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ジェイコブズ対モーゼス ニューヨーク都市計画をめぐる闘い
ニューヨークのマスター・ビルダーとして君臨したモーゼスと、一介の住民代表でフリー・ジャーナリスト、ジェイコブズとの、30年間にわたるワシントンスクエアパークとその周辺環境...
ジェイコブズ対モーゼス ニューヨーク都市計画をめぐる闘い
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商品説明
ニューヨークのマスター・ビルダーとして君臨したモーゼスと、一介の住民代表でフリー・ジャーナリスト、ジェイコブズとの、30年間にわたるワシントンスクエアパークとその周辺環境保全をめぐる壮絶な闘いを描く。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
アンソニー・フリント
- 略歴
- 〈アンソニー・フリント〉コロンビア大学グラデュエイト・スクール・オブ・ジャーナリズム卒業。ジャーナリストとして25年間、主にボストングローブ社に勤務。リンカーン土地政策研究所所属。
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紙の本
都市を市民の手に取り返せ
2012/01/11 04:48
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:良泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第二次世界対戦を挟んでその前後1970年代まで、ニューヨークのマスター・ビルダーとして君臨したロバート・モーゼスと、一介の市民でフリージャーナリストのジェイン・ジェイコブズ。ワシントンスクエアパークとその周辺環境の保全をめぐり、この二人が30年間にわたりる壮絶な闘いを繰り広げたその記録。
本書はこのように紹介される。確かに単純化して言えばそうなのである。しかし、われわれはこの闘いを、ある時代の、ある場所における固有の闘争劇ととらえるべきではない。ましてや、特殊で特異な個人対個人の紛争の記録などと矮小化して読むべきではない。
この闘争には、多くの人たちが住み、また影響を受ける都市というものの環境がいかにあるべきか、という本質的な問いかけが含まれている。また、政府や自治体という“公共”がこれにいかにかかわるべきか、住民は自分たちの住む街にどう主体的につきあっていくべきなのか、などの普遍的で重要な問題が潜んでいるのだから。
訳者の後書きが、わかりやすい。
『交通という切り口からニューヨークを見ると、マンハッタン島と島外とを結ぶ交通路の完備、そしてマンハッタン島内の交通をいかに効率的にすべきか、このふたつが解決すべき課題だった。驚くべき実行力をもって進めたモーゼスの高速道路事業はこの問題解決に大きな貢献をしたが、ジェイコブズから見れば、モーゼスの事業は近隣の蹂躙、歴史の抹殺、住民無視に他ならず、人間よりも自動車優先の考えとなってしまうのである。
また、都市居住という切り口から見ると、二人とも都市の重要性を意識して世界恐慌直後のアメリカ大都市の衰退問題に挑戦した。だが、そのためにどのような方法をとるのかという点で、この二人は決定的に異なる道を進むことになってしまった。都市の再生は行政が計画することで可能になるというモーゼスと、都市は自己再生力を持っていて有機的な自己発展が可能だと信じているジェイコブズとがいて、二人とも決して譲歩しないのだ。』
1960年代と現代、ニューヨークと日本。時間も場所も、はるかにかけ離れていようとも、都市のかかえる問題の根本的なところは、いっさい変わっていない。そして、何ら解決されていなかった。それどころか、何が正解なのかさえ、実は誰も未だにわかっていなかったのだ。
あいかわらず、経済発展を盲目的に是とした政治が行われ、都市部における大規模な再開発計画が際限無く続く。
東京、大阪に限らず、地方部においても、その地方の中心都市は、大規模土建資本により、ずたずたに掘り返されている。まるで、穴を掘って、また埋めるだけの公共事業でも経済成長に寄与すると言わんばかりに。
都市の主役は、いったい誰なのか。その答えは、きっと誰も同じはず。きっと、ジェイコブズもモーゼスも。なぜいつまでも、このような不毛な対立と無駄が続くのか。
都市を市民の手に取り返し、市民の力で再生していく必要がある。そいて、そのためには、行政の役割も大きい。しかし、なんといっても、そこに住む市民自身の自覚と認識と働きが最も求められていることは言うまでもない。
手遅れにならないうちに。