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- カテゴリ:一般
- 発売日:2020/04/21
- 出版社: 東京創元社
- サイズ:19cm/443p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-488-01102-4
紙の本
あの本は読まれているか
反体制とみなされ、共産圏で禁書となっている小説「ドクトル・ジバゴ」をソ連国民の手に渡し、迫害を行っているソ連の現状を知らしめる。冷戦下、一冊の小説を武器とし、危険な任務に...
あの本は読まれているか
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商品説明
反体制とみなされ、共産圏で禁書となっている小説「ドクトル・ジバゴ」をソ連国民の手に渡し、迫害を行っているソ連の現状を知らしめる。冷戦下、一冊の小説を武器とし、危険な任務に挑む女性たちを描くエンターテインメント。【「TRC MARC」の商品解説】
冷戦下のアメリカ。ロシア移民の娘であるイリーナは、CIAにタイピストとして雇われるが、実はスパイの才能を見こまれており、訓練を受けてある特殊作戦に抜擢される。その作戦の目的は、反体制的だと見なされ、共産圏で禁書となっているボリス・パステルナークの小説『ドクトル・ジバゴ』をソ連国民の手に渡し、言論統制や検閲で迫害をおこなっているソ連の現状を知らしめることだった。――そう、文学の力で人々の意識を、そして世界を変えるのだ。一冊の小説を武器とし、危険な任務に挑む女性たちを描く話題沸騰の傑作エンターテインメント!【商品解説】
著者紹介
ラーラ・プレスコット
- 略歴
- 〈ラーラ・プレスコット〉アメリカ出身。テキサス大学オースティン校のミッチェナーセンターで美術学修士号取得。「あの本は読まれているか」でアメリカ探偵作家クラブ主催のエドガー賞最優秀新人賞にノミネートされた。
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紙の本
守り続けた秘密
2023/12/31 15:24
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
本作を読みながら、ずっと『ララのテーマ』が心の中で鳴り響いていたように思う。
しかし、本作に登場するタイピストたちと同様、『ドクトル・ジバゴ』を読んだことがないことを告白しなければならないのは、なんとも気恥ずかしいものだ。
1950年代後半、東西冷戦真っただ中のころ、CIAはロシアの作家パステルナークの『ドクトル・ジバゴ』を、本国で出版禁止となっていることを逆手に取り、闇のルートでロシアに逆輸入して、国民に共産主義体制の欺瞞を明らかにし、彼らの意識を変えさせるという作戦を実行した。その陰で密かに任務を果たしたあるCIA職員イリーナと、作者パステルナークと彼を生涯にわたって支え続けた恋人オリガの、東西双方から見た当時の裏事情が、川の流れのようにゆるやかに語られる。
冷戦当時の共産主義体制側の弾圧が、いかに激しく容赦のないものだったかは、オリガの収容所体験や、時を選ばず拉致監禁される恐怖以上の物だったことは想像に難くない。先日、『湖の男』でも、反体制活動のかどで拉致・収容された恋人を生涯思い続ける若者の苦悩を読んだばかりだったので、その衝撃はまだ生々しく残っている。
本書の原題は、直訳すれば「我々が守り続けたたくさんの秘密」だが、登場人物たちが抱えなければならなかった数々の秘密は、それが政治的のものであれ、個人的なものであれ、当時の時代背景を考えれば現在のそれより数段重く、関わった当事者の人生までも歪めるものだったと思う。そんな環境の中で、任務のためとはいえ巡り合えたイリーナとサリーは、二つの秘密を共有しながら、心のバランスを保つために互いにしっかり結びつく。鉄のカーテンの向こう側で、パステルナークとオリガがそうだったように。
そして、いつか秘密の鎖から解き放たれ、静かな暮らしをともに送ろうと決意する。
だが、パステルナークはオリガを残して先に逝き、オリガは海外出版の印税を密かに受け取り国家を裏切ったとして、娘とともに再び収容所に収監されるという悲劇を迎える。オリガという女性のことは本作で初めて知ったので、彼女のその後がどうなったかは全く知らない。知るのが辛い。
この逃れようのない悲劇を少しでも和らげるためか、作者はイリーナとサリーには別の結末を用意したようだ。
50年以上もたったある日、CIAの元タイピストたちは90歳になろうとするある女性が、冷戦当時にソ連に機密を漏洩したかどでロンドンで逮捕され、アメリカへ送還されるという新聞記事を見て驚愕する。おそらくサリーだと思われるその女性は、ロンドンに潜伏中、夢だった古書店を経営しながら、名もなき女性とひっそり暮らしていたという。その女性の名は明かされることはないだろうが、これこそが彼女たちの守り続けた最大の、そして最後の秘密だったはずだ。ツバメはついに住処を見つけたのだと信じたい。
紙の本
ペンは剣より強し
2021/05/03 19:46
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
「文学が人の心を変え、世界を変えられる、ペンが武器となるという信念に命をかける人々の物語でした。1950年前後のソビエト連邦とアメリカとの冷戦時代、一つの物語を巡り、二つの世界で、人々がどのように愛し合い、そして傷ついていったかが記された。一冊の小説は、世界を変える。
紙の本
題名が・・・
2020/08/02 19:08
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ケロン - この投稿者のレビュー一覧を見る
本を武器に戦うなんて、CIAも荒唐無稽な作戦を思いつくものですね!
