紙の本
完成度高いミステリー、されど暗いテーマ
2023/04/16 13:29
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:こばとん - この投稿者のレビュー一覧を見る
まさきとしかさんのミステリー、『レッドクローバー』。
東京・豊洲のバーベキュー場でヒ素による集団殺人事件が起きた。犯人は犯行を認め、「ざまあみろって思ってます」と供述するが、動機などについては一切口にしない。ヒ素は12年前に北海道・灰戸町で起きた一家殺人事件で使われたものと同じ種類と分かったが、犯人と一家殺人事件との接点は確認できない。一家殺人事件ではただ一人生き残り、その後行方を断った長女が犯人ではないかと当時噂になっていた。長女は、果たして今も生きているのか、どこにいるのか。
新聞社を定年退社し、系列の月刊誌編集部で働く勝木は、12年前に灰戸町で取材経験があり、豊洲の犯人をめぐって取材を始める。勝木は灰戸町の取材時に長女を一瞬垣間見ているが、そのときの姿が今も忘れられない。当時一家は、町の人たちから疎まれていた。勝木は妻を病気で亡くしており、取材中もそのことが彼の心に影を落としている。そして妻の過去の経験も、本書を貫くテーマに関連していて、重奏し、共鳴していく。
429ページもある作品を読み進めていくと、それまで一見無造作に散りばめられていた各断片が次第に結びついていき、最後に驚くべき真相が明らかになる。ネタバレになるので、これ以上ここで紹介する訳には行きません。悪しからず。
著者のまさきとしかさんは、2007年に「散る咲く巡る」で第41回北海道新聞文学賞を受賞し、その後もいくつもの作品を発表しているらしい。本作は、ミステリーとしても、またテーマを持った“小説”としても、極めて完成度が高いと思う。扱われているテーマは、重く、暗く、そして現代的である。今までその存在を知らなかったが、相当のベテラン作家とお見受けしました。
電子書籍
2つのヒ素殺人事件
2023/11/09 07:54
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヒ素殺人事件というと、二十年以上前の和歌山カレーヒ素殺人事件を思い出します。この物語は、東京のバーベキュー場でヒ素を使った大量殺人なので、特に。もう一つは、北海道一家ヒ素殺人事件。長女の赤井三葉だけ生き残る。全体に暗いです
紙の本
殺されるよりも殺す方を選んだだけ
2023/05/26 12:26
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:302 - この投稿者のレビュー一覧を見る
毎日のように殺人事件が報じられ、目を背けたくなるような残虐なものもある。
なぜそんなことを…と思うが、この本で何度も出てくる「殺されるよりも殺す方を選んだだけ」なのかもしれない。
自分は絶対殺す方を選ばないと思っているけれど、その状況になると選んでしまうのか?
「死ねばいいのに」と口癖のように言う人がいて、この本にもそんな人がたくさん出てくるが、口に出すことでその気持ちが増幅するんじゃないかと恐ろしい。
投稿元:
レビューを見る
ヒ素バーベキュー事件を発端に現代と過去を行ったり来たりするスリル満点の驚愕ミステリーに読む手が止まりまらず。後半の展開に思わず「あっそうだったのか」と叫んでしまった。ぜひあなたも読んで恐怖を感じて下さい。
投稿元:
レビューを見る
北海道、僻地特有の町民意識と価値観がはびこるよくある港町。
14年前、食事にヒ素が入れられ、長女以外の全員が亡くなった、未解決のレッドクローバー事件。
1ヶ月後、事件宅が炎上し犯人ではないかとささやかれていた長女は行方不明に。
同じヒ素が、今年起きた無差別殺人・豊洲バーベキュー事件で使用された。
逮捕された男はヒ素をどこから入手したのか。
真相がみえたと思っても、さらに奥に、別の真相が。
よく見ればそれも虚構で、そこに残るのは女たちの闇、闇、闇。
幾重にも重なった女たちの姿がめちゃくちゃおもしろかった!
