紙の本
アクロバティックな論理と異様な動機の本格ミステリ短編集
2022/11/28 20:41
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投稿者:honto好き - この投稿者のレビュー一覧を見る
謎を解いてやるぞと意気込んで読んだのに、途中までは真相を見破れてもその先の真相が読者の考える前提を大きく覆すものだったり、伏線の張り方が都合よすぎると思ったら必然だったことが分かったりと、すっかり作者の術中にはまってしまった。
『赤い博物館』と『記憶の中の誘拐』を続けて読み、「冴子の推理」と「犯人の動機」のロジックがだんだんアクロバティックになっていくとともに、犯人の動機の異様さがより深い人の心の不可思議さを描いているように感じた。『戻り川心中』や「赤い靴」を読んだ時の興奮を思い出した。作者はロジックに裏打ちされたトリックが得意という印象だったが、『赤い博物館』シリーズは異様なロジックのホワイダニットがプラスされている。連城三紀彦や山田風太郎のように、ミステリのロジックで人間の異様な心を描いている。今後のシリーズの展開が楽しみだ。
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続きも読みたい
2022/10/04 20:26
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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
シリーズ第二弾であることを知らずの読んでしまったのですが、全く問題なく楽しめました。短編なので登場人物が少なく、犯人がわかりやすいものもありましたが、全体的に切ない感じで続きも読んでみたいと思いました。
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【緋色冴子シリーズ第二弾。文庫オリジナルで登場!】赤い博物館こと犯罪資料館に勤める緋色冴子が、過去の事件の遺留品や資料を元に、未解決事件に挑むシリーズ第二弾。文庫オリジナル。
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待望の続編ということで発売日に購入しました。
再捜査が時間を巻き戻し、過去を紐解き、そこには悲しい過去がある……犯罪資料館という設定がこれでもかというくらいハマるお話ばかり。トリックとスピーディーな推理に驚きながらも最後は少し寂しさも感じるのはこのシリーズならでは。面白かったです。
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赤い博物館の第2巻。前作では探偵役である館長は博物館を出ませんでしたが、今作ではすべての捜査に同行しています。次は長編も読んでみたいかなぁ。
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年明け三冊目は「赤い博物館」シリーズの続編。
本格ミステリとしての面白さは健在で、どの話も発想の逆転のさせ方がうまく、すっきりしていて読みやすい。特によかったのは『死を十で割る』と『連火』の二つ。どちらも犯人がなぜそんな行動に出たかがわかった瞬間は鳥肌がたった。
気がはやいかもしれないが、続編を早く読みたい。
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最初の頃は、パズラーに徹するために余計な夾雑物は一切切り捨てた的なことを公言していた作家さんだけど、その頃からなんとも言えない愛嬌みたいなものがあって、このままでも案外一般受けするかもとか思っていた。それがキャラ萌えという夾雑物だけは容認するようになって、当然のように人気者になった。それでも本質は変わらず、まるでミステリ以前の推理パズルそのままのような、不自然な設定や強引な展開、とってつけたようなキャラクターは相変わらず。これはこういうもの。
トリックの方も、一時期のこれまで誰も見たことのないようなトリックを産み出してみせる的な熱意で、ギラギラしているような高密度感はないが、それでも異様なまでの濃厚さ。帯に推薦文を寄せている有栖川有栖氏の小説が好きな人なら、絶対に気に入るんじゃないかと。
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「赤い博物館」に続く緋色冴子シリーズの第2弾。
雪女のようなルックス、コミュニケーションに難ありだけど抜群の推理力をもつ、訳ありのキャリア警視緋色冴子がお蔵入りになった5つの事件を解く連作短編。
過去の捜査資料を読むだけで事件の真相を探り当てる冴子の慧眼が今回も冴える。
彼女の手足となって調査する寺田聡とのコンビも板についてきた。
今回の事件もそれぞれ工夫に満ちていて、相変わらず動機とかに無理筋なところもあるけれどそれも許容範囲、全体としてサラリと読んで楽しめるミステリに仕上がっている。
軽く頭を働かす程度の安楽椅子探偵ものとしてこれからも追っかけたいシリーズです。
