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深紅の上海…
2023/11/24 19:44
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投稿者:たこい - この投稿者のレビュー一覧を見る
オーシャン・クロニクルにおける『深紅の碑文』に相当する暴力の連鎖渦巻くピカレスク。とにかく血がひたすら流れる…
ただ欲望や大望を抱いただけの人物たちが時代や環境、状況の連鎖で抜け出せないところに陥っていく有様。ただし驚くほどリーダビリティは高い。
一方、同じ植物の起源の異なる株を交配することで圧倒的な新品種が生まれたり、その栽培の農業、経済的な側面まで描く設定面でも説得力が高い。
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自由を求めて伸し上がりたい男と、出自の呪縛から逃れられない男
互いに翻弄され追い込まれてゆくさまにこの時代の恐ろしさを見せつけられるが、現代と何も変わらない利権争いは、現代だからこそ、その恐ろしさが一層際立つ
船戸与一のいい意味でのエンターテイメント性な味付けが少ない分、余韻が切り裂く刃のように突き刺さってくる
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終わり方が良かった。表題とも合っていた。
前半はどうなんだろうなーと思いながら時代や青幇への興味で読んでいたが、後半から吾郷次郎と黄基龍の魅力が出てきて最後まで突っ走れた。
読み始めでいつか読もうと思っている「華竜の宮」の作者さんだと知り、
読み終わって「戦時上海・三部作」最後の長編だったと知った。
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『破滅の王』の作者が再び1930年代の上海を描いた作を完成させたと知り、さっそく購入。上海を中心とするアヘンの流通に焦点化した意欲作で、期待に違わぬスケール感を満喫できた。汪兆銘政権統治下の上海で、関東軍の特務機関と上海の「青幇」の世界観と論理がぶつかり合うラストに至る展開は、作者の筆力とリサーチ力が存分に発揮されている。
語りの戦略も興味深い。このテクストの男たちは、まさに灯火に群がる蛾のように、主体的に動いているように見えて、じつは彼らの力を超えた何者かによって動かされてしまっている。作中で唯一事態を動かしているのは原田ユキヱだけなので、次郎も楊直も、そしておそらくは「董老板」も志鷹中佐も、金と権力によって状況を操作できていると思い込んでいるだけだ。というより、描かれた出来事を追いかけてみれば、この物語の筋を作っているのは、むしろ原田ユキヱと満洲国・関東軍との戦いなのだ。
しかし、作者はユキヱのエピソードをあえて傍系に置くことで、アヘンに踊らされた男たちの狂奔を活写していく。こうした語りの構図は、日本の戦争も、「青幇」たちの「抗日阿片戦」もともに厳しく批判できる視座を確保するための戦略だろう。戦時下の上海を舞台にしたノワール小説のようでいて、じつは、そのような暴力を可能にした場そのものの自壊を描く、企みに満ちた一篇と読んだ。
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大東亜戦争~第二次世界大戦の時期の上海共同租界を舞台にしたひとりの日本人青年の成長と成功、そして死に至るまでのほんの11年間のストーリー。そして出会った様々な人間や闇の圧力団体、旧日本軍。
時代と「阿片」のせいとだけは言えないけれど、それは血みどろで陰謀渦巻く、思わず目を背けたくなるような~。
その時代のこと、大陸の大きさを(何につけても…)知らなさ過ぎる自分が勉強不足であるということもよく分かった。
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2023.6 主人公は悪い奴なんだが読んでいると肩入れもしてしまう。上田さんの小説は一つ一つのシーンが丁寧に書かれているわけではなくてあっさりしているけれど、立体的な描写に思えます。今回は随所に出てくる「匂い」がリアルな感じを醸し出していてすごいなぁ、と感心。
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田舎の閉塞感から逃げ出し自由に生きるため、成り上がりを図るため、秘密組織に近付き自己実現を果たしていく男の話
