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紙の本
文化の窮状 二十世紀の民族誌、文学、芸術 (叢書文化研究)
著者 ジェイムズ・クリフォード (著),太田 好信 (ほか訳)
根を絶たれたひとびとに、ありうべき未来への経路をひらく論集。文化概念の再考を迫る名著の邦訳。巻末に著者のインタビューと太田好信による解説、用語集を収録。【「TRC MAR...
文化の窮状 二十世紀の民族誌、文学、芸術 (叢書文化研究)
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商品説明
根を絶たれたひとびとに、ありうべき未来への経路をひらく論集。文化概念の再考を迫る名著の邦訳。巻末に著者のインタビューと太田好信による解説、用語集を収録。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ジェイムズ・クリフォード
- 略歴
- 〈ジェイムズ・クリフォード〉1945年生まれ。カリフォルニア大学サンタ・クルーズ校教授。著書に「ルーツ」など。
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文化人類学の方法論を根本的に問い直す、分水嶺的大著の完訳
2003/04/01 13:22
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投稿者:小林浩 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昨年邦訳された『ルーツ』(月曜社)に続く、単著の邦訳第二弾である。本書は『ルーツ』に先行するクリフォードの主著で、1988年に原著が刊行されている。クリオフォードと親交のある太田好信氏による著者インタビュー「往還する時間」や、周到な訳者解説「批判人類学の系譜」など、クリフォードの方法論と実践を知る上でまさにマストバイな一冊となっている。著者の独特な術語の主なものを解説した「用語集」は、読者にとっては特に重要な配慮であると思う。今回はじめてお目見えした著者の写真もやはり特記すべきだろう。観相学というほどのものではないが、読者が著者の風貌から感じ取れる何かもあるだろうからだ。「本書はつぎはぎだらけの民族誌的オブジェであり、いわば不完全なコレクションである」と著者は述べる。それは本書が七年間(1979年から1986年)にわたって書かれ、また書き直されたからであり、その歳月に文化人類学そのものが学問的に問い直されてきたからでもある。西洋中心主義以後の文化人類学の試み、それがこの本の特徴であると言えるかもしれない。本書の題名「文化の窮状」とは、西洋中心主義的な「文化」観の破綻を言い表している。地球規模での交通と移動、移民は、従来の「中心と周縁」の二元論的把握を無効にした。現実によって無効となった諸概念の廃墟の地平線に見えてくるもの、その予感が本書をかたちづくる。大冊にしり込みする読者がいるかもしれないが、内容的に必ずしも難解ではないし、一気に読み通すことを要求されているわけでもない。また、本書には膨大な固有名詞が溢れかえってはいるが、すべて記憶するよう強要されているわけでもない。議論の筋を追うためには、本書の「移動」の身振りにいったん寄り添ってみることが必要かもしれない。常にローカルとグローバルの二つの視点を往還し、その都度、主題をめぐるコンテクストは再審される。民族誌的な観点からすれば、「アイデンティティ(同一性)」と呼ばれているものも、「つねに混淆しているものであり、関係的であり、創造的なもの」であるのだ。同質化と生成、喪失と創造は同時的である。学者が自分の拠って立っている土台について、不安定で動いていると告白するのは、天動説を捨てて地動説を語る天文学的転回に似ている。すなわち文化人類学も、クリフォード以前に戻ることはもはや時代錯誤だろうということだ。その意味で、これはまさにエポックメイキングな書物である。
連載書評コラム「小林浩の人文レジ前」2003年3月27日分より。
(小林浩/人文書コーディネーター・「本」のメルマガ編集同人)