でも、ソ連国内の状況からしたら、命がけの事だったのだというのもうなずけ、ハラハラしながら読みました。
ただ、題名がなぁ・・・。原題のままではだめだったのでしょうか。
紙の本
「私たちが守った秘密」;秘密を守り続けた名もなき女スパイたちの戦いの物語
2020/10/03 16:37
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る
平凡なロシア移民の娘イリーナは、CIAにタイピストとして雇われるが、スパイの才能を見こまれ、訓練を受けてある作戦に抜擢される。その目的は、反体制的だとして共産圏で禁書となっているボリス・パステルナークの小説『ドクトル・ジバゴ』をソ連国民の手に渡し、言論統制や検閲で迫害をおこなっているソ連の現状を知らしめることだった。時代は冷戦下米ソのイデオロギー対立が激しくなっていた時期。
CIA工作員というと、ジャック・ライアン、ジェイソーン・ボーンが危険なミッションに立ち向かう姿を想像するが、ここでは女性が、拳銃ではなく、一冊の小説を武器とする姿が描かれる。『ジバゴ』というソ連で生まれた傑作を、西側がソ連に持ち込むという変わったプロパガンダ戦略だが、実情を民衆に知らしめるという国内破壊活動である。
物語は西側とソ連で展開する。西側での展開は、2014年情報公開されたCIAによる『ドクトル・ジバコ』作戦報告書をもとに、著者が黒塗り部分を埋める形で構成したフィクション。主人公イリーナを中心に、『ジバコ』原稿の入手と西側出版、ベルギー万国博覧会での宣伝頒布活動に、お互い惹かれあう先輩CIA女スパイのサリーとの悲恋、同僚テディとの恋愛と破局、タイピスト仲間たちとのワシントンの日常風景などが織り交ぜられる。諜報員間の確執と報復、二重スパイの炙り出しなどというサスペンスのスパイスも効いている。駆け引きあり謀略ありそしてロマンスあり、とハリウッドのスパイ映画そのままの興奮も堪能できる。
ソ連では、パステルナークと『ドクトル・ジバコ』ヒロイン・ラーラのモデルとなった愛人オリガとの愛情物語(収容所経験も赤裸々に綴られる)を中心に、『ジバゴ』のために奔走し彼に尽くす姿とノーベル賞受賞をめぐる党とパステルナークの緊張関係が描かれる。『ジバコ』のストーリーを当時に移し替えたような展開で、原作を読んでいるようなものである。本書著者が「ラーラ」と主人公ジバコの恋人と同じ名前というのも奇遇である。邦訳は現在では新訳が読むことができる (工藤正廣訳『ドクトル・ジバゴ』未知谷、2013年)。
イリーナの作戦は成功したのだろうか。本書結末では何千人もの追悼者が市民墓地に葬られたパステルナークを弔い、また、ボランティアが彼の棺を彼の埋葬地まで運び、出席者は禁止されたパステルナークの詩を暗唱している。これは史実のようだ。そしてパステルナークが始めた反体制活動は、やはり禁書となったアレクサンドル・ソルジェニーツィンの『収容所群島』の西側出版に引き継がれていく。それは最終的には、グラチノスに結び付き、そして体制崩壊に向かう。時間はかかったが、イリーナのMissionは成功したといえる。
この本を読んで1962年米国初の地球周回軌道の成功を弾道計算で支えた、NASAの3人の黒人系女性スタッフの知られざる物語を描いた映画『ドリーム』(原題:Hidden Figures、2016)を思い出した。彼女たちは差別と偏見を乗り越え、立派にMissionを果たし後に顕彰されることになる。しかし、イリーナたちのMissionは、決して表には出ないものであった。それは原題の「私たちが守った秘密」に出ている。本書は作戦の陰で秘密を守り続けた名もなき女スパイたちの戦いの物語でもある。
パステルナークはスクリャービンに師事し作曲家を志したが、絶対音感が欠けていると考え、19歳で断念している。彼の作品はCDで聴くこともできる。
前奏曲変ホ短調・嬰ト短調、ピアノ・ソナタ ロ短調
Danacord盤DACOCD709「2010フーズム城音楽祭」
Celestial Harmonies盤13255-2「ロシア・アヴァンギャルドのピアノ作品1905-1926」
紙の本
「あの本」に(映画版でもいいので)触れていると、数倍面白く読める
2020/08/10 12:33
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あお - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本語版のタイトル、ぐっと惹かれるタイトルではあるのだけれど、これから血沸き肉躍る権謀術数満載の冷戦時代のスパイもの、を想像していた人は、読み終わって肩透かしを食らうかもしれない。
原題の「The Secret We Kept(わたしたちが抱えていた秘密)」の方が、ダブルミーニングも相まって、本の内容にはずっとしっくりくると思う。
スパイもの、というよりは、情報機関に努めている人のお仕事+恋愛(西側)、と、「あの本」を二重写しにした一大叙事詩の一旦(東側)という感じ。
元ネタの「あの本」(ネタバレになるのでタイトルは避けます)に、映画版ででも触れていると、3倍ぐらい話が面白く感じると思う。
特に西側の話の時、語り手の視点がくるくると変わっていくので、今語っているこの人は誰?となることがしばしばだった。
あと、特に東側の視点、翻訳者の文体が私の好みとずれているだけかもしれないけれど、もう少し鉄のカーテンの向こう側を生々しく語ってほしかった気がする。