戦中の上海、特別な阿片。中国人組織の中で日本人ということを隠し生きる主人公。目をかけてあげた若者は敵となって戻ってくるし、よくある設定がたくさん詰め込まれていてでもそれがいい!な作品でした。自分の心に真っ直ぐで魅力的な登場人物が多かった。
また歴史を扱ったフィクション作品としてあとがきに誠意が込められていたのが印象的でした。ここまで書かないとだめなのか?とも。
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鬼★5 人間の欲はどこまでも果てしない… 戦時中の上海を舞台に血で血を洗う歴史ノワール #上海灯蛾
ついに来た…これだわ、今年の国内ミステリーのトップクラス。
文学賞候補やランキング上位は間違いないレベルの作品、圧倒的に★5です。
舞台は上海、時代は戦前から戦時中。阿片取引を巡って、地下組織で暗躍する男たちを描いた犯罪小説、ノワールです。
■きっと読みたくなるレビュー
貧しい生活から抜け出すため日本から上海に出てきた青年が、高品質な阿片取引に関わることでチャンスをつかむ。上海の秘密組織「青幇」に従属し、彼は兄貴分と協力しながら裏社会で暗中飛躍していく。
一方、満州を統制していた関東軍は、さらなる軍事拡大のため資金源を必要としていた…
熱い!熱すぎる!この話の概略だけで、もう面白そうでしょ。
安心してください、実際読んでみても超絶に面白いです。
犯罪小説でありながらも、阿片や戦争といった事実ベースの歴史や社会性をテーマにしつつ、エンタメ性も抜群。なぜ阿片が持ち込まれたか?事件の真相は?といった謎解きもある。もう優勝です。
〇欲の汚さ
人間の欲というのは、どこまでも果てしない。
高品質な阿片を巡って、様々な悪党たちが血で血を洗って奪い合う。貧しい者は、わずかな食べ物を奪い合う。そこには自分の理屈しかなく、まさに光に集まってくる蛾のごとく、ただの生き物でしかない。
読めば読むほど虚しい感情が広がり、胸が張り裂けそうになります。
〇罪の重み
もともと出世をしたかっただけなのに、多くの人を不幸にしなければ裏社会では生きていけない。どんな悪党であっても良心の呵責、罪の意識は存在する。ただどんなに痛みを感じても最果てまでやり切らないと、痛みは解消されない。
何を引き換えに人は富みを得るのか。
健やかに、感受性豊かに、小さな幸せを感じて生きることができなくなる恐ろしさが強烈でした。
〇上海と秘密組織「青幇」
この時代、上海はどんな街であったか、裏社会やフィクサーの存在。全く勉強不足でした。作者の取材力と圧倒的な筆力に感謝、読書を楽しみつつも歴史を学ばせていただきました。
〇戦争
我々は中学高校で歴史を授業で学びますが、正直この本を読むほうが圧倒的に勉強になる。戦時中、政治の中枢はどんな拙劣な考えを持っていたか。そして反対勢力を抑圧する現実とは。
今も世界のどこかで行われている戦争…悲劇が繰り返すだけなのに、人間の愚かさが悔しいです。
〇若者たちの未来
運命とはなんなのか…時代に巻き込まれた優秀な若者たち。
彼らが現代に生きていたら、もっと人を笑顔にできる成果が上げられたのではと悔しくてなりません。
弱き人のために多くの制度を考えて、たくさんの人を幸せにができたでしょう。
手を取り合って、日本の経済を支えるようなサービスや製品が生み出せたでしょう。
難しい交渉を経て、100年後の日本の未来を支える取引ができたでしょう。
■ぜっさん推しポイント
引用:平家物語 冒頭
祇��精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。
読み終わったら、ぜひもう一度、序章を読み直してほしい。
人間も蛾も、所詮はただの生き物でしかない。我々はなんのために生きるのでしょうか。
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「破滅の王」「ヘーゼルの密書」に続く上海3部作最終巻。
極上の阿片が採れる芥子「最(ずい)」を巡る関東軍と上海の秘密結社青幇の攻防。
貧しい日本の農村に生まれた主人公が青幇の末端に属する中国人青年と義兄弟の契りを結び、のし上がろうとする。
独自の世界を展開するSFを主戦場とする作者による上海物前2作は大いに楽しんだが、本作は主人公を巡る人間関係や青幇内の対立など、やや消化不良な感じがした。
題名は一瞬の栄華に命を賭す若者たちの生を象徴していて、秀逸。
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空っぽになってしまった。何を思えばいいんだろう。どう感じたらいいんだろう。感じること、考えることが多すぎて、考えていたら、頭の中が空っぽになってしまいました。