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旅のお共として。続編。さらに続きが出そうで楽しみ。「夕暮れの屋上で」は先輩というのは女の子だろう、というとこは推測できたけど、結果はちょっと違った。なるほど、そっちもあったか、と。「連火」はこういう展開?で『あの人』って呼び方するかなーってとこがちょっとひっかかった。「死を十で割る」はバラバラ殺人にした理由が画期的。なるほど。「孤独な容疑者」は前、別のアンソロジーで読んで、そもそもこのシリーズを読もうと思ったきっかけの作品。「記憶の中の誘拐」は印象的。こんな誘拐の理由ある?子供を思う気持ちっていろいろあるんだなと。
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前作同様よくできた短編集です。
本作だけでも楽しめますが、前作の続きから時間がスタートしているので、人間関係を知るには赤い博物館から読むことをお勧めします。
館長の緋色冴子と元一課刑事の寺田聡の今後が気になります。続編を期待するシリーズです。
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シリーズ二冊目。犯罪資料館の館長・緋色冴子が安楽椅子探偵として、元捜査一課刑事の寺田聡を手足として未解決事件に挑む…のだが今回は冴子が共に聞き込みに出向くという点で前作とはちょっと違っている。だがその違いなどほとんど気になることなく相変わらず冴子の目の付け所や論理展開は素晴らしい。連作の形で進むが、どれも見えている事件を解決するというより見えていないところにあった真の事件を暴き出す鋭さと美しさがある。どれも良かったが、印象深いのは「死を十で割る」のホワイダニット、「孤独な容疑者」のラストの寒気。
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【収録作品】 夕暮れの屋上で/連火/死を十で割る/孤独な容疑者/記憶の中の誘拐
「夕暮れの屋上で」 卒業式のリハーサルが行われた日の放課後、校舎の屋上で一人の少女が「先輩」に募る思いを伝えていた。そこで少女の遺体が見つかる。
「連火」 標的にした住宅を燃やすが、火をつけてすぐ電話を掛けることで死者は出さない放火魔。八百屋お七を彷彿とさせるが、ある日を境に犯行を止めた。
「死を十で割る」 十個の部位にバラバラにされていた被害者男性の死体。同じころ、DVを受けていたその妻は列車に飛びこみ、自殺を図った。
「孤独な容疑者」 借金の返済を迫られて、同僚を殺害した犯人。倒叙の形で語られる。
「記憶の中の誘拐」 26年前に起きた奇妙な誘拐事件。被害者の少年は、寺田の友人。
時効を迎えた事件の真相を暴くことの意味を思う。
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大山誠一郎さんのミステリ、好み。
前作に引き続き面白い!
『夕暮れの屋上で』がとても良かった。
このシリーズ、まだまだ続いて欲しい。
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赤い博物館シリーズの短編集。
過去の未解決事件の資料や遺留品を読み解いて、犯罪資料館の館長が真相を解き明かす。どれもあっさりと短い短編でトリックで勝負する感じ。わかりやすい話もあったが、「死を十で割る」の死体をバラバラにした理由などはなるほどと思った。
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未解決事件の捜査書類や証拠品を保管する警視庁付属犯罪資料館、通称「赤い博物館」。
ミスにより刑事の花形・捜査一課から左遷された寺田聡の毎日は時効を迎えた事件の捜査資料を警察署から引き取り、QRコードを貼ってデータベースと紐付けるという単調なもの。
だが稀に、館長・緋色冴子警視が『再捜査をする』の一声で当時の関係者に聞き込みをすることもある。法律上は時効が成立しているので犯人が分かったところで逮捕とはならないのだが『真実を暴く最後の砦』として出来る限り解決しようとしているらしい。
前作同様、今回も様々な事件の構図のある部分が引っ繰り返る瞬間が楽しい。
人物、事象、理由、原因、時系列…今回の事件は何がどう引っ繰り返るのかという興味で読んだ。
パターンとしては序盤に犯人視点の描写がチラッと入る。だがそれが真実とどう結びつくのかはまだ分からない。その後捜査資料にて事件の詳細が分かってくるのだが、疑問点があらわになるだけで主人公・寺田には事件の真相は全く分からない。だが『事件を再捜査する』と言った時点で緋色の頭にはある程度の真相が見えているようだ。
前作と違うのは、緋色が『赤い資料館』を出て寺田と共に聞き込みに出向いていること。コミュニケーション能力に難のある緋色は、前作では聞き込みは寺田に任せて自身はその結果を聞いて真相を明かすというパターンだった。緋色自身、何か思うところがあったのだろうか。
だが彼女の聞き込みは前作同様、一見不可解で寺田同様戸惑ってしまう。それが事件の真相とどう結びつくのかも楽しいところだろう。
捜査資料を読んだだけでなぜそれが分かるのか、緋色の頭の中がどうなっているのかこそ一番の謎だが、緋色はよくある名探偵キャラのように真実が分かるまでは考えを明かさない。緋色が『雪女』と寺田がこっそり呼ぶ沈黙キャラな分、守衛の大塚や清掃員の中川が補ってくれるから良いのだろう。
前作を読んで気になっていた、緋色が『赤い博物館』の館長となった理由、寺田が刑事に復帰する兆しなどは全くなかった。逆に言えばシリーズはまだ続くということだろうか。
※シリーズ作品
①「赤い博物館」レビュー投稿あり