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投稿者:テラちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
素直にうまいと思う。廃墟のリゾートマンションという部隊が、物語に服r身をもたせるが、なかなか、こんなシチュエーションを思いつくものではない。手練れの書き手に脱帽。
電子書籍
よくわからない「それ」
2016/05/25 14:07
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投稿者:tomoaki - この投稿者のレビュー一覧を見る
女社長である年上の妻を亡くした男、アイドルの夢やぶれて故郷に戻った女、二人の前半の心理描写や状況はリアリティがあって読み応えがあった。
けれど、ラブドールが出てきたあたりから、女が”不思議ちゃん”にしか見えない現実感のなさで物語が進み始め、唐突な結末で消化不良。
老人ホームで孤独に過ごす人たちから感謝される沙希、人形に癒しを求めた果てに中毒自殺した小木田、その小木田を一緒に埋めた伊澤と沙希の共犯感覚。
どれも「孤独な人」を沙希が癒してあげた、というようにも見えるけれど、特別でもなくどこにでもありそうな、ありきたりなエピソードだ。
そして、肝心の伊澤の最後も彼らと同じようなものだったのか、よくわからない。
沙希の思い込みで、生きるか死ぬか迷っていた(?)伊澤を殺した、と想像できなくもない。が、いきなり検察の取調べ場面に転換するので肩透かしを食らった感じ。
「それを愛とは呼ばないんですよ」という検事の言葉が本タイトルにもなっているが、その「それ」が物語を通じてもはっきりしないのがその理由だろう。
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唐突に現れたその一行を、何度も何度も読み直しました。
なぜ、そうなるんだ?どこにそんな含みがあったんだ?なにが彼女を…
「愛」にはいろんな形があると思う。お互いを必要とし求め合う愛、親から子への与え続ける愛、自分の中だけで完結する一方的な愛。けれど、そこには必ずなにかどこか温かみがあるはずで。報われない愛だとしても、そこにはまぎれもなく相手を思う心の温度がある。
そういう、いろんな愛のその全てを封印して生きて来た女にとって、それを共感し、育てていくなんてことはからだ中どこを探しても、かけらもないものだったのだろうか。
「愛」と書いて「かなしみ」と読む男に出会ってしまったことが彼女の中に多分だれとも共感できない「愛」のタネを植え付けてしまったのだろう。
誰もそれを「愛」と呼ばなかったとしても、その瞬間、彼女は深い「愛」に包まれていたことは間違いないはず。それが全く心の温度を伴わないものだったとしても。
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年上の妻を失った男と夢を失った女の物語。愛しみをかなしみと呼ぶ感覚はお話の内容から伝わってくるがラストの展開があまりに唐突すぎて共感も心が揺さぶられる事もなく読了。自分の読解力が甘いのか感性が鈍いのか。
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それは愛ではないのだと思う。
白川紗希が自分に酔いしれ、酔いしれることに浸れる人を探しゆっくりと引きずりこまれていくお話しだったように思います。
亮介が、早々に引きずり込まれず長い時間をかけてもなお諦めない白川紗希がすごく怖かった。
顔が綺麗すぎるとこうなっちゃう場合もあるのかなー。真面目すぎて自分で自分の首をしめちゃった結末なのかなー。
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それは愛だと、私は思う。
その感情に名前をつけるとするならば、たとえ世間一般の定義とはずれていようとも、やはり「愛」なのだと思う。
「僕たち法律家は、それを愛とは呼ばないんです」という検察官の言葉の、なんと陳腐なことか。しかし、陳腐だけれども、それが世間の常識というものだ、ということもわかる。
愛を常識で定義することが、そもそも無理なことなのかもしれない。
「ひとはささやかな幸福の中でこそいちばん良い死を迎えられる」という主人公の信念に強く共感してしまった。
終盤近くまで、この先どうなるのか不安だった。ありふれた男女関係になってしまうのならつまらないと思っていた。
だから、最終章で現れた一文に、「そうか、そう来たか」とむしろ安堵する気持ちになった。
読み終わったあとに、心がしんとなる作品だった。
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それは愛だ!ぜったいに。
それを愛と呼んでいいと思う。
屈折していない、キレイでまっすぐな愛だと思う。
大事に大事に、その瞬間のままでとっておきたい。
