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- カテゴリ:一般
- 発売日:2010/05/01
- 出版社: 河出書房新社
- サイズ:20cm/309p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-309-20540-3
紙の本
シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々
パリ、セーヌ左岸の、ただで泊まれる本屋「シェイクスピア・アンド・カンパニー」は、貧しい作家や詩人たちに食事とベッドを提供する避難所。そこへ偶然住み着くこととなった元新聞記...
シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々
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商品説明
パリ、セーヌ左岸の、ただで泊まれる本屋「シェイクスピア・アンド・カンパニー」は、貧しい作家や詩人たちに食事とベッドを提供する避難所。そこへ偶然住み着くこととなった元新聞記者がつづる、世にもまれな書店の物語。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ジェレミー・マーサー
- 略歴
- 〈ジェレミー・マーサー〉1971年カナダ生まれ。作家、ジャーナリスト。元『オタワ・シティズン』紙記者。1999年、パリにわたり、シェイクスピア・アンド・カンパニー書店に数か月滞在した経験がある。
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紙の本
見知らぬ人に冷たくするな、変装した天使かもしれないから
2010/07/10 13:14
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:abraxas - この投稿者のレビュー一覧を見る
カナダで新聞記者をしていた「僕」は、筆禍に遭い、命の危険を感じ、とるものもとりあえずパリに逃げた。たくわえも尽き、冬のパリを彷徨ううち雨に降られ、雨宿りにとある書店に飛びこんだ。ノートルダムにあるその書店こそシェイクスピア・アンド・カンパニー書店だった。
この名前にぴんと来た人があるかもしれない。ジョイスの『ユリシーズ』がどこの出版社からも相手にされずにいた時、出版費用を出したのがシルヴィア・ビーチ、シェイクスピア・アンド・カンパニー書店の店主である。フィッツジェラルドやヘミングウェイが立ち寄る有名な英語書籍店だったが、ドイツ占領時に店を閉め、パリ解放後も店を開けることはなかった。
そう、この本に出てくるシェイクスピア・アンド・カンパニー書店はその本家の名前をいただいたいわば二代目の書店である。店主はジョージ・ホイットマン。まぎらわしい名だが、父親は教科書こそ書いたが、詩人のホイットマンではない。このジョージという人物が実に魅力的に描かれている。まるで小説のようなノリとテンポで読ませるが、歴としたノンフィクションである。
雨宿りしたのが運よく週に一度だけ開かれているティー・パーティーの日だった。パーティーに誘われた「僕」は、この特異な書店に圧倒される。なにしろ、本でいっぱいの広い店の中にはキッチン(ゴキブリがうろついている)があり、誰かがスープを作っているかと思うと、別の部屋には数台のベッドが置かれているというありさま。
実は、この書店は作家志望の若者に寝るところを提供していたのだ。店の前身は「ミストラル」という名で、ヘンリー・ミラーやアナイス・ニンは常連だったし、バロウズやギンズバーグもやってきた。パリに行けば、無料で泊まれる本屋があるという噂は広く知れ渡っていて、この店を訪れるものは引きもきらなかった。ただ、長逗留できる者は限られていて、それにはジョージに自伝を読んでもらわなければならなかった。
「僕」は、みごとその試験に通り、シェイクスピア・アンド・カンパニーで暮らしはじめることになる。個性的な同宿人との日々の暮らしやその日の糧を得るための涙ぐましい苦労。パリで安い飯を食べる方法と、興味深い話題には事欠かない。何しろ、新聞記者と言ってもかけだしでまだ若い。恋もすれば、嫉妬もする。
アルコールと薬物から手が切れず、あぶない橋を渡りながらもシェイクスピア・アンド・カンパニー書店での生活がしだいになくてはならないものとなってゆく。特に八十六才という高齢でありながら、二十才のイヴに恋をし、結婚を申し込むジョージの姿に心を動かされる。精力的に書店を運営していくジョージだったが、店には買収の手がのびてきていた。
舞台になっているのはミレニアム問題に揺れるパリである。ところが、筋金入りのコミュニストであるジョージの来る者拒まずというコンミューン作りには、なにやら60年代のにおいが漂っている。鍵もかからぬレジや、そこいら中に置き忘れられている金は、泥棒の餌食になっているが、ジョージは本の万引きも、盗難事件にもひるむことがない。
ただ心配なのは、自分に何かがあれば、書店は別れた妻の名義となり、自分を恨んでいる妻はさっさとホテル王に売り渡してしまうだろうということだ。そうなれば店の公式ソングにある「見知らぬ人に冷たくするな、変装した天使かもしれないから」というモットーに基づく書店運営はできなくなる。ジョージにはその先妻との間に、その名もビーチからとったシルヴィアという子がある。娘が店を継いでくれれば、という願いはあるものの仕事一途できた男にそんなことを言い出せるはずもない。
シェイクスピア・アンド・カンパニー書店の運命やいかに。また「僕」の恋の顛末は…。今風と言うよりはビートニクやフラワーチルドレン、ヒッピームーブメントの雰囲気が濃厚な気配だが、金なし宿無しの異邦人がパリのど真ん中で生き生きと暮らしていくその日々のなんとも言えない開放感がたまらない。ロレンス・ダレルが『アレクサンドリア四重奏』を書いていたという、その部屋が今も残っているなら、今度パリを訪れたときにはぜひ足を伸ばしてみたいものだと思う。
紙の本
なんだかすごい本屋さん
2019/01/29 22:34
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ジョージ・ホイットマンが経営していた(現在の経営者は娘のシルヴィア)本屋が舞台のノンフィクション)、作者のジェレミー・マーサーはここで寝起きして夜露をしのいでいた。そういう若者が何人もいる。この英語書籍専門店の経営者は、生活に困り果てた芸術家やそうでない人たちにもベッドを提供している。寝起きしているメンバーは、まあこんなところに居候をきめこむ連中なのだから個性が強烈な人ばかりなのは仕方がないだろうが、私には耐えられそうもない。ルイ・ヴィトンが東洋人にはあまり商品を売りたくないという挿話はなるほどなとは思うところもあるが、やはり読んでいると辛くなる