紙の本
不思議な魅力
2022/03/20 20:12
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投稿者:なっとう - この投稿者のレビュー一覧を見る
奇妙な夢を見ているような感覚でした。
目が覚めてからその奇妙な夢を振り返った時に、ところどころ妙にリアリティがあって、あれって夢だったっけ?現実だったっけ?と混乱するような。
奇妙で、だんだん怖くなってくるんだけど、なぜかどんどん読みたくなっちゃう。すごく不思議な魅力に満ちた作品だと思います。
教育って、生き物を歪める行為なのかもしれない。でも、彼らはどこか本能的でもあったな…などと考え込んでしまいました。
紙の本
異常が正常
2023/01/02 10:02
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
ストーリーの背景や舞台の説明なしにいきなり衝撃的な話が始まるので、ずいぶんと戸惑った。閉ざされた世界のようであるが物理的な柵はなく、あくまで「教育」で生徒たちを異常が正常な世界に閉じ込めている という話である。一見、ユートピアにも見えるが実際のところどうなのだろうか?題名からテーマを類推すると教育というものの怖さを描き出しているようなのだが、真意は別のところにあるような気がする。
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読みました。淡々と語られる奇怪な日々と興味深い小話がたまらなく好きで、ずっと読んでいたかった。
心のうつりかたや発言、なにもかも完璧で歪なのにリアルに感じて世界をするする受け入れてしまう。
署名について真夏が異を唱えてすれ違ったあとから、主人公の勇人が急に気持ち悪く感じてきて、そこからのスピード感すごかった・・・。
たくみに操られた気分。
教育されたら傷つかずに生きられるのかもしれない。
小さなエピソードは遊園地で幽霊のアルバイトするひとの話がいちばん好きだったー。
読み終えたあと、いろんな場面を思い出すたびどきどきしてくる。おもしろかったです。
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真面目すぎるのは面白いけど本当に大事なことから目が外れてしまうこともある…しかし本当に大事なことなど本当にあるのだろうか…それを励みに頑張っていこう!
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ハレンチ×超能力×ディストピア。
こんなにも「どう終わるんだろう…」と思いながら読んだ小説もなかなかない。
催眠中に未来が話す妙な設定の話は何なのだろう。
卒業とかないのか?
「荷物をまとめようとしたが、正しい手順がわからず、少し時間がかかった。が、時間をかければいつかは私も荷物をまとめることができる。荷物をまとめると、私は部屋から出た。(p149)」
なんなんだ、この不思議な表現は。
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面白く、文章がとても読みやすかったのであっという間に読んでしまった。
舞台の学園は、
・成績で変動するクラスの概念で上下関係ができていて、学年の概念は登場しないこと、
・生徒たちに家族や両親の影が全くないこと、
・いくら鍛えている男性だとしても、学園に在籍しているような年齢の子がそんな100キロを超えるベンチプレスを持ち上げられるんだろうか?と思ったこと
などからもしかしたら彼らは10代ではないのかも知れない、と気づき途中からは20代〜アラサーくらいの人々のコスプレ学園生活を想像しながら読んだらものすごくしっくりして見えた。もしかしたら卒業の概念すらなくて3年とか4年どころじゃない長い年月を学園で過ごしているのかも知れないという空気すらあった。
著者の芥川賞受賞作、破局に関して随所で言及や記事を見かけており、よくデヴィッドグレーバーのブルシットジョブに書かれていたことに絡めて語られていた印象がある。
今作、主人公たちは学園で、透視能力の向上に励んでいる。そのための原理を教える授業や力を鍛える訓練というものは特になく、テストしかない。主人公はテストを続ける中で彼なりに試行錯誤をして、成績は向上するのだが、モニターの向こうにあるカードの裏側を当てるのに、努力や対策のしようがないのは明らかである。小泉進次郎構文みたいなことを根拠にカードを当てようとしている主人公、その虚無でしかない徒労が今回のブルシットジョブの比喩なのだろうなと思った。
著者の小説を読むのははじめてで、触れ込みをみてから破局よりも断然こっちが読みたくて、SFが好きだからというのもあるが、以前読んだインタビューで、ハリーポッターみたいな小説を書きたいと言っていたのを覚えていたから。
