い揶揄しリアルな絵を描いていく。
あんたはさ自分だけが歳を取らないと思っているんだろ。あるいは、自分たち男だけはゆっくり老いるのだと。賞味期限は長いとか考えてんだろうね。あたしたち女はね、あんたらみたいな男のせいで、早くから歳を意識させられるんだよ。毎日、鏡を覗き込んで化粧して、年齢に応じた振舞いを暗に要求されて。だからさ、強いんだよ、見られることにも、現実にもね
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温室の友情、桃のプライド
同じであることが繋いでいる関係性
環境が変われば望もうと望まないと変わってしまう
同じところにいたのに、いつしか見える景色が変わってしまって、隣の芝生が青くみえることはあるよな
そうならずにいたい
海辺の先生
こういう先生の存在っていい、安心感のあるお話だった
幸福な離婚
こんなにも満ち足りているのに、いずれ終わってしまう
リミットが決まってるから満ち足りているのか
切なかった、このまま続いてほしいと思ってしまう
描かれた若さ
スカッとする
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わたしは桃娘にならなくては、と思ったの。求られるのが、わたし。最後は骨まで貪られるとしても、求められなきゃわたししゃない。
あなたたちは求めるばかりで、求められることを考えていないから。
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「幸福な離婚」が良かった。自分にも思い当たる節があったりして、ぐさっときた。彼氏と同棲中なので、こうならないよう日々をもっと大切にしようと思った。
どのお話も自分が経験していなくても、主人公に気持ちに共感できる部分があって、わかる〜ってなった。
「描かれた若さ」はフェミニズム的なかんじで良かった。男の人は一度これを読んだ方がいい。自分のことを棚に上げて、ジャッジする側やと思っている人が多すぎるので。
千早茜さんの文章好きかも。他の本も読んでみたい。
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どうして男の人って、寝た相手はいつまでも自分の影響下にあると思い込むのだろう。
読んだ後に解説を読んで6つの短編は全て少しずつ重なり合っているとわかって、どこからどこまでが繋がっているのか想像が膨らんだ。
離婚を決めたら穏やかな日々が流れ始めたイツキとミヤは、無理に互いの足並みを揃える必要もなく、心地いいんじゃないかなと思った。
出来れば私もそんな風に過ごしたい。
無理をしてまで同じ方向を向こうとはしたくない。
子供が欲しいからって毎月セックスを強要するようなこともしたくない。
男から勝手に女としての寿命も決められたくない。
不倫してることが相手の幸せに繋がらないと勝手に決めつけてそれを勝手に終わらせることも。
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この作品を読んでいる時に、瀬戸内寂聴さんが亡くなった。
彼女の生き方を嫌う人もいる。
けれど、亡くなることで人は、一気に手のひらを返し、すべてを美談にする。
彼女の不倫を否定も肯定もせず、事実として伝える報道機関。そのことへの違和感が強い。
だったら、彼女が生きている間に、なぜそうしなかったのか。
わたしは正しさを肯定してほしくてこの作品を選んだのか、正しさを否定してほしくてこの作品を選んだのか。
一つ言っておくと、わたしは最近、正しくない。
しかし真面目さ故、その正しくなさはわたしを苦しめる。
同時に心の中にある醜悪さは隠せる状態ではなくなっている。
掘り下げていくたびに明かされるわたしの醜悪な心の中。
クズをクズと断罪できないのは、自分がクズと同じ人種だからだ。
自分がされて嫌なことは人にしないをモットーにしておきながら、自分がされて嫌なことを人にしていることがある。
自己中で傲慢。
でも、それを責める友人は少なくて、責めているのは、わたしが正論を心の中で擬人化して飼い慣らした、正論人だ。
自分の中にある醜悪さに気付くこと、つまりそれは自分の本心が明かされるということだ。これまで正論人によって蓋をされていた醜悪さが顔を出すことで、どんどんどんどん、本心とずれたことをすることになる。そのことに、とても疲れてしまったのだ。
他人の正しさが、時々すごく億劫。
だって、その他人の言う正しさの方が正しい、ってことくらいわかってる。
でも。そんなにうまくいかないから困ってる。
どこかで自分の正しさは正しいって保証がほしいから、その想いは時々他人を巻き込むことがある。
