紙の本
紛争が分かりやすく書かれた本
2023/07/07 10:58
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投稿者:kisuke - この投稿者のレビュー一覧を見る
機械達が登場人物の紛争物語。
歪んだ理屈の背景が分かりやすく描かれていて、他の人には理解できなくても、当事者には筋が通っていることが伝わってくる。そういう面は誰にでもあって、だから人は争うのだと思います。
国同士の諍いとなると、国籍や人種で人を決めつけてしまいがちですが、海外文学を読んで共感できるなら、何とかして分かり合うことも可能では…とも思いました。
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権力は正しく使わないと、
自他ともに悲劇を作り出す。
気づいた時にほ、己の周りには
誰もいなくなっている。
本当の恐怖。
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国民が一度に一人しか済むことができない極小の国「内ホーナー」とそれを取り囲む「外ホーナー」。とある出来事が外ホーナーの住人フィルを独裁者にし「内ホーナー」に対するジェノサイドへと至る過程を描いた寓話。
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寓話的で政治や社会を風刺する意識が明確なフィクションである。文字サイズはやや大きく実質140ページほどで長篇としては短い。類似として、解説でも触れられる『動物農場』のほかカレル・チャペックの戯曲も思い浮かぶ。
登場人物たちは人間ではなく、生命を与えられた機械仕掛けの生物のようである。主な登場人物は<内ホーナー国>に住むわずか7人の国民たちと、それを取り囲む<外ホーナー国>の警備隊や大統領などである。作中で明らかにはされないが、<外ホーナー国>にしても現実の国家のような人口をもたず、全体でもせいぜい数十人から百人程度だろうか。極端に国土の狭い<内ホーナー国>は国内に一人しか住むことができず、<外ホーナー国>にはみ出さざるをえないために普段から二国間の関係は悪い。そんななか、<内ホーナー国>に個人的な恨みをもつフィルという<外ホーナー国>の一人の住民が国境を越えて生活する<内ホーナー国>の人びとを糾弾しはじめる。フィルに扇動された<外ホーナー国>国民による<内ホーナー国>にたいする迫害は徐々に激しさを増していく、というのが大まかな流れである。
ロボットに近い生物たちだが生殖活動をして子どもを産むなどは人間と変わりないが、彼らの風変りな生態(脳が頭からこぼれ落ちてしまうなど)や大げさな言動によって細部はかなりコミカルである。一方でストーリーそのものは現実の過去にも再三起こった独裁社会への移行や、移民や小数派に対する迫害、忖度や事なかれ主義によって組織が腐敗する過程が描かれており、シリアスなテーマとコミカルな演出の組み合わせが特徴である。雰囲気としては小説よりも、50年ほど前の風刺要素を含むギャグ漫画作品に近いと感じた。物語後半には、現実であれば相当にショッキングな出来事もおこるのだが、先のようなコミカルな描写によってかなり中和されている。
作品としての短さ、人間社会でおこる過ちの恐ろしさをオブラートに包む漫画的な演出をあわせて考えれば、「大人も読める教育的な児童文学」を目指して書かれた作品として読めた。
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面白かった!
寓話にしてはごちゃごちゃした印象は受けるけれども、ナチスを思い浮かべて読んだ。あとがきだか解説でのトランプの話も確かに当てはまる。誰か特定の人物ではなく寄せ集めたイメージで書かれているみたいだが、ナチスにもトランプにも当てはまるということは、進歩しないのか、それが本質なのか、単に繰り返しているのかどうなのだろう。
自分自身がフィルになることはないと言い切れる人もいるかもしれないが、私は割と誰にでもあり得ることではないかと思う。そして私自身はどうだろうと考える。フィルの立場はなかったとしても、外ホーナーの住人の立場で彼らと同じ判断をしない自信はないし、もしかしたら気付かずに加担している可能性も否定できないのが恐ろしいとこだな。
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異質のものを排除したいと考えるエゴ、同意見のものこそ正義とする集団心理。寓話要素が強いから後味は軽いものだけど、結構なテーマですよね。読みやすかった
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面白かった。また読むと思う。
暴君がいかにして誕生してその時周りはどうで…っていうやや行き過ぎた風刺なんだけどここまでファンタジー的に描かれたら笑うしかない。
読みながら頭の中で立体アニメ?人形劇?化されていった。
抽象的なのに空想で場面がイメージできる不思議な話だった。
短くてとタイトルについている時点で圧政の終わりを読者に予知させてるのもいい。
ぐるぐる周る国の人たちがなんだかかわいい。
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青山ブックセンター本店のTwitterで
米文学の鬼才による抱腹絶倒で背筋の寒くなる「おとぎ話」
と紹介されていた本。
翻訳が岸本佐和子さんだったこともあり、図書館にて探す。
2011年発行の本なので、退色していたけれど、全体がオレンジ色に彩色されて綺麗な本だったことが伺える。
抱腹絶倒とはいかないけれど、なかなかシュールなお話でした。後書きでは、政治的な要素などないとは書かれていますが・・・。
なので、難しく考えずに読んでみましょう。
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誰かが言った「風刺画のような小説」、まさにそんな感じ。
独裁やジェノサイド、権力に阿るマスコミにまつわるおとぎ話。
やや抽象化がすぎるかな。
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面白おかしく読み始めるも、徐々に感じる戸惑いと慄き
内ホーマー人への圧制が「人間的」な要素がないだけに、より浮き彫りになる容易さへの恐怖
知らぬ間に根付く差別意識、忍び寄る独裁
頭の片隅ではわかっていても、なんとなく甘んじて受け入れていると、どんな未来が待っているのか
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アイディア勝負の短めの長編ディストピアSF小説。ブラックだが軽さが効いていて読んでて楽しい。でも展開に驚きはなく平均点そのものという印象。
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奇妙で滑稽で面白い。
所謂風刺的な寓話なのだけれど、とにかく突拍子もない設定とキャラクターに引き込まれてしまう。魅力的で演説巧みな独裁者に傾倒してしまう単純な大衆、他者を冷酷に切り捨ててしまう集団心理。テーマとしてはメジャーと思うけれど、この物語のような表現は常人では思いつかないだろう。
物語の序盤で語られる、主人公フィルの脳が「ラック」に固定されていてときどきそれが「滑り落ち」長引くと「おかしくなる」という設定にまずやられた。さすが岸本さんの訳本、期待を裏切らない。大好きだ。
何も構えずただ物語を楽しむだけで充分だと思う。
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壊れたおとぎ話のような世界観がおもしろかったです。登場人物のセリフの言い回しや描写の仕方にユーモアがあって、クスッとしてしまうところもあります。
しかし、俯瞰的に見ると自分も含め、人間というのは、本作に出てくるキャラクターたちのように、滑稽な生き物だと気付かされます。
自分と違うものを蔑んで憎んだり、本作のような俯瞰した目線で捉えられたなら、こんなにしょうもないことはありません。
そして、独裁者のフィルの運命はいかに。
なるべくしてなった、この結末は多くの歴史が証明しています。
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今まで読んだ本の中で、一番頭の中で想像した画がこびりついて離れない話だったかもしれない。
今まで読んだ翻訳本は、読みづらく、想像しづらいものが多かったけど、素晴らしい翻訳の力!
単行本の場合、表紙がどんななのかわからないけどこの文庫本の表紙がなんだか好き。
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フィルの暴力的な独裁が本当に辛かった…
けどタイトルに『短くて〜』と入っていたのでなんとか読めた!
ほんとロシアのウクライナ侵攻とだぶって見えたね…
デウス・エクス・マキナ的な事が起こらないかな〜。