紙の本
不思議な心
2005/11/09 14:36
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:桑畑三十郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
心は実験できるか。著者はこの問いに体を張って答えようとする。
1972年に、デヴィット・ローゼンハンという心理学者は、仲間8人とともに頭がおかしくなったふりをして精神病院を訪ねた。医者が偽患者を見抜けるかどうか試すために。結果は9人中8人が統合失調症と判断され、残りのひとりは躁うつ病と診断された。そして平均で19日入院させられたそうだ。医者は誰も嘘を見抜けなかったことになる。おもしろいことに他の入院患者は彼らが正常だとわかっていたそうだ。「あんたは気が違っているわけじゃないね。ジャーナリストか教授だ。」と。
では現代の病院ではどうだろうか。著者は実際に病院を訪れ、ローゼンハンと同じ症状を言う。8回実験を繰り返した結果、入院こそさせられなかったものの、大半の病院でうつ病と診断される。興味深いことに著者は診断をうけているうちに本当にうつ病ではないかと思うようになる。日本の病院ではどうなのだろうと試してみたくなる。よいこはまねしちゃいけません。
また薬物依存という症状は実際にはない、つまり理想的な環境で生活していれば、身近に薬物があっても手をださない、という主張に対しても、著者は自分を実験台として実際に服用する。気分がハイになり、ただのカモメがこれまで目にした中でもっとも美しい鳥に見える。こんな調子できっぱりと薬物をやめられるのか。結果は読んでのおたのしみだ。よいこはまねしちゃいけません。
この他にも実験心理学についてのおもしろいエピソードがたくさん載っている。訳者あとがきにあるように、事実を曲げて、わざとおもしろおかしく書いたような部分もあるが、それをさしひいても一読の価値がある本だ。
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ココロをカカグすることの堂々めぐり。「私」はそこにあるのではなく、ただ「あなた」あるいは「みんな」の前でのみ存在する。真剣に心理学に希望を抱く人々の足下を揺さぶりつつも、この問いを忘れたらもはやそれは学問ではない。ココロを実験するのも評価するのもココロ。学術書ではなく物語として綴ってくれた作者に感謝。
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心理学に興味のある人は読んで損なし!!
代表的な心理学の実験が章ごとに紹介されていて、私的にはかなり面白かった。
著者が実験者への取材を行っているのが斬新。
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実験心理学を勉強する者にとっては、ものすごくためになる本。
話がただ羅列してあるだけでなく、教科書からは分からない、心理学者達の人となりが少し分かってくる本。
スキナーへの侮蔑の言葉や、ロフタスへの罵声。
第一線で活躍する学者達の生身の姿を、初めて知る事ができた。
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非常に読みやすく、心理学の問題や面白さを余すことなく紹介している。今となっては再実験できない古典的な研究もある。内容には著者の偏りがみられるが、それも愛嬌だろう。心理学ビギナーへおすすめの一冊。
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心理学を勉強した人にしか、よく分からない本です。こういう人たちがいたから、今の心理学者も実験ばかりやっているんでしょう。そこらへんの教科書や論文からは得られないことも書いてあるので、それなりに面白かったけども、特に必要性を感じない情緒的な表現も結構ちりばめられていて、かちっとした記述が好みの僕には読みにくいところもありました。
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心理学は科学である。が、科学であると言うことはどういうことなのか。心理学は実験や観察によって数量化され、再現可能性を模索してきたが、その発想やプロセスの背景を再評価する、という点で、この本はおもしろく、また科学とはなにかを問い直すヒントを提示してくれている。
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ツイッターで読みたいって呟かれていた本。
確かにおもしろそう。
但し、まさに図書館とかで借りたい本。
学生時代に実験、ひとつビデオで見たなぁ。
頭蓋骨開けてね、電流流してね、何を思いましたかって。
そうやってここは記憶の部位とか調べた…って実験。
それ以外だと、自己で脳が傷ついたときに何が変わったかとかで、ここは気性に関わるとか忍耐がどうとか…(こっちは実験じゃないですね)
タイトルを見たときに色々思い出しました。
囚人を使って実験したりとか確かに倫理的にねぇ…どの辺まで踏み込んであるのかなぁ。
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学生の頃心理学が大嫌いだった僕。
だって、『人の心理が実験で解るわけがない!』そう思っていたし
心理学(あくまでも僕が受けていた授業)では実験の方法と結果を学ぶだけ
例えば『蟻は2割はサボっている。』『自分以外の人が間違った答えを言い続ければ、自分は正解が解っていてもその間違いを口にしてしまう。』等
僕は思いました
そしてレポートに書きました。
「それがわかってんだったら何とかしろよ!!」
そして大人になった今
「批判は少しでも心理学を知ってからにしよう」
そう思いこの本を手に取ったのです。
この本には10の実験の物語が綴られている。
彼らが何を想い、何を考え、何を求めて実験を行ったのか。
そして実験結果から彼らは何を得たのか。
吐き気がするほど冷酷な実験達の裏に潜む何とも人間味溢れる情熱と探究心。
心理学の実験で出た結果は
何かを創り出すためだけのものではなく
その結果を受けて我々が何を想い、どう活かすのか
それを投げかけるものなのかもしれない。
知らなかったじゃ済まされないぜ。
もっと早くこの本に出会っていればよかった。
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タイトルがイマイチ内容とあってない気がする。
元のタイトルは"Great Psychological Experiments of the Twentieth Century."