ハリーポッターみたいなものを書きたいと言って出てくるのがこれなんだ笑、フーン、オモシレー作者…と思ってすごく読みたくなっていた。
で、読んだけど面白かったけど、読んでなにか突破口や抵抗や違う世界への可能性というものは特に感じない…こんな小説だけど最低限フェミニズムの素地が感じられ、学園全体が男性社会の比喩だと思うし、日本の若い人だいたいみんなこんなようなもんだよ、教師なのか上司なのか政治家なのか、自分らが登場するより前から勝手にある校則やルールのある世界で、自分がより良いポジションにつけるようには努力できるが、そもそもそのルールとか法律とか歴史をつくっているのが自分たちと同じ人間であるという視点を欠いていて、同じ人間であるのだから自分たちもそれに干渉できる社会の構成員であるのだと思えない世界で生きている。
社会人と呼ばれるようになっても高校生みたいな人々だよとわかるから面白かった。面白かったけど面白い比喩だな〜っつって満足してええんか?というのはやはり疑問がある。
しかしこんなにセックスが出てくるのに生理と妊娠に関する事象が一切出てこないのがこの作品の限界性なのだろうなと思ったし、主人公は知り得ないことなのだろうなと思った。オモシレーけど普通にイヤで〜す…
破廉恥学園をぶっ壊してほしかった…けど好きなだけセックスできんだから男たちにとってはユートピア���んだろう、壊したくもないんだろうかなとも思う、許容はしないが。
酷い世界だというのはわかっているけど何かできるとは思ってないんだろうなというか、結局性欲に負けてる、自分らに都合良いまま変える気もない、正義も理想もない、という小説だったと感じた。
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三作全部読み終えました。
三作とおして、一貫しているのは主人公の虚無感。
自分がない、空っぽな点が同じだけど、
前二作は親や社会的常識に判断基準を委ねているのに対し、今回は学校、教師に全てを委ねていて、より気味の悪さが増していたように感じました
もう宗教の世界だなと。学校と宗教は紙一重なのかもしれません
どこかの感想サイトで、この主人公たちは10代ではないのかもしれない、と書いている人がいて鳥肌が立ちました
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著者は平成生まれ初の芥川賞受賞。
であるから、なにかすっきりとした結末というか、成程的な感じを期待してはいけないとは思っていたが。
毎日オーガズムに3回(も!)達することが推奨されている全寮制共学高校。そして謎のテストが頻繁に行われ、その成績によりクラス替えが行われる。ほとんどの生徒はひたすら上のクラスを目指して色々努力している。
正直読んでいてその理由を知りたいと思うし、もっと異次元の謎世界が展開されるかと思いきや、そこには普通の学校と同じ、切磋琢磨?若しくは足の引っ張り合いする、いつもの学園生活が存在するだけなのであった。かといって教育とは、とか、生徒と教師のあり方とは何か、といったことを判り易い皮肉として描かれている訳でもない。なかなか難しい小説なのであった。
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教育の本質を考えさせる作品でした。
抑圧された学校で、1日3回オーガズムに達したら
成績が上がるという教育のもと進級を目指す男の
話です。倫理観を度返視した設定で面白かったです。
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p.66
コーヒーフレッシュのうっかりミスを随分重く受け止めてるな。
p.82
"「これでも頑張って食べたの。ここの食事、私にはちょっと多いんだよ」"
辛かった給食の時間を思い出した。
テストについて、え、完全に運だよね?と思わざるを得ない。色の声を聞くとか透視能力を鍛える的なニュアンスも成功率低すぎて成長してない気がする。なのに進級してる。なんでやねん。
難しかった。全然意味分からない。
この芸術が理解出来ない程度の教養しかない自分が恨めしい。鍛えたい。理解したい。
あの未来がかけてくる催眠は何なんだ〜〜〜
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教育という名の洗脳。
洗脳されている人は洗脳されていることに気がつかない。
倫理観が違うのでただただ奇妙に感じるこの感覚は洗脳されたものかもしれない。
─ ─ 暗転。
遠野遥. 教育 (Kindle の位置No.2009). 河出書房新社. Kindle 版.
