カプセルフィッシュ

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痛い！ 痛いよ！ 俗に言う中二病に対する痛さじゃなくて、確かな刺が埋め込まれてる感じ。読んでて心がジクジクする。小説ってこういうものでもあるんだよなあ、と思う。

自覚のある悪意。そして無自覚な悪意。ままならないということが、ただ悲しい。それでいて、どこか涼しい。

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知らずに読み始めたけど主人公が自分と同じ歳だった。不倫の恋に破れて、仕事も失ったアラサー女子の物語。祖母の暮らす海辺の小さな町で暫く暮らして、傷心を癒し、人生に悩み、奮闘と成長をしていく。そんな中で、口をきかない小学生の女の子や、親から暴力を振るわれているらしい男の子とも知り合ったりしていく。後半では婚活パーティーのリアルで痛々しいエピソードも。
けれども決して重苦しくなく、終始一貫して軽妙に描かれている。ユーモラスな彼女の口調や視点と、港町の美しい風景も広がっていて、読み心地が良い。
小学生女子「ぱちこ」の視点の物語も、対比のように交互に連作として描かれていて、これがまた良い。いわゆる「純粋」で「活き活き」としていて「可愛らしい」という大人が描く「子ども像」とは異なり、偏屈で屈折したものを抱えながら生きる姿は「そういえば自分の幼少期だって決してキラキラしていただけじゃなくて、こんなだったなぁ」と思わせるものがある。
夏にまた読み返したい一冊。

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不倫、妊娠、流産、別れ…心に痛手を受け祖母の家に来ていたのりこは、海辺の街で、口を聞かない小学生の少女に会った。

のりこと遊子の話の対比が凄くいい。
失恋から立ち直り、新たな職を見つけるのりこと、失踪し帰らぬ母を待つ小学生の遊子の少しずつ成長していく姿がとても魅力的。

特に遊子の芯の強さに魅了される。
その魅力に早くから気づき、ずっと近くにいることを決めた大樹。
二人の関係にもキュンキュンくる。
遊子と大樹のその後が気になります。

お気に入りの作家さんに出会えて良かった。

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「カプセルフィッシュ」「迷える蟻の行列」「結婚病」
「静寂に寄せる波」「風の葬送」
5話収録の連作短編集

先に「にんげんぎらい」の方を読んでいたけれど、こちらの方が断然好み

正義と不義、善意と悪意、人の心の中に潜むそれらの感情がひりひりと伝わって来る。
更に涙と笑い、おまけに浣腸まで加わった読み応えたっぷりの作品です。

主人公はアラサ―女子ののりこですが、海辺の小さな町で生活する遊子の存在がとても良い。
遊子に寄り添うぶっきらぼうな大樹、のりこのお婆ちゃん、院長先生、愛すべき登場人物達が一杯だ。

読後感も良く、もっと読んでいたいと思えた作品。