でも。自分の正しさが、他人の正しさとイコールとは限らない。
こんな傲慢で自己中でクズで正しさの軸がぶれている自分が、教育機関で正論ばかり吐いてていいのだろうか。
こんな自分が、また新たに国家資格を取ろうと思っている。
時折自分でわからなくなる。
何が正しいのか。
さて、この作品は連作短編集でした。
気づかずに最後まで読んでしまっても大丈夫。ちゃんと解説で説明があります。
復讐って気持ちいい。ゾクゾクする。
この感情に、正しさもなにもない。
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短編5話。はっきりとした連作ではないけれど、登場人物が繋がっています。
同じような普通の女の子たちだった4人。
背伸びして派手な子たちとつるむと疲れるし、地味な子と付き合っていじめの標的にもなりたくない。女子にありがちな、孤立を恐れ、いつも固まっていることで安心している仲間だった4人。卒業し、成長し、それぞれの道を進んでいき、生まれる心の動きが物語になっています。
本音や言葉にしたくない部分など、言語化が難しい感情をこんな風に描けるのはすごいなと思います。正しいことの基準って難しいなぁと思います。それぞれが自分の思っている正しさを信じればいいのだろうけど、読んでいて自分の思う正しさがグラグラ揺れました。
「幸せな離婚」が一番印象に残りました。
離婚を決めた夫婦の生活。
”慣れは遠慮の無さを生み、過去のことを掘り返し、根本的な性格まで否定しあった。”
”正しい状態ではない今、わたしの心は穏やかだ。”
離婚を決めてからのほうが相手を思いやり、心地よい幸せな日々を送れている2人。
結婚ってほんと難しい。グサグサと刺さりました。
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温室の友情は女子たちにありがちなマウントを図りながら自分のいるべき場所にいる感じ。
その中で依存性が増して最後は自分が鬱陶しがっていた母親にそっくりな自分の理想とする友人な形にしようとしていてゾッとした。
海辺の先生は最後思わず泣きそうになった。
こういう人との巡り合わせで人の人生って180度変わっていくと痛感。良い人に出会えることは本当に運命なのかな。
偽物のセックスは正直少し気持ちが悪くなった。
麻美は最初の物語にもでていて、その旦那の話だったが、とにかく自分が妻だったら最悪だなぁと言う感じ。
幸福な離婚は離れることを決めたからこそ歩みよれる。やはり人は近ければ近いほど、自分の素がでて、我慢や心の声がそのままでてしまう。本当の他人になればやはり自分でセーブして言葉を選んだりできるかなと。ここで最初の物語にでてきた恵奈の不倫相手がでてくるので、同じ土地の話なんだなっとなった。
桃のプライドは最初の物語の4人のうちの1人の環の話になる。最初こそ美貌もありちやほやされるがだんだんと歳をとるにつれて、周りとは温度差が変わってくる。表向き良く見せたい人ほど、中身は切羽詰まって瀕死の状態な気がする。
だからこそ若い子に嫉妬して自分と同じ道を歩めばいいと思っているかなっと。
描かれた若さはホラー要素もある。
自分が馬鹿にして傷つけた相手に復讐される。
スカッともする。男の人の傲慢さがありありと見せつけられ、それがちゃんと成敗されて気持ちいい。
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6編からなる短編集。
短編集は避けがちなので本書も購入を迷ったが、読んでみて久々に短編集の良さを思い出した。
高校時代の仲良しグループだった友人の不倫を嫌悪する「温室の友情」。だがその感情は潔癖からくるものではなかった。似たり寄ったりの人生を歩むことでしか保てない友情。それを自覚する主人公を軽蔑できないところに後ろめたさを感じてしまう。
巻末の「描かれた若さ」はファンタジックでミステリアスで少し異質な一編だ。謎の空間に閉じ込められる主人公の男。彼を追い詰めたものの正体にハッとする。
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面白かった。あとがき読んで、気付かなかったところもあった。
基本的に重めの話がすき。不倫、セックス、結婚、友情。その中の、人間誰しも抱える嫉妬とか憎悪とか、そうゆうのが描かれる作品が好き。
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とても面白かった。
描写の言葉選びがとても繊細な感じがして好きだった。幸福な離婚がすごい温かくも何とも言えない気持ちになって、絶対いつかまた読みたくなるだろうなって思った。