新感覚ハードボイルド風文体が心地よい。
「未来は手を叩き、話を始めた。あなたは公立高校に通う女の子で、十七歳の誕生日に中退することになります。精神面の不調により、学校へ通うことが難しくなったからです。」から始まる催眠物語(?)の浮遊感やあると思った階段がなくて踏み外しそうな、ソロソロと歩くような心細さに感動した。
お疲れ様ですと言ったつもりだろうが、口の開き方が足りず、オタッスとしか私には聞こえなかった。声も全然出ておらず、頭の下げ方もおざなりだった。おい、と私は言った。彼は返事をして立ち止まり、慌てて姿勢を正した。この時点で私の気はいくらか済んでいたが、上級生として彼を教育する義務があった。
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奇天烈。
意味不明。
最後にどこへ誘われるのか
予測不能で
読んでいるあいだずっと
不思議な緊張感があった。
どこかへ導かれるものではなく
その独特の世界に
どっぷりはまり込む小説だった。
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自分がよく知っているはずの「人間」の思考が、常軌を逸した理解し難いものであるように感じられながらも、なぜか共感できてしまう不思議な作品。
主人公の異常な倫理観を、誰しもが持ちうる可能性があることが共感につながるのだろう。
ディストピア小説と言えばいいのか、世界観は中村文則の「R帝国」に似ている。
日常の会話は、周囲の環境など、ある程度お互い共通の文脈を持っているために成り立つのであり、それが外れてしまえば、正義と悪など判断の基準が丸々変わってしまう恐ろしさを感じた。
今作の主人公も、この異常な学校から抜け出せば、作者の2作目である「破局」のようなラストを迎えるのかな、という想像をついしてしまう。
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「破局」で芥川賞を受賞した遠野遥さんによる芥川賞受賞第一作初長篇。帯にある「ハレンチ×超能力×ディストピア」がぴったり当てはまる作品。「1日三回以上オーガズムに達すると成績が上がりやすい」とされている、道徳感が滅茶苦茶な世界での学園小説、現代社会とは別軸の世界のお話といった感じ。主人公の虚無感が凄い、本当に空っぽな感じで家族などの影もない。人を選ぶ小説だが、好きな人には堪らないだろうなと思った。
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成績向上のために一日3回以上オーガズムに達することを推奨する全寮制の学校、というエロ漫画的世界観。
そしてここでいう成績とは、カードの裏面の絵柄を当てる超能力を指す。
勉強もしてるみたいだけど、それも超能力を鍛えるため?
いったいぜんたいどういうことなの…と訝しみながら読んだ。
トンデモハレンチ小説かと思いきや、描写が淡々としていて、何やら静謐な雰囲気が漂ってる。
本当に摩訶不思議。
物語の半ば、外の世界の人々による、学園の閉鎖を求める運動について知らされる。
たぶん生徒の人権が侵害されてるとか、洗脳されてるといった理由で。
それを受けての主人公や周囲の反応は、「外の人間は頭が悪い」「誤った情報に踊らされてる」
たしかに内側から考えたらそうだろうけど、
この子たちが必ずしも不幸とは限らないけど、しかし。
教育と洗脳のあいだには、何の線引きもないのだ。
授業中、自由の女神やオリンピックの話を生徒たちはどんな気持ちで聞いていたんだろう。
べつに何とも思わないかな。
何とも思わないのか、何とも思わさせてもらえないのか。
問うことを育まない教育。それはやっぱり洗脳なのでは。