直訳すると「20世紀の偉大な心理学の実験」となるこの本は、20世紀に行われた有名な心理学の実験について、それらの実験の概要と裏話について書かれている。
扱っているのは、
1:スキナーのオペラント条件付け実験
2:ミルグラムの電気ショック実験
3:ローゼンハンの精神医学診断実験
4:ダーリーとラタネの緊急事態介入実験
5:フェスティンガーの認知的不協和実験
6:ハーローのサルの愛情実験
7:アレグザンダーの依存症実験
8:ロフタスの偽記憶実験
9:カンデルの神経強化実験
10:モニスの実験的ロボトミー
の10本。
おそらく、大学の教養の心理学の授業でそのすべてを扱うことはないだろう。
心理学の実験の中でも、衝撃的なものばかりが選ばれて載せられている。
本書では、これらの実験の紹介がメイン。
実験の内容や主張はもちろん、実験者がどんな人だったか、これらの実験がどのような反響を受けたかなどを、筆者が実験者や被験者を取材した上で物語のようにまとめている。したがって、読み進めていく上で心理学の知識はさほど重要でないかと思われる。
「スタンフォード監獄実験」がないのがびっくり。アイヒマン関係ってことでミルグラム実験に集約されてるのかしら。それとも実験が成り立たなかったからなかったことにされたのかしら。
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心理学を学ぶ者であれば絶対に知っているであろう超有名な実験を10個取りあげて解説した一冊。とは言っても、各実験の内容を詳細に解説するのではなく、その実験を行った人の人生や周囲の反応などを記しており、心理学史の様相を呈している。そのため、専門書と言うよりは読み物の色が強い。
ただ一方で、実験の内容に関しては軽くしか触れられていないため、その実験のことを知らない一般の人が読んでもわからない部分が多いのではおいった印象を受ける。また、聞いたことも無い実験の背景を知ったところで面白くもないのではなかろうか。そういった意味では専門家向けの一冊でもある。
つまり、本書は読み物的な体裁でありながらも面白みは専門家向けというどっちつかずの内容だと思わざるを得なかった。
また、もうひとつ苦言を呈するならば、その書き方がいちいち抒情的で鬱陶しい。これは翻訳が悪いのか原著が悪いのかが不明なのだが。兎に角、読んでいてイライラしてしまう。もう少し淡々とした文章校正でも良かったのではないだろうか。
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心理学史でもない、心理実験を題材にした何かエッセイのようなものとしか言えない。粘着質で感情的な文体がまず受け付けなかった。学術的な視点、客観性を保ち公平であろうとする姿勢が微塵も感じられない。
目次だけを見て、心理学のさわりとも言える有名な実験をとりあげた本だと思って買ったものの、不愉快な文章に耐え読破してもなんの知見も得られなかった。
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内容:スキナーのオペラント条件付け実験、ミルグラムの電気ショック実験、ローゼンハンの精神医学診断実験、ダーリーとラタネの緊急事態介入実験、フェスティンガーの認知的不協和実験、ハーローの猿の愛情実験、アレグザンダーの依存症実験、ロフタスの偽記憶実験、カンデルの神経強化実験、モニスの実験的ロボトミー
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ミルグラムやスキナーなどの有名な心理学実験を取り上げ、その概略や当事者について記述した本。専門家ではなく一般読者向けであり、かつ多数の事例を取り上げている(1件あたりのページ数が少ない)ので、詳しい記述はありません。どういう実験だったのかを知るには良いと思いますし、当事者の後日談なども興味深い。著者のスタンスに共感できない部分もありますが、まぁそういう人なんだと思って読めば許容できる程度。
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心理学実験についての物語。学術書というよりは、物語を読んでいる感じ。
心理学というものは本当に科学なのだろうか、と考えさせられた。