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全体を覆う重い雰囲気が好き。
それを愛とは呼ばなくて何と呼ぶのだろう。正しいかは別として、私には愛に見えた。例えそれが一方的で酷く歪なものだとしても。
他の作品も読んでみたい。
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最後の数ページに驚愕しました。
そして新聞小説だったことにも唖然。
新聞小説=細切れのイメージです。
今回の作品にそれは一切なく、
ただただ疾走していくイメージです。
今回は珍しく性描写が少なかった。
それでも、人間の温度がページを進めるごとに
痛みとも呼べるような重さをもって
のしかかってきます。
その鈍とした、
桜木さんからいつも感じる深度に
ぞっとします。
気持ちが悪いからぞっとするのではないのです。
こめかみを押さえるような共感が合って
その共鳴とも呼べるような何かに、
引きずりこまれるからです。
読み進めて最後の数ページで
自然に泣いていました。
そのクライマックスの上昇も
形容しがたい。
贅沢な一冊でした。
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一旦読み始めると先が気になって,一気読みしました。
ラストは,ええ,そうなるの?と驚愕しました。
こんな愛の形もあるのではないかと見せてくれる,著者の意欲が大変感じられる小説です。
では,これから折に触れて何度も読み返したいかというと,せっかく当事者たちの誠実さが実を結んで,希望ある未来へつながろうとしていたのに,突然はしごを下ろされた印象を受けました。
著者の作品は心理描写が丁寧で,着目している作家さんではあるので,今度は読み返すたびに勇気を与えてくれる作品を書いてほしいなと思います。
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設定やそこで起こる出来事が、ではなく、登場人物の内面の描写がいつもより"薄い"印象。まず、主人公の一人である亮介と妻の章子との関係が描き足りていないと感じた。さらにもう一人の主人公である紗希の心の動き。ラストに向けての敢えて、なのかもしれないけど、やっぱりちょっと物足りなかった。丹念に追ってはいるのに踏み込んでいないというか。新聞連載のせいかとも思ったものの、読後に何かの記事を読んだら先に仕上げてあったということだし。まぁ、桜木さんといえどこういうこともあるのでしょう、ということで。
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何となく、これまで読んだ桜木さんの感じとは違った。
相変らず桜木さんの小説は暗いのだけど、今回のこの『それを愛とは呼ばず』はいつもにまして暗い。
そして重くて、とにかく怖い。
暗い、重い、怖いという小説。
これまでの暗さは澄んだ水のような感じの暗さだった。
キンとした冷たさ、底が見えるほどの透明感、星の光を反射させてキラキラと揺れて輝く水面。
でも今回の暗さはずしんとくる。
垂れ込めた低い雲、なま暖かくまとわりつくような空気、血や土や消毒液などのイヤな臭いがする。
それだけ桜木さんという作家がすごいということでもある。いや、本当に、すごい作家さんだと思う。
私は『氷平線』の方が好きだけれど、『それを愛とは呼ばず』はすごい作品だと思う。
前半、読みはじめた時は「桜木さんぽくないなぁ。あんまり好きじゃないなぁ」と思ったけれど、後半はスゴイ。どんどん暗くなって重くなって怖くなる。
本当に怖い話だった。あっという間に読んでしまったのだけど、あまりの暗さと重さと怖さに、読み終えてから私の精神が悪くなってしまって動悸と目眩を起して慌てて精神安定剤を飲んだくらい。
心の弱っていないときに読むことをおススメします(苦笑)
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う~ん 最後に思いがけない展開がおとずれると聞いてはいたが、まさかこうなるとは… 唸ってしまうばかりである
恐るべし、桜木紫乃。
しかしエッチはこの程度にとどめた方が桜木紫乃の力が伝わってくるんじゃなかろうか。
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新聞掲載。重く暗くカビ臭い感じがよく伝わってくる。始まるか始まらないかの愛の様子がもどかしい。けれどやっぱり始まらないし、そもそも、愛ではないんだ。
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今までの桜木作品とは少し趣の違う作品。
紗希が狂気を孕んでいく過程が淡々と描かれ、蜘蛛の巣のように読み手をも絡めとってくる。
彼女の中の愛は、相手が小さな幸せを感じている瞬間を止めること。「それを愛と呼んではいけないのでしょうか。」紗希の叫びが余韻として残る。
いつもの桜木作品の力強さや生きていく希望が感じられない作品でした。