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商品説明
透徹した構造的認識が、臨床現場の行き詰まりを切り開く−。「エクリ」の新英訳を完成させたブルース・フィンクによる、ラカン精神分析の実践的入門書。ラカン派の理論と技法を、豊富な事例を通じて明解に解説する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ブルース・フィンク
- 略歴
- 〈ブルース・フィンク〉アメリカを代表するラカン派の精神分析家。デュケイン大学で心理学の教授を務めるほか、新人臨床家の教育や現任臨床家のスーパーヴィジョンに携わる。
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紙の本
出来は悪くはない。しかし、ある種の「アメリカナイズ」されたラカン解釈は受け入れられるだろうか。
2009/04/30 00:24
10人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:反形而上学者 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書を読了して思ったのだが、「これは評価が分かれる本かもしれない」という感想をまず第一に持った。副題にもあるように「理論と実践」であるから、その双方が「ラカン派」というくくりで書かれてはいるのだが、本書がラカンの『エクリ』や『セミネール』の読解に役立つかどうかと言われれば、「入門書程度には役に立つ」というのが実感だ。
これはもう「ラカン派」を標榜して本を書くときには、誰もが陥る事態であると思われる。それは多分、後継者ミレールだとしても同様のことが起きるということを意味する。
本書の著者・フィンクは『エクリ』の完全英訳を初めて行なった人物であり、「フロイトの大義派」のメンバーでもある。その英訳版『エクリ』は非常に読みやすいということで、英語圏でも極めて評価の高い分析家である。
そういう翻訳の仕事と、本書のような「ラカン派の理論と実践」を著した本の執筆とは、やはりどうしても評価は重なることがないと言わざるを得ないであろう。
本書を読んで感じることは、「ラカンの考え方を単純化した」というような感想を持ってしまうだろうということだ。そして、内容が悪いわけでは決してないのに、読後感はさして良くないということが挙げられる。
なにかこう、解りやすさに腐心するあまりに、ラカンの面白いところも、問題点も、いずれもが抜け落ちてしまっているのだ。
例えば、本書の「実践」のところで、故・河合隼雄 氏が大量に残した臨床関係の本と基本的に言っていることがどうちがうのか?という地点にまでいかざるを得ないほどに、「ラカン派」のメリットは感じられない表現に終始している。こういう書き方はある意味非常に「アメリカナイズ」された方法であり、そう考えれば納得はできるが、かつて「フロイト」ではなく、「アンナ・フロイト」がアメリカに導入されたことを考えれば、ある種の危機感を感じてしまう。
少なくとも、どれだけ良いラカン派の解説書が出たとしても、『エクリ』の改訳版や『セミネール』が全て日本で出版されない限り、「また、解説書か・・・」という気持ちが晴れることはないであろう。
本書は著者がかなり頑張って書いているだけに、日本での受け入れ態勢を考えると、あまり人目には触れないかもしれないということが、何とも惜しい気がしてならない。