物語は、日本での暮らしに嫌気をさし、成功を夢見て上海に渡ってきた男、吾郷次郎の元に謎の女、ユキエが極上の阿片を持ってきたところから始まります。
次郎は、上海の裏社会に君臨する青幇の一員である楊直に話を持ち掛けると、その流れで自らも阿片ビジネスに深く関係していくことに・・・。
時代が違っていたら、次郎と伊沢はきっと良い関係を築いていけたんだろうと思うと、本当にやるせなくなります。欲や名誉、国や戦争に翻弄された男たちの物語。救いは次郎と楊直との関係。いつでも裏切ってやろうとしていた次郎が、楊直と義兄弟の契りを結び、最後までその関係は壊れることなく、次郎の最期に立ち会った楊直とのやり取りには涙が止まりませんでした。
こうした時代があって今の世の中があるわけですが、この時代も良いものであってほしかったと願わずにいられません。
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開戦前の上海。日本軍、青幇(中国の秘密結社)、アヘンの栽培と取引に関わる中国人になりすました日本人の生き様。
開戦前の上海をきっちりと表現し、中国人として暗躍する次郎の活動と心の内側をうまく描き出している。
当時の中国人から見た日本軍への思いや、逆に日本軍が資金調達をするためにアヘンをどう扱ったかがわかる。
さらに青幇が日本軍から隠れてアヘン栽培をするためにミャンマーに畑を作ったのだが、それが現代のゴールデントライアングル(一時ヘロインの世界で60%以上の生産)を作ったという仮説(真実っぽい気もする)に基づいている。SF作家でもある著者の思い切った洞察の面白さを感じる。
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変に酔った甘さの無い淡々とした、でもソコが良いノワール。この著者のノワール初めて読んだが、作品としても初めてかな?
義兄弟のラストに涙。ジロー視点だと分かりづらいけど、ジロー本人に自覚が無かっただけで、実はせずともかなり魅力的な男だったんじゃなかろうか。
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戦前戦中の"魔都"上海の闇に浮かぶ蛾のように物語に引き込まれていく
主人公が掴もうとするのは金であり、力であり、何よりも自由だ
そして薬まみれ殺しの血まみれになりながら義を貫き愛のために戦う
生き残るために残虐な行為を厭わぬ彼等ではなく、国家に魂を失うものたちこそ恐しい
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1934年の上海租界。
吾郷次郎はこの地で商売をしていた。
彼のもとへ原田ユキエと名乗る謎めいだ女から極上の阿片と芥子の種が持ち込まれたことで、上海の裏社会を支配する青幇と繋がる。
ここから彼は、阿片ビジネスへ引き摺り込まれる。
金とは手にすればするほどもっとほしくなり、ひとたび苦労せずに得る方法を知ると、苦労する気がなくなる。
それはいつの時代であってもそうなのか…
戦中、関東軍と青幇との間で阿片をめぐって暗闘が繰り広げられる。
執拗に追う関東軍に吾郷次郎は…。
後半以降に加速していく熱い闘い。
だが阿片に動かされているのは人同士ではなく国なのかと…。
ちょうど新聞でも掲載されていた文面に
約90年前に日本がつくった満州国。表向きに掲げた理想と裏腹に実際はアヘンにまみれた傀儡国家だった。
現代も紛争地帯で作られた薬物が、豊かなはずの国で貧困と格差に苦しむ人々をむしばんでいる。
「紛争と麻薬」が招く災禍を我々はいまだに克服できていない。
とあった。
なくならない戦争と麻薬。
始まりを辿るとこの上海1934年の時代からなのか。
知らずに今まできたけれどこの本で知ることもできた。
ただあくまで物語ではあるので虚構の部分も多くあると思う。
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1ページ目から引き込まれました。
自分の裁量と度胸と運でのしあがっていく主人公から目が離せませんでした。誰が死に、誰が生き残るのか。誰が味方で誰が敵なのか…。個性的な登場人物達が物語を最後まで失速することなく引っ張って行きます。
贅沢をいえば、上海の喧騒、熱気が伝わるような描写がもう少しあったらいいなと思いました。
「主要参考文献一覧」の最初にある一言が気になります‼️予想外の分野へのご迷惑って何でしょうか?‼️