投稿元:
レビューを見る
親の影響は多かれ少なかれ人生にでてくるし、親ガチャはある。でも親が嫌いな子どもはいないと私も思う。
・「ときどき、世の中すべてにムカつくんですよね。もし私の手のひらに地球が乗ってたら、迷わず床に叩きつけて粉々にしますよ。みんな死ね、って叫びながら。」
・他人の不幸は蜜の味、と勝木は声にはせずにつぶやく。たしか自分と似た境遇の人が不幸な目に遭うと脳が喜ぶとは科学的に証明されているはずだ。
・同い年の女たちを見ると、なぜいつまでも現役にしがみつこうとしているのか、いったいいくつまで生きるつもりなのか理解できなかった。いつまでも生きようとするから余計なことを考えるのだ。先のことを考えても、期待も不安も心配もほとんどのことが無駄に終わることを知っていた。
・自分の行いは必ず自分に返ってくる
投稿元:
レビューを見る
豊洲でSNSで知り合った男女3人が死亡し、4人がヒ素中毒になるという豊洲バーベキュー事件が起こり、容疑者は丸江田逸央34歳。
世間は、その事件で12年前の北海道の灰戸町で起きた灰戸町一家殺人事件を思い出します。
その事件は、同じように食事にヒ素が入れられた一家の事件で犯人は一人だけ生き残った高校生の長女の赤井三葉とも言われていました。
手口が同じだったことから、丸江田が12年前の事件の犯人かとも疑われましたが、12年前丸江田には確かなアリバイがありました。
灰戸町の長女三葉は事件の3か月後、火事で家が燃えましたが、遺体が見つからず行方不明になっています。
月刊東都の記者の勝木剛は二つの事件を調べ始めますが…。
レッドクローバーと言うタイトルが何かカッコいいけどどういう意味だろうかと思ったら赤井三葉の名前でした。
この作品は赤井三葉を中心とするやはりこの作者特有の、母と娘の物語です。
ちなみに、ちょっとネタバレですが、豊洲の事件と灰戸町の事件は繋がっています。
丸江田と灰戸町の事件の犯人は面識があったのです。
勝木の亡くなった妻である美和子が言った
「子供を愛さない親はいても、一度も親を愛さない子供はいないんじゃないかな。だからもし長女がほんとうに親を殺したのだとしたら、その子のほうが先に心を殺されたのよ」。
丸江田が
「殺されるより殺すほうを選んだだけですよ。誰だってそうでしょう?人生の最後に、一度くらい殺す側にまわってもいいじゃないですか」
と言ったのが印象的でした。
作者の最高傑作ミステリ!という惹句にひかれて読みましたが、まさかこういう展開の話とは!という驚きはあり、ミステリーとしては大変面白かったのですが、母と娘の話としてはとても哀しくてイヤな感じでした。
投稿元:
レビューを見る
面白かったー。
ハードカバーなので電車で持ち歩くのに苦労した。
三葉、望月ちひろ、母久仁子、勝木記者…
久仁子はひどい母親だと思ったけど、久仁子の立場のシーンで読むと、子供のことを思ってのことなのか?わからなくなった。それでも、相手に伝わらなきゃ子供は愛されてないと思っちゃう。
それぞれの立場から、みると誰がヒ素を入手し、だれが誰を殺して、ムカついていてなのか、わからなくなる。
それでも、朝ごはんを作らない赤木の家は嫌だ。
その母には、育てられたくないな。
投稿元:
レビューを見る
親には愛されたいよね。負のスパイラルの鎖の強固さ。
どんな親のもとに産まれても、どんな生活環境で育っても、立派に生きる人もいる。でもほとんどは足枷に引きずり戻される。言い訳じゃないけど、負の鎖、振り払って生きていくのは難しいと思う。
投稿元:
レビューを見る
親に愛されない子供の苦しみと切なさ。
どうしても子供を愛せない親の辛さ。
悲しくてやるせない話だった。
北の小さな町が
舞台のひとつになっていることで
そこから逃げ出せない閉塞感があり
余計に胸が苦しくなるようだった。
結局、ヒ素中毒事件に関わった
全ての登場人物たちが加害者であり
また被害者でもあるように感じた。
投稿元:
レビューを見る
※
プロローグ
第1章 夏
第2章 鎖
第3章 火
第4章 怒
第5章 子
エピローグ
ヒ素が使われた無差別の殺害事件と
過去の未解決事件が絡み合い、
徐々に真相が明らかにされていく。
一見無関係に見える場所も時期も異なる
事件の根底に息づく歪んだ親子関係。
抑圧された環境で捻じ曲がり、すり減って
しまった精神が辿った結末。
生まれた環境ゆえに人生を選ぶことも叶わず、
ただ生きることさえもままならなかった
子供たちの胸に深く刺さる物語でした。
投稿元:
レビューを見る
衝撃的なヒソ混入事件から14年前の閉鎖的な地域で起きたヒソ混入事件を探るうちに複雑に入り組んだ人間関係が最後に伏線回収される
記者が追う様々な人達がなんだかやりきれない
投稿元:
レビューを見る
テーマはいつも通り親子。
展開も早いので読みやすい。
子供目線と親目線の違い。
子供が嫌いな親はいるけど親を嫌いな子供はいない。生物の真理。
おじさんの奥さんがもう少し絡んで欲しかった!
投稿元:
レビューを見る
今現在こんな風に家族や友人そして社会を
恨み、憎み鬱積した怒りを抱えている
人間は多いと思う。
そして常に孤独であると言う事だ。
この小説の灰土町は田舎独特の閉塞感
と闇神神社と言う
人の悪意を吐き出す場所。
その中で孤独な三葉とちひろは出会う。
三葉は自分が排除されたなら、それを何故
受け入れ無ければいけないのか?
自分が相手を殺せばいいと、ちひろに問う。
その言葉が怒りの火種となり、事件は起きる。
人間は常に心に小さな火種を持っている、
それを点火させるか否かは、本人次第だ。
投稿元:
レビューを見る
めっちゃ面白かった!惹き込まれるというより、引きずり込まれて一気読み。仕事前に電車で駅に着いてからも、ラストまでいきたくて15分ほど読みふけった。
終盤は心臓を黒い靄で握り潰される感じ。小説全体を漂う負の空気が半端ない。それがいい!
物語が大きく動くきっかけとなる場面。3人の初対面の人間を殺した犯人と記者のやり取り。
=====
「あなたが起こした事件に彼女はかかわっているんですか?」
丸江田はゆっくり目を伏せ、恥ずかしそうにほほえんだ。
「だったら、素敵なんですけど」
まるで好きな女の子の話をする中学生のようだった。
=====
がもう!ゾワッとする。どんな感覚!?
その先に待っているのは、こんなもんじゃないんだけれど。
これは来る!!